※本記事は、株式会社ワールド の有価証券報告書(第67期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ワールドってどんな会社?
多数のブランドを展開する総合アパレルメーカー。デジタル技術や生産・販売の仕組みを外販する事業も拡大中です。
■(1) 会社概要
1959年に神戸で設立され、1992年に顧客価値と生産性の最大化を目指す「SPARCS」構想を発表しました。2005年のMBOによる非上場化を経て、2018年に再上場を果たしました。近年はM&Aを積極的に進め、2022年にナルミヤ・インターナショナルを子会社化、2025年にはエムシーファッション(旧三菱商事ファッション)を子会社化するなど、事業基盤の拡大を続けています。
連結従業員数は7,225名、単体では276名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は創業家の寺井秀藏氏、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家と創業家が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 12.90% |
| 寺井 秀藏 | 6.88% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 4.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長執行役員は鈴木信輝氏です。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴 木 信 輝 | 代表取締役社長執行役員 | アンダーセン・コンサルティング、ボストンコンサルティング等を経て2012年に入社。構造改革本部や国際本部の責任者を歴任し、2020年より現職。 |
| 中 林 恵 一 | 取締役副社長執行役員 | 証券会社、産業再生機構等を経て2013年に入社。経営管理本部、グループ支援本部等の責任者を務め、2024年より現職。 |
| 畑 崎 充 義 | 取締役 | 1987年に入社。人事本部、ブランド事業のグループ長、企業戦略推進部等を歴任し、2017年より現職。 |
社外取締役は、青木英彦(大学教授)、佐藤秀哉(テラスカイ社長)、堤はゆる(元日本ロレアル)、福島かなえ(元裁判官・弁護士)、冨田尚子(元金融庁)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ブランド事業」、「デジタル事業」、「プラットフォーム事業」および「共通部門」を展開しています。
■ブランド事業
国内を中心に、婦人・紳士・子供服や服飾雑貨等の小売業を展開しています。百貨店向けのミドルアッパーブランドやショッピングセンター向けのミドルロワーブランドに加え、海外展開や投資ブランドの再生支援も行っています。
主な収益源は、直営店舗やECサイト等を通じた衣料品・雑貨の商品販売代金です。運営は、フィールズインターナショナル、アルカスインターナショナル、ナルミヤ・インターナショナルなどの事業子会社が担っています。
■デジタル事業
ファッションに特化したECモール運営や、他社へのECシステム・物流システムの提供などを行っています。また、ブランドバッグのレンタルサービスやユーズドセレクトショップの運営といった循環型ビジネスも展開しています。
収益源は、EC受託に伴う手数料、システム利用料、リユース商品の販売代金、レンタルサービスの利用料などです。運営は主に、ファッション・コ・ラボ、ティンパンアレイ、ラクサス・テクノロジーズなどが行っています。
■プラットフォーム事業
同社グループが培ってきた生産・販売・空間創造等のノウハウや仕組みを、外部企業へサービスとして提供しています。OEM・ODMによる商品供給、店舗開発・販売代行、什器・家具の製造販売など多岐にわたります。
収益源は、商品供給による販売代金や、各種業務受託に伴うサービス対価です。運営は、ワールドプロダクションパートナーズ、ワールドストアパートナーズ、アスプルンド、エムシーファッションなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、第63期は新型コロナウイルス感染症の影響等により営業赤字となりましたが、その後は回復基調にあります。特に第67期は、売上収益が2,257億円まで拡大し、営業利益も168億円と大幅な増益を達成しました。当期利益についても順調に回復し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,803億円 | 1,713億円 | 2,142億円 | 2,023億円 | 2,257億円 |
| 営業利益 | -216億円 | 22億円 | 117億円 | 120億円 | 168億円 |
| 利益率(%) | -12.0% | 1.3% | 5.5% | 5.9% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -171億円 | 2億円 | 57億円 | 68億円 | 111億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上収益の増加に伴い売上総利益も増加しており、売上総利益率は59.1%と高い水準を維持しています。営業利益率も前期の5.9%から7.4%へと改善しており、本業の収益力が強化されていることがわかります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2,023億円 | 2,257億円 |
| 売上総利益 | 1,184億円 | 1,333億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.5% | 59.1% |
| 営業利益 | 120億円 | 168億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が396億円(構成比34%)、その他費用が218億円(同19%)、減価償却費及び償却費が178億円(同15%)を占めています。売上原価においては、商品評価損が含まれるなど在庫リスクへの対応がなされています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、主力のブランド事業が増収増益となり全体を牽引しています。デジタル事業も売上・利益ともに伸長し、高い利益率を示しています。プラットフォーム事業は、エムシーファッションの子会社化などの影響もあり売上が拡大し、セグメント利益も大幅に増加しました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ブランド事業 | 1,800億円 | 1,989億円 | 87億円 | 93億円 | 4.7% |
| デジタル事業 | 296億円 | 325億円 | 11億円 | 26億円 | 8.0% |
| プラットフォーム事業 | 686億円 | 745億円 | 8億円 | 67億円 | 9.1% |
| 共通部門 | 69億円 | 100億円 | 15億円 | -11億円 | -11.4% |
| 調整額 | -829億円 | -903億円 | -1億円 | -7億円 | - |
| 連結(合計) | 2,023億円 | 2,257億円 | 120億円 | 168億円 | 7.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で得た資金で借入金の返済や投資を行っており、財務体質の改善と成長投資のバランスが取れた「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 275億円 | 320億円 |
| 投資CF | -20億円 | -103億円 |
| 財務CF | -255億円 | -208億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「創造全力、価値共有。つねに、その上をめざして。」をコーポレート・ステートメントとして掲げています。お客様へ価値を提供し続ける仕組みをつくり、実行することで共感を得て、常に新たな可能性に向けて自らを革新し続けることに挑戦しています。
■(2) 企業文化
1992年に発表した「スパークス(SPARCS)」構想に基づき、顧客価値と生産性の最大化を目指す文化があります。これは、消費者を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変えるビジネスモデルです。また、変化する顧客ニーズにスピーディーに応えるため、プラットフォームを進化させ続ける姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「PLAN-W」において、本業の稼ぐ力を表す「コア営業利益」の持続的な向上を最重要視しています。また、価値創造的な状態を創り上げるため、以下の財務指標を目標として掲げています。
* ROE(自己資本利益率):12.0%超
* ROIC(投下資本利益率):8.5%
* ネットD/Eレシオ:0.5倍
■(4) 成長戦略と重点施策
「SPARCS構想」を拡張し、「ワールド・ファッション・エコシステム」の確立と進化を目指しています。ブランド事業の筋肉質化を図りつつ、培ったノウハウやプラットフォーム機能を外部企業へ開放することで、B2B事業の拡大を推進します。
* **ブランド事業**:ポートフォリオ戦略の機動的修正と、店舗・ECのシームレスなサービス提供。
* **デジタル事業**:他社向けデジタルソリューションの拡大と、サーキュラー(循環型)事業への資源集中。
* **プラットフォーム事業**:生産・販売・空間創造等の機能の外販強化と、M&Aによる機能拡充。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」の力を最大化させ価値創造につなげる人的資本経営を推進しています。「知識の利用可能性向上」「ワークフォースの最適化」「多様性の向上」「エンゲージメントの向上」を4つの推進テーマとして掲げ、複数のキャリアパス整備や誰もが学び続けられる育成プログラムを提供しています。また、女性や中途入社者など多様な人材が活躍できる環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 43.7歳 | 16.3年 | 5,186,282円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 55.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢の変化に関するリスク
取り扱う商品が嗜好品としての性格を持つため、家計の防衛意識による支出抑制の影響を受けやすい傾向にあります。国内市場への依存度が高いため、消費税増税や自然災害、世界的な経済活動の低迷などが日本の経済情勢に悪影響を与えた場合、同社の収益に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 消費者の嗜好の変化等に関するリスク
ファッショントレンドや消費者の嗜好は多様化しており、予測が困難になっています。これらに適時適切に対応できない場合や、ブランドへの評価が低下した場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。SNS等の普及により情報発信源が多様化していることも、トレンド予測の難易度を高める要因となっています。
■(3) 仕入価格その他の費用の増加によるリスク
海外生産地での人件費や原材料費の上昇、為替変動による仕入価格の上昇リスクがあります。また、国内においても物流費や賃料、人件費の増加が見込まれます。これらのコスト増を価格転嫁等で吸収できない場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材に関するリスク
労働人口の減少や人材獲得競争の激化により、有能な人材の確保・育成が困難になるリスクがあります。経営幹部、ITエンジニア、専門職、販売員などの確保ができず、あるいは人件費が高騰した場合、事業運営や競争力に影響を与える可能性があります。



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