※本記事は、株式会社リンガーハットの有価証券報告書(第62期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リンガーハットってどんな会社?
長崎ちゃんぽんやとんかつを提供する飲食専門店チェーンを国内外で展開しています。
■(1) 会社概要
1962年にとんかつ浜かつを創業し、1974年に長崎ちゃんぽんのチェーン展開を開始しました。1985年に福岡証券取引所、1998年に東京証券取引所へ上場しています。2006年に持株会社制へ移行し、近年は東南アジアや米国など海外への出店も進めており、2022年には創業60周年を迎えました。
従業員数は連結で587名、単体で151名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は取引金融機関である十八親和銀行、第3位は日本マスタートラスト信託銀行(米濵・リンガーハット財団口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.88% |
| 十八親和銀行 | 2.51% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(米濵・リンガーハット財団口) | 2.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長 兼CEOは福原扶美勇氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 福原 扶美勇 | 代表取締役社長 兼CEO | リンガーハット執行役員海外事業本部リーダーや、米国および東南アジアの海外現地法人社長等を歴任。2026年3月より現職。 |
| 川内 辰雄 | 取締役 | リンガーハット執行役員商品開発担当、執行役員西日本事業部担当、浜勝代表取締役社長等を歴任。2025年5月より現職。 |
| 北原 憲和 | 取締役 | リンガーハット執行役員経営管理担当、執行役員経営管理兼海外事業担当、執行役員管理本部兼海外事業担当等を歴任。2026年5月より現職。 |
社外取締役は、川﨑享(エム・アイ・ピー社長)、安部映里(元日本航空執行役員)、瓦美雪(丸井顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「長崎ちゃんぽん」「とんかつ」「設備メンテナンス」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 長崎ちゃんぽん
長崎の郷土料理である「長崎ちゃんぽん」および「長崎皿うどん」の専門店としてチェーン展開を行っています。国産野菜の使用など素材にこだわり、安全・安心・健康を重視した商品を、国内外の直営店およびフランチャイズ店を通じて顧客に提供しています。
収益源は、店舗での飲食サービス提供による売上や、フランチャイズ加盟店への食材販売およびロイヤリティ収入です。事業の運営は、主にリンガーハットジャパンや海外の現地法人が行い、リンガーフーズがブランド商品の外部販売を担っています。
■(2) とんかつ
「とんかつ」の専門店として「とんかつ濵かつ」ブランドでチェーン展開を行っています。季節限定商品やランチメニューなど、幅広い顧客層のニーズに応える商品開発を行い、おいしいとんかつ料理をお腹いっぱい楽しめる店舗づくりを進めています。
収益源は、直営店およびフランチャイズ店舗での飲食サービスやテイクアウト商品の販売による売上です。事業の運営は、主に浜勝および海外の関連会社が主体となって行っています。
■(3) 設備メンテナンス
グループ内の直営店舗およびフランチャイズ店舗に対して、設備の維持・メンテナンスサービスを提供しています。厨房機器などの設備機器の保全や工事の請負を行い、店舗運営の基盤を支えています。
収益源は、グループ各社やフランチャイズ加盟店から受け取る設備メンテナンス工事の請負代金や保守サービス料です。事業の運営は、主にリンガーハット開発が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は回復基調が続いており、継続的な増収を達成しています。利益面でも、原材料費や光熱費の高騰といった厳しい事業環境の中、価格改定や業務の効率化が奏功し、経常利益および当期利益ともに黒字転換から着実な増益傾向へと推移しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 339億円 | 377億円 | 402億円 | 438億円 | 451億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 3億円 | 11億円 | 16億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 5.8% | 0.7% | 2.8% | 3.6% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | -4億円 | 5億円 | 8億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大し、売上総利益率は約65%と高水準を維持しています。一方で、人件費等の増加により営業利益はやや減少していますが、一定の利益水準を確保しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 430億円 | 443億円 |
| 売上総利益 | 281億円 | 288億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.3% | 65.1% |
| 営業利益 | 17億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 3.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が117億円(構成比41.3%)、賃借料が43億円(同15.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である長崎ちゃんぽん事業は、新規出店や価格改定の効果により堅調に推移し、グループ全体の売上を牽引しています。設備メンテナンス事業も外部受注を含め順調に拡大していますが、とんかつ事業は利益面でやや減少しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益(2026年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 長崎ちゃんぽん | 357億円 | 369億円 | 14億円 | 11億円 | 3.1% |
| とんかつ | 79億円 | 80億円 | 3億円 | 1億円 | 1.8% |
| 設備メンテナンス | 2億円 | 2億円 | 2億円 | 2億円 | 111.5% |
| 調整額 | -17億円 | -18億円 | -2億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 438億円 | 451億円 | 17億円 | 14億円 | 3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型と判定されます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 29億円 |
| 投資CF | -23億円 | -20億円 |
| 財務CF | -9億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も48.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべてのお客さまに楽しい食事のひとときを心と技術でつくる」を基本理念として掲げています。郷土料理の「長崎ちゃんぽん」と「とんかつ」を中心に、素材や味にこだわり、安全・安心・健康で楽しい食事の空間を提供し続けることにより、長期的かつ安定的に企業価値を高める経営を目指しています。
■(2) 企業文化
経営方針のスローガンとして「全員参加で、成長へのアクセルを踏み込もう」を掲げ、社員とパート・アルバイト従業員が一丸となった全員参加型経営を重視しています。「現地・現物・現実」の三現主義を徹底し、店舗での月例会を通じて従業員が主体的に改善提案を行うなど、風通しが良くスピーディーな課題解決を図る風土です。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、日常の営業活動に加え、財務活動を含めた企業のトータルの収益性を重視する観点から、安定した経営基盤の確立を目指しています。
具体的な数値目標は以下の通りです。
・売上高経常利益率10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
主力の外食事業を中心に国内外への出店を継続し、売上高FLコスト(売上原価+人件費)比率60%以下の実現による高収益化を目指します。また、国内フランチャイズおよび海外アライアンスの拡大により自己投資を抑え、財務強化を図ります。次世代に向けた業態開発や、自社工場の内製化率向上、業務標準化とDX推進にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「成長を支える人づくりと働き甲斐のあるキャリアプラン」を方針とし、多様な人財の能力を最大限に発揮させるダイバーシティ経営を推進しています。管理職定員制や能力主義を強化し、階層別教育による次世代経営者や店長の育成に注力するほか、業務の標準化を通じて誰もが働きやすい職場環境の創出を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 46.6歳 | 18.5年 | 7,434,677円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 101.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(22.4%)、外国人正社員数(38名)、離職率(入社3年未満)(23.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定事業への依存と売上高の季節変動
同社グループは主力の外食事業に依存しており、消費者のニーズ変化や競争激化の影響を大きく受けます。また、大型連休や年末年始など特定時期に売上が集中する傾向があり、当該時期の天候不順などが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食の安全と衛生管理
食中毒の発生や異物混入、アレルギー物質の表示ミスなど、食の安全に関する問題が発生した場合、顧客の信頼を失い業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。また、同業他社での問題による連鎖的な風評被害等の影響を受ける可能性もあります。
■(3) 原材料の仕入と価格高騰
食材の多くを外部から調達し、一部は海外から輸入しているため、疫病の発生、天候不順、世界情勢の悪化等により原材料の確保が困難になる、または仕入価格が高騰した場合、事業運営および業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(4) フランチャイズ・チェーン展開
同社は直営店に加えてフランチャイズ契約に基づくチェーン展開を行っています。加盟企業の減少や業績悪化、あるいは加盟企業による不適切な店舗運営や衛生管理上の問題が発生した場合、ブランドイメージが毀損し、ロイヤリティ収入の減少等につながるリスクがあります。



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