リンガーハット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リンガーハット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・福証に上場し、長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」やとんかつ専門店「濵かつ」を運営する外食チェーン企業です。直近の業績は、売上高438億円、経常利益16億円となり、前期比で増収増益を達成しました。国内外で店舗を展開し、食の安全・安心に注力しています。


※本記事は、株式会社リンガーハット の有価証券報告書(第61期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リンガーハットってどんな会社?


長崎ちゃんぽん専門店およびとんかつ専門店を主力とする外食チェーン企業です。国産野菜の使用など食の安全に注力しています。

(1) 会社概要


1962年にとんかつ専門店「浜かつ」を創業し、1974年に「長崎ちゃんめん」(現・長崎ちゃんぽん)第1号店を開店しました。1985年に福岡証券取引所、1998年に東京証券取引所へ上場し、2006年には持株会社制へ移行しました。現在は国内外で店舗展開を進め、食の安全・安心を追求した事業運営を行っています。

連結従業員数は559名、単体従業員数は144名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は地元の地方銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.39%
株式会社十八親和銀行 2.51%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(米濵・リンガーハット財団口) 2.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長兼CEOは佐々野諸延氏であり、社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々野 諸延 取締役社長(代表取締役) 1983年入社。執行役員西日本営業事業部長、取締役管理部担当、取締役生産部担当などを経て、2019年より社長、2020年より現職。
福原 扶美勇 専務取締役(代表取締役) 1997年入社。執行役員東日本事業部長、海外事業本部担当などを経て、2019年専務取締役就任。2020年より現職。
山岡 雄二 取締役 1987年入社。リンガーハットジャパン東日本第2営業部長、執行役員兼浜勝社長、執行役員生産部担当などを経て、2024年より現職。
川内 辰雄 取締役 1987年入社。執行役員商品開発担当、リンガーハット西日本事業部担当などを経て、2023年より執行役員兼浜勝社長。2025年より現職。


社外取締役は、川﨑享(エム・アイ・ピー代表取締役社長)、金子美智子(元日本航空第2客室乗員部長)、安部映里(元日本航空執行役員客室本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「長崎ちゃんぽん事業」、「とんかつ事業」、「設備メンテナンス事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 長崎ちゃんぽん事業


「長崎ちゃんぽん」の専門店としてチェーン展開を行っています。主力ブランド「リンガーハット」を通じ、国産野菜を使用したちゃんぽんや皿うどんなどを提供し、幅広い層の顧客に支持されています。また、外部販売事業も含まれます。

飲食サービスの提供による対価を主な収益源としています。運営は主にリンガーハットジャパン、および海外現地法人が行っています。また、リンガーフーズが主にリンガーハットブランド商品の外部販売を行っています。

(2) とんかつ事業


「とんかつ」の専門店としてチェーン展開を行っています。主力ブランド「濵かつ」を通じ、こだわりの素材を使用したとんかつ料理を提供しています。

飲食サービスの提供による対価を主な収益源としています。運営は主に浜勝、および海外現地法人が行っています。

(3) 設備メンテナンス事業


グループ外食事業店舗の設備メンテナンス業務を担っています。店舗設備の維持管理や保全工事などを行い、店舗運営の安定稼働を支えています。

設備メンテナンスサービスの提供による対価を収益源としています。運営は主にリンガーハット開発が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、経常利益は一時的な赤字から回復し、直近では黒字基調を維持しています。利益率も改善傾向にあり、当期純利益も黒字で推移しています。全体として業績は回復・安定化の傾向にあります。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上収益(または売上高) -億円 -億円 -億円 402億円 438億円
経常利益 -56億円 20億円 3億円 11億円 16億円
利益率(%) -% -% -% -% -%
当期利益(親会社所有者帰属) -85億円 10億円 -4億円 5億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益率も改善しています。コストコントロールが進み、収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 402億円 438億円
売上総利益 256億円 281億円
売上総利益率(%) 63.6% 64.1%
営業利益 10億円 17億円
営業利益率(%) 2.5% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が113億円(構成比41%)、賃借料が43億円(同16%)を占めています。売上原価は149億円で、売上高に対する構成比は約34%です。

(3) セグメント収益


主力の長崎ちゃんぽん事業は増収増益となり、全社の業績を牽引しました。とんかつ事業も増収となりましたが、利益はやや減少しました。設備メンテナンス事業は増収増益となり、堅調に推移しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
長崎ちゃんぽん 324億円 357億円 8億円 14億円 3.8%
とんかつ 77億円 79億円 3億円 3億円 3.7%
設備メンテナンス 1億円 2億円 1億円 2億円 110.0%
連結(合計) 402億円 438億円 10億円 17億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 29億円 31億円
投資CF -20億円 -23億円
財務CF -11億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すべてのお客さまに楽しい食事のひとときを心と技術でつくる」を基本理念としています。郷土料理の「長崎ちゃんぽん」と「とんかつ」を中心に、親しみやすい「飲食の専門店」を展開し、安全・安心・健康で楽しい食事の空間を提供し続けることで、長期的かつ安定的に企業価値を高める経営を目指しています。

(2) 企業文化


「全員参加で、成長へのアクセルを踏み込もう」を経営方針のスローガンに掲げています。また、「現地・現物・現実」を重視し、現場に足を運び、現物を手に取り、現実を確認することでスピード感を持って問題解決を図る姿勢や、多様な価値観を尊重する「ダイバーシティ」を推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標


財務活動を含めた企業のトータルの収益性を重視し、売上高経常利益率を重視するとともに、安定した経営基盤の確立を図るためフリーキャッシュ・フローの増大を目標としています。

* 売上高経常利益率10%以上
* 売上高FLコスト(売上原価+人件費)比率60%以下の実現
* 国内におけるフランチャイズ展開を全店舗数の30%を目処に進める
* 2030年度のCO2排出量46%削減(2013年度比)

(4) 成長戦略と重点施策


主力外食事業2業態を中心に国内外への出店を継続し、次世代に向けた業態開発にも注力する成長戦略を掲げています。また、店舗の売上向上と人財費率の抑制、工場の生産性向上と内製化率アップによる高収益化、国内フランチャイズ展開による投資抑制を通じた財務強化を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


成長を支える人づくりと働き甲斐のあるキャリアプランの構築を目指しています。定期的な新卒採用による社員の若返り、管理職定員制や能力主義の強化などの人事制度改革、次世代経営者や店長育成のための教育充実を推進しています。また、ダイバーシティを推進し、個々の能力を発揮して長く活躍できる環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 46.1歳 18.5年 658万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.3%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 55.4%
男女賃金差異(正規) 70.0%
男女賃金差異(非正規) 103.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性店長数(76名)、外国人正社員数(16名)、離職率(入社3年未満)(17.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害や停電等による影響


生産施設での災害や停電による影響を完全に防止できる保証はありません。特に食材は静岡、佐賀、京都の工場で集中生産されているため、これらの地域で大規模な地震等が発生した場合、食材の生産能力が著しく低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定事業への依存と売上高の季節変動


外食事業が主力であるため、消費者のニーズ変化や競争激化の影響を大きく受けます。また、売上高はゴールデンウィーク、夏休み、年末年始などの繁忙期に高くなる傾向があり、この時期に悪天候等が重なると、計画通りの売上や利益を達成できなくなる恐れがあります。

(3) 食の安全と衛生管理


食中毒の発生や食品表示に関する誤表記、異物混入などの問題が発生した場合、行政処分や顧客の信用失墜、ブランドイメージの低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、他社での衛生問題や疫病等の社会的要因による風評被害もリスク要因となります。

(4) 原材料の仕入について


疫病、天候不順、世界情勢等により原材料の確保が困難になったり、仕入価格が高騰したりする可能性があります。野菜の国産化などに取り組んでいますが、災害等で調達に支障が生じると、事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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