吉野家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

吉野家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

吉野家ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、「吉野家」や「はなまる」などのファストフード店を国内外で展開しています。直近の業績では、店舗数の増加や既存店の好調により売上高は2,257億円(前年同期比10.1%増)、純利益は47億円(同22.7%増)と増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社吉野家ホールディングスの有価証券報告書(第69期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 吉野家ホールディングスってどんな会社?


牛丼チェーン「吉野家」や讃岐うどん「はなまる」を中核に、国内外でファストフード事業を展開する外食企業です。

(1) 会社概要


1958年12月に吉野家を設立し、1968年に多店舗化に向けた2号店を開店しました。2000年11月に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2004年にははなまるを傘下に収めました。2007年10月に純粋持株会社制へ移行し、現在の社名に変更しています。直近では2024年に宝産業を子会社化しました。

現在の体制として、従業員数は連結で3,361名、単体で399名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行、第3位には吉翔会が名を連ねており、機関投資家や関係団体が主要な株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 10.40%
日本カストディ銀行 1.94%
吉翔会 1.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は成瀬哲也氏が務めており、社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
成瀬哲也 代表取締役社長 1988年同社入社。吉野家常務取締役、はなまる代表取締役社長、同社アジア統括本部長等を経て、2025年5月より現職。
小澤典裕 代表取締役副社長 大林組、コンパスグループ・ジャパン代表取締役社長等を経て、2019年同社入社。2025年5月より現職。
河村泰貴 取締役会長 1993年同社入社。はなまる代表取締役社長、同社代表取締役社長、吉野家代表取締役社長等を経て、2025年5月より現職。
前田良博 取締役 2001年はなまる入社。同社常務取締役、吉野家執行役員等を経て、2022年よりはなまる代表取締役社長、2024年5月より現職。


社外取締役は、藤川大策(元シティグループ証券副社長)、曽和信子(日本アイ・ビー・エムシニア・デリバリー・エグゼクティブ)です。

2. 事業内容


同社グループは、「吉野家」「はなまる」「海外」および「その他」事業を展開しています。

(1) 吉野家


日本国内において、牛丼などのファストフード店の経営およびフランチャイズ店舗への経営指導等を行っています。一般消費者に対して手軽で質の高い食事を提供するほか、フランチャイズ加盟店に対するサポートも担っています。

飲食店運営による商品やサービスの提供を通じて消費者から直接代金を受け取るほか、加盟店からはロイヤリティや加盟金、食材販売による収益を得るモデルです。運営は主に吉野家が行っています。

(2) はなまる


日本国内において、セルフ式讃岐うどんなどのファストフード店の経営およびフランチャイズ店舗への経営指導等を行っています。多様な立地戦略のもとで店舗を展開し、幅広い顧客層にうどんを提供しています。

直営店における飲食代金が主な収益源となるほか、フランチャイズ加盟店に対する食材等の販売やロイヤリティも収益の柱となっています。運営は主にはなまるが行っています。

(3) 海外


アメリカ、中国、アセアン地区などの海外市場において、牛丼をはじめとするファストフード店の経営およびフランチャイズ店舗への経営指導等を行っています。各国の文化や食習慣に合わせた商品展開を進めています。

海外での直営店運営による飲食代金や、現地のフランチャイズ企業からのロイヤリティ、加盟金等が主な収益源です。運営はYOSHINOYA AMERICA,INC.や吉野家(中国)投資有限公司などが担っています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、ラーメン事業などを展開しています。牛丼、うどんに次ぐ第3の事業ドメインとして、国内外での店舗展開や開発・製造機能の活用を図っています。

各ブランドの飲食店運営による売上や、フランチャイズ加盟店からの収入を収益源としています。宝産業などのグループ会社が事業の運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が継続して増加しており、順調なトップラインの拡大が見られます。経常利益は特需等による一時的な変動があったものの、直近では80億円台で安定して推移しており、堅調な利益水準を維持しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 1,536億円 1,681億円 1,875億円 2,050億円 2,257億円
経常利益 156億円 87億円 86億円 80億円 88億円
利益率(%) 10.2% 5.2% 4.6% 3.9% 3.9%
当期利益(親会社株主帰属) 81億円 72億円 56億円 38億円 47億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から約207億円の増収となり、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率はわずかに低下したものの、変動費のコントロールによって営業利益率を維持し、着実な増益を達成しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 2,050億円 2,257億円
売上総利益 1,312億円 1,400億円
売上総利益率(%) 64.0% 62.0%
営業利益 73億円 81億円
営業利益率(%) 3.6% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、パート費が404億円(構成比31%)、地代家賃が162億円(同12%)、給料手当が155億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


すべてのセグメントで増収を記録しています。吉野家はコスト上昇の影響でわずかに減益となりましたが、はなまるや海外事業は客数増や販売施策の奏功により大幅な増益を達成し、全体の業績を牽引しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
吉野家 1,368億円 1,502億円 78億円 76億円 5.1%
はなまる 307億円 328億円 20億円 24億円 7.3%
海外 279億円 293億円 12億円 20億円 6.8%
その他 96億円 134億円 6億円 7億円 5.2%
調整額 -億円 -億円 -43億円 -46億円 -%
連結(合計) 2,050億円 2,257億円 73億円 81億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を用いて投資を行い、さらに有利子負債等の返済も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 133億円 147億円
投資CF -144億円 -101億円
財務CF -60億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


『For the People ~すべては人々のために~』を経営理念として掲げています。企業は社会のニーズを満たし、国や地域を超えた世界中の人々の幸せに貢献するために存在する公器であるとの認識のもと、事業活動を展開しています。

(2) 企業文化


理念を具体化するための事業活動指針として、「うまい、やすい、はやい」「客数増加」「オリジナリティ」「健全性」「人材重視」「挑戦と革新」という6つの価値観を重視しています。これらを実践することで、顧客や従業員などあらゆるステークホルダーの満足度向上と信頼構築を図っています。

(3) 経営計画・目標


グループ中期経営計画において「Your Smile, Our Value」という経営方針を掲げています。あらゆるステークホルダーの笑顔が価値の源泉であるという考えに基づき、最終年度である2029年度に向けて以下の目標を設定しています。

* 売上高3,000億円
* 営業利益150億円

(4) 成長戦略と重点施策


吉野家事業を主軸とした構造から転換し、はなまる事業やラーメン事業の成長を加速させる「事業ポートフォリオの変革」を推進しています。また、海外市場における新規出店や現地ニーズに合わせた商品開発の最適化、人材やITデジタル基盤への積極投資を通じて持続的な収益成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を中長期的な企業成長の原動力と捉え、性別や年齢、国籍を超えて多様な価値観を尊重する「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進しています。また、従業員の心身の健康を重視する「ウェルネス経営」やライフワークバランスの向上、キャリア開発支援を通じて、個々の成長と活躍を後押ししています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 47.9歳 18.4年 7,255,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 64.1%
男女賃金差異(全労働者) 96.5%
男女賃金差異(正規雇用) 95.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 99.9%


また、同社は「マテリアリティの指標及び目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(26.5%)、有給休暇取得率(66.4%)、従業員エンゲージメント(3.69点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全管理


飲食店および外販事業において、商品の安全性確保は極めて重要です。一貫した衛生管理を徹底していますが、集団食中毒などの衛生問題や表示ミス等による商品事故が発生した場合、ブランドイメージや社会的信用の失墜、損害賠償等により業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 消費者の嗜好の変化と競合激化


個人の消費動向や景気に影響を受けやすく、中食市場やデリバリービジネスの拡大など販売チャネルの多様化により競争が熾烈化しています。新業態の開発や商品設計の変更を進めていますが、さらなる競合激化により顧客層が流出した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 吉野家事業への依存


グループ全体の売上高において吉野家セグメントの占める割合が相対的に高くなっています。第3の中核事業の育成に注力しリスク分散を図っていますが、国内吉野家の業績低迷や原材料価格の高騰などが生じた場合、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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