吉野家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

吉野家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、牛丼の「吉野家」やうどんの「はなまる」等を展開する外食チェーン大手です。直近の業績は、既存店の好調や出店効果により売上高は増加しましたが、原材料価格や人件費の高騰が影響し、経常利益および当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社吉野家ホールディングス の有価証券報告書(第68期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 吉野家ホールディングスってどんな会社?


国内および海外において、牛丼の「吉野家」や讃岐うどんの「はなまる」などの飲食チェーンを展開しています。

(1) 会社概要


1958年に株式会社吉野家として設立され、1990年に日本証券業協会へ店頭登録、2000年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2004年に株式会社はなまるの株式を取得し、事業を拡大。2007年に持株会社体制へ移行し、現社名へ変更しました。2025年にはラーメン事業強化のためキラメキノ未来株式会社の株式を取得しています。

2025年2月28日現在、連結従業員数は3,246名、単体従業員数は355名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は日本カストディ銀行、第3位は従業員持株会や取引先持株会等で構成される吉翔会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 11.47%
日本カストディ銀行 3.78%
吉翔会 1.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は河村泰貴氏が務めています。社外取締役の比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河村 泰貴 代表取締役社長 1993年同社入社。はなまる代表取締役社長等を経て、2012年同社代表取締役社長に就任。2014年より吉野家代表取締役社長を兼務。
小 澤 典 裕 常務取締役 1992年大林組入社。西洋フード・コンパスグループ社長等を経て、2020年同社常務取締役グループ企画室長に就任。2025年よりグループ企画本部長等として現職。
成 瀨 哲 也 取締役 1988年同社入社。吉野家常務、はなまる社長等を経て、2014年同社取締役に就任。2023年よりアジア統括本部長として現職。
前 田 良 博 取締役 2001年はなまる入社。同社社長等を経て、2022年同社執行役員兼はなまる代表取締役社長に就任。2024年より同社取締役兼はなまる代表取締役社長として現職。


社外取締役は、藤川大策(シティグループ証券副社長執行役員)、曽和信子(日本アイ・ビー・エム執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「吉野家」「はなまる」「海外」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 吉野家


日本国内において牛丼等のファストフード店経営およびフランチャイズ店舗への経営指導等を行っています。主力商品である牛丼に加え、から揚げ商品や季節限定メニューなどを提供し、幅広い顧客層を獲得しています。

収益は、直営店における一般顧客からの飲食代金およびフランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入や食材卸売による売上等から構成されています。運営は主に株式会社吉野家が行っています。

(2) はなまる


日本国内においてセルフ式讃岐うどん等のファストフード店経営およびフランチャイズ店舗への経営指導等を行っています。「はなまるうどん」ブランドを中心に、低価格で高品質なうどんを提供しています。

収益は、店舗での飲食代金やフランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入等が主な柱です。運営は株式会社はなまるが行っています。

(3) 海外


米国、中国、アセアン地区等において、牛丼等のファストフード店経営およびフランチャイズ店舗への経営指導等を行っています。各地域の特性に合わせたメニュー展開や店舗運営を行っています。

収益は、海外店舗での飲食代金や現地のフランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入等です。運営はYOSHINOYA AMERICA,INC.や吉野家(中国)投資有限公司などの現地法人が行っています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、ラーメン事業やその他飲食事業等を行っています。ラーメン事業では「せたが屋」ブランドなどを展開しています。

収益は、各店舗での飲食代金等が中心です。運営は株式会社ウィズリンクや宝産業株式会社などのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は回復・増加傾向にあります。2021年2月期は感染症の影響等により赤字となりましたが、その後は黒字転換し、利益を確保しています。直近の2025年2月期は増収となったものの、コスト増により経常利益は減少しました。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 1,703億円 1,536億円 1,681億円 1,875億円 2,050億円
経常利益 -20億円 156億円 87億円 86億円 80億円
利益率(%) -1.2% 10.2% 5.2% 4.6% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -47億円 19億円 27億円 30億円 -17億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、2,000億円台に乗りました。一方、売上原価や販管費の増加により、営業利益および営業利益率は低下しています。増収効果よりもコスト上昇の影響が大きく、利益を圧迫する構造となっています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 1,875億円 2,050億円
売上総利益 1,211億円 1,312億円
売上総利益率(%) 64.6% 64.0%
営業利益 80億円 73億円
営業利益率(%) 4.3% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、パート費が379億円(構成比30.6%)、地代家賃が154億円(同12.4%)、給料手当が142億円(同11.5%)を占めています。人件費や店舗家賃が主なコスト要因です。

(3) セグメント収益


吉野家セグメントは既存店売上の伸長や店舗数増加により増収となりましたが、人件費等のコスト増で減益でした。はなまるセグメントは増収増益を達成しました。海外セグメントは為替の影響で増収となったものの、現地の経済状況やコスト増により大幅な減益となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
吉野家 1,255億円 1,368億円 80億円 78億円 5.7%
はなまる 291億円 307億円 17億円 20億円 6.5%
海外 271億円 279億円 23億円 12億円 4.4%
その他 59億円 96億円 3億円 6億円 6.6%
調整額 -億円 -億円 -43億円 -43億円 -
連結(合計) 1,875億円 2,050億円 80億円 73億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

吉野家ホールディングスは、将来の事業展開や経営基盤強化のための新規出店、既存店舗の改装、生産設備の増強などを主な資金需要としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益や減価償却費等により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得により支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入があったものの、長期借入金の返済や配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 201億円 133億円
投資CF -83億円 -144億円
財務CF -90億円 -60億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、国や地域を超えた世界中の人々のために企業活動を行い、すべては人々のためにという想いを込めた「For the People」を経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


経営理念を具現化するための事業活動指針として、6つの価値観「うまい、やすい、はやい」「客数増加」「オリジナリティ」「健全性」「人材重視」「挑戦と革新」を共有し、実践することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年2月期から2030年2月期までの5年間を期間とする新中期経営計画を策定しています。この計画では、「成長を伴う事業収益向上」と「資本効率の向上」を重要な課題と位置づけ、企業価値の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「新しいビジネスモデル」の構築を掲げ、既存の外食産業の枠を超える市場創造や価値提供を目指しています。「飲食業の再定義」に向け、グループ経営体制の見直しやグローバル展開の加速、ダイバーシティ推進を行います。また、「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードに、人材への投資、ウェルネス経営、DX推進による生産性向上に取り組みます。ラーメン事業はM&Aを活用し第3の事業ドメインへと育成します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ひと」による価値づくりを競争優位性の源泉と捉え、ダイバーシティ&インクルージョンの実践、ライフワークバランスの推進、人材育成・キャリア支援に注力しています。全ての社員を幹部候補とみなし、公平な教育機会や挑戦の場を提供するとともに、ウェルネス経営を通じて心身の健康維持を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 48.5歳 19.2年 7,385,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 95.9%
男女賃金差異(正規雇用) 85.3%
男女賃金差異(非正規) 100.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(21.6%)、有給休暇取得率(64.6%)、従業員エンゲージメント(3.69点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達および価格高騰に伴うリスク


食材等の原材料について、疾病、天候不順、自然災害、紛争等により安定供給が困難になる可能性があります。また、市場価格や為替変動による仕入価格の高騰がコスト増につながり、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 人材確保および労務関連


多くの店舗や工場で労働力を必要としており、賃金上昇や労働力不足により従業員の確保が困難になった場合、人件費の増加や営業への支障が生じる可能性があります。また、外国人労働者への依存や関連法令の改正によるコスト増もリスクとなります。

(3) 吉野家事業への依存


売上高の過半を吉野家セグメントが占めており、同事業への依存度が高い状態です。そのため、吉野家事業の業績低迷や環境変化がグループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 食品の安全管理


食中毒や異物混入、表示ミスなどの食品事故が発生した場合、ブランドイメージの低下や損害賠償等により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、品質保証室による一貫した衛生管理を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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