※本記事は、株式会社コックス の有価証券報告書(第52期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
コックス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
1. コックスってどんな会社?
イオングループに属するカジュアルファッション専門店チェーンです。「ikka」や「LBC」などのブランドを展開し、ショッピングセンターを中心に店舗運営を行っています。
■(1) 会社概要
1973年、ジャスコ(現イオン)の婦人衣料品部門が分離独立し、株式会社エミーズとして設立されました。1984年にコックスへ商号変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2010年に同じくイオングループの株式会社ブルーグラスを吸収合併し、現在の事業基盤を確立しました。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は288名、単体では286名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は純粋持株会社のイオン(67.77%)であり、同社はイオングループの専門店事業を担う企業群に属しています。第2位は四国・中国地方を地盤とする小売業のフジ、第3位は金融サービスを展開するイオンフィナンシャルサービスとなっており、グループおよび関連企業が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオン | 67.77% |
| フジ | 1.94% |
| イオンフィナンシャルサービス | 1.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長兼デジタル推進本部長は三宅英木氏です。社外取締役比率は約18%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三宅 英木 | 代表取締役社長兼デジタル推進本部長 | 丸紅入社後、フリーズインターナショナル取締役、サンエー・インターナショナル執行役員、オンワード樫山クリエイティブオフィサーなどを経て、2021年5月より現職。 |
| 山岡 良司 | 取締役販売・店舗開発管掌 | タカキュー入社後、メルス、ブルーグラスを経て、コックスにて店舗開発部長、営業本部長などを歴任。2022年3月より現職。 |
| 福崎 晴康 | 取締役商品・事業開発管掌 | コックス入社後、ikka事業部長、マーケティング部長、商品開発部長、商品本部長などを歴任。2022年3月より現職。 |
| 小俣 雅之 | 取締役 | ジャスコ(現イオン)入社後、ダイエー人事部長、イオンアセアン本社人事総務本部長、イオンタイランド取締役などを経て、2025年5月より現職。 |
| 三浦 隆司 | 取締役 | ジャスコ(現イオン)入社後、イオンリテール取締役、トップバリュコレクション社長などを歴任。現在はイオン専門店担当責任者、ジーフット取締役、メガスポーツ社長を兼務。 |
社外取締役は、若林泰(ヴィジオ代表取締役)、湯澤美和(AWA代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「衣料品小売事業」を展開しています。
■(1) 衣料品小売事業
「ikka」「LBC」等のブランドを中心に、メンズ・レディスのカジュアル衣料やファッション雑貨、ライフスタイルグッズを提供しています。主な顧客層はファミリーやカップル、ライフスタイルを重視する女性などです。全国のショッピングセンターやファッションビルに出店するほか、自社サイト「TOKYO DESIGN CHANNEL」やZOZOTOWN等の外部ECモールを通じた販売も行っています。
収益は、一般消費者への商品販売代金です。店舗販売およびEC販売による売上が主な収益源となります。運営は主に株式会社コックスが行っており、連結子会社のBLUE GRASS (SHANGHAI) CO.,LTD.も衣料品小売業を営んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は回復基調にあります。2022年2月期に落ち込んだ後、店舗網の再編やEC強化により売上高は増加傾向を示しています。利益面では、2022年2月期に損失を計上しましたが、その後は黒字転換し、経常利益および当期利益ともに安定した黒字を維持しています。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 163億円 | 133億円 | 149億円 | 149億円 | 153億円 |
| 経常利益 | -6億円 | -8億円 | 4億円 | 14億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | -3.6% | -6.3% | 2.8% | 9.4% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | -14億円 | 2億円 | 11億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約62%台で推移しており、高い水準を維持しています。営業利益も増益となっており、収益性は底堅い状況です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 149億円 | 153億円 |
| 売上総利益 | 93億円 | 96億円 |
| 売上総利益率(%) | 62.7% | 62.5% |
| 営業利益 | 12億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 8.3% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が32億円(構成比38%)、従業員給与及び賞与が24億円(同29%)、地代家賃が18億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ブランド別の売上動向を見ると、主力ブランドの「ikka」が増収となり全体を牽引しています。「LBC」は若干の減収となりましたが、「EC限定ブランド」は2桁成長を記録しており、EC強化の成果が現れています。なお、同社は単一セグメントのため、利益情報は記載していません。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| ikka | 130億円 | 134億円 |
| LBC | 15億円 | 15億円 |
| EC限定ブランド | 3億円 | 4億円 |
| その他 | 0.4億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 149億円 | 153億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
コックスは、営業活動によるキャッシュ・フローが堅調に推移し、資金を増加させています。営業活動では、利益創出に加え、仕入債務の増加などが資金増加に寄与しました。一方で、法人税等の支払い増や棚卸資産の増加が資金減少要因となりました。投資活動では、差入保証金の回収があったものの、有形固定資産の取得等により資金を使用しました。財務活動では、自己株式の取得により資金が減少しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 10億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | -0.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「もっと、こころ動く日々へ。コックスは、お客さまのファッションやライフスタイルを彩る、本質的なゆたかさを提供し続けます。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、すべてのスタッフが価値観を共有し、顧客起点の行動規範に基づいて事業活動を行っています。
■(2) 企業文化
同社は「Beautiful Life Innovator(新生活提案企業)」への進化を目指しています。変化する社会情勢に迅速に対応し、顧客から支持されるブランド・会社へと成長すること、そして「新生活提案力」を武器として変化と進化を続けることを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「Beautiful Life Innovator」企業への変革を目指す方針のもと、売上高営業利益率と売上高経常利益率を主な経営指標としています。2026年2月期においては、以下の数値目標を設定しています。
* 売上高営業利益率:8.23%
* 売上高経常利益率:8.61%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は『Beautiful Life Innovator(新生活提案企業)の深化』を掲げ、「店舗売上の拡大」「EC売上の拡大」「荒利率の維持・拡大」の3つを重点施策として推進しています。店舗では「ikka THE BEAUTIFUL LIFE GREEN STORE」へのリニューアルや接客効率化を進め、ECでは自社アプリの活用やインフルエンサーとの連携を強化しています。商品面では直貿易の推進や生産地のアセアンシフトにより原価率の維持を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、一人ひとりの成長が会社の財産になると捉え、能力拡大のための支援を行っています。また、年齢や性別、国籍に関わらず多様な人材が活躍できるよう、多様な雇用形態や仕事内容を提供し、働きやすく働きがいのある職場環境の整備を進めています。女性管理職やイクボスの育成、パートナー従業員の活躍評価なども推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 48.1歳 | 18.1年 | 4,974,000円 |
※平均年間給与には、給与及び賞与のほか、福利厚生費の一部(住宅手当、帰省手当、配転手当)を含めています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 40.8% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 104.2% |
※パートタイムや短時間勤務の女性比率が高いため賃金差異が発生していますが、役職手当等で是正を図っています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.66%)、エンゲージメントスコア・レーティング(46.3(CCC))などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) お客さまの嗜好の変化等による影響
衣料品やファッショングッズの販売は、景気変動による個人消費の動向や競合他社との競争、顧客の嗜好変化の影響を強く受けます。需要動向に合致した商品仕入や企画開発ができなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 天候及び災害による影響
取り扱う商品の多くは季節性が高く、猛暑や暖冬などの天候不順が販売動向に影響します。また、地震等の自然災害により、出店地域の商業施設や物流機能が被害を受け、営業活動が制約された場合、業績に悪影響が出る可能性があります。
■(3) イオングループ内出店の状況について
同社はイオングループの一員であり、全店舗の過半数がイオングループの商業施設内に出店しています。そのため、イオングループの業界における地位や集客力が変動した場合、同社の業績もその影響を受ける可能性があります。
■(4) 賃貸物件への依存による影響
店舗はディベロッパーから賃借しており、保証金や敷金を差し入れています。また、売上金をディベロッパーに預託するケースも多くあります。出店先の倒産や信用状態の悪化等により、これらの差入金や売上金の一部または全額が回収できなくなるリスクがあります。



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