※本記事は、ミニストップ株式会社 の有価証券報告書(第46期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミニストップってどんな会社?
イオングループの一員として、ファストフード加工販売を特徴とするコンビニエンスストアを運営する企業です。
■(1) 会社概要
1980年にジャスコ(現イオン)の100%子会社として設立され、同年7月に第1号店を開店しました。1993年に東証二部へ上場し、1996年には東証一部銘柄に指定されました。海外展開も積極的に進め、2009年に中国、2011年にベトナムでの事業を開始しました。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に移行しています。
2025年2月28日時点で、連結従業員数は1,527名、単体では657名です。筆頭株主は事業会社である親会社のイオンで、発行済株式の半数近くを保有しています。第2位は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はイオングループのアパレル事業会社であるコックスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオン | 48.71% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.99% |
| コックス | 2.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は堀田昌嗣氏が務めています。社外取締役比率は約27%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤本 明裕 | 取締役会長兼新規事業推進担当 | 1985年入社。商品本部長、中国担当などを経て2017年代表取締役社長に就任。2025年5月より現職。 |
| 堀田 昌嗣 | 代表取締役社長兼構造改革担当 | 1989年入社。管理本部長、海外事業担当などを歴任。2025年5月より現職。 |
| 仲澤 光晴 | 取締役ミニストップ事業担当 | 1995年入社。商品本部長、商品・デジタル担当などを経て2025年5月より現職。 |
| 西松 正人 | 取締役 | 1978年ジャスコ(現イオン)入社。イオンリテール副社長、イオン顧問などを経て2025年5月より現職。 |
社外取締役は、香川進吾(元富士通執行役員専務)、池側千絵(ストラットコンサルティング代表取締役)、榊枝誠(元ユーシーシーフードサービスシステムズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」および「海外事業」を展開しています。
■(1) 国内事業
国内事業では、フランチャイズチェーン方式の加盟店および直営店によるコンビニエンスストア「ミニストップ」の運営を行っています。また、連結子会社のネットワークサービスが国内店舗への物流業務を担っています。特徴的な店内加工ファストフードと、日用品などの物販を組み合わせたコンボストアモデルを展開しています。
収益は、加盟店からのフランチャイズ契約に基づくロイヤルティ収入や、直営店における一般消費者への商品販売収入から構成されています。運営は主にミニストップが行い、物流機能はネットワークサービスが担当しています。加盟店と本部が利益を分け合うパートナーシップ契約の推進にも取り組んでいます。
■(2) 海外事業
海外事業では、ベトナムにおいてコンビニエンスストア事業を展開しています。現地の消費動向に合わせた商品開発や売場づくりを行い、直営店およびフランチャイズ加盟店による店舗網を拡大しています。
収益は、ベトナムにおける店舗での商品販売収入や加盟店からの収入等です。運営は、連結子会社であるMINISTOP VIETNAM COMPANY LIMITEDが事業主体となり、同じく連結子会社のVINH KHANH CONSULTANCY CORPORATIONが持株会社として出資参画およびコンサルティングを行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は300億円前後で推移してきましたが、直近の2025年2月期は355億円となっています。利益面では、経常損益が赤字の期が多く、2023年2月期は一時的に当期純利益が黒字化しましたが、直近では再び損失を計上しています。全体として収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 304億円 | 282億円 | 306億円 | 264億円 | 355億円 |
| 経常利益 | -50億円 | -28億円 | -14億円 | 0.1億円 | -29億円 |
| 利益率(%) | -16.4% | -9.8% | -0.5% | 0.0% | -8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -56億円 | -32億円 | 98億円 | -2億円 | -71億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加していますが、営業損益および経常損益は悪化しています。売上総利益率は改善傾向にあるものの、販管費等の負担により営業損失が拡大しています。特に直近では大幅な最終赤字を計上しており、コスト構造の見直しや収益力の強化が求められる状況です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 264億円 | 355億円 |
| 売上総利益 | 61億円 | 81億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.1% | 22.8% |
| 営業利益 | -6億円 | -35億円 |
| 営業利益率(%) | -2.3% | -9.8% |
販売費及び一般管理費のうち、地代家賃が161億円(構成比36%)、従業員給与及び賞与が88億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業は、主力のコンビニエンスストア事業です。「ファストフード」と「コンビニエント」の価値を磨き上げる「Newコンボストアモデル」を推進し、店内加工ファストフードの既存店日販が前年比108.1%と好調に推移したこと等により増収となりました。
一方で、原材料価格の高騰の影響を受けたことに加え、おにぎりや菓子パンなどで価格訴求型の品揃えを拡充したことで売上総利益率が低下(前年同期比0.3%減)したことなどから、赤字幅が大きく拡大しました。
海外事業は、ベトナムにてコンビニエンスストア事業を展開しています。ホーチミン市での出店強化(期末182店舗)やフルーツドリンク等を提供するドリンクカウンターの設置が奏功し、チェーン全店売上高は前年同期比114.4%と増収を達成しました。
しかし、10月に移転した物流センターでトラブルが発生し、商品供給の遅れや不足が生じて既存店日販に悪影響を及ぼしたことなどから、こちらも損失が拡大しています。
| 区分 | 営業総収入(2024年2月期) | 営業総収入(2025年2月期) | 営業利益(2024年2月期) | 営業利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内事業 | 707.6億円 | 779.8億円 | -2.0億円 | -24.0億円 | -3.1% |
| 海外事業 | 83.0億円 | 95.0億円 | -4.1億円 | -10.9億円 | -11.5% |
| 連結(合計) | 790.6億円 | 874.8億円 | -6.1億円 | -34.9億円 | -4.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で資金を稼ぎ出し、その資金で投資を行いながら、借入金の返済も進めている「改善型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 19億円 |
| 投資CF | -78億円 | -5億円 |
| 財務CF | -8億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-18.8%で市場平均を下回っています。一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
イオングループの基本理念「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」をふまえ、「私たちは、「おいしさ」と「便利さ」で、笑顔あふれる社会を実現します。」というミッションを定めています。加盟店と本部は共に繁栄を目指す「事業の共同体」であるとし、新たなビジネスモデルの創造に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
「お客さま第一」を実践し、変化への対応と新しい時代の要請に応える姿勢を重視しています。また、パーパス経営の実践に向け、従業員の夢や成し得たいことと企業理念を結びつけることを目指しており、従業員一人ひとりを事業活動の源泉と捉える経営を進めています。
■(3) 経営計画・目標
最優先すべき経営目標として各加盟店の収益向上を掲げ、指標としては「1店当たりの売上総利益高」を設定しています。また、企業価値向上のため店舗投資の効率化に努め、自己資本利益率(ROE)の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
構造改革の断行と戦略的成長の推進を掲げています。国内では「Newコンボストアモデル」の確立による日販向上、加盟店との「パートナーシップ契約」の推進、デリバリーやECと店舗を融合させるOMO戦略を進めます。ベトナム事業ではMD政策の再設計と個店モデルの収益性向上を図りながら、直営多店舗化を進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人を会社の中核と捉え、従業員一人ひとりの仕事を通じた「夢」の探求と企業理念(ミッション)との結びつきを重視しています。経営指導改革やマネジメントシステム改革へ経営資源を集中し、人財採用・教育を推し進めています。自らの可能性や情熱を引き出し、エンゲージメントの高い組織づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 45.4歳 | 14.8年 | 6,137,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.1% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 82.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 93.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 小売業界における持続的な低迷のリスク
日本とベトナムの小売市場に収益を大きく依存しているため、両国の景気動向や消費動向の影響を受けやすい状況です。日本の人口構成の変化や個人消費の低迷が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、グループ内外での販路拡大やパートナーシップ契約による収益力強化を進めています。
■(2) 競争の激化に関するリスク
コンビニエンスストア業界だけでなく、ドラッグストアやスーパー、ファストフード店など異業種との競争が激化しています。他社が品質や価格で上回った場合、経営成績に影響が出る可能性があります。「Newコンボストアモデル」の確立により、ファストフードと便利さの両面で価値を高め、個店競争力の向上を図っています。
■(3) 食品の安全性に関するリスク
食中毒の発生や食品表示の誤りなどがあった場合、ブランドへの信頼失墜や売上減少につながる可能性があります。また、社会的な衛生問題が発生した場合も影響を受ける恐れがあります。外部機関による抜き打ち検査や製造工場への監査など、検査体制を充実させ、安全性の確保に努めています。



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