※本記事は、株式会社西松屋チェーンの有価証券報告書(第70期、自 2025年2月21日 至 2026年2月20日、2026年5月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 西松屋チェーンってどんな会社?
同社は、手ごろな価格でベビー・子供の生活関連用品を提供する全国チェーン展開の小売企業です。
■(1) 会社概要
1956年に「赤ちゃんの西松屋」を設立し、宮詣り衣装等の販売を開始しました。1997年に日本証券業協会へ店頭登録し、1999年に東京・大阪証券取引所市場第二部に上場、2001年に同市場第一部へ指定されました。2021年には公式オンラインストアを開設し、2025年には台湾に子会社を設立しています。
従業員数は連結で733名、単体で729名です。筆頭株主は資産管理等を行う友好エステートで、第2位は代表取締役会長の大村禎史氏、第3位はGOLDMAN SACHS INTERNATIONALとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 友好エステート | 16.07% |
| 大村 禎史 | 8.15% |
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL | 7.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は大村浩一氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大村 浩一 | 代表取締役社長 | 2010年みずほ銀行入行。2014年同社入社。経営企画室長、執行役員社長補佐室長兼商品監査部長などを経て、2020年8月より現職。 |
| 大村 禎史 | 代表取締役会長 | 1979年山陽特殊製鋼入社。1985年同社入社。1996年代表取締役副社長、2000年代表取締役社長を経て、2020年8月より現職。 |
| 坂本 和德 | 取締役副社長執行役員店舗運営本部長兼IT推進本部長 | 1983年松下電器産業(現パナソニックホールディングス)入社。2014年同社入社。取締役専務執行役員などを経て、2023年9月より現職。 |
| 石井 義人 | 取締役常務執行役員店舗開発本部長兼東日本事務所長 | 1984年同社入社。店舗運営部長、執行役員西日本店舗開発事業部長などを経て、2024年3月より現職。 |
| 尼子 文章 | 取締役執行役員経理本部長兼財務室長 | 2007年新日本監査法人入所。2013年同社入社。経理部長、執行役員経理本部長兼財務室長などを経て、2025年5月より現職。 |
社外取締役は、菅尾英文(菅尾・岩見法律事務所所長)、濱田聡(濱田聡経営会計事務所所長)、森かおる(サン税理士法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、ベビー・子供の生活関連用品の販売事業を展開しています。
ベビー・子供の生活関連用品のチェーンストア展開を行い、子供衣料、育児・服飾雑貨、ベビー衣料・マタニティ用品などを一般顧客に販売しています。ワンフロアに売場を設け、買い回りしやすい標準化された店舗を全国展開している点が特徴です。
収益源は、実店舗および公式オンラインストアでの一般顧客への商品販売です。同社が主体となってプライベートブランド「ELFINDOLL」や「SmartAngel」を開発・提供しており、台湾では台灣西松屋による出店も開始しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は新規出店の加速やインターネット販売の好調により、直近5年間で継続的な増収傾向を維持しています。一方、経常利益および当期純利益については、各種コストの増加や先行投資の影響もあり、横ばいから減益の推移となっており、直近の経常利益率は5.5%となっています。
| 項目 | 第66期 | 第67期 | 第68期 | 第69期 | 第70期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,630億円 | 1,695億円 | 1,772億円 | 1,860億円 | 1,934億円 |
| 経常利益 | 129億円 | 116億円 | 126億円 | 127億円 | 106億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 6.8% | 7.1% | 6.8% | 5.5% |
| 当期純利益 | 85億円 | 76億円 | 82億円 | 82億円 | 70億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益は増加しているものの、原価高騰等の影響で売上総利益率は33.5%へと低下しています。また、出店強化やシステム投資に伴う販売費及び一般管理費の増加により、営業利益および営業利益率は前年度を下回る結果となりました。
| 項目 | 第69期 | 第70期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,860億円 | 1,934億円 |
| 売上総利益 | 640億円 | 647億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.4% | 33.5% |
| 営業利益 | 122億円 | 99億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、地代家賃が175億円(構成比32%)、従業員給料及び賞与が152億円(同28%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はベビー・子供の生活関連用品の販売事業の単一セグメントですが、主要な品目別では育児・服飾雑貨が売上の過半を占め、次いで子供衣料が高い割合を占めています。公式オンラインストアの利便性向上や実店舗の全国的な拡充が各品目の売上を下支えしています。
| 区分 | 売上(第69期) | 売上(第70期) |
|---|---|---|
| 子供衣料 | - | 628億円 |
| 育児・服飾雑貨 | - | 1,127億円 |
| ベビー衣料・マタニティ用品 | - | 178億円 |
| その他 | - | 1億円 |
| 連結(合計) | 1,860億円 | 1,934億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業です。
| 項目 | 第69期 | 第70期 |
|---|---|---|
| 営業CF | - | 106億円 |
| 投資CF | - | -25億円 |
| 財務CF | - | -27億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「日常のくらし用品を、気軽に、自由に、そしてお客様に満足される品質の商品を、どこよりも低価格で最も便利に提供することによって、社会生活の向上に寄与する」ことを経営の基本方針として掲げています。育児や出産、成長過程に必要な商品を手ごろな価格で提供し、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、チェーンストア経営の技術体系で理論武装した「“お客様の暮らしを守る”テクノクラート集団」であることを重視しています。お客様の立場に立って「低価格」「安心・安全」「買い物や商品を使う楽しさ」を追求し、通路が広く標準化された売場づくりによるショートタイムショッピングの実現に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は国内外への標準化された店舗の積極的な出店による売上の拡大と、効率的な経営による収益性の向上を目指し、売上高と経常利益を重視する経営目標を掲げています。具体的な中期目標は以下の通りです。
* 2031年2月期:売上高2,700億円
* 2031年2月期:経常利益230億円
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、首都圏などの人口集中地域への出店加速や、売場面積の広い店舗へのリプレースによる収益性改善を図ります。商品面ではプライベートブランド商品の開発と小学校高学年向け商品の拡充に注力し、海外では台湾でのチェーン展開や卸売り先の開拓を進めることで持続的な事業拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、性別や国籍を問わない採用や他業種出身者の中途採用を通じて、人材の多様性確保に努めています。また、教育配転計画に基づくジョブローテーションや社内外の研修により従業員のスキルを強化し、部下や数値責任を持つ管理的な立場に女性を登用するなど、誰もが活躍しやすい環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第70期 | 41.2歳 | 14.8年 | 6,809,784円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.9% |
| 男性育児休業取得率 | 76.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 42.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 54.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した従業員に占める女性従業員の割合(38.9%)、女性の育児休業取得率(97.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 天候不順による販売数量への影響
同社の主力商品であるベビー・子供衣料は気温の変化に敏感であり、天候不順や異常気象が発生した場合、販売数量の計画に差異が生じる可能性があります。これに対し、仕入計画と在庫管理の徹底による過剰在庫の抑制に努めています。
■(2) プライベートブランド等への為替変動の影響
販売商品の多くを海外で製造しているため、為替変動が輸入価格に影響を及ぼします。特に独自に開発輸入している製品については直接的な影響を受けるため、為替予約によるリスクヘッジを行っていますが、急激な変動が続いた場合は業績に影響する可能性があります。
■(3) 大規模小売店舗立地法等による出店計画の変更リスク
ショッピングセンターへの出店を推進する中で、大規模小売店舗立地法等による規制を受け、出店計画に大きな変更が生じる可能性があります。また、厳格な出店基準に合致する物件が不足した場合、出店予定数を変更するリスクが存在します。
■(4) 少子化・出生率低下に伴う市場縮小リスク
国内の新生児の出生率が低下傾向にある中、市場占有率の拡大とさらなる出生率の低下が重なった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、従来の品揃えに加え、小学校高学年向け商品の拡充や店舗の大型化に取り組んでいます。



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