#記事タイトル:スギホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社スギホールディングス の有価証券報告書(第43期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スギホールディングスってどんな会社?
「スギ薬局」を中心とした調剤併設型ドラッグストアのチェーン展開を行う持株会社です。
■(1) 会社概要
1976年に愛知県西尾市でスギ薬局を創業し、1982年に株式会社スギ薬局を設立しました。2001年に東証・名証の市場第一部に同時上場を果たし、2008年には持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しました。2024年9月には調剤薬局事業を展開するI&Hを子会社化し、事業規模を拡大しています。
連結従業員数は11,820名、単体従業員数は44名です。筆頭株主は創業家の資産管理会社であるスギ商事で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も創業家の資産管理会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スギ商事 | 37.43% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.29% |
| スギアセット | 5.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は杉浦克典氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉浦 克典 | 代表取締役社長 | 2006年入社。スギ薬局常務、スギスマイル社長、スギ薬局社長等を経て2021年より現職。 |
| 杉浦 伸哉 | 代表取締役副社長 | 2004年入社。スギ薬局常務、スギメディカル社長等を経て2025年より現職。 |
| 榊原 栄一 | 取締役会長 | 1986年入社。スギ薬局社長、同社会長、同社社長等を経て2021年より現職。 |
社外取締役は、神野重行(三重産業代表取締役)、内田士郎(元SAPジャパン会長)、高石英明(元三菱商事建材常務)、大浦佳世理(元グローバルヘルス技術振興基金CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ドラッグストア・調剤事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 調剤併設型ドラッグストア事業
医薬品・健康食品・化粧品・日用品の販売とともに、処方せん調剤や在宅医療に取り組む「スギ薬局」や「ジャパン」等の店舗を展開しています。地域のかかりつけ薬局として、一般消費者および患者を主な顧客としています。
商品販売代金および調剤報酬を受け取ることが主な収益源です。運営は主にスギ薬局や、2024年にグループ入りしたI&Hが行っています。
■(2) 医療・ヘルスケア・その他事業
訪問看護事業、医療機関の開業支援事業、人材派遣事業、海外への商品供給・貿易事業などを展開しています。医療・ヘルスケアに関連する多角的なサービスを提供しています。
サービス提供に伴う利用料や手数料、海外への商品輸出による売上などが収益源となります。運営はスギメディカル、スギトレーディング、スギナーシングケアなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加傾向にあり、特に直近の2025年2月期は前期比で大幅な増収を達成しました。経常利益も安定して推移しており、400億円台に乗せています。利益率は4%台後半から5%台で安定しており、事業規模の拡大とともに利益額も伸長しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,029億円 | 6,255億円 | 6,676億円 | 7,445億円 | 8,780億円 |
| 経常利益 | 353億円 | 331億円 | 324億円 | 380億円 | 420億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 5.3% | 4.9% | 5.1% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 154億円 | 211億円 | 190億円 | 194億円 | 182億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益率は前期より若干低下したものの、営業利益額自体は増加しており、事業拡大に伴うコスト増を吸収して利益を確保しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,445億円 | 8,780億円 |
| 売上総利益 | 2,288億円 | 2,750億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.7% | 31.3% |
| 営業利益 | 366億円 | 426億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が925億円(構成比40%)、賃借料が440億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての事業領域で増収となりました。特に調剤事業は、処方せん応需枚数の増加に加え、I&Hの子会社化による寄与もあり、売上が大幅に伸長しました。物販事業においても、新規出店やインバウンド需要の取り込みにより売上が増加しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| 物販 | 5,815億円 | 6,485億円 |
| 調剤 | 1,588億円 | 2,189億円 |
| その他 | 42億円 | 107億円 |
| 連結(合計) | 7,445億円 | 8,780億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、財務活動によるキャッシュ・フローもプラスとなりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスであり、これは営業で得た資金と調達した資金を用いて積極的な投資を行っていることを示す「積極型」のパターンです。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 390億円 | 369億円 |
| 投資CF | -310億円 | -333億円 |
| 財務CF | -53億円 | 116億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「私たちは、まごころを込めて親切に応対し、地域社会に貢献します。」「私たちは、社員一人ひとりの幸福、お客様一人ひとりの幸福、そして、あらゆる人々の幸福を願い、笑顔を増やします。」という経営理念を掲げています。社会から預かった資産・資源を有効活用し、社会に益を提供し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念に基づき、「親切な行動」「地域社会への貢献」「社員の幸福・笑顔」を重視する文化があります。トータルヘルスケア戦略の実践を通じて、健康で元気な人を増やし、活力ある社会を実現するために、ステークホルダーと協働し、地域社会の持続可能な発展に貢献する企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2022年度から5か年の中期経営計画を推進していましたが、I&Hの子会社化を受け、目標を前倒し修正しました。修正後の中期経営計画では、2025年度に売上高1兆円の達成を目指しています。
* 2025年度売上高:1兆円
■(4) 成長戦略と重点施策
調剤領域では、スギ薬局とI&Hの合併によるシナジー早期創出と高度な専門性を要する処方せん応需強化を図ります。物販領域では、インバウンド需要の取り込み強化、アプリを活用した製配販連携による原価低減、店舗作業のDX化による生産性向上を重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員が最も大切な財産」とし、一人ひとりの働きがいを高めることを重視しています。ジョブ型人事制度への転換、能力開発研修の充実、ダイバーシティ推進などを柱に人的資本経営を推進しています。また、健康経営の推進や安全な職場づくりにも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 46.0歳 | 8.5年 | 8,814,491円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.9% |
| 男性育児休業取得率 | 68.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 99.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業復帰率(女性91.0%、男性96.8%)、障がいがある方の雇用率(3.07%)、職場の悩み何でも相談ダイヤル入電回数(1,508件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制等について
一般用医薬品の販売規制緩和により他業種の新規参入が進んだ場合や、調剤報酬および薬価基準が引き下げられた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、専門職種の育成、EC等の新チャネル検討、高度薬学管理機能の整備などを進めています。
■(2) 調剤過誤の防止
医療用医薬品を取り扱う調剤業務において、過誤による医療事故が発生した場合、社会的信用を損ない業績に影響する可能性があります。薬剤師の研修、マニュアル遵守、鑑査システムの導入徹底、リスク委員会による管理体制構築などで防止に努めています。
■(3) 地政学的リスクへの対応
国際情勢の変化によるエネルギー・原材料価格の高騰や、希少資源の供給不足が設備導入・出店の遅延を引き起こし、業績に影響を与える可能性があります。ローコスト化、適切な在庫確保、調達先の多様化などでリスク分散を図っています。



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