スギホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スギホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スギホールディングスは東証プライムおよび名証プレミアに上場し、調剤併設型ドラッグストアや訪問看護などのトータルヘルスケア事業を展開しています。直近5年間の業績は、店舗拡大や処方せん応需の増加により売上高が順調に成長を続け、当期は増収増益を達成しました。地域医療に根ざした経営を推進しています。


※本記事は、スギホールディングス株式会社の有価証券報告書(第44期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スギホールディングスってどんな会社?


調剤併設型ドラッグストアを中心に、医療やヘルスケア事業を全国展開するトータルヘルスケア企業です。

(1) 会社概要


1976年、愛知県西尾市にスギ薬局を創業しました。2001年に東京・名古屋証券取引所の市場第一部に同時上場を果たしました。2008年に持株会社体制へ移行し、現在の社名に変更しています。その後も、2023年の薬日本堂の完全子会社化や、直近のI&Hの吸収合併など、積極的なM&Aにより事業を拡大しています。

現在、従業員数は連結で13,417名、単体で147名体制です。筆頭株主は同社役員が代表を務める資産管理会社のスギ商事で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位も関連資産管理会社のスギアセットとなっており、安定した資本基盤を有しています。

氏名 持株比率
スギ商事 37.42%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.55%
スギアセット 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は杉浦克典氏が務めています。取締役7名のうち、4名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
杉浦克典 代表取締役社長 2006年同社入社。スギ薬局常務取締役などを経て、2017年よりスギ薬局代表取締役社長。2021年より現職。
榊原栄一 取締役会長 1986年同社入社。スギ薬局代表取締役社長などを経て、2017年に同社代表取締役社長に就任。2021年より現職。
杉浦伸哉 代表取締役副社長 2004年同社入社。スギメディカル代表取締役社長、I&H代表取締役社長などを歴任。2025年より現職。


社外取締役は、神野重行(名鉄百貨店元代表取締役社長)、内田士郎(SAPジャパン元代表取締役会長)、高石英明(アイ・ティ・フロンティア元代表取締役副社長)、大浦佳世理(ラボコープ・ディベロップメント・ジャパン元職務執行者ジェネラルマネージャー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ドラッグストア・調剤事業」の単一セグメントですが、事業ごとの収益区分に応じて展開しています。

(1) ドラッグストア(物販)


ヘルスケア、ビューティ、ホーム、フーズなど幅広い商品を販売し、地域の生活に密着した利便性の高い店舗を展開しています。一般の顧客に対して、健康食品や化粧品、日用品、食品などの商品を提供し、健康維持や予防をサポートしています。

収益モデルは、来店した顧客に対する商品の直接販売による売上です。運営は主にスギ薬局が行っており、購買データに基づいたアプリクーポンの配信など、デジタルを活用して顧客一人ひとりに最適な販促施策を実施しています。

(2) 調剤


高度な専門性を要する処方せん応需や、地域の医療関係者と連携した在宅患者向けの訪問調剤サービスを提供しています。かかりつけ薬局として全国に展開し、患者への服薬指導や服薬情報の一元的・継続的な把握を行っています。

収益源は、健康保険法等に基づく医療機関からの処方せんに応じた調剤技術料や薬剤料です。運営は主にスギ薬局が行っており、調剤アプリを活用した業務のデジタルトランスフォーメーションを推進し、生産性向上と対人業務の充実を図っています。

(3) その他


ドラッグストアや調剤事業に付随する各種サービスや、海外向けの貿易事業などを展開しています。医療・ヘルスケアに関わる事業のほか、日本のドラッグストア商材を海外へ輸出する取り組みなども含まれます。

収益源は、訪問看護等のサービス提供料や、海外取引先への卸売売上などです。運営は、訪問看護事業等を担うスギメディカルや、海外向け貿易事業を行うSトレーディングなどがそれぞれの専門領域において事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は、継続的な新規出店やM&A、処方せん応需の増加により右肩上がりで成長し、当期は1兆円を突破しました。経常利益も増益基調にあり、当期は500億円を超え過去最高水準となっています。利益率は概ね5%前後で安定して推移しており、堅実な成長を続けています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 6,255億円 6,676億円 7,445億円 8,780億円 10,103億円
経常利益 331億円 324億円 380億円 420億円 501億円
利益率(%) 5.3% 4.9% 5.1% 4.8% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 211億円 190億円 194億円 182億円 141億円

(2) 損益計算書


増収に伴い売上総利益も順調に拡大しています。アプリを活用した原価低減や、事業規模拡大による調剤部門の売上構成比上昇が寄与し、売上総利益率は31.8%に向上しました。それに伴い営業利益も増加し、安定した利益構造を構築しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 8,780億円 10,103億円
売上総利益 2,750億円 3,212億円
売上総利益率(%) 31.3% 31.8%
営業利益 426億円 486億円
営業利益率(%) 4.9% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が1,124億円(構成比41.2%)、賃借料が490億円(同18.0%)を占めています。また、売上原価は6,891億円で、売上高に対する構成比は68.2%となっています。

(3) セグメント収益


個人消費の底堅い動きや選別消費の強まりを受け、ドラッグストア事業の売上が堅調に推移しました。また、調剤領域では高齢化の進展に伴う処方せん応需枚数の伸長や、M&Aによる事業拡大が大きく寄与し、全部門で増収を達成しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
ドラッグストア(物販) 6,442億円 6,852億円
調剤 2,190億円 3,073億円
その他 148億円 178億円
連結(合計) 8,780億円 10,103億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で利益を出し、その資金と借入によって積極的な投資を行う状態(積極型)となっています。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 369億円 868億円
投資CF -333億円 -696億円
財務CF 116億円 412億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、まごころを込めて親切に応対し、地域社会に貢献します。」「私たちは、社員一人ひとりの幸福(しあわせ)、お客様一人ひとりの幸福(しあわせ)、そして、あらゆる人々の幸福(しあわせ)を願い、笑顔を増やします。」という経営理念を掲げています。社会から預かった資源を有効活用し、利益を還元し続けることで社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「コンプライアンスマニュアル」や「コンプライアンス・災害対策ポケットBOOK」を従業員に携帯させ、一人ひとりの行動規範としての順守を徹底しています。また、「社員が最も大切な財産」という考えに基づき、「社員一人ひとりの働きがいの向上」と「個々の力を引き出すことによる目標達成」を重要視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年2月期を初年度とする新たな5か年の中期経営計画を策定し、事業戦略と財務戦略の両輪で企業価値向上を実現することを目指しています。最終年度である2031年2月期において、以下の数値目標(KPI)を掲げています。

* 売上高1.6兆円以上(年平均成長率10.0%以上)
* 営業利益率5.5%以上
* EBITDA売上比率7.2%以上
* ROE15%以上
* ネット有利子負債/EBITDA倍率3.0倍以下
* ネットD/Eレシオ0.6倍以下

(4) 成長戦略と重点施策


同社はドラッグストア領域において、アプリクーポンの最適化配信や本部DXを推進し、売上拡大と生産性向上を図ります。調剤領域では処方せん応需や訪問調剤を強化するとともに、対物業務のDX化を進めて対人業務を充実させます。また、M&Aや提携によるシナジー効果の早期創出により、グループ統合価値の最大化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は経営戦略と融合した人財戦略を推進し、従業員の働きがいと成長を伸ばすことで安心につながる環境づくりを行っています。ジョブ型人事制度の導入や多様な働き方を支援する制度の拡充、専門教育の充実を図ることで、優秀な専門人材の確保と育成に注力し、従業員エンゲージメントの向上と定着率の改善に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東証プライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 44.5歳 10.9年 8,277,511円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.0%
男性育児休業取得率 63.7%
男女賃金差異(全労働者) 64.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 116.9%


※提出会社は公表義務の対象ではないため、連結子会社(スギ薬局)の数値を記載しています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(30.0%)、育児休業復帰率(女性92.4%、男性99.3%)、障がいがある方の雇用率(3.21%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) M&Aに伴うのれんの減損


同社グループは戦略的なM&Aを通じて事業規模の拡大を推進しています。買収後の経営環境の変化等により計画通りの収益が得られない場合、子会社株式の評価損やのれんに係る減損損失が発生し、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対策として、デューデリジェンスの確実な実施や定期的なモニタリング体制を強化しています。

(2) サイバー攻撃等による顧客および調剤情報の漏洩


同社グループが保有する情報資産に対し、外部からの不正アクセスやコンピューターウイルスによる攻撃、従業員等の関係者による情報の漏洩が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、情報セキュリティ委員会を設置し、グループ全体での情報収集・管理体制の強化やリスク分析・対策を講じています。

(3) 薬価基準および調剤報酬の改定


同社グループの調剤売上は薬価基準および調剤報酬の点数をもとに算出されています。薬価の引き下げや算定要件の厳格化など不利な改定が行われた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として「患者のための薬局ビジョン」に従い、服薬情報の一元的把握や24時間・在宅対応、医療機関との連携などを進めています。

(4) 薬剤師等専門人財の確保および人件費の高騰


同社の成長は薬剤師や登録販売者などの専門知識を有する人材に依存しています。労働人口の減少や採用競争の激化により人材確保が計画通りに進まない場合、出店計画の遅延やサービス低下を招くリスクがあります。ジョブ型人事制度の導入や多様な働き方の支援などにより、従業員エンゲージメントと定着率の向上に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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