※本記事は、株式会社ドトール・日レスホールディングス の有価証券報告書(第18期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ドトール・日レスホールディングスってどんな会社?
同グループは、コーヒーチェーン「ドトール」とレストラン「五右衛門」などを展開する外食企業グループです。
■(1) 会社概要
1962年に有限会社ドトールコーヒーが設立され、コーヒー焙煎卸売を開始しました。1973年には日本レストランシステムの前身企業が設立され、レストラン事業を開始しました。両社は2007年10月に株式移転により共同持株会社である同社を設立し、経営統合を行いました。現在は「星乃珈琲店」などの新業態開発や海外展開も進めています。
同グループ(連結)の従業員数は2,767名、同社(単体)は23名です。筆頭株主は創業者の大林 豁史氏で、第2位は資産管理会社と思われる株式会社マダム・ヒロ、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大林 豁史 | 15.50% |
| マダム・ヒロ | 8.51% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は星野 正則氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大林 豁史 | 代表取締役 会長 | 1973年にボルト・ジャパン設立、日本レストランシステム社長・会長を経て、2016年より現職。 |
| 星野 正則 | 代表取締役 社長 | 1983年にドトールコーヒー入社、同社社長等を経て、2008年より現職。 |
| 竹林 基哉 | 常務取締役 | 1997年にドトールコーヒー入社、同社専務等を兼務し、2018年より現職。 |
| 合田 知代 | 取締役 | 1994年に日本レストランシステム入社、D&Nコンフェクショナリー社長等を兼務し、2016年より現職。 |
| 関根 一博 | 取締役 | 2007年にドトールコーヒー入社、同社管理統括本部長等を兼務し、2018年より現職。 |
| 榎 一繁 | 取締役 | 1995年にドトールコーヒー入社、同社取締役商品本部長等を兼務し、2023年より現職。 |
| 宮島 忠 | 取締役 | 1993年に日本レストランシステム入社、同社専務等を兼務し、2024年より現職。 |
社外取締役は、岩田 明子(フリージャーナリスト)、河野 雅治(元駐イタリア特命全権大使)、浅井 廣志(元日本貨物鉄道専務取締役)、松本 省藏(元環境省大臣官房長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本レストランシステムグループ」、「ドトールコーヒーグループ」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本レストランシステムグループ
「星乃珈琲店」や「洋麺屋五右衛門」をはじめとしたレストランチェーンを展開しています。顧客は一般消費者であり、店舗での飲食サービスを提供しています。また、青果物や食肉の仕入、ソースやハム等の製造加工、物流、店舗設計・メンテナンス機能もグループ内に保有しています。
収益は主に店舗利用者からの飲食代金です。運営は主に日本レストランシステムが担い、関連子会社が仕入・製造・物流等の機能を分担しています。グループ全体でのノウハウ共有と垂直統合による効率化を図っています。
■(2) ドトールコーヒーグループ
「ドトールコーヒーショップ」や「エクセルシオール カフェ」などのコーヒーチェーンを経営しています。コーヒー豆の仕入・焙煎加工から、直営店およびフランチャイズ店での販売を行っています。また、コンビニエンスストア等へのコーヒー製品の卸売も展開しています。
収益は、直営店での飲食・物販代金、フランチャイズ加盟店への商品卸売およびロイヤリティ収入、製品販売による代金です。運営は主にドトールコーヒーが行い、関連会社が店舗運営やコーヒーマシン販売等を行っています。
■(3) その他
洋菓子の製造卸、パンの製造販売、高級コーヒー豆・紅茶の輸入販売などを行っています。また、シンガポール、台湾、韓国などの海外市場において直営店運営やフランチャイズ展開を進めています。
収益は、製品の販売代金や海外店舗での飲食代金等です。運営はD&Nコンフェクショナリー(洋菓子)、サンメリー(パン)、プレミアムコーヒー&ティー(輸入販売)、D&Nインターナショナル(海外統括)などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に回復・成長しており、特に直近2期は増収傾向が顕著です。経常利益もV字回復を果たし、利益率も改善傾向にあります。コロナ禍の影響からの回復に加え、新規出店や商品力強化などの施策が奏功していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 961億円 | 1,094億円 | 1,269億円 | 1,406億円 | 1,488億円 |
| 経常利益 | -42億円 | -15億円 | 35億円 | 77億円 | 96億円 |
| 利益率(%) | -4.3% | -1.4% | 2.7% | 5.5% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 9億円 | 12億円 | 16億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も改善しており、収益性が高まっています。原材料費や人件費の上昇圧力がある中でも、増収効果とコストコントロールにより利益を確保している様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,406億円 | 1,488億円 |
| 売上総利益 | 842億円 | 896億円 |
| 売上総利益率(%) | 59.9% | 60.2% |
| 営業利益 | 73億円 | 96億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 6.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が294億円(構成比37%)、その他が274億円(同34%)、賃借料が175億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに増収増益を達成しています。特に日本レストランシステムグループは利益率が大きく改善しており、業績を牽引しています。ドトールコーヒーグループも売上規模が大きく、安定した収益基盤となっています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本レストランシステムグループ | 502億円 | 537億円 | 29億円 | 43億円 | 8.1% |
| ドトールコーヒーグループ | 835億円 | 884億円 | 35億円 | 43億円 | 4.9% |
| その他 | 70億円 | 67億円 | 11億円 | 11億円 | 16.8% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -1億円 | -2億円 | - |
| 連結(合計) | 1,406億円 | 1,488億円 | 73億円 | 96億円 | 6.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ドトール・日レスホールディングスは、営業活動で得た資金を基盤に、店舗展開への投資と株主還元を両立させています。
同社は、本業であるコーヒー事業やレストラン事業の拡大により、営業活動で潤沢な資金を生み出しています。一方で、新規出店や既存店の改装といった投資活動にも積極的に資金を投じており、事業成長を支えています。また、株主への利益還元として配当金の支払いも行っています。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 118億円 | 124億円 |
| 投資CF | -49億円 | -62億円 |
| 財務CF | -34億円 | -29億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「業態開発」「商品開発」「店舗開発」等により「飲」と「食」において新たな食文化を創造することを基本方針としています。激しく変化する経営環境に柔軟に対応することで日本の外食業界をリードし、「外食産業における日本一のエクセレント・リーディングカンパニー」の地位確立を目指しています。
■(2) 企業文化
お客様、取引先、株主、従業員といった全てのステークホルダーに満足してもらい、食文化の創造と紹介を通じて環境・社会課題の解決と持続可能な社会の構築に貢献することを基本理念としています。また、多様化するお客様の期待に応える商品とサービスを提供し、地域社会に愛されることでブランド価値を向上させることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、安定的な売上および利益の成長を達成しながら、グループ全体での企業価値の最大化を目指しています。具体的な経営指標の目標として、「売上高経常利益率」の成長を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
高収益と高成長を兼ね備えた企業を目指し、既存事業の再強化や効率化の徹底、新規出店に加え、グループシナジーの創出やM&Aによる事業拡大を推進しています。特に成長機会が高いアジア市場を中心としたグローバル展開を加速させるとともに、ガバナンス強化にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念を体現できる人材の育成を重視し、特にコーヒー関連事業では「ドトール・日レスコーヒーアカデミー」を通じて社員やパートナーのスキル向上を図っています。また、地域限定社員や時短勤務など柔軟な働き方を導入し、多様な人材が安心して働ける環境を整備することで、エンゲージメント向上と人材確保を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 41.2歳 | 8.4年 | 5,781,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.3% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 100.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、コーヒー研修受講率(15.3%)、食材廃棄率(0.08%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コーヒー生豆価格等の高騰
主要商品であるコーヒー生豆は、国際相場や為替の影響を強く受けます。同社は先物買契約や為替予約等でリスクヘッジを行っていますが、相場の急激な変動は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食品衛生と法的規制
飲食店経営において、食中毒事故の発生や食品衛生法の規制強化は重大なリスク要因です。万一の事故発生による営業停止処分や、法規制の変更対応は、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 大規模自然災害・感染症の影響
出店が集中する首都圏等での大規模災害や、新たな感染症の拡大は、店舗営業の停止やサプライチェーンの寸断を引き起こし、正常な運営が困難になることで業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 店舗賃借物件への差入保証金
店舗の多くは賃借物件であり、多額の保証金等を差し入れています。貸主の倒産等によりこれらが回収不能となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は与信管理や情報収集によりリスク低減を図っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。