※本記事は、ドトール・日レスホールディングスの有価証券報告書(第19期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ドトール・日レスホールディングスってどんな会社?
同社は、コーヒーチェーンや多業態レストランの運営、食料品販売などを幅広く手がける外食企業グループです。
■(1) 会社概要
1962年4月に設立された有限会社ドトールコーヒーと、1973年設立のショウサンレストラン企画(後の日本レストランシステム)が同社グループの起源です。両社はそれぞれ東証一部に上場した後、2007年に共同株式移転によって持株会社であるドトール・日レスホールディングスを設立し、経営統合を果たしました。2009年にはベーカリー事業のサンメリーを子会社化し、事業領域を拡大しています。
現在の同社グループは、連結で2,892名、単体で22名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の大林豁史氏であり、第2位は法人のマダム・ヒロ、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大林 豁史 | 15.24% |
| マダム・ヒロ | 8.88% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は星野正則氏が務めており、社外取締役の比率は36.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 星野 正則 | 代表取締役 社長 | 1983年ドトールコーヒー入社。同社取締役副社長などを経て、2008年より現職。 |
| 大林 豁史 | 代表取締役 会長 | 日本レストランシステム設立代表取締役社長等を経て、2016年より現職。 |
| 竹林 基哉 | 常務取締役 | 1997年ドトールコーヒー入社。同社常務取締役などを経て、2018年より現職。 |
| 合田 知代 | 取締役 | 1994年日本レストランシステム入社。サンメリー代表取締役社長などを経て、2016年より現職。 |
| 関根 一博 | 取締役 | 2007年ドトールコーヒー入社。同社管理本部長などを経て、2018年より現職。 |
| 榎 一繁 | 取締役 | 1995年ドトールコーヒー入社。同社取締役商品本部長などを経て、2023年より現職。 |
| 宮島 忠 | 取締役 | 1993年日本レストランシステム入社。同社専務取締役などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、岩田明子(元日本放送協会解説主幹)、河野雅治(元駐イタリア特命全権大使)、浅井廣志(元日本フレートライナー代表取締役社長)、松本省藏(元国民年金基金連合会理事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本レストランシステムグループ」「ドトールコーヒーグループ」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本レストランシステムグループ
主に「星乃珈琲店」や「洋麺屋五右衛門」などのレストランチェーンを直営で展開しています。さらに、青果物や食肉類の仕入れ、ソースやハムの製造加工、物流、店舗デザインやメンテナンスに至るまで、外食に関わる幅広い機能をグループ内で内製化しています。
収益源は、店舗における顧客への飲食および商品の販売収入です。事業の運営は、日本レストランシステムを中心に、日本レストランベジ、日本レストランプロダクツ、日本レストランデリバリーなどの各機能子会社が担当しています。
■(2) ドトールコーヒーグループ
直営店およびフランチャイズシステムによるコーヒーチェーンを全国展開しています。また、世界中からコーヒー豆を仕入れて焙煎加工を行い、店舗での提供や卸売りを行うほか、コンビニエンスストアやスーパー向けのチルド飲料などコーヒー製品の開発・販売も行っています。
収益源は、直営店での飲食提供や物販のほか、フランチャイズ加盟店舗からのロイヤリティ収入や卸売り代金などです。事業の運営は主にドトールコーヒーが担当し、マグナがコーヒーマシン等の販売を手がけています。
■(3) その他
国内では洋菓子や焼きたてパンの製造・販売事業、希少な高級コーヒー豆・紅茶の直輸入および提供を行っています。また、海外事業としてシンガポール、台湾、韓国などのアジア市場を中心に直営飲食店の運営を展開しています。
収益源は、一般消費者向けの洋菓子やパンの販売、および海外店舗での飲食提供による売上です。事業の運営は、D&Nコンフェクショナリー、サンメリー、プレミアムコーヒー&ティー、海外事業を統括するD&Nインターナショナルなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して成長を続けています。経常利益も新型コロナウイルス等の影響により赤字となった期を乗り越え、その後は順調な回復と拡大を見せており、収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,094億円 | 1,269億円 | 1,406億円 | 1,488億円 | 1,591億円 |
| 経常利益 | -15億円 | 35億円 | 77億円 | 96億円 | 106億円 |
| 利益率(%) | -1.4% | 2.7% | 5.5% | 6.5% | 6.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 12億円 | 16億円 | 18億円 | 70億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益や営業利益も堅調に伸びています。利益率は安定して推移しており、原材料費や人件費の高騰といった外部環境の変化に対しても、適切なコストコントロールが行われていることが伺えます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,488億円 | 1,591億円 |
| 売上総利益 | 896億円 | 937億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.2% | 58.9% |
| 営業利益 | 96億円 | 102億円 |
| 営業利益率(%) | 6.4% | 6.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が308億円(構成比37%)、賃借料が180億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両主力セグメントにおいて着実な増収を達成しています。日本レストランシステムグループは付加価値の高いメニューの導入が、ドトールコーヒーグループは卸売事業の拡大や新商品の展開が売上を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 日本レストランシステムグループ | 537億円 | 563億円 |
| ドトールコーヒーグループ | 884億円 | 963億円 |
| その他 | 67億円 | 65億円 |
| 連結(合計) | 1,488億円 | 1,591億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を新規出店や設備更新などの投資に振り向けつつ、借入金の返済や株主還元を自己資金で賄っている優良な健全型企業です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 124億円 | 70億円 |
| 投資CF | -62億円 | -108億円 |
| 財務CF | -29億円 | -84億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「外食産業における日本一のエクセレント・リーディングカンパニー」の地位確立を目指しています。多様化する顧客の心の奥底にある期待感に応える商品とサービスを提供し、地域社会に愛されることでブランド価値を向上させ、企業価値の最大化を追求しています。
■(2) 企業文化
激しく変化する経営環境を迅速に察知し、柔軟に対応する姿勢を重視しています。また、グループのノウハウを共有し収益シナジーを創出することや、常に最高品質を追求し、安全で安心な価値ある商品を提供することを行動規範とし、飲食を通じた豊かな社会の実現に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
安定的に売上および利益の成長を達成しながら、グループ全体での企業価値の最大化を目指しています。経営指標の目標としては「売上高経常利益率」の成長を掲げています。また、サステナビリティに関する指標として環境負荷低減の数値目標も設定しています。
* 温室効果ガス排出量(スコープ1・2):2030年度までに2013年度対比46%削減
* バージンプラスチック資材の使用量:2028年度までに2018年度対比30%以上削減
■(4) 成長戦略と重点施策
リ・ブランディングや新商品開発を含めた商品力の向上、新規出店、新業態開発を推進しています。また、フランチャイズ・ビジネスなどグループノウハウの共有化による高収益体質の実現と、高成長が期待できるアジアを中心とした海外事業の展開を注力領域としています。
* 既存店の強化とブランド価値向上
* 不採算店舗の閉鎖や業態転換による効率化
* 成長戦略の一環としてのM&Aによる事業拡大
* アジア市場を中心とするグローバル展開
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業成長と社会価値創出の両立に貢献できる人材の育成を基本方針としています。全従業員を対象とした教育機会の提供や、役割に応じた研修、ジョブローテーションによる体系的な育成を推進しています。また、女性管理職の登用や柔軟な勤務制度の整備を進め、多様な人材が継続的に活躍できる環境作りに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 43.4歳 | 9.3年 | 6,032,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.1% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 84.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 74.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、コーヒー研修受講率(17.7%)、主な紙資材の認証紙採用率(57.3%)、自社コーヒー焙煎工場の製造過程で生じる廃棄物のリサイクル率(88.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コーヒー生豆価格相場及び為替相場の変動
主要商品であるコーヒー生豆の価格は、国際的なコモディティ価格の高騰や新興国における需給、天候などの影響を受けやすい性質があります。これによる相場上昇や為替変動がコスト増となり業績に影響を及ぼす可能性があるため、同社は先物予約や調達先の多様化などでリスクヘッジを行っています。
■(2) 法的規制等の強化と食品事故の発生
飲食店経営において「食品衛生法」等の厳格な規制を受けており、万一食中毒などの重大な製品事故が発生して営業停止処分を受けた場合、顧客の離反や企業の社会的信用の失墜を招き、業績に大きな打撃を与える可能性があります。同社は第三者機関による定期的な衛生検査や安全・品質管理を徹底しています。
■(3) 大規模自然災害・感染症等の影響
店舗や工場が首都圏をはじめとする大都市に集中しているため、地震や大型台風などの自然災害、あるいは新型感染症の拡大によってインフラが損傷し、サプライチェーンが分断されるリスクがあります。正常な運営が継続できなくなる事態に備え、緊急対応時マニュアルの整備やBCP(事業継続計画)の策定を進めています。



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