#記事タイトル:イオンモール転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、イオンモール株式会社 の有価証券報告書(第114期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イオンモールってどんな会社?
イオングループの中核企業として、国内外でショッピングモールの開発・運営を手掛けるディベロッパーです。
■(1) 会社概要
1911年に岐阜繭糸として設立され、1970年にジャスコ(現イオン)傘下に入りました。2002年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2007年にはダイヤモンドシティと合併して現在の事業基盤を確立しました。2011年以降は中国やアセアン各国へ現地法人を設立し、海外展開を加速させています。
連結従業員数は3,900名、単体では1,923名です。筆頭株主は親会社であり総合小売業を展開するイオン、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。イオングループのディベロッパー事業を担う中核企業として、グループ各社とも連携し事業を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イオン | 58.15% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.94% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 1.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は大野惠司氏です。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大野 惠司 | 取締役社長(代表取締役) | 1995年ジャスコ(現イオン)入社。イオンリテール経営企画部長、AEON(CAMBODIA)社長、イオン執行役マレーシア担当等を経て、2024年5月より現職。 |
| 藤木 光広 | 取締役専務執行役員管理担当 | 1985年入社。営業本部長、リーシング本部長、CX創造本部長等を歴任し、2025年3月より現職。 |
| 速水 英樹 | 取締役常務執行役員財経担当 | 1996年ジャスコ(現イオン)入社。コックス取締役、イオン経営管理部長、イオンリテール取締役常務執行役員等を経て、2025年3月より現職。 |
| 南 愼一郎 | 取締役上席執行役員開発担当 | 2000年入社。中国本部開発担当部長、永旺夢楽城(湖北)商業管理有限公司総経理、営業本部中四国事業部長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 礒部 大将 | 取締役上席執行役員海外事業担当 | 2003年入社。インドネシア現地法人社長、西日本支社長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 坪谷 雅之 | 取締役上席執行役員営業担当 | 2003年入社。人事統括部長、リーシング統括部西日本リーシング部長、カンボジア現地法人社長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 岡田 元也 | 取締役相談役 | 1979年ジャスコ(現イオン)入社。同社代表取締役社長、イオン取締役兼代表執行役社長グループCEO等を歴任。2020年3月よりイオン取締役兼代表執行役会長。 |
社外取締役は、腰塚國博(元コニカミノルタ取締役兼常務執行役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」「ベトナム」「カンボジア」「インドネシア」および「その他(海外)」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内において、ショッピングモールの開発・運営を行っています。地域の特性に合わせたモールづくりを行い、一般テナントやイオングループ各社に対して店舗を賃貸しています。
収益は、テナントからの賃貸収入や、商業施設の管理・運営業務を受託することによる手数料収入等からなります。運営は主にイオンモールが行っているほか、都市型ショッピングセンター事業を担う株式会社OPAなどが担当しています。
■(2) 中国
中国において、ショッピングモールの開発・運営を行っています。北京・天津・山東省、江蘇省・浙江省、湖北省・湖南省、広東省の4エリアを中心にドミナント出店を推進しています。
収益は、テナントからの賃貸収入等が主となります。運営は、AEON MALL (CHINA) BUSINESS MANAGEMENT CO.,LTD. などの現地法人が行っています。
■(3) ベトナム
ベトナムにおいて、ショッピングモールの開発・運営を行っています。ハノイ市を中心とした北部、ホーチミン市を中心とした南部、および中部エリアにおいて事業を展開しています。
収益は、テナントからの賃貸収入等が主となります。運営は、AEON MALL VIETNAM CO., LTD. などの現地法人が行っています。
■(4) カンボジア
カンボジアにおいて、ショッピングモールの開発・運営を行っています。首都プノンペンを中心にモールを展開し、地域No.1の商業施設を目指しています。
収益は、テナントからの賃貸収入等が主となります。運営は、AEON MALL (CAMBODIA) CO., LTD. などの現地法人が行っています。
■(5) インドネシア
インドネシアにおいて、ショッピングモールの開発・運営を行っています。ジャカルタ首都圏を中心にモールを展開し、地域住民の生活利便性向上に寄与しています。
収益は、テナントからの賃貸収入等が主となります。運営は、PT. AEON MALL INDONESIA などの現地法人が行っています。
■(6) その他(海外)
ミャンマーなどにおいて、事業に向けた準備や展開を行っています。
収益は、現地での事業活動から得られる収入等となります。運営は、AEON MALL MYANMAR CO., LTD. などの現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は順調に増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益も第114期には400億円台に回復し、利益率も安定しています。当期利益については、変動があるものの黒字を維持しており、全体として堅実な業績推移を示しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 2,807億円 | 3,168億円 | 3,982億円 | 4,232億円 | 4,498億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | 284億円 | 325億円 | 364億円 | 371億円 | 426億円 |
| 利益率(%) | 10.1% | 10.3% | 9.1% | 8.8% | 9.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -19億円 | 193億円 | 130億円 | 204億円 | 143億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は増加し、売上総利益も拡大していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益は増加傾向にあり、営業利益率も改善しています。売上の増加に伴い利益も着実に積み上がっており、本業の収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,232億円 | 4,498億円 |
| 売上総利益 | 812億円 | 897億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.2% | 19.9% |
| 営業利益 | 464億円 | 521億円 |
| 営業利益率(%) | 11.0% | 11.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が84億円(構成比22%)、販売手数料が38億円(同10%)を占めています。また、売上原価のうち、減価償却費が358億円(構成比14%)、設備管理費が395億円(同15%)となっています。
■(3) セグメント収益
日本事業は売上・利益ともに最大規模であり、利益率も高く全体の業績を牽引しています。中国事業は売上が増加したものの、利益は減少しました。ベトナム事業は売上・利益ともに伸長しており、成長市場としての存在感を高めています。インドネシア事業は黒字転換を果たしました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 3,337億円 | 3,459億円 | 358億円 | 428億円 | 12.4% |
| 中国 | 590億円 | 681億円 | 65億円 | 47億円 | 7.0% |
| ベトナム | 153億円 | 173億円 | 39億円 | 42億円 | 24.4% |
| カンボジア | 85億円 | 93億円 | 4.1億円 | 1.1億円 | 1.1% |
| インドネシア | 73億円 | 99億円 | -2.7億円 | 2.6億円 | 2.6% |
| その他 | - | - | -0.1億円 | -0.2億円 | - |
| 調整額 | -6億円 | -8億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | - |
| 連結(合計) | 4,232億円 | 4,498億円 | 464億円 | 521億円 | 11.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金を借入金の返済や配当金の支払いに充てつつ、投資活動にも資金を回している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,263億円 | 1,023億円 |
| 投資CF | -1,017億円 | -966億円 |
| 財務CF | -128億円 | -648億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客さま第一」を基本理念とし、『イオンモールは、地域とともに「暮らしの未来」をつくるLife Design Developerです。』を経営理念としています。商業施設の枠組みを超え、一人ひとりのライフステージを見据えた機能拡充や、文化育成なども含めた未来をデザインすることを目指しています。
■(2) 企業文化
持続可能な社会の実現に向けて、企業市民として地域・社会の発展と活性化に貢献する企業活動を「ハートフル・サステナブル」と定めています。地域社会やパートナー企業、株主などのステークホルダーとともに、「つながる」を創造し、持続可能な地域の未来につながる営みを共創する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年ビジョン「イオンモールは、地域共創業へ。」を策定し、持続可能な社会と強靭な組織づくりを目指しています。また、ESG視点での重要課題(マテリアリティ)に対し、2050年のありたい姿と2030年までのアクションKPIを設定し、解決に取り組んでいます。
* EPS成長率:7%(2019年度起点、年率)
* 純有利子負債EBITDA倍率:4.5倍以内
* 投下資本利益率(ROIC):5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内では既存ビジネスモデルの改革による新たな顧客創造と収益性向上を図り、海外では成長性の高いエリアでの物件開発を推進します。また、デジタル技術を活用したマーケティングや生産性向上、サステナビリティ課題への対応を通じ、社会価値、環境価値、経済価値の創出を目指します。
* 日本:既存モールの活性化、複合開発による出店、都市型SC事業の構造改革。
* 海外:ベトナムおよび中国内陸部における出店拡大、既存モールの収益力強化。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本」を最も重要な経営資源と位置づけ、ダイバーシティ経営、健康経営、働き方改革等を推進しています。また、地域共創を実現する人材の育成や、次期経営人材の発掘・育成(サクセッションプラン)、グローバル人材の育成に注力し、多様な人材が能力を発揮し続けられる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 41.9歳 | 9.0年 | 6,834,100円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 100.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(52%)、離職率(自己都合)(4.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化に関するリスク
国内外での競合激化や経済不況、人口動態や消費行動の変化(EC、OMO進展等)への対応が遅れた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、主要テナントの業況悪化や、気候変動・人的資本等のサステナビリティ課題への対応不足も、ステークホルダーからの支持低下や業績への悪影響につながるリスクがあります。
■(2) 不動産開発および投資に関するリスク
モール開発やリニューアルには長期の期間と多額の投資を要するため、開発スケジュールの遅延や建築コスト・不動産価格の上昇が経営成績に影響を与える可能性があります。また、モールの老朽化に伴う修繕コストの増加や、設備故障・事故の発生もリスク要因となり得ます。
■(3) 自然災害・事故・テロの発生に関するリスク
国内外で事業を展開しているため、大規模地震、台風、集中豪雨等の自然災害や、火災・停電等の事故、暴動・テロ等が発生した場合、店舗の毀損や休業により経営成績に甚大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、危機管理規則の整備や訓練の実施、耐震補強、各種保険への加入等の対策を講じています。



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