イオンディライト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イオンディライト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場企業で、イオングループに属する総合ファシリティマネジメント企業です。商業施設やビルの設備管理、清掃、警備などを主力事業とし、アジアでも事業を展開しています。2025年2月期の連結業績は、売上高・各段階利益ともに前期を上回り、増収増益を達成しました。


※本記事は、イオンディライト株式会社 の有価証券報告書(第52期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イオンディライトってどんな会社?


設備管理や清掃、警備などを通じて施設の安全・安心・快適を提供するファシリティマネジメント企業です。

(1) 会社概要


1972年にニチイメンテナンスとして設立され、1976年にジャパンメンテナンスへ商号変更しました。2006年にイオンテクノサービスを吸収合併し、現在の商号となりました。その後も複数の清掃・管理会社を子会社化し事業を拡大しましたが、2025年に親会社であるイオンによる公開買付けへの賛同を表明しています。

2025年2月末時点で、連結従業員数は23,087名、単体では4,726名が在籍しています。筆頭株主は事業会社である親会社のイオンで、発行済株式の半数以上を保有しています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取引先持株会となっており、イオングループの中核企業として安定した株主構成です。

氏名 持株比率
イオン 57.72%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.85%
イオンディライト取引先持株会 2.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表者は濵田 和成氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
濵 田 和 成 代表取締役社長兼社長執行役員グループCEO イオンリテール専務執行役員等を経て2018年より同社代表取締役社長。2020年より現職。
宮 前 吾 郎 取締役兼専務執行役員海外事業責任者 同社清掃事業本部長、マーケティングDX統括、中国事業統括などを歴任。2024年より現職。
阿 久 津 哲 也 取締役兼専務執行役員グループ経営管理責任者(CFO) みずほフィナンシャルグループ執行役員等を経て2021年同社入社。2024年より現職。
渡 邉 廣 之 取締役 イオン銀行代表取締役社長、イオンフィナンシャルサービス取締役副社長等を経て2021年より現職。


社外取締役は、吉川 恵治(元日本板硝子社長兼CEO)、高田 朝子(法政大学大学院教授)、島田 俊夫(元CAC Holdings会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備管理事業」「警備事業」「清掃事業」「建設施工事業」「資材関連事業」「自動販売機事業」「サポート事業」を展開しています。

(1) 設備管理事業


電気、空調、給排水、消防などの建物設備の保守・点検・整備を行い、施設の安全稼働を支える事業です。商業施設やオフィスビルなどのオーナーや管理会社を主な顧客としています。

収益は、顧客から受け取る保守・点検業務の委託料や整備工事代金からなります。運営は主に同社および連結子会社の環境整備、イオンディライトコネクトなどが担っています。

(2) 警備事業


施設警備(常駐警備)、雑踏・交通誘導警備、貴重品運搬警備など、警備全般に関するサービスを提供しています。多くの人が集まる商業施設等の安全確保を担います。

収益は、施設所有者やイベント主催者等から受け取る警備業務の委託料からなります。運営は主に同社および連結子会社のイオンディライトセキュリティなどが担っています。

(3) 清掃事業


商業施設、オフィスビル、病院などの建物・施設の清掃業務全般を行い、快適な環境と美観を維持する事業です。日常清掃や定期清掃などのサービスを提供します。

収益は、施設オーナーやテナントから受け取る清掃業務の委託料からなります。運営は主に同社および連結子会社の白青舎などが担っています。

(4) 建設施工事業


大規模修繕工事、店舗内装の企画・設計・施工、省エネ・CO2削減に関する提案・施工、エネルギーデータ管理などを行います。施設の資産価値向上や環境対応を支援します。

収益は、施主から受け取る工事請負代金や設計料、エネルギー管理サービスの利用料などからなります。運営は主に同社および連結子会社が担っています。

(5) 資材関連事業


イオングループ等の店舗運営に必要な消耗品や資材(レジ袋、包装資材など)の調達、購買代行を行う事業です。

収益は、店舗や企業に対する資材等の販売代金からなります。運営は主に同社が担っています。

(6) 自動販売機事業


飲料自動販売機の設置・運営管理、観葉植物や分煙機のレンタル・運営などを行う事業です。商業施設の休憩スペース等にサービスを提供しています。

収益は、自動販売機での飲料販売による売上や、機器・観葉植物のレンタル料などからなります。運営は主に同社が担っています。

(7) サポート事業


旅行代理業、会議・イベントの企画運営、家事支援サービス、マンション管理、人材サービス、教育研修事業など、施設周辺の多様なサービスを展開しています。

収益は、旅行手配の手数料、イベント運営費、家事支援サービス利用料、研修受講料など多岐にわたります。運営は同社および連結子会社のイオンコンパス、イオンディライトアカデミーなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は3,000億円台で安定的に推移しており、直近では増加傾向にあります。経常利益も150億円から160億円台で安定しており、利益率も約5%前後を維持しています。当期純利益についても、概ね安定した水準を保ちながら推移しており、堅実な収益基盤を持っていることが読み取れます。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 3,001億円 3,177億円 3,038億円 3,248億円 3,379億円
経常利益 153億円 158億円 160億円 155億円 166億円
利益率(%) 5.1% 5.0% 5.3% 4.8% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 117億円 107億円 102億円 107億円 115億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約13%台で安定しています。営業利益も増加しており、営業利益率は4%後半を維持しています。全体として増収増益の傾向にあり、本業の収益性が維持・向上されていることがわかります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 3,248億円 3,379億円
売上総利益 426億円 451億円
売上総利益率(%) 13.1% 13.4%
営業利益 152億円 164億円
営業利益率(%) 4.7% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が105億円(構成比37%)を占めており、人件費が主要なコストとなっています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて黒字を確保しており、特に設備管理、清掃、建設施工が利益の柱となっています。サポート事業は前期比で大幅な増益となりました。自動販売機事業は売上が減少したものの、利益率は維持されています。全体として、主力事業が堅調に推移し、利益率も安定していることが特徴です。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
設備管理事業 695億円 754億円 59億円 62億円 8.2%
警備事業 509億円 533億円 31億円 32億円 5.9%
清掃事業 704億円 719億円 53億円 55億円 7.7%
建設施工事業 592億円 608億円 53億円 55億円 9.0%
資材関連事業 463億円 482億円 23億円 26億円 5.4%
自動販売機事業 96億円 93億円 13億円 13億円 14.0%
サポート事業 188億円 190億円 5億円 16億円 8.2%
連結(合計) 3,248億円 3,379億円 152億円 164億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金(営業CF)の一部を投資に回し(投資CF)、残りを借入金の返済や配当支払い(財務CF)に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。安定した本業収益を基盤に、健全な財務運営が行われています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 185億円 138億円
投資CF -43億円 -36億円
財務CF -69億円 -72億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.3%で市場平均(サービス業等の非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは、お客さま、地域社会の『環境価値』を創造し続けます。」という経営理念を掲げています。ここでの「環境価値創造」とは、人々が平和と豊かさを享受できる環境を創出することを意味しており、事業を通じて社会の持続的発展に貢献し、顧客や地域社会から必要とされ続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、施設管理の専門家集団として「技術力」と「人間力」を兼ね備えた専門人材の育成を重視しています。最大の資産である従業員の価値を引き出し、プロ意識と誇りを持って業務に従事できるよう、教育投資や資格取得支援を積極的に行っています。また、多様な人材が能力を発揮できる活力ある組織風土づくりを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、アジアNo.1のファシリティマネジメント企業を目指し、親会社であるイオンによる完全子会社化を通じて、イオングループとの戦略的連携を強化する方針です。市場環境の変化に対応するため、人手不足の解消や新たな施設管理モデルへの転換、コンサルティング機能の強化などを掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


国内ファシリティマネジメント市場の緩やかな拡大と人手不足の深刻化を背景に、同社はビジネスモデルの変革を進めています。具体的には、人手不足に対応した新たな施設管理モデルへの転換やコンサルティング機能の強化に取り組みます。また、イオングループのスケーラビリティを最大限に活用し、グループ内のバックオフィス業務の受託拡大など、非中核業務のアウトソーシングニーズに対応することで成長を加速させる戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「技術力」と「人間力」を兼ね備えた専門人材の育成に注力しています。人手不足への対応として、DXによる変革に加え、社内研修施設での教育や資格取得支援、若手人材の早期育成などを推進しています。また、多様な人材が成長できる職場環境を目指し、ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 46.6歳 10.6年 5,308,459円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 51.5%
男女賃金差異(全労働者) 63.4%
男女賃金差異(正規) 81.9%
男女賃金差異(非正規) 73.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結年間従業員退職率(30.1%)、連結年間一人当たりの残業時間(342.4時間)、連結年間労災事故発生件数(98件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) イオングループ企業との取引


同社はイオングループに属しており、グループ企業に対する取扱高が全体の60%以上を占めています。そのため、大口取引先であるイオングループ企業との取引条件の変更や関係性の変化が生じた場合、同社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制への対応


同社の事業は、ビル管理法、警備業法、建設業法など多岐にわたる法的規制を受けており、各種許可や登録が必要です。法令改正や要件の変更に適切に対応できず、要件を満たせなくなった場合、事業活動に制約を受け、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 情報セキュリティ


顧客や従業員の個人情報、経営に関する機密情報を多数取り扱っています。サイバー攻撃や管理不備による情報漏洩、改ざん、不正使用などが発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 中国及びアセアンでの事業展開


中国やアセアン地域で現地法人を展開していますが、これらの地域における法規制の変更、政治・経済情勢の変動、社会環境の変化、商習慣の違いなどがリスク要因となります。予期せぬ事態が発生した場合、事業の中断や業績への影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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