ディップ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディップ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディップは東京証券取引所プライム市場に上場し、求人情報サイト「バイトル」などの人材サービス事業と、中小企業向けのDX事業を展開しています。直近の業績は、営業体制変更に伴う引継ぎの増加や先行投資などの影響により、減収減益となりました。誰もが働く喜びを感じられる社会の実現を目指しています。


※本記事は、ディップ株式会社の有価証券報告書(第29期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ディップってどんな会社?


同社は、人材サービス事業と中堅・中小企業向けのDX事業を展開し、労働市場の課題解決に取り組む企業です。

(1) 会社概要


1997年に無料カタログ送付サービスの運営を目的に設立されました。2000年に派遣求人「はたらこねっと」、2002年にアルバイト求人「バイトル」を開始しました。2004年に東証マザーズへ上場、2013年に東証一部へ市場変更しています。2019年からはDXサービス「コボット」の提供を開始しました。

同社グループの従業員数は連結で2,663名、単体で2,663名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるオーセンティシティで、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。事業活動を通じて持続的な成長と企業価値向上に努めるとともに、持続可能な社会の実現に貢献しています。

氏名 持株比率
オーセンティシティ 37.44%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.17%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505301(常任代理人みずほ銀行決済営業部) 5.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長 兼 CEOは冨田英揮氏が務めており、取締役の3分の2を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
冨田英揮 代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者) 1990年地産入社。1992年フォーラム入社。1997年同社を設立し代表取締役社長に就任。2006年より代表取締役社長兼CEOを務める。2018年よりDIP America,Inc. President等を経て現職。
志立正嗣 取締役 1991年凸版印刷入社。ヤフー、出前館等を経て、2017年IDCフロンティア代表取締役社長等を歴任。2019年同社社外取締役、2020年取締役COO等を経て、2026年3月より現職。
岩田和久 取締役(常勤監査等委員) 1986年産報通信社入社。2000年同社入社後、2002年取締役、2005年常務取締役等を歴任。2014年取締役COO等を務めたのち、2024年5月より現職。


社外取締役は、馬渕邦美(一般社団法人Generative AI Japan理事)、竹内香苗(SBIホールディングス社外取締役)、大櫃直人(ミダスキャピタル専務取締役パートナー)、田邉えり子(コプロ・ホールディングス社外取締役)、丸山みさえ(丸山みさえ公認会計士事務所設立)、高木智宏(西村あさひ法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、人材サービス事業およびDX事業を展開しています。

人材サービス事業


アルバイト求人情報サイト「バイトル」や「はたらこねっと」などのインターネット求人情報サイトの提供や、看護師・介護職向けの人材紹介サービスを通じて、顧客企業の人材採用とその活用を支援しています。

主に求人広告の掲載料や採用成果に応じた手数料、人材紹介の手数料を顧客企業から受け取ります。同社が運営主体となり、一人ひとりがいきいきと働くことができる環境の構築に貢献することを目指しています。

DX事業


中堅・中小企業に特化した商品設計で、導入かつ継続利用がしやすいパッケージ化されたDXサービス「コボット」シリーズなどを提供し、顧客企業のDX化を支援しています。

採用サイトの作成、面接スケジュールの自動調整、人事労務管理、販促支援などのサービス利用料を顧客企業から受け取ります。同社が直接運営を行い、中堅・中小企業における人手不足や業務効率化の課題解決に取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績は、経済活動の回復に伴い数年間にわたり順調な増収増益を継続していましたが、直近では営業体制の変更に伴う引継ぎ業務の増加や新規顧客獲得の鈍化、先行投資などが影響し、減収減益に転じています。利益率も直近で低下傾向にありますが、依然として一定の水準を維持しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 395億円 494億円 538億円 564億円 549億円
経常利益 53億円 116億円 126億円 133億円 90億円
利益率(%) 13.5% 23.5% 23.5% 23.5% 16.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 73億円 93億円 90億円 58億円

(2) 損益計算書


売上高の減少と投資の増加により、売上総利益および営業利益ともに減少しています。特に営業体制の変更や人材採用の強化、オフィス拡張などの先行投資が影響し、営業利益率は前期間と比較して低下する結果となりました。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 564億円 549億円
売上総利益 505億円 485億円
売上総利益率(%) 89.6% 88.5%
営業利益 134億円 91億円
営業利益率(%) 23.8% 16.6%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が123億円(構成比31%)、給料手当が120億円(同31%)を占めています。売上原価については、サイト運用費が51億円(構成比81%)、代理店手数料が3億円(同5%)となっています。

(3) セグメント収益


主力の求人メディアや人材紹介を担う人材サービス事業は、営業体制移行に伴う引継ぎの増加などで新規契約が鈍化し減収となりました。DX事業においても、MEO対策サービスの売上が伸長したものの、メディアサービスの契約社数減少に伴い関連サービスの売上が減少し、全体として微減となりました。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
人材サービス事業 497億円 482億円
DX事業 67億円 66億円
連結(合計) 564億円 549億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を用いて投資を行い、同時に借入金の返済や株主還元などを進める「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 165億円 100億円
投資CF -52億円 -111億円
財務CF -122億円 -50億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念を掲げています。また、「Labor force solution company」をビジョンとし、人材サービスとDXサービスの提供を通して労働市場における諸課題を解決し、誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「人が全て、人が財産」という信念を持ち、社員一人ひとりが社会を改善する存在となることを目指しています。多様な個性を持つ社員が互いを認め合い、情熱を持って主体的に仕事に取り組める組織風土を重視しており、健康経営やDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進などを通じて、働きがいのある職場づくりを進めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高、営業利益、営業利益率、1株当たり当期純利益(EPS)に加え、自己資本利益率(ROE)を重要な経営指標として重視しています。中長期的な事業成長と利益の持続的な成長により株主価値の向上を図るとともに、配当においては原則として前期配当額を下限とし、配当性向50%を目安に利益還元を実施する方針を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、従来の顧客規模・エリア別の営業体制から業種別のソリューション体制へと移行し、業界専門性を高めた提案で生産性の向上を図ります。また、運営サイトの機能拡充やプロモーション強化により求職者と企業の最適なマッチングを推進します。さらに、中堅・中小企業向けのDXサービス拡充や新規事業の創出にも取り組み、事業ポートフォリオを強化していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員の成長と幸福度の向上が企業の成長に不可欠であると考え、企業理念を体現するための独自の研修プログラムを実施しています。また、多様性を尊重した採用・育成、安全衛生管理、労働時間の適正化などを推進し、仕事と生活の調和を図りながら、社員がその能力を最大限に発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 30.5歳 5.6年 5,313,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 84.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 155.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(76.8%)、離職率(15.9%)、女性の育児休業復職率(97.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 商用システムの停止及びサイバー攻撃


インターネット情報サイトを構成するシステムは、自然災害や通信障害、サイバー攻撃によって稼働停止する可能性があります。同社はバックアップ体制の整備やセキュリティ対策を進めていますが、重大な障害が発生した場合、信頼失墜や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 情報漏えいリスク


同社は個人情報の流出を防ぐため、通信の暗号化や情報セキュリティマネジメントシステムの認証取得など厳格な管理体制を構築しています。しかし、人材サービス事業やDX事業において個人情報の漏えい等の重大なトラブルが発生した場合、法的責任やブランドイメージの悪化を招く可能性があります。

(3) 人材サービス事業への依存と競争激化


同社は売上高の大半を人材サービス事業に依存しており、景気動向や求人市場の変動に大きく左右されます。また、多数の競合他社が存在する中で、適時かつ効果的なサービス提供や独自機能の展開ができなければ、競争優位性が低下し業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ディップの転職研究 2026年2月期決算に見るキャリア機会

ディップの2026年2月期決算は、営業体制を「業種別」へ刷新した影響で一時的な減収減益となりました。一方でスポットバイトルの急成長や生成AI、クリック課金導入といった攻めの投資を継続。「なぜ今ディップなのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。


ディップの転職研究 2026年2月期3Q決算に見るキャリア機会

ディップの2026年2月期3Q決算は、ソリューション営業体制への移行とスポットバイトルへの先行投資により一時的な減益となりましたが、売上進捗は概ね順調です。人員拡充とAI活用による生産性向上を急ぐ同社で、転職希望者がどの事業でどんな役割を担えるのか、最新の戦略から整理します。