ディップ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディップ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライムに上場し、アルバイト求人情報サイト「バイトル」などの人材サービス事業と、業務効率化を支援するDX事業を展開しています。直近の決算では、人材サービスの堅調な推移とDX事業の伸長により、売上高・各利益ともに過去最高を更新し、増収増益を達成しています。


※本記事は、ディップ株式会社 の有価証券報告書(第28期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ディップってどんな会社?

「バイトル」等の求人メディア運営と、中小企業の業務効率化を支援するDXサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要

1997年に設立し、2002年にアルバイト求人情報サイト「バイトル」を開始しました。2004年に東証マザーズへ上場し、2013年には東証一部へ市場変更を果たしました。2019年からはAI・RPAを活用したDXサービス「コボット」の提供を開始し、事業領域を拡大しています。

2025年2月時点の連結従業員数は2,530名です。大株主構成については、筆頭株主は代表取締役社長である冨田英揮氏の資産管理会社であるオーセンティシティで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
オーセンティシティ 37.39%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.04%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505301 5.18%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長 兼 CEOは冨田英揮氏が務めています。社外取締役の比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
冨田 英揮 代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者) 1997年3月同社設立、代表取締役社長。2006年3月より現職。
志立 正嗣 代表取締役COO(最高執行責任者) ヤフー(現LINEヤフー)執行役員等を経て、2020年7月同社取締役COO。2024年9月より現職。


社外取締役は、馬渕邦美(元VML&Ogilvy Japan社長)、竹内香苗(元TBSアナウンサー)、大櫃直人(元みずほ銀行常務執行役員)、田邉えり子(元テンプスタッフ室長)、丸山みさえ(公認会計士)、高木智宏(弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「人材サービス事業」および「DX事業」を展開しています。

(1) 人材サービス事業

アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」、正社員・契約社員求人サイト「バイトルNEXT」、総合求人サイト「はたらこねっと」、専門職向け「バイトルPRO」や、看護師・介護職の人材紹介サービスを提供しています。求職者と企業の最適なマッチングを支援します。

収益は、求人情報の掲載期間に応じた広告掲載料や、応募・採用数に応じた成果報酬、人材紹介における紹介手数料を顧客企業から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

(2) DX事業

中堅・中小企業の業務効率化を支援するため、採用ページ作成サービス「採用ページコボット」や面接日程調整「面接コボット」、人事労務管理、営業支援などのSaaS型DXサービス「コボット」シリーズを提供しています。

収益は、サービスの利用期間に応じた利用料を顧客企業から受け取ります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は5期連続で増加しており、事業規模の拡大が続いています。利益面では、2022年2月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後は回復し、直近3期は経常利益率20%を超える高収益体質を維持しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 325億円 395億円 494億円 538億円 564億円
経常利益 65億円 53億円 116億円 126億円 133億円
利益率(%) 20.0% 13.5% 23.5% 23.5% 23.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 36億円 73億円 93億円 90億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約90%と非常に高く、営業利益率も約24%と高い収益性を維持しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 538億円 564億円
売上総利益 480億円 505億円
売上総利益率(%) 89.2% 89.6%
営業利益 128億円 134億円
営業利益率(%) 23.7% 23.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が122億円(構成比33%)、広告宣伝費が105億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力の人材サービス事業が増収増益で全社業績を牽引しています。DX事業は売上高成長率が高く、セグメント利益率も約50%と非常に高い収益性を実現しており、収益の柱として成長しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
人材サービス事業 478億円 497億円 172億円 184億円 37.0%
DX事業 60億円 67億円 28億円 34億円 50.4%
調整額 - - -73億円 -84億円 -
連結(合計) 538億円 564億円 128億円 134億円 23.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金を借入返済や株主還元に充てつつ、投資も自己資金で賄えている「健全型」と言えます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 95億円 165億円
投資CF -74億円 -52億円
財務CF -80億円 -122億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念を掲げています。また、「Labor force solution company」をビジョンとし、人材サービスとDXサービスの提供を通じて労働市場の課題を解決し、誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化

「人が全て、人が財産」という信念のもと、社員一人ひとりが情熱を持って主体的に仕事に取り組める組織風土づくりに努めています。また、「ユーザーファースト」を徹底的に追求する姿勢を重視しており、顕在化している社会課題だけでなく、新たな課題に対しても積極的に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標

同社は、中長期的な事業成長と利益の持続的な成長による株主価値の向上を図るため、売上高、営業利益、営業利益率、1株当たり当期純利益(EPS)、自己資本利益率(ROE)を重視する経営指標として掲げています。また、ビジョン実現に向けた中期経営計画「dip30th」を策定し推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策

人材サービス事業では、営業人員の増強と生産性向上、マッチング精度の向上により顧客満足度を高め、事業を強化します。DX事業では、中堅・中小企業向け「コボット」シリーズの顧客基盤拡大とカスタマーサクセス体制の強化により、収益拡大を目指します。さらに、既存事業にとどまらず新規事業の創出にも積極的に取り組みます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人が全て、人が財産」という信念のもと、社員こそが最も大切な経営資本であると捉えています。フィロソフィーを基にした人材育成を行い、社員一人ひとりの力が最大限に発揮される環境づくりを目指しています。また、多様性を尊重した採用・育成や健康経営の推進を通じて、安心して働きがいを感じられる職場環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 30.3歳 5.6年 5,246,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金の合計を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.5%
男女賃金差異(正規雇用) 87.2%
男女賃金差異(非正規) 114.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(19.9%)、有給休暇取得率(80.7%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害およびサイバー攻撃

インターネット求人情報サイト等の運営において、自然災害やサイバー攻撃、システムへの不正侵入等によりシステム障害が発生した場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。これにより、同社の信頼失墜や損害賠償請求等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 個人情報の漏えい

事業において多くの個人情報を取り扱っており、情報セキュリティ対策を講じていますが、個人情報の流出等のトラブルが発生した場合、法的責任やブランドイメージの悪化により、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材サービス事業への依存

売上高の大部分を人材サービス事業が占めており、依存度が高い状況です。求人広告市場の競合激化や景気変動等により同事業の売上が変動した場合、全社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競争環境の変化

人材サービス事業およびDX事業において、多数の競合他社が存在します。既存事業者との競争激化や新規参入者に対し、適時かつ効果的に対応できない場合、同社の事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ディップの転職研究 2026年2月期3Q決算に見るキャリア機会

ディップの2026年2月期3Q決算は、ソリューション営業体制への移行とスポットバイトルへの先行投資により一時的な減益となりましたが、売上進捗は概ね順調です。人員拡充とAI活用による生産性向上を急ぐ同社で、転職希望者がどの事業でどんな役割を担えるのか、最新の戦略から整理します。