システムインテグレータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

システムインテグレータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

システムインテグレータは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、開発支援ツール等のObject Browser事業、ERPパッケージ等のERP事業、検図サービス等のAI事業を展開しています。直近の業績は、主力事業の拡大により売上高と経常利益が増収増益となった一方、特別利益の剥落等で当期利益は減益です。


※本記事は、株式会社システムインテグレータ の有価証券報告書(第31期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. システムインテグレータってどんな会社?


同社は、パッケージソフトウエアの開発・販売やERP導入コンサルティングを主軸とする独立系IT企業です。

(1) 会社概要


1995年にシステムインテグレーション及びパッケージソフトウエアの開発販売を目的として設立されました。1997年にデータベース開発支援ツールを発売し、2004年に次世代ERPをリリースしました。2006年に東証マザーズに上場後、事業を拡大し、現在はAIを活用した新規事業の創出も進めています。

従業員数は連結で338名、単体で256名です。筆頭株主は専務取締役の碓井満氏で、第2位は代表取締役会長の梅田弘之氏、第3位は梅田和江氏です。経営陣やその関係者とみられる個人が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
碓井満 19.80%
梅田弘之 11.94%
梅田和江 9.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは引屋敷智氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
引屋敷智 代表取締役社長CEOインキュベーション事業部長 1989年住商コンピューターサービス入社。2002年に同社へ入社し、取締役に就任。執行役員営業本部長等を経て、2022年より代表取締役社長CEOに就任。
梅田弘之 代表取締役会長 1980年東京芝浦電気入社。1989年住商コンピューターサービス入社。1995年の同社設立と同時に代表取締役社長に就任。2022年より代表取締役会長に就任。
碓井満 専務取締役CPMOPMO部長 1985年トーメン情報システムズ入社。1989年住商コンピューターサービス入社。1995年の同社設立時に専務取締役に就任。2016年より専務取締役CPMOに就任。
小泉智之 取締役CDO 2001年京セラコミュニケーションシステム入社。2003年に同社へ入社。執行役員ERP事業部長等を経て、2024年にエンタープライズ開発本部長。2025年より取締役CDOに就任。


社外取締役は、平林亮子(平林公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Object Browser事業」「ERP事業」「AI事業」および「その他」事業を展開しています。

Object Browser事業


主にIT業界のユーザーを対象にしたデータベース開発支援ツールおよびプロジェクト管理ツールを取り扱っています。主要なデータベースに対応し、GUI操作で簡単に開発や設計を行える製品や、品質・コスト・進捗を統合管理できる製品を提供しています。

自社で独創的なパッケージソフトウエアを企画・開発し、顧客へ直接販売や代理店を経由した間接販売を行うことでライセンス収益を得るほか、保守運用サポートによる継続的なストック収益も確保しています。運営は同社が行っています。

ERP事業


製造業や建設業など様々な企業向けに、統合型Web-ERPパッケージやクラウド型ERP、生産スケジューラーおよび生産管理システムを提供しています。既存業務の課題解決や業務フロー改善に向けた導入コンサルティングも実施しています。

自社開発の独自モジュールや他社製品を組み合わせ、顧客ニーズに応じたカスタマイズ開発や導入支援を行うことで収益を得ています。また、導入後の継続的な技術サポートによる保守収益も得ています。運営は同社およびシステム開発研究所が行っています。

AI事業


製造業などのエンジニアリング領域を対象に、設計図面の検図業務を大幅に効率化するAIサービスを提供しています。図面や関連書類をアップロードするだけで、部品表と組図の整合性チェックや寸法の抜けなどをAIが自動で確認します。

単純なチェック作業をAIに代替させ、設計リードタイムの短縮と品質向上を支援する自社企画のAIサービスを通じて収益を得ています。現在、生成AIを用いたサービス提供に事業リソースをシフトさせており、運営は同社が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない新規事業等が含まれています。社会の変化や顧客のニーズを捉え、最新の技術を活用しながら社員の自由な発想を活かして、新しい製品・サービスの事業化に向けた取り組みを行っています。

既存事業の枠にとらわれず、将来の新たな収益の柱を構築するための事業開発を進めています。機動的なアライアンスや新規投資を通じた事業化の検討を行っており、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績は、売上高が順調に拡大しています。利益面では、経常利益が前期から大幅な増益となり、利益率も改善傾向にあります。一方で、親会社所有者帰属の当期利益は、前期に計上された特別利益の反動などにより減益となっています。本業の収益力は向上しており、堅調な推移を示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 47.7億円 55.6億円
経常利益 3.0億円 5.7億円
利益率(%) 6.3% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 6.0億円 4.0億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に加えて売上総利益も順調に増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善しており、主力事業における高付加価値なサービス提供や業務効率化の成果が利益水準の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 47.7億円 55.6億円
売上総利益 15.5億円 19.2億円
売上総利益率(%) 32.5% 34.6%
営業利益 2.7億円 6.0億円
営業利益率(%) 5.7% 10.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.8億円(構成比29%)、役員報酬が1.4億円(同11%)を占めています。また、提出会社単体の売上原価(当期総制作費用)においては、労務費が13.5億円(構成比47%)、外注加工費が11.7億円(同41%)を占めており、人材関連費用の比重が高い構造となっています。

(3) セグメント収益


各セグメントの増減要因を見ると、ERP事業はDX推進や自動化ニーズを捉えた導入案件が順調に進捗し、大幅な増収増益を牽引しました。Object Browser事業もストック収益の拡大で増収を確保しています。一方、AI事業は生成AIへのリソースシフトの途上であり、減収となりました。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
Object Browser事業 7.9億円 8.3億円 3.3億円 3.3億円 39.4%
ERP事業 38.5億円 46.5億円 7.0億円 9.9億円 21.2%
AI事業 0.9億円 0.8億円 -0.2億円 -324万円 -4.2%
その他 0.4億円 - -0.1億円 -6,070万円 -
調整額 - - -7.3億円 -6.6億円 -
連結(合計) 47.7億円 55.6億円 2.7億円 6.0億円 10.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も78.5%で同じく市場平均を上回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF -3.6億円 6.9億円
投資CF -0.7億円 -6.9億円
財務CF -1.3億円 -1.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「時間を与えるソフトウエアを創り続ける」をミッションに掲げ、時代のニーズに合ったオリジナルのパッケージソフトウエアやサービスを開発・販売しています。社会の変化や顧客のニーズを捉え、最新の技術を活用しながら社員の自由な発想を活かし、新しい製品・サービスを事業化することで、持続可能でより良い社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「風通しの良い相互尊重の精神あふれる職場環境をみんなで作り、みんなが働きやすい雰囲気の中で創造力、技術力を常に磨き、品質の高いソリューションを提供し続ける」ことを経営方針として掲げています。ヒトやコトに高い関心を持ち、良いものを評価し、相互に尊重する文化を重視し、自律・自立した社員の一人ひとりが働きやすい職場環境を創り出していくことを理想としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2033年2月期に向けた長期ビジョンとして「ものつくり企業のビジネスプロセスをITの力で本質的に変革する」ことを掲げています。また、その達成に向けた当面の短期目標として「2年経営計画」を策定しており、収益基盤の多軸化とクロスセルの推進などを通じて、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 2027年度(2028年2月期):売上高71億円、営業利益8億円
* 2033年2月期:売上高120億円、営業利益20億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、「業務系システム」「AI」「開発ツール」の3つの事業ドメインに経営資源を集中させます。具体的には、主力ERP依存からの脱却と複数の収益軸の確立を目指し、グローバル標準ERPや製造業向けソリューションを育成します。また、業務の発想をゼロから再設計する「AIネイティブ」な組織体制への転換を図り、AIを組み込んだ新サービスや新規事業の創出を加速させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を唯一の資産と位置づけ、個人の成長と企業価値向上を両立させるため、自ら考え価値を創出できる「未来型人材」の育成を進めています。人材教育に積極的に投資し、全社員がAIを使いこなせる「一流の技術者」へと成長できる環境を整備しています。また、多様な人材の採用や働きやすい職場作りに注力し、社員エンゲージメントの向上と優秀な人材の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 35.3歳 6.4年 6,720,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 84.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 84.0%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(80.9%)、従業員定着率(93.5%)、法定外労働平均時間(4時間/月)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) AI時代のビジネスモデル変革リスク


AIの急速な進化により、「操作させるだけのソフトウエア」や定型業務の自動化に留まる製品は急速に価値を失いつつあります。同社の製品・サービスが競争力を失う、あるいは競合他社がAI活用でより高い価値を実現した場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。同社はAI技術の組み込みや「AIネイティブ」な働き方への転換で対応しています。

(2) 特定製品・顧客への依存リスク


同社の売上の相当部分は特定のERP製品に依存する構造となっています。当該製品の市場動向の変化や競合製品の台頭、特定顧客との取引条件の変化等が生じた場合、収益に影響を及ぼす可能性があります。対策として、他のERP製品などへの多軸展開を進め、ストック型ビジネスの比率を高めることで依存度の低下を図っています。

(3) 失敗プロジェクトの発生リスク


同社は自社製品を活用してプロジェクト管理を徹底していますが、システム開発の性質上、要件の複雑化やスコープの変化等により、採算が悪化するプロジェクトが一定の確率で発生するリスクがあります。特に大規模プロジェクトでの損失は経営成績に重大な影響を与えるため、プロジェクト管理機能の強化やAIを活用したリスク早期検知に努めています。

(4) 人材の確保・育成リスク


事業競争力はエンジニア等の人材の質と量に依存しており、AI時代において高度なスキルと業務知識を兼ね備えた人材の採用競争は激化しています。人材の獲得が計画通り進まない、または社外流出が生じた場合、開発力や提案力の低下を招く恐れがあります。同社は人材育成システムの整備やエンゲージメントの改善により人材の確保と定着を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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