※本記事は、株式会社システムインテグレータ の有価証券報告書(第30期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. システムインテグレータってどんな会社?
独立系ソフトウエア開発企業として、自社パッケージ製品の企画・開発とERP導入支援を両輪に展開する企業です。
■(1) 会社概要
1995年に設立され、翌年には日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を発売しました。2004年には完全Web-ERP「GRANDIT」をリリースし、事業の柱を確立。2014年に東証一部(現スタンダード市場)へ上場を果たしました。近年ではAI事業やプロジェクト管理ツール「OBPM」のクラウド化を推進し、2025年にはベトナム子会社等を連結化してグループ経営体制へ移行しています。
2025年2月28日現在、グループ全体の従業員数は280名(単体232名)です。筆頭株主は同社専務取締役の碓井満氏で、第2位は創業者の梅田弘之氏、第3位は梅田和江氏となっており、創業メンバーおよびその関係者が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 碓井 満 | 19.80% |
| 梅田 弘之 | 12.50% |
| 梅田 和江 | 9.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は引屋敷智氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 梅 田 弘 之 | 代表取締役会長 | 東芝、SCSKを経て1995年に同社設立し社長就任。2022年より会長。現在、製品企画室担当およびグループ会社役員を兼務。 |
| 引屋敷 智 | 代表取締役社長インキュベーション事業部長 | SCSKを経て2002年に入社。営業本部長、ERP事業部長などを歴任し、2022年より社長に就任。現在はインキュベーション事業部長も兼務。 |
| 碓 井 満 | 専務取締役 | SCSKを経て1995年の同社設立時に専務取締役に就任。開発本部長や管理本部長などを歴任し、現在は経営サポート本部長を務める。 |
| 小 泉 智 之 | 取締役 | 2003年に入社。ERP事業部長を経て、2025年5月より取締役に就任。現在はエンタープライズ開発本部長兼SAPソリューション部長。 |
社外取締役は、平林亮子(公認会計士、平林公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「Object Browser事業」「ERP事業」「AI事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) Object Browser事業
ITエンジニア向けの開発支援ツールおよびプロジェクト管理ツールを提供する事業です。データベース開発支援ツール「SI Object Browser」シリーズはOracle等の主要DBに対応し、開発生産性を向上させます。また、プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」は、品質・コスト・納期(QCD)の統合管理を実現します。
収益は、主に製品のライセンス販売およびクラウドサービスの利用料(サブスクリプション)、保守サービス料から得ています。これらの製品は自社開発のパッケージソフトウエアであり、利益率が高い特徴があります。運営は同社が行っています。
■(2) ERP事業
企業の基幹業務システムを構築・支援する事業です。コンソーシアム方式のWeb-ERP「GRANDIT」やクラウドERP「SAP S/4HANA Cloud」、生産管理システム「mcframe」等を取り扱い、顧客の業務に合わせたカスタマイズ開発や導入コンサルティングを行います。
収益は、パッケージソフトウエアのライセンス販売、カスタマイズ開発費用、導入コンサルティング費用、および導入後の保守運用サービス料から構成されます。製造業向けには生産スケジューラー「Asprova」なども提供しています。運営は同社および連結子会社のKEYSTONE SOLUTIONS COMPANY LIMITEDが行っています。
■(3) AI事業
製造業の工場等における外観検査を自動化するAIソリューションを提供する事業です。主力製品の「AISIA Anomaly Detection」は、ディープラーニングを活用した異常検知システムで、目視検査の自動化を支援します。
収益は、AIシステムのライセンス販売、導入に伴うカスタマイズ開発、および保守サービス料から得ています。顧客ごとに異なる検査環境や判定基準に合わせてAIモデルの構築やチューニングを行うため、導入コンサルティングの要素も含まれます。運営は同社が行っています。
■(4) その他
上記セグメントに含まれない新規事業等です。プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」などが含まれますが、TOPSIC事業は2025年2月末で譲渡されました。
収益はサービスの利用料等から得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社は第30期より連結財務諸表を作成しています。初年度となる当期の売上収益は約48億円、経常利益は約3億円となりました。連結ベースでの当期純利益は約6億円を確保し、経常利益率(JSONデータに基づく)は6.3%となっています。なお、過去の単体業績との単純比較はできませんが、事業規模は堅調に推移しています。
| 項目 | 2025年2月期 |
|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 48億円 |
| 経常利益 | 3.0億円 |
| 利益率(%) | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6.0億円 |
■(2) 損益計算書
当連結会計年度の損益状況です。第30期から連結決算を開始したため、比較対象となる前期連結数値はありません。売上高は約48億円、売上総利益は約15億円で、売上総利益率は32.5%となりました。営業利益は約3億円(営業利益率5.7%)を計上しています。
| 項目 | 2025年2月期 |
|---|---|
| 売上高 | 48億円 |
| 売上総利益 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.5% |
| 営業利益 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.0億円(構成比31%)、役員報酬が1.0億円(同8%)、研究開発費が1.0億円(同8%)を占めています。売上原価においては、外注加工費等の労務関連費用の比率が高い構造となっています。
■(3) セグメント収益
主力であるERP事業が売上の約8割を占めており、利益面でも全体を牽引しています。Object Browser事業は売上規模こそERP事業より小さいものの、高い利益率で安定した収益源となっています。AI事業およびその他事業は投資フェーズまたは構造改革中であり、損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| Object Browser事業 | 8億円 | 3億円 | 42.2% |
| ERP事業 | 39億円 | 7億円 | 18.2% |
| AI事業 | 0.9億円 | -0.2億円 | -24.0% |
| その他 | 0.4億円 | -0.1億円 | -34.1% |
| 調整額 | - | -7億円 | - |
| 連結(合計) | 48億円 | 3億円 | 5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
システムインテグレータのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益計上や株式売却益があったものの、税金支払い等によりマイナスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、株式売却収入があったものの、定期預金や固定資産取得による支出が上回り、マイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによりマイナスとなりました。
| 項目 | 2025年2月期 |
|---|---|
| 営業CF | -4億円 |
| 投資CF | -0.7億円 |
| 財務CF | -1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウエアを創り続ける」をミッションに掲げています。社会の変化や顧客ニーズを捉え、独自技術と社員の自由な発想を活かしたオリジナルのパッケージソフトウエアやサービスを開発・販売することで、市場ニーズに素早く対応し、高収益な事業構造を目指しています。
■(2) 企業文化
「風通しの良い相互尊重の精神あふれる職場環境をみんなで作り、みんなが働きやすい雰囲気の中で創造力、技術力を常に磨き、品質の高いソリューションを提供し続ける」ことを経営方針としています。IT業界において「人」こそが唯一の資産であるとの認識のもと、人材育成と働きやすい環境づくりを重視し、自律した社員の創造性を引き出すことを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョンとして「ものつくり企業のビジネスプロセスをITの力で本質的に変革する」を掲げています。2032年には以下の数値目標の達成を目指しています。また、直近の「2年経営計画」では、2025年度から2026年度を安定基盤確立とAI活用創成期と位置付けています。
* 2025年度:売上高55億円、営業利益4.5億円(営業利益率8.2%)
* 2026年度:売上高63億円、営業利益6億円(営業利益率9.5%)
* 2032年:売上高120億円、営業利益20億円(営業利益率16.6%)
■(4) 成長戦略と重点施策
「業務系システム」「AI」「開発ツール」の3領域に資源を集中し、BtoBエンタープライズ向けソリューションの強化を図っています。具体的には、AI技術を全事業に取り入れる「AIファースト戦略」や、粗利率35.0%を目指す収益基盤の改善、SAP事業・製造ソリューション事業の売上20億円規模への育成を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
未来に求められる「問題発見・予測・創造性」を持つ人材の育成を目指し、教育制度の整備と積極的な投資を行っています。独自のスキルマップを活用したキャリア育成を推進するとともに、エンジニア等の優秀な人材確保のため、働き方の多様化やオフィス環境の改善、オンボーディングプログラムによる早期戦力化に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 35.7歳 | 6.8年 | 6,565,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 71.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(90.9%(定着率として記載))、有給休暇取得率(81.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 失敗プロジェクトの発生
同社はシステム開発やパッケージ導入を行っていますが、過去には大きな失敗プロジェクトが発生した事例があります。一つのプロジェクトの失敗でも損失が発生し、規模によっては経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、PMO機能の強化により、潜在的なリスクの早期発見と対処に努めています。
■(2) ビジネスモデルの転換遅れ
IT業界ではパッケージ販売からクラウドサービス(SaaS)への移行が進んでいます。この変化に対応できずビジネスモデルの転換が遅れた場合、成長鈍化により業績が低迷する恐れがあります。同社は「OBPM Neo」や「GRANDIT miraimil」などのクラウドサービス事業を拡大し、対応を進めています。
■(3) 製品の重大な不具合(バグ)
ソフトウエア製品においてバグを完全に無くすことは困難ですが、販売後に予期せぬ重大な不具合が発生した場合、同社や製品の信用が低下し、業績に影響を与える可能性があります。開発最終段階での入念なテストを実施し、品質確保と信頼性の向上に努めています。



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