ソーバル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソーバル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のソフトウエア開発企業。主要事業はアプリやクラウド、組込みシステム等のエンジニアリング事業です。直近決算では、WEB・アプリ開発や組込み開発が堅調に推移し増収となりましたが、本社移転費用や投資有価証券評価損の計上などにより経常利益、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、ソーバル株式会社 の有価証券報告書(第43期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ソーバルってどんな会社?


独立系のソフトウエア開発企業として、アプリケーション、クラウド、組込みシステム等の開発を一括受託しています。

(1) 会社概要


同社は1983年に電子計算機販売等を目的として設立されました。1988年にキヤノンとの取引を開始し、2006年に現在の社名であるソーバルへ商号変更しました。2008年にジャスダック証券取引所へ上場し、2013年には東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は916名(単体765名)です。筆頭株主はエバーコアで44.23%を保有しています。第2位は従業員持株会、第3位は個人株主の川下奈々氏となっています。同社は、特定の親会社等は持たない独立系の企業として事業を展開しています。

氏名 持株比率
エバーコア 44.23%
ソーバル従業員持株会 9.03%
川下 奈々 5.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は推津 敦氏です。取締役会における社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
推津 敦 代表取締役社長 2005年同社入社。企画室長、取締役副社長、最高執行役員を経て、2018年より代表取締役社長兼最高経営責任者に就任。2024年5月より現職。
東谷 正雄 取締役 2006年同社入社。執行役員、専務取締役を経て、2020年取締役就任。2022年より営業部長を兼務。2023年より子会社コアード代表取締役社長を兼務。
山林 敬 取締役 2001年同社入社。執行役員、システムソリューション部長を経て、2017年取締役就任。2022年よりネットワークソリューション部長を兼務。
島谷 裕一 取締役 2001年同社入社。人事部長、専務執行役員、経営企画部長を経て、2024年5月より現職。


社外取締役は、髙木 友博(明治大学理工学部情報科学科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンジニアリング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) エンジニアリング事業


**事業概要**
ソフトウエア開発を行うエンジニアリング企業として、多岐にわたる開発支援サービスを提供しています。具体的には、Win・Mac・Linux等の「アプリケーション開発」、WEBアプリやクラウド環境構築等の「WEB・クラウド開発」、映像・音響・自動運転等の「組込み開発」を主力としています。

**収益モデルと担当企業**
収益は、顧客企業からの開発受託(請負契約や業務委託契約)およびエンジニア派遣(労働者派遣契約)による対価によって得ています。主な顧客にはソニーグループや富士通グループが含まれます。運営は、同社および連結子会社の株式会社コアード、アンドールシステムサポート株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調な増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近の第43期は増収ながらも、減益となっています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 75.3億円 81.6億円 81.6億円 81.7億円 86.8億円
経常利益 5.6億円 6.4億円 6.6億円 6.9億円 6.5億円
利益率(%) 7.4% 7.8% 8.1% 8.5% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.9億円 3.6億円 6.3億円 4.1億円 1.7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。特に販売費及び一般管理費の増加率が高く、営業利益率は低下しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 81.7億円 86.8億円
売上総利益 16.1億円 16.5億円
売上総利益率(%) 19.8% 19.0%
営業利益 6.7億円 6.1億円
営業利益率(%) 8.2% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与が3.4億円(構成比32%)、役員報酬が0.8億円(同7%)を占めています。また、売上原価においては労務費が50億円(構成比90%)と大半を占めており、労働集約的なコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


同社グループはエンジニアリング事業の単一セグメントです。WEB・アプリ開発や組込み開発における新規案件の獲得や、マニュアル制作業務の需要増により、売上高は増加しました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
エンジニアリング事業 81.7億円 86.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**パターン:改善型**
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで本業から現金を生み出し、投資活動によるキャッシュ・フローもプラス(資産売却等)となっています。一方、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスで、配当金の支払い等を行っています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 1.0億円 8.4億円
投資CF -0.2億円 2.7億円
財務CF -2.6億円 -2.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「技術で社会に貢献する」を基本理念に掲げています。「企業にとって、最大の資源は人材である」との考えに基づき、「人」を根幹に据えた事業戦略を推進しています。高い技術と意識を持つ人材が充実した環境で働くことが、価値あるテクノロジーを生み出す近道であると考えています。

(2) 企業文化


顧客の求める価値として「高・守・即」の実践を重視しています。「高」は高信頼・高技術・高品質など、「守」は守納期・守環境・守機密・守法令、「即」は即対応を意味します。また、仕事とプライベートのバランスを大切にする社風の構築にも力を注いでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、継続的な成長を実現するために、売上高の増加とともに適正な利益を確保することを目標としています。具体的な数値目標としては、中長期的な利益率の向上に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


新事業領域の開拓、優秀な人材の確保・育成、業務効率化による利益率向上を重要課題としています。特にAI関連事業を成長の柱と位置づけ、技術者の教育や営業知見の深耕、外部との共創を進めています。また、プロジェクトマネジメントスキルの高いリーダー育成により、中長期的な利益体質の強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を最重視し、技術スキルだけでなく人間性を重視した採用を行っています。入社後は、社会人教育や技術基礎教育、OJTを通じた実践的な技術力の向上を図ります。また、継続的なスキルアップが可能な各種育成プログラムを提供し、優秀なエンジニアの育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 36.9歳 12.0年 5,680,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用) 82.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 92.6%


※女性管理職比率は公表義務の対象ではないため記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保に関するリスク


エンジニアリング事業においては、技術・技能を有する優秀な人材の常時確保が不可欠です。同社グループは採用や教育に努めていますが、必要な人材を適切に確保・育成できない場合、業績に影響を与える可能性があります。また、原価の大部分を占める労務費が増加し、契約金額に転嫁できない場合も収益への影響が懸念されます。

(2) エンジニアリング事業の変動要因


契約金額は顧客企業の業種や景気動向、技術革新への対応力等に左右されます。競争激化や顧客ニーズへの対応不足により契約金額が下落する可能性があります。また、提供するサービス等において品質上のトラブルが発生した場合、追加コストや損害賠償等により、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報の漏洩に関するリスク


業務上、多くの個人情報や顧客の機密情報を取り扱っています。管理体制の強化や教育を行っていますが、万一情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の低下を招き、事業活動や業績に重大な影響を与える可能性があります。また、システム停止等による影響もリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。