※本記事は、株式会社メタリアル の有価証券報告書(第21期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メタリアルってどんな会社?
AI翻訳や生成AIサービスを中核に、人間による翻訳事業やメタバース事業を展開するテクノロジー企業です。
■(1) 会社概要
2004年にAI型機械翻訳の研究開発を目的に創業し、同年ロゼッタへ商号変更しました。2015年に東証マザーズへ上場し、2021年には持株会社体制への移行に伴い現社名へ変更しました。AI翻訳の「T-4OO」等のサービスを展開しつつ、2024年には建築VRなどを手掛けるSTUDIO55を子会社化するなど、事業領域を拡大しています。
現在の連結従業員数は229名(単体15名)です。筆頭株主は創業者で代表取締役CEOの五石順一氏で、第2位は同社役員、第3位は資産管理会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 五石 順一 | 23.87% |
| ジェイコブソン 陽子 | 4.95% |
| 合同会社MCC | 3.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは五石 順一氏です。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 五石 順一 | 代表取締役CEO | ノヴァ経営企画室長、グローヴァ代表取締役等を経て、2004年同社代表取締役CEOに就任。グループ各社の代表や取締役を歴任し、2025年5月より現職。 |
| 米倉 豪志 | 取締役CTO | メディアドゥ取締役、オルツ副社長等を経て、2023年同社取締役CTOに就任。Droidrive Inc.代表取締役等を兼務し、2025年3月よりSTUDIO55取締役。 |
社外取締役は、秀島 博規(元みずほ証券金融法人部長)、筒井 高志(元ジャスダック証券取引所社長)、時政 和宏(元SBI証券常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AI事業」「HT事業」「メタバース事業」を展開しています。
■(1) AI事業
AI翻訳および生成AIサービスの提供を行っています。特定の業種や専門分野に特化した「専門文書AI」として『T-4OO』『ラクヤク』などを展開するほか、企業のビジネス活用に特化した「事業創出AI」として『Metareal AI』などの生成AIサービスを提供しています。
収益は、主に法人顧客からのサービス利用料(SaaS形式)や受託開発費などから得ています。運営は主にロゼッタが行っており、その他CLASSⅢ、T-4PO Construction、RPAコンサルティング、シグナンスなどが事業を担っています。
■(2) HT事業
創業以来の事業であり、人間による翻訳(Human Translation)、通訳、語学教育などの業務受託サービスを提供しています。AI翻訳ではカバーしきれない高度な翻訳ニーズや、対面でのコミュニケーション支援などに対応しています。
収益は、顧客企業からの翻訳料、通訳料、研修受託費などから得ています。運営は主にグローヴァが行っており、Xtra(清算手続き中)も同事業を構成していましたが、事業整理が進められています。
■(3) メタバース事業
最新テクノロジー(AI、AR、VR等)を統合し、場所や時間の制約を超えた交流や生活を実現するサービスの開発・提供を行っています。現在は特に建築デザイン市場向けに注力しており、デジタルツインの自動生成やVR空間の構築などを手掛けています。
収益は、システム開発やソリューション提供の対価として得ています。運営は主にMATRIXおよび2024年に子会社化したSTUDIO55が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年2月期に大幅な赤字を計上しましたが、その後回復し黒字化しています。直近の2025年2月期は、AI事業の受託開発等が寄与し売上高は40億円台を維持しましたが、先行投資や販管費の増加などにより利益面では減益となりました。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 40.0億円 | 41.6億円 | 42.9億円 | 41.8億円 | 40.8億円 |
| 経常利益 | 0.5億円 | -0.5億円 | 5.2億円 | 8.0億円 | 1.1億円 |
| 利益率(%) | 1.3% | -1.1% | 12.0% | 19.2% | 2.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.7億円 | -12.4億円 | 0.3億円 | 5.3億円 | 3.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減の41億円、売上総利益も27億円となりました。営業利益は前期の7.5億円から1.2億円へと大きく減少しています。これは、生成AI等の新規事業への研究開発投資や組織体制強化に伴う人件費等の増加が影響しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 42億円 | 41億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.5% | 66.2% |
| 営業利益 | 7.5億円 | 1.2億円 |
| 営業利益率(%) | 17.9% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が8億円(構成比30%)、業務委託費が3億円(同12%)を占めています。売上原価は売上高の約34%を占めています。
■(3) セグメント収益
AI事業は受託開発が増加し売上は堅調ですが、先行投資により利益は減少しました。HT事業は減収減益となりました。メタバース事業はSTUDIO55の連結化により売上が増加しましたが、依然としてセグメント損失の状態が続いています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| AI事業 | 31億円 | 31億円 | 9億円 | 5億円 | 16.0% |
| HT事業 | 11億円 | 9億円 | 1億円 | 1億円 | 10.0% |
| メタバース事業 | 0.0億円 | 1億円 | -2億円 | -2億円 | -190.1% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | -1億円 | -1億円 | -1億円 | -2億円 | - |
| 連結(合計) | 42億円 | 41億円 | 7億円 | 1億円 | 2.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
メタリアル社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは収入となりました。これは主に、事業活動から得られた利益や、固定資産の売却による収入などが要因です。投資活動によるキャッシュ・フローは支出となりました。これは主に、固定資産や子会社株式の取得、無形資産の取得などが要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは支出となりました。これは主に、借入金の返済や社債の償還などが要因です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9.3億円 | 0.6億円 |
| 投資CF | -1.2億円 | -1.3億円 |
| 財務CF | -2.7億円 | -1.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人類を場所・時間・言語・物理的な制約からの解放」を企業ミッションとして掲げています。具体的には、AI、AR、VRなどの最新テクノロジーを統合し、世界中の人々が「いつでもどこでも誰とでも言語フリーで」交流し、生活し、仕事し、人生を楽しめる世界の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、高成長時代の強みであった組織能力を取り戻すため、事業戦略、行動、コミュニケーション、人事制度における価値基準を明文化し、全社員で徹底する方針を掲げています。また、「成果に見合った報酬」や「通り一遍ではないチャレンジング採用」を推進し、問題意識があるにもかかわらず沈黙することを是としない風土醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、HT事業を「キャッシュカウ」、AI事業を「短中期の成長戦略」、メタバース事業を「5~10年後を見据えた長期成長戦略」と位置付けて経営を行っています。具体的な数値目標としてのKPI等は有価証券報告書には記載されていませんが、各事業の役割を明確化し、リソース配分を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
AI事業では、従来のSaaSから「垂直統合型AIエージェント」へのシフトを進め、特に製薬業界向けの「ラクヤク」に注力しています。メタバース事業では、建築デザイン分野に強みを持つSTUDIO55を子会社化し、AI技術によるデジタルツイン自動生成ソリューションの提供を開始するなど、産業向けの実装を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、ビジョン実現のために親会社およびAI事業関連子会社において環境整備を進めています。年4回の給与更改を実施し、適時適切な評価反映を行うほか、子会社への権限移譲を進めています。採用においては学歴や性差に関係なく、ポジションへの適合性を重視し、副業や業務委託からの正社員登用など柔軟な形態を取り入れています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 43.0歳 | 4.9年 | 11,407,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇消化率(65.5%)、45時間を超過する時間外労働の発生件数(3人月)、平均年収(ロゼッタ)(6,490千円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新について
AI分野は技術革新のスピードが極めて速く、新しいサービスが次々と生まれています。同社も最新情報の蓄積や技術導入に取り組んでいますが、予期せぬ急激な変化に対応が遅れた場合、サービスの陳腐化や競争力の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 需要の変動について
AI事業やHT事業の主な顧客は製薬、化学、製造、IT業界等の事業会社です。法制度の変更、景気変動、業界再編、または顧客の内製化や外注方針の変更などにより需要が変動した場合、業績に影響が出る可能性があります。また、HT事業は国際情勢の影響を受けやすく、グローバル展開企業の需要変動リスクもあります。
■(3) 競合と参入障壁について
公的機関である国立研究開発法人情報通信研究機構が開発する専門分野別翻訳エンジンが競合関係にあります。同機構のような公的資金や影響力を持つ組織による技術開発やサービス提供が進むことで、ユーザーの獲得競争が激化し、同社の事業が圧迫される可能性があります。



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