メタリアル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メタリアル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メタリアルは東京証券取引所グロース市場に上場し、AI型機械翻訳サービスやメタバース、従来型の人間翻訳などを展開しています。最新の有価証券報告書によると、AI領域への戦略的投資や新規子会社の貢献により、連結売上高は45億円(前年同期比9.9%増)、営業利益は2億円(同82.4%増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社メタリアルの有価証券報告書(第22期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メタリアルってどんな会社?


人工知能を活用した機械翻訳や生成AIソリューション、メタバース事業などを展開するテクノロジー企業です。

(1) 会社概要


2004年2月に現代表の五石順一氏がAI型機械翻訳の研究開発事業を創業しました。2006年に自動翻訳「熟考」をリリースし、2015年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2021年9月に持株会社体制へ移行し社名をメタリアルに変更、2024年にSTUDIO55を子会社化し事業領域を拡大しています。

同社グループは連結で172名、単体で13名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の五石順一氏で、第2位はジェイコブソン陽子氏です。

氏名 持株比率
五石 順一 22.03%
ジェイコブソン 陽子 4.95%
合同会社MCC 3.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは五石順一氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
五石 順一 代表取締役CEO グローヴァ代表取締役などを経て、2004年より有限会社Pearly Gates(現同社)代表取締役CEO。
米倉 豪志 取締役CAIO メディアドゥ取締役、オルツ取締役などを経て、2025年より同社取締役CAIO。


社外取締役は、秀島 博規(元和光証券新宿支店長)、筒井 高志(元野村證券専務取締役)、時政 和宏(元みずほ証券渋谷支店長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AI事業」「HT事業」「メタバース事業」「AI/MV Marketing事業」を展開しています。

(1) AI事業


AIを活用した文書・音声の機械翻訳サービスや生成AIソリューション、受託開発サービスを提供し、顧客企業のグローバル対応を支援しています。
顧客企業からのサービス利用料や受託開発費が主な収益源です。運営は主にロゼッタが担当し、業種に特化した垂直統合型AIエージェントの展開を進めています。

(2) HT事業


従来型の人間による翻訳や通訳、さらに企業向けの語学教育等の業務受託サービスを法人向けに提供しています。
翻訳物の納品や通訳・研修サービス実施の対価として、顧客企業から料金を受け取る収益モデルです。同事業の運営は主にグローヴァが担当しています。

(3) メタバース事業


AIやVRなどの最新技術を統合し、建築デザインのVR分野などを中心に各種サービスを提供しています。
サービスの利用料や制作費等から収益を獲得しています。運営はMATRIXおよびSTUDIO55のVR事業が担当しています。

(4) AI/MV Marketing事業


AIやメタバースの先端技術を活用し、M&Aを通じて建築や製薬などの専門領域で顧客基盤を活かした事業拡大を目指しています。
BIMプラグイン開発やDXサポートなどの高付加価値分野の強化により収益を獲得しています。運営はSTUDIO55(VR事業を除く)が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は安定して40億円台を推移し、当期は45億円に拡大しました。利益面では先行投資の影響で変動が見られますが、当期は増収に伴い経常利益も回復傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 42億円 43億円 42億円 41億円 45億円
経常利益 -0.5億円 5億円 8億円 1億円 2億円
利益率(%) -1.1% 12.0% 19.2% 2.8% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -19億円 -3億円 2億円 11億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も堅調に推移しています。販管費を適切にコントロールした結果、営業利益および営業利益率の改善に繋がっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 41億円 45億円
売上総利益 27億円 27億円
売上総利益率(%) 66.2% 61.1%
営業利益 1億円 2億円
営業利益率(%) 2.9% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が8億円(構成比30%)、業務委託費が3億円(同10%)、広告宣伝費が3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるAI事業は先行投資により売上が減少したものの、HT事業は収益性が改善し、新設されたAI/MV Marketing事業が連結売上の増加に大きく寄与しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
AI事業 31億円 28億円
HT事業 9億円 7億円
メタバース事業 0.1億円 1億円
AI/MV Marketing事業 1億円 8億円
連結(合計) 41億円 45億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た利益で借入金の返済を進めつつ、手元資金で成長投資を行っている健全な状態です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 0.6億円 3億円
投資CF -1億円 -2億円
財務CF -1億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も42.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業ミッションとして「人類を場所・時間・言語・物理的な制約からの解放」を掲げています。AIやVRなどの最新テクノロジーを統合し、世界中の人々がいつでもどこでも誰とでも言語フリーで交流し、生活し、仕事し、人生を楽しめる世界を実現することを目的としています。

(2) 企業文化


多様性の尊重のみならず全従業員を保護するため、「コミュニケーション向上に関する基本方針」を制定しています。問題意識があるにもかかわらず沈黙することや、事実に基づかない他者否定による沈黙風土の醸成を防止し、事実に基づいた真の平等を徹底しています。

(3) 経営計画・目標


中短期の目標として、2030年2月期に連結売上高150億円の達成を目指しています。AI事業の自律的成長やメタバース事業の長期育成、M&Aによる成長を組み合わせ、機動的かつ規律ある財務運営で目標の実現を図ります。

* 連結売上高150億円(2030年2月期)

(4) 成長戦略と重点施策


HT事業をキャッシュカウとし、AI事業への選択と集中を推進しています。特に「翻訳特化エージェンティックAI」「製薬特化エージェンティックAI」「建築特化エージェンティックAI」「事業創出エージェンティックAI」の4つの重点戦略領域に経営資源を集中し、生産性の革新と高付加価値化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「成果に見合った報酬」「通り一遍ではないチャレンジング採用」を人的経営方針に掲げています。学歴や新卒・中途による区分を設けずポジションへの適性を重視し、副業・業務委託から正社員への登用も採用する柔軟な雇用形態を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 43.0歳 5.1年 12,609,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇消化率(87.0%)、45時間を超過する時間外労働の発生件数(1人月)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制や制度の変更による影響


インターネット関連の法的規制が新設されたり、HT事業が派遣法等の適用対象となった場合、許認可の取得に時間を要するなど、事業運営が制約される可能性があります。

(2) AI分野の急激な技術革新への対応遅れ


AI分野は技術革新のスピードが速く、予期せぬ急激な変化への対応が遅れた場合、既存サービスの陳腐化や競争力の低下を引き起こし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) SaaS提供のシステム障害やサイバー攻撃


AI事業はインターネット環境でSaaSとして提供されており、予期せぬシステム障害、第三者によるサイバー攻撃、自然災害などが発生した場合、サービスの安定供給に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。