㈱ティムス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

㈱ティムス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティムスは東京証券取引所グロース市場に上場する創薬型バイオベンチャー企業です。大学等の研究成果を基盤とし、SMTP化合物を活用した急性期脳梗塞や急性腎障害などの医薬品候補物質の研究開発を行っています。業績面では新薬開発に伴う先行投資が継続しており、当期は売上収益がなく純損失を計上しています。


※本記事は、株式会社ティムスの有価証券報告書(第22期、自 2025年3月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ティムスってどんな会社?


大学等の研究成果を基盤とした医薬品候補物質の研究開発を行い、グローバル市場への展開を目指す創薬ベンチャーです。

(1) 会社概要


2005年2月に東京農工大学の医薬シーズを実用化する目的で設立されました。2014年8月に脳梗塞治療薬候補「TMS-007」の国内第Ⅰ相臨床試験を開始し、2018年6月にはバイオジェン社と導出オプション契約を締結しました。2022年11月に東証グロース市場への上場を果たし、2024年1月には同治療薬の国内開発販売権を取得するなど事業基盤を強化しています。

従業員数は単体で18名です。筆頭株主及び第2位株主はベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合となっており、第3位株主には開発提携などの関係がある事業会社の新日本科学が名を連ねています。

氏名 持株比率
大和日台バイオベンチャー投資事業有限責任組合 9.03%
THVP-1号投資事業有限責任組合 6.25%
新日本科学 3.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は若林拓朗氏が務めており、取締役6名のうち社外取締役が2名を占めています。

氏名 役職 主な経歴
若林拓朗 代表取締役社長 1989年リクルート入社。先端科学技術エンタープライズ代表取締役などを経て2011年5月同社代表取締役。2018年5月より現職。
蓮見惠司 取締役会長 2003年東京農工大学農学部教授。2005年6月同社取締役、2011年5月代表取締役社長を経て2021年7月より現職。
伊藤剛 取締役 1993年新日本製鐵入社。サイエンティア管理部長等を経て2018年2月同社入社。同年5月より現職。
横田尚久 取締役 1986年フナイ薬品工業入社。サノフィ執行役員研究開発部門長等を経て2024年11月同社入社。2025年5月より現職。


社外取締役は、髙梨健(新日本科学取締役副会長)、並川玲子(独立コンサルタント)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品開発事業」の単一セグメントを展開しています。

医薬品開発事業


同社は、大学等の研究機関による研究開発成果を基盤とした医薬品候補物質の研究開発を行い、グローバルの医薬品市場に展開する創薬ベンチャー企業です。主に可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)を標的としたSMTP化合物の研究開発を進め、急性期脳梗塞や急性腎障害など様々な炎症性疾患を対象とした治療薬の開発に取り組んでいます。

収益源は、研究段階から早期臨床段階までを同社で行い、後期臨床段階以降に国内外の製薬会社へ開発製造販売権を付与することで得られる契約一時金やマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入です。疾患分野によっては自社での販売も視野に入れています。事業の運営は同社単体で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


医薬品の研究開発には多額の先行投資を要するため、直近3期間において売上収益は計上されていません。研究開発費を中心とした事業費用の先行により、経常利益および当期利益は継続してマイナスとなっており、研究開発型バイオベンチャー特有の業績推移を示しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期 2025年12月期
売上高 - - -
経常利益 -9.4億円 -6.3億円 -7.1億円
利益率(%) - - -
当期利益(親会社所有者帰属) -9.6億円 -6.6億円 -7.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間において売上高および売上総利益は計上されていません。これは医薬品候補物質の研究開発段階にあり、導出先からのマイルストーン収入等が発生していないためです。継続的な研究開発活動への投資により営業利益はマイナスとなっています。

項目 2025年2月期 2025年12月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -9.1億円 -7.0億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、支払報酬料が0.6億円(構成比25%)、役員報酬が0.6億円(同24%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は先行投資段階で赤字ですが、将来の成長に向けて新株発行等で資金調達を行いながら投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年2月期 2025年12月期
営業CF -4.9億円 -7.8億円
投資CF -0.3億円 -0.0億円
財務CF 0.0億円 6.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-25.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は95.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「飽くなき探求心と挑戦で、世界を変えるクスリを創る」を企業理念に掲げています。大学等の研究室で発見された化合物を研究段階から着手し、グローバル市場に向けた本格的な臨床開発まで進める中で培ったスタイルを発展させ、サイエンスに真摯に向き合うことを重視しています。世界のアンメット・メディカル・ニーズ(いまだ有効な治療方法が見つかっていない病気に対する新しい治療薬や治療法へのニーズ)に応えるべく、画期的な医薬品を患者に届けることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、専門分野ごとの縦割り型ではなく、研究・製造・薬事・開発等に専門性を有する人材が自由闊達に議論を交わせるような組織作りを目指しています。個性と多様性が尊重され、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる働きやすい職場づくりに努めており、少人数でも多面的な判断をできる強いコアチームを作っていくことを重視する企業文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


一日も早い治療薬の上市を目指す同社は、研究開発から上市までのプロセス管理を行うことが最も重要な経営管理と位置づけており、パイプラインの充実を図ることを経営の安定化および企業価値増大に不可欠としています。現在研究開発段階にあるため、客観的な数値指標を用いた経営目標は設定していませんが、開発プロセスの推進とパイプラインの拡充を重要な目標として事業活動を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、大学等で創出された創薬シーズを研究段階から臨床試験まで進め、海外製薬会社と提携してきた実績を活かし、さらなる成長を図る戦略を描いています。急性期脳梗塞患者を対象とした「TMS-007」など臨床開発段階にある各パイプラインを基盤として上場企業としての基礎固めを行うとともに、アカデミアの創薬シーズを積極的に導入してパイプラインを拡充し、日本のアカデミアとグローバル産業の橋渡しを実現することに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


新規作用機序に基づく医薬品開発という高度な能力と経験を要するミッションを遂行するため、優秀な人材の確保と育成を重要視しています。専門分野の枠を超えて自由闊達に議論できる組織体制を構築し、やりがいを感じられる風土を醸成しています。また、柔軟な労働形態(裁量労働制やフレックスタイム制)とテレワークを組み合わせることで、ワークライフバランスを推進し、パフォーマンスを最大化する環境整備を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 45.8歳 4.4年 8,292,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新薬開発の不確実性と法規制対応


医療用医薬品の開発には多額の投資と長い時間を要し、前臨床試験等の成功がその後の承認を保証するものではありません。各国の厳格な薬事関連法規の審査において、有効性や安全性などの十分なデータが得られない場合や追加の臨床試験が必要となった場合、上市の延期や中止を余儀なくされるリスクがあります。

(2) 提携先への依存と収益の変動


同社の収益計画は、導出先である提携企業からのマイルストーンおよびロイヤリティ収入に強く依存しています。提携先が実施する臨床試験で良好な結果が得られないことや、提携先における戦略変更によって開発が中止・延期された場合、想定していた収益が得られず、事業計画や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 先行投資による赤字継続と資金繰り


医薬品の研究開発には多額の初期投資が必要であり、投資回収まで長期を要するため、先行投資の期間中は営業赤字やキャッシュ・フローのマイナスが継続する傾向があります。安定的な収益源を確保するまでの間、開発進捗に応じた適切な時期や条件で資金調達が実施できない場合、事業継続に懸念が生じるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。