大和ハウス工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和ハウス工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和ハウス工業は東京証券取引所プライム市場に上場し、戸建住宅や賃貸住宅、マンション、商業施設、事業施設などの開発・建設を中核とする総合生活基盤産業を展開する企業です。直近の業績は、賃貸住宅や商業施設の堅調な推移などにより増収増益を達成しており、多角的な事業ポートフォリオを強みに安定的な成長を続けています。


※本記事は、大和ハウス工業の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 大和ハウス工業ってどんな会社?


戸建住宅や賃貸住宅、各種施設の開発から環境エネルギーまで幅広い事業を展開する総合生活基盤企業です。

(1) 会社概要


大和ハウス工業は1955年の創業とパイプハウス発売から始まり、1959年のミゼットハウス発売により日本のプレハブ住宅の礎を築きました。1961年に株式を上場し、その後商業施設や物流施設の開発へと領域を拡大しています。近年は米国や豪州などの海外企業のM&Aによりグローバル展開を加速させています。

同社グループは連結従業員55,712名、単体従業員16,508名を擁する体制です。筆頭株主および第2位、第3位株主は、いずれも機関投資家の信託財産等を管理・運用する信託銀行等が占めており、安定した資本基盤を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.09%
日本カストディ銀行(信託口) 5.62%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行) 2.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性18名、女性2名の計20名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長(CEO)は芳井敬一氏、代表取締役社長(COO)は大友浩嗣氏が務めています。役員20名のうち、社外取締役は7名です。

氏名 役職 主な経歴
芳井敬一 代表取締役会長(CEO)海外本部長 1990年同社入社。取締役上席執行役員海外事業部長等を経て、2017年より代表取締役社長。2019年より最高経営責任者(CEO)、2025年より現職。
大友浩嗣 代表取締役社長(COO) 1984年同社入社。常務執行役員、住宅事業本部長、経営戦略本部長等を経て、2024年より取締役専務執行役員。2025年より現職。
香曽我部武 代表取締役副社長(CFO)経営管理本部長 1980年同社入社。上席執行役員経営管理本部経理部長等を経て、2015年より最高財務責任者(CFO)。2019年より現職。
村田誉之 代表取締役副社長技術本部長 大成建設代表取締役社長、同副会長を経て2021年同社入社、取締役副社長。2022年より代表取締役副社長、2025年より現職。
下西佳典 代表取締役専務執行役員ビジネス・ソリューション本部長 1981年同社入社。常務執行役員流通店舗事業担当、建築事業本部長等を経て、2025年より現職。
永瀬俊哉 取締役専務執行役員ハウジング・ソリューション本部長 1987年同社入社。環境エネルギー事業本部長、住宅事業本部長等を経て、2025年より現職。
柴田英一 取締役常務執行役員経営戦略本部長 1983年同社入社。経営管理本部事業開発部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、桑野幸徳(元三洋電機社長)、関美和(元メイ・コーポレーション代表取締役)、吉澤和弘(元NTTドコモ社長)、伊藤雄二郎(元三井住友フィナンシャルグループ代表取締役)、南部智一(元住友商事副社長執行役員)、福本ともみ(元サントリーホールディングス推進本部長)、近藤雄一郎(元SMBC日興証券社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「戸建住宅」「賃貸住宅」「マンション」「商業施設」「事業施設」「環境エネルギー」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

戸建住宅事業


戸建住宅の注文請負や分譲を行い、一般消費者に向けて高品質な住環境を提供しています。自由設計と規格住宅のメリットを組み合わせた商品の拡販や、リフォーム、買取販売事業も展開しています。
主な収益源は顧客からの請負代金や分譲代金であり、事業の運営は大和ハウス工業を中心に、米国においてはStanley Martin Holdingsなど複数の海外子会社が展開しています。

賃貸住宅事業


賃貸住宅の開発・建築をはじめ、管理・運営および仲介サービスを提供しています。オーナーの資産価値向上に資する経営提案や、入居者への住環境の向上を通じたサポートを行っています。
主な収益源はオーナーからの建築請負代金や、入居者からの家賃、管理手数料です。運営は大和ハウス工業のほか、大和リビングなどが担当しています。

マンション事業


首都圏や地方中核都市を中心に、新築分譲マンションの開発から分譲、引渡し後の管理までを総合的に行っています。また、法人向けの賃貸社員寮などの開発も手がけています。
主な収益源は購入者からの物件販売代金や、入居者・管理組合からの管理手数料です。運営は大和ハウス工業のほか、大和ライフネクストなどが担っています。

商業施設事業


店舗や複合商業施設、オフィスビル、都市型ホテルなどの開発・建築から、テナントリーシング、管理・運営までを一体的に行っています。
主な収益源はテナント企業からの建築請負代金や賃貸料、ホテル等の宿泊料です。運営は大和ハウス工業のほか、大和リースや大和ハウスリアルティマネジメント、ロイヤルホームセンターなどが担当しています。

事業施設事業


物流施設、製造施設、医療介護施設などの開発・建設や管理・運営を行っています。特に物流インフラを支える大型物流センターの構築や、法人向けの拠点サポートを強化しています。
主な収益源は法人顧客からの建築請負代金や施設の売却益、物流サービス手数料です。運営は大和ハウス工業のほか、フジタや大和物流などが手がけています。

環境エネルギー事業


太陽光や風力などを活用した再生可能エネルギー発電所の開発・建築をはじめ、発電事業や電力小売事業を展開しています。
主な収益源は発電した電力の売電収入や、顧客への電力小売収入、発電設備等の請負代金です。運営は大和エネルギーなどが担当しています。

その他事業


金融事業やその他の関連事業を幅広く展開し、同社グループの事業活動を多面的にサポートしています。
主な収益源はグループ内や外部顧客からの各種手数料や利息収入などです。運営は大和ハウスフィナンシャルなどが手がけています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の売上高は直近5年間において継続して増加傾向にあり、順調な事業拡大が見て取れます。利益面についても、一時的な増減はあるものの、経常利益ベースではおおむね右肩上がりの成長を維持しており、強固な収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 44,395億円 49,082億円 52,029億円 54,348億円 55,769億円
経常利益 3,762億円 4,560億円 4,275億円 5,160億円 5,720億円
利益率(%) 8.5% 9.3% 8.2% 9.5% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,654億円 2,053億円 2,445億円 2,502億円 2,181億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期比で増加しています。利益率も改善傾向にあり、効率的な事業運営による収益性の向上がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 54,348億円 55,769億円
売上総利益 11,011億円 12,418億円
売上総利益率(%) 20.3% 22.3%
営業利益 5,463億円 6,149億円
営業利益率(%) 10.1% 11.0%

(3) セグメント収益


各事業セグメントにおいて概ね増収を達成しています。特に戸建住宅事業は国内外での販売が好調に推移し、売上高が大きく伸びました。一方、事業施設事業では開発物件の売却減少により減収となっていますが、全体としては安定した収益基盤を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
戸建住宅 11,353億円 13,348億円
賃貸住宅 13,740億円 14,261億円
マンション 2,608億円 2,715億円
商業施設 12,214億円 12,831億円
事業施設 13,322億円 11,462億円
環境エネルギー 860億円 870億円
その他 252億円 281億円
連結(合計) 54,348億円 55,769億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4,206億円 1,893億円
投資CF -4,934億円 -7,261億円
財務CF -447億円 6,311億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.4%で非製造業の市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者精神を原点に、社会課題のあるところに事業機会を見いだし、その解決を通じて企業としての役割を果たすことを方針としています。創業100周年にあたる2055年を見据え、社会課題を起点に新たな「未来価値」の創造に挑み続けることを掲げています。

(2) 企業文化


「停滞は後退」という創業者の言葉を本質とし、現状維持にとどまることなく新たな価値を生み出し続ける文化を重視しています。また、社是に掲げる「事業を通じて人を育てる」という考え方を大切にし、自ら考え、挑戦し、やり抜く経験を通じて人財が成長し、組織が進化していく風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「創業100周年にあたる2055年に売上高10兆円」という目標を掲げています。直近の第7次中期経営計画では、定量目標として設定した営業利益5,000億円という節目を1年前倒しで達成しており、売上高および利益目標の着実な実現に向けた道筋を示しています。

* 2055年に売上高10兆円
* 第7次中期経営計画の目標(営業利益5,000億円)を達成

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の枠組みにとらわれずデータセンター事業など新たな領域へ挑戦し、安全で安定したデジタル基盤の構築による持続的な発展を支える戦略を進めています。また、資産効率を意識したバランスシート経営を推し進め、長期滞留資産の資金化による新たな成長投資への循環を図っています。さらに、リブネス事業を通じて住宅ストックの循環を促進し、顧客・建物LTVの最大化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「Keep Learning, Growing, and Dreaming.」をコンセプトに、従業員がプロフェッショナルとして自律的にキャリアを開発できるよう、機会・仲間・職場づくりの基盤整備に注力しています。多様な人財の確保や、一人ひとりの個性や価値観に寄り添った成長機会の提供を通じて、自律的なキャリア形成を支援し、人的資本の価値向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.7歳 15.7年 11,011,469円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 87.3%
男女賃金差異(全労働者) 59.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 62.2%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 64.1%


また、同社は「従業員の状況等」などのセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.52%)、若年層の定着率(87.6%)、60歳到達後の雇用継続率(96.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制の改廃と新設

同社グループは建設や不動産等の多種多様な事業を展開しており、国内外で様々な法的規制の適用を受けています。関連する法的規制の改廃や新設が行われた場合や、万一これらに違反した場合には、事業活動への制約や社会的信用の毀損が生じ、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業における不確実性

米国や豪州などで海外事業を拡大していますが、進出国におけるインフレ、為替相場の変動、政治・経済情勢の不確実性、紛争の発生など、国際取引特有の外的要因によるリスクを負っています。これらが顕在化し、事業の遅延やコスト上昇等が生じた場合、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 資材価格や人件費の高騰

気候変動や地政学リスク等に伴うエネルギー・資材価格の高騰に加え、少子高齢化による労働人口の減少を受けた人件費の上昇が続いています。代替品の採用や物流の効率化、施工現場の省力化等の対策を進めていますが、想定を超えるコスト上昇が継続した場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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