※本記事は、大和ハウス工業株式会社 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大和ハウス工業ってどんな会社?
戸建・賃貸住宅から商業・物流施設まで幅広く手掛ける総合建設企業であり、海外事業や環境エネルギー事業も展開しています。
■(1) 会社概要
1955年に創業し、同年に創業商品「パイプハウス」を、1959年にプレハブ住宅の原点となる「ミゼットハウス」を発売しました。1961年に大阪・東京証券取引所に上場を果たし、2001年には大和団地を吸収合併しました。2013年にフジタを完全子会社化するなど事業領域を拡大し、2017年には米国のStanley Martin社を連結子会社化して海外展開を加速させています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は50,390名、単体では16,192名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は外国銀行の常任代理人である銀行となっており、国内外の機関投資家が高い比率で株式を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 17.44% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.57% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行) | 2.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性17名、女性2名の計19名で構成され、女性役員比率は10.5%です。代表取締役社長は 大友 浩嗣 氏です。社外取締役比率は47.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 芳井 敬一 | 代表取締役会長(CEO)海外本部長 | 1990年6月同社入社。営業本部長、海外事業管掌などを経て2017年代表取締役社長に就任。2019年より最高経営責任者(CEO)。2025年4月より現職。 |
| 大友 浩嗣 | 代表取締役社長(COO) | 1984年12月同社入社。住宅事業本部長、経営戦略本部長、海外本部長などを歴任。2025年4月より現職。 |
| 香曽我部 武 | 代表取締役副社長(CFO)経営管理本部長 | 1980年4月同社入社。経営管理本部経理部長などを経て2015年最高財務責任者(CFO)。2019年6月より現職。 |
| 村田 誉之 | 代表取締役副社長技術本部長 | 1977年大成建設入社。同社代表取締役社長などを経て2021年6月同社入社。2022年6月より現職。 |
| 下西 佳典 | 代表取締役専務執行役員ビジネス・ソリューション本部長 | 1981年4月同社入社。流通店舗事業本部長、建築事業本部長などを歴任。2025年4月より現職。 |
| 永瀬 俊哉 | 取締役専務執行役員ハウジング・ソリューション本部長 | 1987年4月同社入社。環境エネルギー事業本部長、住宅事業本部長などを歴任。2025年4月より現職。 |
| 有吉 善則 | 取締役常務執行役員技術本部品質保証担当 | 1982年4月同社入社。技術本部総合技術研究所長、法令遵守・品質保証推進本部長などを歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、桑野幸徳(元三洋電機社長)、関美和(MPower Partners GP)、吉澤和弘(元NTTドコモ社長)、伊藤雄二郎(元SMBC副頭取)、南部智一(住友商事副会長)、福本ともみ(元サントリーHD執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「戸建住宅」「賃貸住宅」「マンション」「商業施設」「事業施設」「環境エネルギー」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 戸建住宅事業
戸建住宅の注文請負・分譲を行っています。国内では「xevo」シリーズなどの住宅を提供し、海外では米国などで事業を展開しています。
収益は、顧客からの請負工事代金や分譲住宅の販売代金から得ています。運営は主に大和ハウス工業、Stanley Martin Holdings, LLC、大和ハウスリフォーム、大和ハウスリアルエステートなどが行っています。
■(2) 賃貸住宅事業
賃貸住宅の開発・建築、管理・運営および仲介を行っています。土地オーナーへの土地活用提案や入居者募集などを行います。
収益は、オーナーからの請負工事代金、入居者からの家賃収入や管理手数料などから得ています。運営は主に大和ハウス工業、大和リビングなどが行っています。
■(3) マンション事業
分譲マンションの開発・分譲・管理を行っています。「プレミスト」ブランドなどのマンションを提供しています。
収益は、顧客へのマンション販売代金や管理組合からの管理委託料などから得ています。運営は主に大和ハウス工業、大和ライフネクスト、大和房屋(常州)房地産開発有限公司などが行っています。
■(4) 商業施設事業
商業施設の開発・建築、管理・運営を行っています。ロードサイド店舗やショッピングセンターなどを手掛けています。
収益は、テナント企業やオーナーからの請負工事代金、賃貸料、管理運営費などから得ています。運営は主に大和ハウス工業、大和リース、大和ハウスリアルティマネジメント、ロイヤルホームセンターなどが行っています。
■(5) 事業施設事業
物流・製造施設、医療介護施設等の開発・建設、管理・運営を行っています。「DPL」ブランドなどの物流施設を開発しています。
収益は、顧客からの請負工事代金や施設の賃貸料、管理運営費などから得ています。運営は主に大和ハウス工業、フジタ、大和物流などが行っています。
■(6) 環境エネルギー事業
再生可能エネルギー発電所の開発・建築、再生可能エネルギーの発電および電力小売事業等を行っています。
収益は、発電設備の請負工事代金や売電収入、電力小売料金などから得ています。運営は主に大和ハウス工業、大和エネルギー、エネサーブなどが行っています。
■(7) その他事業
金融事業およびその他の事業を行っています。リゾートホテル事業の譲渡なども行われました。
収益は、各種サービスの利用料や手数料などから得ています。運営は主に大和ハウス工業、大和ハウスフィナンシャル、大和ハウスインシュアランスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は4兆円台前半から5兆円台半ばへと右肩上がりに成長しています。経常利益も3000億円台から5000億円台へと拡大傾向にあります。利益率も安定しており、当期純利益も増加基調を維持しています。全体として、事業規模の拡大と収益性の向上が継続していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 41,268億円 | 44,395億円 | 49,082億円 | 52,029億円 | 54,348億円 |
| 経常利益 | 3,378億円 | 3,762億円 | 4,560億円 | 4,275億円 | 5,160億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 8.5% | 9.3% | 8.2% | 9.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,825億円 | 1,654億円 | 2,053億円 | 2,445億円 | 2,502億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は約19%から20%強へと改善傾向にあります。営業利益も増加しており、営業利益率は10%程度に達しています。コストコントロールと収益性の高い事業へのシフトが進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 52,029億円 | 54,348億円 |
| 売上総利益 | 9,924億円 | 11,011億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.1% | 20.3% |
| 営業利益 | 4,402億円 | 5,463億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が2,201億円(構成比40%)、その他が938億円(同17%)、租税公課が471億円(同8%)を占めています。売上原価については内訳の詳細データがありません。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントにおいて売上高が増加しており、特に事業施設事業と賃貸住宅事業がグループ全体の売上を牽引しています。商業施設事業や戸建住宅事業も堅調に推移しています。環境エネルギー事業は微減となりましたが、全体としては各事業がバランスよく成長している状況です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 戸建住宅 | 9,445億円 | 11,353億円 |
| 賃貸住宅 | 12,487億円 | 13,740億円 |
| マンション | 4,330億円 | 2,608億円 |
| 商業施設 | 11,757億円 | 12,214億円 |
| 事業施設 | 12,592億円 | 13,322億円 |
| 環境エネルギー | 1,017億円 | 860億円 |
| その他 | 401億円 | 252億円 |
| 連結(合計) | 52,029億円 | 54,348億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行いつつ、新たな成長投資も行っている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,023億円 | 4,206億円 |
| 投資CF | -3,104億円 | -4,934億円 |
| 財務CF | 974億円 | -447億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者精神を原点とし、社会のニーズに応えることで新しい商品・サービスを提供し続けることを目指しています。また、将来の夢(パーパス)を起点とし、事業を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーからの信頼・共感を得ることで持続的な成長を実現することを掲げています。
■(2) 企業文化
創業者の言葉である「停滞は後退だ」を心に刻み、大企業となってもベンチャー精神を持ち続けることを重視しています。また、社是に「事業を通じて人を育てること」を掲げ、人材育成を最優先事項としています。「一隅を照らす」を信念とし、現場主義を貫きながら、顧客や地域社会に寄り添う姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
第7次中期経営計画を推進しており、最終年度の目標達成が視野に入っています。創業100周年となる2055年には売上高10兆円を目指すという長期的なビジョンを掲げています。
* 売上高5兆5,000億円
* 営業利益5,000億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」を基本方針とし、国内外での成長戦略を描いています。海外事業では、米国での戸建住宅事業の拡大や欧州・ASEAN・中国での事業展開を加速させ、売上高1兆円を目指します。国内では、リブネス事業(ストック事業)の強化やデータセンター事業の拡大、カーボンニュートラルへの対応などを推進し、新たな収益の柱を育成します。また、組織再編により「稼ぐ力」を強化し、経営判断のスピードアップを図ります。
* 海外事業売上高1兆円
* 海外事業営業利益1,000億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「事業を通じて人を育てる」という社是に基づき、人材(人的資本)を最大の財産と捉えています。多様な人材が「個」と「組織」の価値を最大化できるよう、成長の場と機会を提供し、自律的なキャリア形成を支援しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な価値観や視点を活かすことでイノベーションを創出し、健全で公平な職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 15.6年 | 9,917,586円 |
※平均年間給与については、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 68.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用女性比率(24.7%)、障がい者雇用率(2.51%)、若年層(入社3年後)の定着率(81.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制
国内外において建設・不動産事業を展開する中で、建築基準法や宅地建物取引業法など多岐にわたる法的規制の適用を受けます。これらの規制の改廃や新設、あるいは法令違反が発生した場合、事業活動に制約が生じたり、社会的信用が毀損されたりすることで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業
米国やアジアなどで事業を展開しており、現地の政治・経済情勢の変動、為替相場の変動、法規制の変更、予期せぬ商慣習の違いなどがリスク要因となります。特に地政学的リスクやインフレーション、金利上昇などが顕在化した場合、事業計画の遅延や収益性の低下を招く可能性があります。
■(3) 住宅関連政策・税制の変更
住宅ローン減税や各種補助金制度などの住宅取得支援策の変更・廃止、消費税率の引き上げなどは、住宅需要に直接的な影響を与えます。これらの政策変更により顧客の購買意欲が減退した場合、戸建住宅やマンションの販売が低迷し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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