五洋建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

五洋建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所プレミア市場に上場しており、国内土木、国内建築、海外建設事業を主力としています。当連結会計年度の業績は、手持工事の順調な進捗により売上高は増収となりましたが、海外工事における損失計上などが影響し、各利益段階においては減益となりました。


※本記事は、五洋建設株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 五洋建設ってどんな会社?


海洋土木(マリコン)の最大手として国内外でインフラ整備を牽引し、陸上土木や建築事業も展開する総合建設会社です。

(1) 会社概要


同社の起源は1896年に広島県呉市で発足した水野組に遡り、1967年に現在の五洋建設へ改称しました。1962年の上場を経て、臨海部を中心とした土木工事で実績を積み重ねてきました。近年では2015年にシンガポールに国際土木・建築本部を新設し、2019年には海外事業の本社機能を同国へ移転するなど、グローバル展開を加速させています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は3,888人、単体では3,335人が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位も同様に株式会社日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家による保有比率が高い構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.65%
日本カストディ銀行(信託口) 8.08%
ステート ストリート バンクアンド トラスト カンパニー 505001 3.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は清水 琢三氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
清水 琢三 代表取締役社長(執行役員社長) 1983年入社。名古屋支店長、常務執行役員土木部門土木営業本部長等を経て、2014年6月より現職。日本埋立浚渫協会会長等を兼務。
植田 和哉 代表取締役(執行役員副社長)土木部門担当(兼)土木部門土木営業本部長 1983年入社。執行役員土木部門土木営業本部副本部長、専務執行役員等を経て、2017年4月より現職。
山下 朋之 代表取締役(執行役員副社長)経営管理本部長(兼)ICT推進室担当 1986年入社。執行役員経営管理本部長兼総務部長兼CSR推進室長、専務執行役員等を経て、2024年4月より現職。
野口 哲史 取締役(専務執行役員)土木部門土木本部長(兼)安全品質環境担当 1983年入社。執行役員名古屋支店長、常務執行役員土木部門土木本部長等を経て、2018年4月より現職。
渡部 浩 取締役(専務執行役員)建築部門建築営業本部長 1984年入社。執行役員建築部門建築営業本部副本部長、常務執行役員等を経て、2019年4月より現職。
日高 修 取締役(常務執行役員)国際部門国際土木本部長 1988年入社。国際部門国際土木本部副本部長、執行役員等を経て、2023年4月より現職。


社外取締役は、高橋 秀法(元新日本有限責任監査法人経営専務理事)、中野 北斗(元みずほ証券常務執行役員)、関口 美奈(元有限責任あずさ監査法人マネージング・ディレクター)、林田 博(元国土交通港湾局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内土木事業」「国内建築事業」「海外建設事業」および「その他」事業を展開しています。

国内土木事業


臨海部を中心とした港湾、空港、トンネル、橋梁などのインフラ整備に関する土木工事を請け負っています。官公庁や民間企業からの発注に基づき、浚渫や埋立などの海洋土木から陸上土木まで幅広く手掛けています。

工事代金としての請負収益が主な収益源です。運営は主に五洋建設が行っており、連結子会社である五栄土木や洋伸建設なども工事の一部を施工しています。大型の港湾工事や国土強靭化に資するインフラ工事などが中心となっています。

国内建築事業


オフィスビル、マンション、物流倉庫、工場、公共施設などの建築工事を請け負っています。民間企業や官公庁を顧客とし、企画・設計から施工までを一貫して提供する案件も手掛けています。

工事請負契約に基づく収益が主となります。運営は五洋建設が中心となって行い、連結子会社であるペンタビルダーズなどが工事の一部を担っています。近年では物流施設やデータセンター、都市再開発案件などが増加しています。

海外建設事業


シンガポールを中心とした東南アジアや香港などで、大型の埋立工事、港湾、鉄道、病院などの建設プロジェクトを展開しています。現地の政府機関や民間企業が主な顧客です。また、大型自航式浚渫船の賃貸・運航管理も行っています。

海外における建設工事の請負代金が主な収益源です。五洋建設および現地連結子会社のUG M&E社などが施工を行っています。また、連結子会社のアンドロメダ・ファイブ社などが船舶の賃貸・運航管理事業を営んでいます。

その他


不動産開発、造船、建設資材の販売、機器リース、環境関連事業などを展開しています。不動産の有効活用やグループ内のリソースを活用した関連事業を行っています。

不動産の販売・賃貸収入、船舶の建造・修繕費、事務機器のリース料などが収益源です。五洋建設が不動産事業を、警固屋船渠が造船事業を、ペンタテクノサービスがリース事業をそれぞれ運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、特に直近2期で大きく伸長しています。一方、利益面では資材価格の高騰や海外事業での損失計上などの影響により変動が見られ、当期は前期比で減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 4,711億円 4,582億円 5,022億円 6,177億円 7,275億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 305億円 157億円 14億円 272億円 188億円
利益率(%) 6.5% 3.4% 0.3% 4.4% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 187億円 91億円 2億円 168億円 108億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い売上原価も増加しており、原価率の上昇が見られます。売上総利益は減少し、利益率も低下しました。販売費及び一般管理費は微増しましたが、営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,177億円 7,275億円
売上総利益 499億円 442億円
売上総利益率(%) 8.1% 6.1%
営業利益 292億円 217億円
営業利益率(%) 4.7% 3.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が83億円(構成比32%)、調査研究費が33億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内土木事業と国内建築事業は、手持工事の進捗により増収を達成しましたが、国内建築は利益も大幅に増加した一方、国内土木は横ばいとなりました。海外建設事業は売上が微増しましたが、シンガポールや香港での工事損失計上により大幅な赤字となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内土木事業 2,664億円 3,073億円 278億円 278億円 9.0%
国内建築事業 1,893億円 2,545億円 49億円 90億円 3.5%
海外建設事業 1,506億円 1,518億円 -42億円 -156億円 -10.3%
その他 114億円 139億円 6億円 5億円 3.7%
調整額 29億円 30億円 0億円 0億円 0.2%
連結(合計) 6,177億円 7,275億円 292億円 217億円 3.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 91億円 -233億円
投資CF -64億円 -232億円
財務CF 67億円 439億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.1%で市場平均をやや上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会との共感」「豊かな環境の創造」「進取の精神の実践」を経営理念として掲げています。また、サステナビリティ経営を実践する「真のグローバル・ゼネラルコントラクター」をビジョンとし、サステナブルな建設事業活動を通じて社会の持続的な発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「誠実な企業活動」と「人間尊重、社会・環境との共生」を行動規範としています。法令遵守や公正な取引に加え、人権の尊重、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進、安全・安心な職場環境づくりを重視し、現場からのサステナビリティへの取り組みを推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2023~2025年度)において、最終年度である2025年度の目標として、売上高7,270億円、当期純利益250億円、ROE13.9%、総還元性向78.5%を掲げています。財務の健全性を維持しつつ、株主価値向上に向けた取り組みを明確化しています。

* 売上高:7,270億円
* 当期純利益:250億円
* ROE:13.9%
* 総還元性向:78.5%

(4) 成長戦略と重点施策


「良質な社会インフラ・建築物を提供する企業」「現場生産性向上を推進するDX先進企業」「豊かな地球環境を創造するGX先進企業」などを基本戦略としています。特に、洋上風力発電建設への積極的な参入や、BIM/CIM活用によるDX推進、ZEB化やブルーカーボンなどのGXへの取り組みを強化し、成長を目指しています。

* 設備投資:約300億円/年(洋上風力建設用大型作業船の建造など)
* 研究開発投資:約30億円/年

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人材がお互いを認め合い、いきいきと働き、成長を実感できる企業」を目指し、DE&Iの推進、人材の確保と育成、ウェルビーイングの向上を基本方針としています。新卒・キャリア採用の強化、外国籍社員の活躍推進、シニア社員の活用に加え、階層別研修やOJTを通じた能力開発に注力し、働き方改革による環境整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 16.9年 9,253,158円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 112.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.4%
男女賃金差異(正規雇用) 62.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.4%


※男性育児休業取得率は、育児目的の休暇及び同社における特別有給休暇制度による休暇取得を含みます。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒入社女性総合職比率(17.6%)、新卒3年以内離職率(14.9%)、障がい者雇用率(2.91%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先の信用リスク


建設工事は取引額が大きく、代金の多くが引渡し時に支払われるため、発注者や協力業者の信用不安による資金回収不能や施工遅延が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、与信審査の実施や回収期間のリスク検証を行い、対応しています。

(2) 海外工事におけるカントリーリスク


東南アジアを中心に海外事業を展開しているため、現地の予期しない法規制の変更、テロ、戦争、紛争などが業績に影響を及ぼす可能性があります。現地の専門家から定期的に情報を入手し、リスクの早期把握と未然防止に努めています。

(3) 工事用資材価格、労務費などの変動


工事用資材や労務費が高騰した場合、工事原価の上昇により利益率が低下し、業績に悪影響を与える可能性があります。早期調達や集中購買、価格動向の調査を行うとともに、物価スライド条項の適用に努めることでリスクに対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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