※本記事は、株式会社長谷工コーポレーション の有価証券報告書(第108期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 長谷工コーポレーションってどんな会社?
マンション建設で業界トップクラスの実績を誇るゼネコン。用地情報の収集から企画・設計・施工・販売・管理までを一貫して行う「土地持込」型のビジネスモデルに特徴があります。
■(1) 会社概要
1937年に兵庫県尼崎市で創業し、1946年に株式会社長谷川工務店を設立。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1965年に第一部へ指定替えとなりました。1988年に現在の長谷工コーポレーションへ商号を変更しています。2015年に総合地所株式会社を子会社化するなど、グループ規模を拡大しています。
2025年3月31日時点の連結従業員数は8,307名(単体2,556名)です。筆頭株主は投資ファンドのいちごトラスト・ピーティーイー・リミテッドで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も同様に信託銀行の信託口となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 19.69% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.29% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役社長は熊野 聡氏です。社外取締役比率は29.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 熊野 聡 | 代表取締役社長 | 1985年入社。人事担当等の管理部門や営業部門の要職を歴任し、2020年取締役常務執行役員、2023年取締役専務執行役員を経て、2025年4月より現職。 |
| 池上 一夫 | 代表取締役副会長執行役員グループ技術管掌 | 1980年入社。設計部門エンジニアリング事業部長などを経て、2014年取締役常務執行役員。2020年代表取締役社長に就任し、2025年4月より現職。 |
| 辻 範明 | 取締役会長 | 1975年入社。2005年代表取締役専務執行役員、2014年代表取締役社長、2020年代表取締役会長を経て、2022年4月より現職。 |
| 楢岡 祥之 | 取締役副社長執行役員経営管理部門 財務・経理・IR管掌 | 1982年入社。経営企画部門や海外事業等を担当し、2015年常務執行役員。2023年4月より現職。 |
| 三森 国吉 | 取締役副社長執行役員建設管掌 兼 グループ建設関連事業管掌 | 1983年入社。建設部門の統括部長等を経て、2020年常務執行役員。2025年4月より現職。 |
| 山口 徹 | 取締役専務執行役員営業管掌 兼 グループ分譲・販売・流通事業管掌 | 1988年入社。営業部門や横浜支店管掌等を歴任し、2020年常務執行役員。2025年4月より現職。 |
| 吉村 直子 | 取締役執行役員経営管理部門 サステナビリティ推進担当 兼グループシニア事業管掌 | 1992年入社。長谷工総合研究所主席研究員などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、一村一彦(元三菱商事都市開発社長)、長崎真美(弁護士)、小椋敏勝(元西日本電信電話副社長)、藤井晋介(元三井物産副社長)、藤井健(元首都高速道路代表取締役専務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設関連事業」「不動産関連事業」「サービス関連事業」「海外関連事業」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■建設関連事業
同社が主体となり、マンション等の企画・設計から施工までを行う総合建設業を営んでいます。また、子会社の不二建設、長谷工ファニシング等が建設請負や建設資機材の販売・レンタルを行い、細田工務店が戸建住宅の施工等を手掛けています。
収益は、主にマンション建設工事等の請負代金として、事業主(デベロッパー等)から受け取ります。運営は、同社および不二建設、長谷工ファニシング、細田工務店などが行っています。
■不動産関連事業
マンションや戸建住宅の分譲事業、および賃貸事業を展開しています。新築分譲マンションの開発・販売が中心となります。
収益は、分譲マンションや戸建住宅の販売代金、および賃貸不動産の賃料収入として、一般顧客や法人から受け取ります。運営は、長谷工不動産ホールディングスが統括し、長谷工不動産、総合地所、長谷工総合開発、長谷工ホームなどが行っています。
■サービス関連事業
マンションの大規模修繕やリフォーム、賃貸管理、分譲マンションの管理、販売受託、不動産流通仲介、高齢者住宅運営など、住宅に関連する多岐にわたるサービスを提供しています。
収益は、管理組合からの工事代金や管理委託費、不動産売買の仲介手数料、入居者からの賃料や利用料などとして受け取ります。運営は、長谷工リフォーム、長谷工ライブネット、長谷工アーベスト、長谷工コミュニティ、長谷工シニアウェルデザインなどが行っています。
■海外関連事業
アメリカ合衆国(ハワイ州など)において、不動産の開発・販売および商業施設の運営を行っています。
収益は、開発した不動産の販売代金や商業施設の運営収入などから得ています。運営は、主にHASEKO America,Inc.およびその子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は増加傾向にあり、直近では1兆1,774億円に達しています。利益面では、経常利益は800億円台で推移していますが、利益率は徐々に低下傾向にあります。当期純利益は2025年3月期に減少しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,094億円 | 9,097億円 | 10,273億円 | 10,944億円 | 11,774億円 |
| 経常利益 | 718億円 | 819億円 | 883億円 | 833億円 | 834億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | 9.0% | 8.6% | 7.6% | 7.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 483億円 | 545億円 | 593億円 | 560億円 | 345億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、売上高は増加していますが、売上総利益率は微減しています。販売費及び一般管理費の増加もあり、営業利益は横ばいから微減となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10,944億円 | 11,774億円 |
| 売上総利益 | 1,606億円 | 1,665億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.7% | 14.1% |
| 営業利益 | 857億円 | 847億円 |
| 営業利益率(%) | 7.8% | 7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が277億円(構成比34%)、地代家賃が41億円(同5%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が5,245億円(売上原価合計の52%)と最も大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
建設関連事業と不動産関連事業が増収となりましたが、建設関連事業は減益となりました。不動産関連事業は増収増益と好調でした。海外関連事業は営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設関連事業 | 7,100億円 | 7,351億円 | 578億円 | 535億円 | 7.3% |
| 不動産関連事業 | 1,277億円 | 1743億円 | 192億円 | 240億円 | 13.8% |
| サービス関連事業 | 2,557億円 | 2,645億円 | 192億円 | 181億円 | 6.8% |
| 海外関連事業 | 10億円 | 35億円 | -49億円 | -57億円 | - |
| 調整額 | - | - | -56億円 | -52億円 | - |
| 連結(合計) | 10,944億円 | 11,774億円 | 857億円 | 847億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
長谷工コーポレーションは、事業活動から生じる利益及び借入金・社債により調達した資金を主な財源としています。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務や受入金の減少により、前連結会計年度から大幅に減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却等により、前連結会計年度よりも支出超過額が縮小しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金・社債の調達及び返済に伴う資金増加が前連結会計年度より減少した結果、支出超過となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,150億円 | 39億円 |
| 投資CF | -398億円 | -325億円 |
| 財務CF | -8億円 | -205億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は企業理念として「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」を掲げています。また、ありたい姿として「環境に配慮した、安全で安心な「住まい」と豊かで快適な「暮らし」を国内外に提供し続ける。」ことを目指しています。中期経営計画における基本方針として、「住まい」と「暮らし」のリーディングカンパニーとして、持続的な成長と企業価値向上を実現することを掲げています。
■(2) 企業文化
同社は行動指針として、「あらゆるステークホルダーの期待に応えるため、自信と誇りを持ち、総合力と行動力で進化し続ける。」および「E・S・Gすべての観点から社会的責任を全うすることで、事業活動そのものを通じて持続可能な社会の実現に貢献する。」を定めています。これらに基づき、社会課題の解決に取り組みつつ、将来の成長に向けた取り組みを推進する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」(2026年3月期~2031年3月期)を策定しており、安定的に1,000億円以上の経常利益を計上できる収益基盤の確立を目指しています。
* 2028年3月期 連結経常利益:1,000億円以上
* 2031年3月期 連結経常利益:1,300億円以上
* ROE:10%を上回る水準を維持し、2031年3月期までに13%程度を目指す
■(4) 成長戦略と重点施策
ありたい姿の実現に向けた事業戦略として、建設関連事業の更なる伸長と深化、不動産関連事業の拡充と質的向上、管理運営事業の成長、海外事業の収益化、新たな領域への挑戦を掲げています。経営基盤強化として、財務戦略、技術開発の強化、DXの加速、サステナビリティへの取り組みの深化、コーポレート機能の強化を進めています。
* 6か年合計ネット投資額:4,000億円(国内不動産1,200億円、海外不動産400億円、建設関連・R&D 1,000億円、DX関連400億円、新規事業・M&A等1,000億円)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営計画の遂行と新規事業・DX推進を可能にするため、厚みのある人材・組織作りを目指しています。生産性とエンゲージメントの向上を追求し、多様な社員が活躍できる環境を整備するとともに、高成果=高処遇を実現することで社員の意欲を喚起する方針です。また、社員一人ひとりのキャリアを通じた成長と、個と組織の力が最大発揮される状態を目指し、自律的な能力開発を後押ししています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.3歳 | 15.6年 | 10,578,846円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.9% |
| 男性育児休業取得率 | 60.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 53.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年休取得率(68.6%)、ストレスチェック受検率(99.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 分譲マンションに関わる事業への依存
同社グループは、首都圏、近畿圏および東海圏での分譲マンション事業をコアとしており、特に建設事業への依存度が高くなっています。そのため、マンション供給量や販売状況、金利動向、住宅関連政策等の影響を強く受け、業績が変動する可能性があります。また、土地持込による受注モデルの優位性が維持できなくなるリスクに対し、各事業領域の拡大による収益基盤の強化を図っています。
■(2) 建設市場の動向
マンション建設分野への参入増加による価格競争の激化や、建設資材・労務費の急激な高騰、協力業者の不足による生産能力低下などが生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は集中購買体制によるコスト競争力強化や着工時期の予測を踏まえた運用に努めています。
■(3) 法的規制、行政規制等
建築基準法や建設業法など多岐にわたる法令・規制を遵守する必要がありますが、法令違反や予期せぬ規制強化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に建築基準法の改正や検査厳格化による工期の遅延・中止はリスク要因となります。なお、連結子会社が独占禁止法違反の疑いで立入検査を受けた事実があり、これに関連するリスクも存在します。



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