ジャパンM&Aソリューション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパンM&Aソリューション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場するM&Aアドバイザリー企業。「相談されたら断らない」を掲げ、中小企業の事業承継等を支援しています。直近の業績は、売上高が増加したものの、人材投資等のコスト増により経常損失および当期純損失を計上し、減益(赤字拡大)となりました。


※本記事は、ジャパンM&Aソリューション株式会社 の有価証券報告書(第6期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャパンM&Aソリューションってどんな会社?


中小企業の後継者不足解決を目指し、M&Aアドバイザリーサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2019年にM&Aアドバイザリー事業を目的に設立されました。2020年には不動産取引に係るサービス拡充のため宅地建物取引業の免許を取得しています。事業拡大に伴い本社移転を重ね、設立から約4年後の2023年10月に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

2025年10月末時点の従業員数は単体で41名です。筆頭株主は創業者で社長の三橋透氏(37.87%)で、第2位はUH Partners2 投資事業有限責任組合、第3位は不動産事業を展開するディア・ライフとなっています。

氏名 持株比率
三橋 透 37.87%
UH Partners2 投資事業有限責任組合 7.88%
株式会社ディア・ライフ 7.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は三橋透氏が務めています。取締役5名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は80.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三橋 透 代表取締役社長 旧三和銀行入行後、フィンテックグローバル取締役執行役員等を経て、2019年11月に同社を設立し代表取締役社長に就任。2020年4月より現職。


社外取締役は、今﨑恭生(元東洋不動産社長)、大山亨(有限会社セイレーン代表取締役)、阿部慎史(公認会計士・税理士)、酒井奈緒(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「M&Aアドバイザリー」事業を展開しています。

(1) M&Aアドバイザリー事業


日本における経営者の後継者不足解決や企業の事業発展のため、M&Aを実施したい企業に対してアドバイザリーサービスを提供しています。金融機関や税理士等の提携先から紹介を受け、譲渡希望企業と譲受希望企業の仲介を行います。「相談されたら断らない」方針のもと、規模や利益にとらわれず案件に取り組んでいます。

収益は、M&A成立時に譲渡企業・譲受企業双方から受領する「成約報酬」と、アドバイザリー契約に基づき譲渡企業から受領する「月額報酬」から構成されています。着手金を取らず月額報酬制を採用することで、顧客の初期負担を軽減しつつ安定収益基盤を構築しています。運営はジャパンM&Aソリューションが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第4期に7.5億円まで拡大しましたが、第5期以降は6.0億円台で推移しています。利益面では、第4期までは高い利益率を維持していましたが、第5期に赤字転落し、第6期も赤字幅が拡大しています。これは事業拡大に向けた人材投資等のコスト負担増によるものです。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 3.4億円 4.3億円 7.5億円 6.0億円 6.5億円
経常利益 0.5億円 0.6億円 1.7億円 -0.1億円 -0.5億円
利益率(%) 14.0% 14.1% 22.4% -2.4% -8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.3億円 0.4億円 1.3億円 -0.1億円 -0.9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業損失が拡大しています。特に人件費等の固定費負担が重くなっていることが読み取れます。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 6.0億円 6.5億円
売上総利益 1.8億円 1.8億円
売上総利益率(%) 30.7% 27.9%
営業利益 -0.1億円 -0.6億円
営業利益率(%) -2.5% -8.7%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が0.5億円(構成比21%)、給料手当が0.3億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はM&Aアドバイザリー事業の単一セグメントです。当期は新規アドバイザリー契約件数が大幅に増加し、成約組数も前期を上回ったことで増収となりましたが、人材関連コスト等の増加により利益面では苦戦しました。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期)
M&Aアドバイザリー事業 6.0億円 6.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ジャパンM&Aソリューションのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純損失や減損損失、株式報酬費用等の影響を受けたものの、法人税等の還付等により増加に転じました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や差入保証金の差入による支出により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出が主な要因となり、大幅な減少となりました。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF -1.2億円 0.1億円
投資CF -0.0億円 -0.1億円
財務CF 1.1億円 -0.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「安心して相談できるM&A会社であり続ける」をミッションに掲げ、手数料体系やガイドライン遵守等により安心感の醸成を目指しています。また、ビジョンとして「日本で一番支持されるM&A会社を目指す」とし、バリューには創業以来の方針である「相談されたら断らない」や「お客様のために」「リーズナブルな手数料」を据えています。

(2) 企業文化


創業以来の「相談されたら断らない」という方針が企業文化として根付いています。会社規模や利益にとらわれず、1組でも多くのM&A案件を成約させることを目的としており、小規模な案件や赤字企業の相談も断らずに対応する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と企業価値向上を目標とし、特に売上高および営業利益を重視する経営指標としています。より詳細な管理指標として、アドバイザリー契約数、M&Aアドバイザー人数、成約組数を設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、信用力の向上による選ばれる体制づくりや、最重要経営資源である人材の継続的な採用・育成を強化する方針です。また、組織的な案件進捗管理や社内管理体制の整備を進めるとともに、金融機関等の提携先の新規開拓・深耕により、安定的かつ継続的な案件獲得を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はM&A経験の有無に関わらず人材を採用し、案件の発掘から成約までを一気通貫で担当させることで、早期のスキル習得と戦力化を図っています。原則2人1組のチーム制を採用し、未経験者でも半年から1年程度で成約実績を積める環境を整備しています。今後は経験豊富な人材の採用も強化し、組織力の向上を目指します。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 35.9歳 2.1年 6,960,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 同業他社との競争激化


M&Aアドバイザリー事業は許認可等が不要で参入障壁が低いため、大手事業者や個人事業者など多数の競合が存在します。今後も新規参入等により競争が激化することが想定され、高品質なサービスの提供や人材確保ができない場合、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 案件確保の不確実性


事業成長には継続的な案件獲得が不可欠であり、同社は金融機関や士業等の提携先からの紹介に依存しています。提携先との関係深耕に努めていますが、目論見通りの提携先確保ができない場合や紹介優先度が低下した場合には、新規契約数や成約数が減少し、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保および育成


事業拡大には専門知識やM&A業務経験を有する人材が不可欠です。適切な人材の確保や教育研修が遅れた場合、または人材流出が生じた場合には、サービス品質の低下や提携先からの紹介減少を招き、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 案件の成約遅延・不成立


M&A案件は顧客の意向やデューデリジェンスの結果等により、条件交渉が難航し成約時期が遅れることや、不成立となる場合があります。これにより、見込んでいた売上計上時期にずれが生じ、四半期や年度ごとの業績変動要因となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。