※本記事は、株式会社アビスト の有価証券報告書(第20期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アビストってどんな会社?
自動車関連の設計開発アウトソーシングを主力とし、3D-CADを用いた技術サービスを提供する技術者集団です。
■(1) 会社概要
同社は2006年にJBSエンジニアリングとして設立され、エンジニアリング事業を譲り受けて事業を開始しました。2007年に現社名のアビストへ変更し、2013年にJASDAQ市場へ上場を果たしました。その後、2015年に東京証券取引所市場第一部へ銘柄指定され、2023年にはスタンダード市場へ移行しています。2025年にはベトナムに子会社を設立し、海外事業を開始しました。
2025年9月30日現在の単体従業員数は1,352名です。筆頭株主は事業会社である株式会社プロシードで、第2位は社員持株会、第3位は個人株主となっています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は進顕氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 進 顕 | 代表取締役社長 | 明治屋、三菱食品を経て、2012年同社入社。アビストH&F社長、常務、専務を経て、2022年10月より現職。 |
| 丸山 範和 | 常務取締役 | 神鋼電機、エブリネット等を経て2006年同社入社。総務部長、AIソリューション事業本部長等を歴任し、2022年10月より現職。 |
| 久留島 秀彦 | 取締役(常勤監査等委員) | 旧日本ビジネス開発を経て2006年同社入社。事業部長、横浜支店長、アビストH&F社長、監査室長等を歴任し、2022年12月より現職。 |
社外取締役は、高尾真紀子(法政大学大学院教授)、山本守(元あずさ監査法人代表社員)、江幡奈歩(阿部・井窪・片山法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「設計開発アウトソーシング事業」「美容・健康商品製造販売事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。
■設計開発アウトソーシング事業
自動車メーカーやその部品メーカー等を主な顧客とし、ハイエンド3次元CAD(3D-CAD)を用いた機械・機械部品の設計開発やソフトウェア開発を行っています。業務形態には、顧客企業で指揮命令を受ける「派遣業務」と、同社が指揮命令を行う「請負業務(受託型・常駐型)」があります。その他、3D-CAD教育や解析業務も手掛けています。
収益は、派遣契約に基づく派遣料金や、請負契約に基づく成果物の対価として顧客企業から受領します。運営は主にアビストが行っており、2025年4月からはベトナムの子会社VIETNAM ABIST CO., LTDも事業を開始しています。
■美容・健康商品製造販売事業
一般消費者や企業を対象に、飲料用水素水「浸みわたる水素水」などの製造販売を行っています。自社ブランドでの通販事業に加え、OEMによる飲料の受託製造も展開しています。
収益は、一般消費者への商品販売代金や、企業からのOEM受託製造による対価等です。運営はアビストがH&F熊本工場において行っています。
■不動産賃貸事業
顧客企業を対象に、同社が所有する不動産(東京都三鷹市の本社ビル1フロア)を賃貸しています。
収益は、テナントである顧客企業からの賃料収入です。運営はアビストが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、100億円台で推移しています。利益面では、経常利益が安定的に確保されており、利益率も高い水準を維持しています。特に直近の第20期では、主力の設計開発アウトソーシング事業における単価改善が進んだことなどにより、売上高、各利益ともに前期を上回る結果となりました。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 94億円 | 95億円 | 100億円 | 106億円 |
| 経常利益 | 4.5億円 | 7.4億円 | 7.4億円 | 9.1億円 | 9.8億円 |
| 利益率 | 5.0% | 7.9% | 7.8% | 9.1% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.6億円 | 2.1億円 | 7.3億円 | 6.1億円 | 6.5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は27%台で安定しています。営業利益についても増益となっており、本業の収益力が向上していることがわかります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 106億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 29億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.4% | 27.6% |
| 営業利益 | 9.0億円 | 9.6億円 |
| 営業利益率(%) | 9.0% | 9.1% |
販売費及び一般管理費のうち、その他経費が9.8億円(構成比49%)、給料及び手当が5.8億円(同29%)を占めています。売上原価においては、労務費が73.2億円で全体の94.2%を占めており、労働集約的な事業構造となっています。
■(3) セグメント収益
設計開発アウトソーシング事業が全社売上の大半を占めており、前期比で増収となりました。これは単価改善や請負要員の増加が寄与しています。一方、美容・健康商品製造販売事業は減収となりましたが、配送効率化により利益は黒字化しています。不動産賃貸事業は安定的に推移していますが、一時的な費用発生により減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| 設計開発アウトソーシング事業 | 98億円 | 105億円 |
| 美容・健康商品製造販売事業 | 0.6億円 | 0.5億円 |
| 不動産賃貸事業 | 0.6億円 | 0.6億円 |
| 調整額 | -0.9億円 | -1.0億円 |
| 連結(合計) | 100億円 | 106億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アビストのキャッシュ・フローの状況は、営業活動による資金は増加し、投資活動および財務活動による資金は減少しました。営業活動では、主に税引前当期純利益と未払金の減少が資金増加に貢献しました。投資活動では、関係会社出資金の払込や無形固定資産の取得により資金が使用されました。財務活動では、主に配当金の支払いが資金減少の要因となりました。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.7億円 | 4.5億円 |
| 投資CF | 0.1億円 | -3.4億円 |
| 財務CF | -4.1億円 | -4.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「顧客主義(取引先との共生によるパートナーシップの確保)」、「社員主義(社員の自主自律による価値創造の確保)」、「成果主義(機会平等と評価公平性の確保)」を経営理念として掲げています。また、「取引先の信頼と安心の確保に基づくサービスの提供」、「社員の生活向上と安定の確保」などを事業目的として定めています。
■(2) 企業文化
同社は、「設計技術集団」としての事業基盤を重視しており、創業の精神として「設計技術者が自らのために、ともに働き合う設計技術者集団の確立」を掲げています。技術者が夢や希望を持ち、いきいきと働ける環境整備に取り組んでおり、独自のコンピテンシーモデル(アビストWay)をベースとしたスキル管理や教育を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「デジタルソリューション企業」をビジョンに掲げ、2027年9月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。
* 売上高:125億円
* 営業利益:13億円
* 売上高営業利益率:10.4%
* 当期純利益:9.1億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「デジタルソリューション企業」を目指し、既存の設計開発事業の強化に加え、解析事業やDXソリューションなどの新領域拡大を図ります。具体的には、EV化に伴う軽量化設計やソフトウェア開発の需要取り込み、解析ソリューションの深化、顧客向けDXツールの開発を推進します。また、オフショア開発を含めたグローバル展開も進めていきます。
* 即戦力となる技術者の獲得(経験者採用強化)
* 技術者教育の抜本的見直し
* 資本提携・事業提携の推進
* システム入替による業務効率性向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な成長に向け、高付加価値人材の育成を最重要課題としています。独自の「アビストWay」に基づくスキル管理や、デジタル技術と課題解決スキルを併せ持つ「デジタルソリューション人材」の育成を強化しています。また、多様な人材の確保に向けて新卒・キャリア採用を積極的に行い、性別や国籍を問わず活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 35.0歳 | 9.3年 | 5,129,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 72.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 52.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(6.9%)、有給休暇取得日数(15.7日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制について
主力事業である労働者派遣業務は労働者派遣法により、請負業務は民法等により規制されています。また、水素水等の製造販売は食品衛生法等の規制対象です。法令遵守を徹底していますが、違反が生じた場合や、法改正により事業に重大な影響が及ぶ場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 競合について
設計開発アウトソーシング業界における競争が激化した場合、技術者数の減少、単価下落、請負金額の減少などが懸念されます。同社は優秀な技術者の確保や教育に注力していますが、急激かつ深刻な競合状況の悪化は、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人件費の上昇について
主力事業の売上原価の90%以上を労務費が占めているため、労働者の賃金上昇は収益性の悪化に直結します。物価上昇や賃上げ要請を背景に国内の平均賃金が上昇する中、大幅かつ急激な賃金上昇が生じた場合、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
■(4) 社会保険料率の上昇について
同社では派遣・請負を問わず全社員が常用雇用者として社会保険に加入しています。そのため、年金制度や健康保険制度の改正等により社会保険料率が上昇した場合、会社の負担増となり、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。