イトクロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イトクロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(グロース市場)に上場しており、学習塾予備校情報ポータルサイト「塾ナビ」等の教育メディアサービスを主要事業としています。直近の業績は、売上高が減少したものの、広告宣伝費の抑制等により経常利益、当期純利益ともに黒字転換を果たし、増益トレンドとなっています。


※本記事は、株式会社イトクロ の有価証券報告書(第20期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イトクロってどんな会社?


教育領域に特化したメディアサービスを展開し、「塾ナビ」をはじめとする国内最大級のポータルサイトを運営する企業です。

(1) 会社概要


2006年に設立された同社は、翌2007年に学習塾予備校情報サイト「塾ナビ」の提供を開始しました。その後、2012年に学校情報サイト「みんなの学校情報」を開始するなど事業を拡大し、2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はグロース市場に移行しています。

同社(単体)の従業員数は96名です。筆頭株主は創業者で代表取締役CEOの山木学氏であり、第2位はネット証券大手のSBI証券、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
山木 学 61.13%
SBI証券 6.72%
阪田 和弘 4.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは山木学氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
山木 学 代表取締役CEO リクルート、カカクコムを経て同社設立、取締役就任。2009年より代表取締役、2015年より現職。
領下 崇 代表取締役COO トライグループを経て同社入社。取締役事業本部長等を経て2015年より現職。
佐藤 大輔 取締役CFO JTB、大原出版、新日本監査法人を経て同社入社。執行役員CFO経営管理本部長等を経て現職。
鈴木 真諭 取締役CTO カカクコムを経て同社入社。執行役員CTO開発本部長等を経て現職。
棚橋 新七 取締役CMO 同社入社後、執行役員CMO第二メディア事業本部長等を経て現職。


社外取締役は、杉田玲夢(医師・元クリンタル代表)、西本俊介(弁護士)、東俊介(元ハンドボール日本代表主将)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネット・メディア事業」の単一セグメントで教育領域特化型ポータルサイトを展開しています。

塾ナビ

全国の学習塾や予備校を検索・比較できるポータルサイトです。幼児から高校生までを対象とし、11万以上の教室情報を掲載しています。
収益は、同サイトを経由して学習塾等へ問い合わせや資料請求が行われた際に発生する成果報酬として、クライアント企業(学習塾等)から受け取ります。運営は同社が行っています。

みんなの学校情報

全国の保育園から大学・専門学校までの学校選びに役立つ情報サイトです。口コミや偏差値ランキングなどのコンテンツを提供しています。
収益は、クライアント企業からの広告掲載料や成果報酬等により発生します。運営は同社が行っています。

コドモブースター

子供向けの習い事教室を検索・比較できるポータルサイトです。英会話やプログラミング教室などの情報を掲載しています。
収益は、サイト経由での体験申し込み等に応じた成果報酬として、クライアント企業(習い事教室等)から受け取ります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は40億円前後で推移していましたが、直近では広告単価高騰の影響等を受けやや減少傾向にあります。利益面では、2022年10月期と2024年10月期に赤字を計上しましたが、直近の2025年10月期では経常利益率が約10%まで回復し、黒字化を果たしています。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 43億円 40億円 39億円 39億円 37億円
経常利益 13.1億円 -2.0億円 3.9億円 -1.5億円 3.6億円
利益率(%) 30.6% -5.1% 9.9% -3.7% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 8.2億円 -3.4億円 2.9億円 0.4億円 1.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少しましたが、売上総利益率は約89%と高い水準を維持しています。特筆すべきは営業利益の改善で、前期の赤字から当期は黒字に転換しました。これは主に販売費及び一般管理費の大幅な削減によるものです。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 39億円 37億円
売上総利益 35億円 33億円
売上総利益率(%) 88.7% 88.9%
営業利益 -2.0億円 2.6億円
営業利益率(%) -5.0% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が18億円(構成比61%)、給料手当が3.5億円(同12%)を占めています。広告宣伝費の効率化が進んだことが利益改善に寄与しています。

(3) セグメント収益


同社はインターネット・メディア事業の単一セグメントですが、主力の「塾ナビ」における広告単価高騰の影響を受け、全体の売上高は前期比で減少しました。一方で、「みんなの専門学校情報」や「医学部予備校ガイド」などの成長事業は伸長しています。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期)
インターネット・メディア事業 39億円 37億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF -4.6億円 8.0億円
投資CF 32.6億円 -13.2億円
財務CF -0.0億円 -0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「すべての人に、人生を豊かにする教育を」をミッションに掲げています。このミッションのもと、領域特化型ポータルサイトのコンテンツ拡充とユーザビリティ向上を通じて、教育サービスを選ぶユーザーと提供するクライアント双方にとって有意義なプラットフォームとなることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「長く一緒に働ける会社」をスローガンに掲げています。小規模な組織であることを活かし、幅広い裁量権と経営陣との距離の近さを特徴としています。また、社員自らが考えて行動することを推奨する育成風土があり、個々人の能力や可能性に合わせて組織の形を柔軟に変える体制をとっています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な事業拡大と企業価値増大のため、重要な経営指標として以下の項目を重視しています。
* サイトの訪問者数
* 営業利益
* 上記指標の成長率

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「教育メディアNo.1」を目指し、既存の「塾ナビ」等のシェア拡大に加え、教育業界内の未参入領域への横展開や新規事業開発に挑戦する方針です。対処すべき課題として、広告や提携を通じた認知度の向上、コストコントロールによる収益基盤の強化、およびシステムセキュリティの維持・構築を挙げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「長く一緒に働ける会社」の実現に向け、性別や人種を問わず働きやすい職場環境づくりと福利厚生制度の充実に注力しています。人材育成においては、外部ツールや研修を積極的に活用し、従業員の能力開発やストレスマネジメント、モチベーション管理に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 34.6歳 6.2年 5,264,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は女性活躍推進法等の規定による公表義務に基づく公表項目として選択しておらず公表していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性労働者の割合(59.0%)、係長級以上に占める女性労働者の割合(46.0%)、無期雇用社員における平均勤続年数(男性6.4年、女性6.1年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 教育市場への依存

売上の大半が教育市場に依存しているため、少子化等による市場の縮小や変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は複数領域への展開によりポートフォリオを構築していますが、依然として市場動向の影響を受けやすい状況にあります。

(2) 業績の季節変動

教育サービスの特性上、新年度前や夏休み前にメディアへのアクセスが増加するため、同社の売上は第2四半期および第3四半期に偏重する傾向があります。年間を通じて安定した収益確保に努めていますが、季節要因による業績変動のリスクがあります。

(3) 検索エンジン等への集客依存

ユーザーの集客においてインターネット検索等に依存する部分が大きく、技術の発展や代替サービスの登場によりユーザーの購買プロセスが変化した場合、事業に影響が出る可能性があります。ユーザーニーズの変化に対応したサービス開発が求められます。

(4) 競合との競争激化

インターネット・メディア領域には大手を含む多数の企業が参入しており、競争が激化しています。差別化や機能向上が十分でない場合、優位性を維持できず業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は独自の口コミ情報等で差別化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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