日本毛織 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本毛織 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場し、衣料繊維、産業機材、人とみらい開発、生活流通の4事業を展開する企業グループです。第195期連結会計年度において、売上高・営業利益は5期連続の増収増益を達成し、各利益は過去最高益を更新しました。多角化経営により安定的な成長を続けています。


※本記事は、日本毛織株式会社 の有価証券報告書(第195期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本毛織ってどんな会社?


創業からのウール製品製造に加え、現在は産業機材や商業施設運営、生活流通事業など多角的な事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


同社は1896年に設立され、1919年には印南工場の操業を開始しました。1949年5月に東京証券取引所一部に上場し、1984年には加古川市にショッピングセンター「ニッケパークタウン」を開業して不動産開発事業へ進出しました。近年では2024年に株式会社カンキョーテクノや呉羽テック株式会社を子会社化するなど、M&Aによる事業拡大も積極的に行っています。

連結従業員数は4,291名、単体では497名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位および第3位は主要取引銀行であるみずほ銀行と三井住友銀行が名を連ねています。金融機関が上位株主を占めており、安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.63%
みずほ銀行 4.18%
三井住友銀行 4.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長社長執行役員は長岡豊氏が務めています。なお、取締役8名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
長岡  豊 代表取締役社長社長執行役員 1984年入社。岐阜工場長、ニッケ機械製作所社長、人とみらい開発事業本部長などを歴任し、2022年2月より現職。
富 田 一 弥 取締役取締役会議長 1984年入社。人とみらい開発事業本部長、経営戦略センター長、代表取締役社長などを経て、2025年2月より現職。
川 村 善 朗 取締役常務執行役員人とみらい開発事業本部長兼不動産開発事業統括部長 1983年入社。ニッケ機械製作所社長、衣料繊維事業本部長などを経て、2025年4月より現職。
岡 本 雄 博 取締役常務執行役員経営戦略センター長 2005年入社。経営戦略センター財経室長、産業機材事業本部管理部長などを経て、2022年2月より現職。
金 田 至 保 取締役常務執行役員衣料繊維事業本部長 1987年入社。ナカヒロ社長、衣料繊維事業本部販売統括部長などを経て、2025年2月より現職。


社外取締役は、若松康裕(元川西倉庫社長)、宮島青史(元野村不動産アーバンネット社長)、加藤之啓(元デンソーテン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「衣料繊維事業」「産業機材事業」「人とみらい開発事業」「生活流通事業」および「その他」事業を展開しています。

衣料繊維事業


毛糸、ユニフォーム織物素材と製品、紳士・婦人ファッション織物素材などの衣料繊維製品を製造・販売しています。また、倉庫管理や構内運送も行っています。主力であるスクールユニフォーム事業や海外でのファッション向けテキスタイル販売などを手がけ、国内外の顧客に製品を提供しています。

収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は日本毛織が中心となり、販売は株式会社ナカヒロ、アカツキ商事株式会社、株式会社ニッケテキスタイルなどが行っています。製造は日本毛織のほか、大成毛織株式会社や青島日毛織物有限公司などの子会社・関連会社へ委託しています。

産業機材事業


不織布・フェルト等の繊維資材製品、テニス・バドミントンガット、釣糸、産業資材の製造・販売を行っています。また、産業向け機械の設計・製造・販売や、環境・エネルギーシステムの設計・施工・メンテナンスも手がけており、自動車、環境、スポーツなど幅広い分野に製品を提供しています。

収益は製品や機械の販売代金等から得ています。運営は、不織布・フェルト等は株式会社エフアンドエイノンウーブンズや呉羽テック株式会社、機械関連は株式会社ニッケ機械製作所、スポーツ用品等は株式会社ゴーセン、フィルター等は株式会社カンキョーテクノなど、各専門子会社が主導しています。

人とみらい開発事業


ショッピングセンターなどの商業施設の開発・賃貸・運営、不動産の建設・販売・賃貸を行っています。また、乗馬・ゴルフ・テニス等のスポーツ施設運営、介護事業、保育事業、携帯電話販売など、地域社会に密着した多様なサービスを提供しています。

収益は不動産賃貸料、施設利用料、サービス対価、商品販売代金等から得ています。運営は日本毛織が商業施設等の開発・賃貸を行い、ニッケ・タウンパートナーズ株式会社が運営管理を担当しています。スポーツ施設は株式会社ニッケウエルネス、介護事業は株式会社ニッケ・ケアサービス等が運営しています。

生活流通事業


毛布・寝装用品、手編毛糸、家具、馬具・乗馬用品、スタンプ・スタンプインク、消費者向け家電商品の製造販売を行っています。また、100円ショップ向け日用雑貨卸やEコマース運営も手がけ、一般消費者向けの商品を幅広く提供しています。

収益は商品の販売代金や卸売代金から得ています。運営は、寝装品等はニッケ商事株式会社、スタンプ関連は株式会社ツキネコ、家電等のEC事業は株式会社AQUAやサンコー株式会社など、各事業分野の子会社が行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、医療機器販売等を行っています。

収益は商品の販売代金等から得ています。運営は株式会社京都医療設計などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は期間を通じて増加傾向にあり、直近では1,194億円に達しています。経常利益も概ね増加基調で推移し、直近では130億円となりました。利益率は10%前後で安定しており、当期利益も増加傾向を示しています。全体として堅調な成長と安定した収益性を維持しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 1,066億円 1,090億円 1,135億円 1,154億円 1,194億円
経常利益 98億円 117億円 116億円 121億円 130億円
利益率(%) 9.2% 10.7% 10.3% 10.5% 10.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 48億円 62億円 56億円 71億円 70億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。売上総利益率は約29%と安定した水準を維持しています。営業利益および営業利益率は微増しており、コストコントロールを行いつつ収益を確保している様子がうかがえます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 1,154億円 1,194億円
売上総利益 330億円 343億円
売上総利益率(%) 28.6% 28.7%
営業利益 116億円 119億円
営業利益率(%) 10.1% 10.0%


販売費及び一般管理費のうち、運賃・保管料が33億円(構成比15%)、給料が63億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


産業機材事業が新規M&A効果等により大幅な増収増益となりました。生活流通事業も増収増益で好調です。一方、衣料繊維事業はユニフォーム分野の販売減等により減収減益となりました。人とみらい開発事業は売上高は微増ですが、先行費用等の影響で減益となりました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期) 利益(2024年11月期) 利益(2025年11月期) 利益率
衣料繊維事業 316億円 303億円 35億円 26億円 8.7%
産業機材事業 308億円 352億円 20億円 29億円 8.2%
人とみらい開発事業 265億円 267億円 70億円 68億円 25.4%
生活流通事業 225億円 232億円 8億円 11億円 4.5%
その他 40億円 40億円 2億円 3億円 7.4%
調整額 - - -18億円 -17億円 -
連結(合計) 1,154億円 1,194億円 116億円 119億円 10.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って、投資や借入返済を行っている(投資CFマイナス、財務CFマイナス)ため、**健全型**と言えます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 102億円 121億円
投資CF -79億円 -93億円
財務CF -42億円 -51億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と地球に「やさしく、あったかい」企業グループとして、わたしたちは情熱と誇りをもってチャレンジして行きます。」という経営理念を掲げています。また、未開の分野に目を向け、「高機能商品」や「地域No.1サービス」の開発と提供へ挑戦し、「みらい生活創造企業」を目指すことをグループビジョンとしています。

(2) 企業文化


同社は「全員がチャレンジ精神を持ち」「人が育つ」生命力あふれた会社を目指しています。お客様の声と研究開発から独自性のある商品・サービスで市場を創造し、グローバルな視点に立って社会の発展に貢献することを重視しています。また、広く人財を求め、多様な「知」を結集して事業を革新・発展させることを方針としています。

(3) 経営計画・目標


「RN130ビジョン第3次中期経営計画(2024~2026年度)」において、2026年度の目標数値を掲げています。

* 売上高:1,300億円
* 営業利益:130億円
* 経常利益:134億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:95億円

(4) 成長戦略と重点施策


「みらい生活創造企業」の具現化に向け、成長事業や新規事業、合理化への資源配分、海外ビジネスの拡大を推進しています。特に3つの投資(商品開発・合理化、顧客拡大、人財)の推進や、サステナブル経営への取り組みを強化しています。

* 衣料繊維事業:海外市場での拡販、サーキュラーエコノミーの仕組み(WAONAS)構築による販売拡大。
* 産業機材事業:不織布事業の収益性向上、海外拠点の設備投資および北米を中心とした海外販売拡大。
* 人とみらい開発事業:大型開発案件のスピードアップと収益化、低収益不動産の再開発による資産価値向上。
* 生活流通事業:SPA(製造小売り)機能の強化、ECおよび海外販売の拡大。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人が成長する会社」をスローガンに、人財を最も重要な経営資本と位置付けています。「思考力」と「対人能力」をコア能力と定義し、次世代経営者養成研修(VOC研修)や若手向けのビジネスリーダー育成プログラムなどを実施し、自律的な成長を支援しています。また、健康経営やダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進し、多様な人財が活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 45.4歳 15.7年 5,804,955円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.0%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 55.4%
男女賃金差異(正規雇用) 64.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 重要な取引先の業績悪化、事業撤退等


衣料繊維、繊維資材、産業向機械等の製品の一部は特定の取引先に販売しており、取引先の業績悪化や事業撤退、在庫調整、値下げ要求等が生じた場合、売上減少など経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、取引先破綻による貸倒損失発生のリスクもあります。

(2) 事業の再編、事業構造改善


持続的な成長と収益向上を目指し、必要に応じ事業再編や構造改善を実施する場合があります。この際、事業構造改善費用の増加などが経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。同社は事業概況や市場動向を注視し、適切なタイミングでの実施に努めています。

(3) 株価の大幅下落、為替相場の変動等


市場性のある株式を保有しており、株価大幅下落時には評価差額金の減少や売却損、年金資産減少による退職給付費用の増加等が生じる可能性があります。また、繊維事業の原料輸入に伴い、為替相場の変動が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、保有株式の検証や年金資産運用の見直し、為替予約等のヘッジを行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

日本毛織の転職研究 2025年11月期決算に見るキャリア機会

日本毛織の2025年11月期決算は、5期連続の増収増益で過去最高益を更新。積極的なM&Aで産業機材事業を拡大し、都心の不動産再開発も本格化しています。「なぜ今ニッケなのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。