トーセイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーセイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場およびシンガポール証券取引所メインボードに上場する総合不動産会社です。不動産再生、開発、賃貸、ファンド・コンサルティングなど6つの事業を展開しています。2025年11月期の連結業績は、売上収益が前期比15.2%増、税引前利益が同18.8%増となり、増収増益で過去最高益を更新しました。


※本記事は、トーセイ株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年02月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. トーセイってどんな会社?


不動産再生事業を主力とし、開発やファンド運営、ホテル事業まで手掛ける独自のポートフォリオ経営を行う企業です。

(1) 会社概要


1950年にユーカリ興業として設立され、1996年に不動産流動化事業を開始しました。2004年にジャスダック、2006年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2011年に市場第一部へ指定替えとなりました(2022年にプライム市場へ移行)。2013年にはシンガポール証券取引所メインボードへも上場し、2024年には名古屋鉄道と資本業務提携契約を締結しています。

2025年11月30日現在の従業員数は連結875名、単体302名です。筆頭株主は2024年に資本業務提携を行った名古屋鉄道で、第2位は有限会社ゼウスキャピタル、第3位は代表取締役社長の山口誠一郎氏となっています。

氏名 持株比率
名古屋鉄道 15.46%
有限会社ゼウスキャピタル 12.37%
山口 誠一郎 11.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表者は代表取締役社長執行役員社長の山口誠一郎氏で、社外取締役比率は約23%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 誠一郎 代表取締役社長執行役員社長 1983年三井不動産販売(現三井不動産リアルティ)入社。1986年東誠商事入社。1994年同社代表取締役社長に就任。2004年より現職。
平野 昇 取締役専務執行役員管理部門統括 1982年国分入社。1991年東誠商事入社。同社経理部財務担当部長、常務取締役等を経て2006年より現職。トーセイ・アセット・アドバイザーズ等のグループ会社役員も兼任。
中西 秀樹 取締役専務執行役員事業部門統括アセットソリューション第2本部兼アセットソリューション第3本部兼アセットソリューション第5本部担当 1990年安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。2006年同社入社。常務執行役員、事業部門副統括、事業部門統括を経て2025年12月より現職。
山口 俊介 取締役常務執行役員管理部門副統括総務本部兼人事本部担当 1988年東急建設入社。2007年同社入社。執行役員、取締役執行役員、管理部門副統括を経て2023年12月より現職。
米田 浩康 取締役常務執行役員管理部門副統括財務本部兼M&A・グループ戦略本部担当 1993年千葉そごう(現そごう・西武)入社。2008年同社入社。執行役員、常務執行役員を経て2024年3月より現職。トーセイ・プロップテック代表取締役を兼任。
髙見 茂宏 取締役執行役員事業部門付業務提携推進担当 1993年名古屋鉄道入社。名鉄都市開発執行役員、同社顧問を経て2025年2月より現職。


社外取締役は、少德健一(SCS国際コンサルティング代表取締役)、小林博之(ソーシャルキャピタルマネジメント代表取締役社長)、石渡真維(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産再生事業」「不動産開発事業」「不動産賃貸事業」「不動産ファンド・コンサルティング事業」「不動産管理事業」および「ホテル事業」を展開しています。

不動産再生事業


資産価値の低下したオフィスビルやマンション等を取得し、デザイン性向上や設備更新などのバリューアップを施した上で、「再生不動産」として投資家等へ販売しています。また、区分マンションの買取再販を行う「Restyling事業」も展開し、エンドユーザーへ販売しています。

収益は、再生不動産の販売代金等から得ています。運営は、主にトーセイおよびトーセイ・アール、株式会社プリンセススクゥエアーなどが行っています。

不動産開発事業


土地を取得し、オフィスビル、商業施設、ホテル、マンション、戸建住宅、物流施設などを開発・新築して販売しています。投資家への一棟販売や、個人顧客への分譲販売を行っています。

収益は、開発物件の販売代金から得ています。運営は、主にトーセイが行っています。

不動産賃貸事業


東京都区部を中心に、同社グループが所有するオフィスビル、マンション、店舗、駐車場などを賃貸しています。自ら貸主となることでテナントニーズを把握し、バリューアップ計画へ活用しています。

収益は、テナントや入居者からの賃料収入等から得ています。運営は、主にトーセイが行っています。

不動産ファンド・コンサルティング事業


不動産ファンドのアセットマネジメント業務として、信託受益権の売買仲介や管理運用サービスを提供しています。また、トーセイ・リート投資法人の資産運用も受託しています。

収益は、アセットマネジメント報酬(取得・処分時、期中運用報酬等)やコンサルティング料から得ています。運営は、主にトーセイ・アセット・アドバイザーズ株式会社が行っています。

不動産管理事業


オフィスビル、マンション、ホテル等の建物・設備管理、警備、テナント管理(プロパティマネジメント)、および分譲マンションの管理組合運営サポートなどを行っています。

収益は、不動産オーナーや管理組合からの管理委託料、清掃・点検等のサービス料から得ています。運営は、主にトーセイ・コミュニティ株式会社が行っています。

ホテル事業


自社ブランド「TOSEI HOTEL COCONE」を中心としたホテルの企画・開発・運営を行っています。既存物件のコンバージョンや新規開発により展開しています。

収益は、宿泊客からの宿泊料や付帯サービス利用料から得ています。運営は、主にトーセイ・ホテル・マネジメント株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで推移し、直近では947億円に達しています。利益面でも増益基調が続いており、税引前利益率は20%前後の高い水準を維持しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上収益 617億円 710億円 794億円 822億円 947億円
税引前利益 103億円 128億円 153億円 174億円 206億円
利益率(%) 16.7% 18.0% 19.3% 21.1% 21.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 67億円 86億円 105億円 120億円 148億円

(2) 損益計算書


売上収益の増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は40%台前半で安定して推移しており、営業利益率も20%台を維持しています。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上収益 822億円 947億円
売上総利益 352億円 399億円
売上総利益率(%) 42.8% 42.1%
営業利益 185億円 223億円
営業利益率(%) 22.5% 23.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が93億円(構成比53%)、支払手数料が27億円(同15%)を占めています。売上原価においては、棚卸資産取得価額が458億円(構成比84%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで黒字を確保しています。主力の不動産再生事業と不動産開発事業が利益の柱となっており、特に不動産開発事業は大幅な増収増益となりました。不動産ファンド・コンサルティング事業も大幅な利益成長を見せています。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期) 利益(2024年11月期) 利益(2025年11月期) 利益率
不動産再生事業 372億円 392億円 60億円 63億円 16.2%
不動産開発事業 167億円 231億円 50億円 57億円 24.8%
不動産賃貸事業 82億円 91億円 41億円 49億円 54.0%
不動産ファンド・コンサルティング事業 69億円 91億円 38億円 55億円 60.1%
不動産管理事業 86億円 91億円 10億円 12億円 12.9%
ホテル事業 63億円 72億円 22億円 28億円 39.1%
調整額 -17億円 -20億円 -36億円 -41億円 -
連結(合計) 822億円 947億円 185億円 223億円 23.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「勝負型(事業拡大に伴う資産増加)」です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF -130億円 -17億円
投資CF -56億円 -35億円
財務CF 143億円 99億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.4%で市場平均を上回っています(※比較対象:プライム市場非製造業平均24.2%)。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、グローバルな発想を持つ心豊かなプロフェッショナル集団としてあらゆる不動産シーンにおいて新たな価値と感動を創造する。」を存在理念として掲げています。不動産と金融の融合を意識した多様な事業推進により社会に貢献し、企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


常に「モノづくり」へのこだわりを持つことを重視しています。また、不動産再生事業等において、単なるリニューアルに留まらず、所有する人の満足や働く人の誇りを提供することを目指すなど、不動産の総合的な価値再生に努める姿勢を持っています。多様な事業を組み合わせるポートフォリオ経営やグローバルな視点も特徴です。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン2032の実現に向けた第1フェーズとして、中期経営計画「Further Evolution 2026」を推進しています。最終年度である2026年11月期の数値目標として、以下を掲げています(2026年1月14日発表の修正計画)。

* 連結売上高:1,229億円
* 連結税引前利益:220億円
* ROE:14.0%
* 配当性向:35.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「不動産ソリューション力」「ポートフォリオ・マネジメント力」「グローバル・リーチ力」を強化し、事業ポートフォリオの進化と成長を目指します。不動産再生・開発事業では、環境配慮商品の提供やM&A活用による仕入競争力の強化を進めます。安定事業では、テナント需要に沿った設備仕様の研究やDX活用による効率化、ホテル事業でのブランド浸透と規模拡大に注力します。また、不動産クラウドファンディング等のDX・不動産テック分野にも取り組み、新たな顧客層への投資機会提供を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を経営の根幹とし、心豊かな真のプロフェッショナルを育成し続ける」という理念のもと、多様な人材が個性を活かして健やかに働ける環境構築を目指しています。採用・育成・登用においては多様性を重視し、性別や国籍等に関わらず成長と活躍の場を提供します。また、従業員の健康と安全を経営課題と捉え、職場環境の整備と健康維持・増進施策に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 35.7歳 5.6年 9,443,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.0%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規) 55.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、仕事の満足度(69.0%)、平均残業時間(23.4時間)、有給休暇取得率(66.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢の動向


オフィスビルや商業施設の需要、住宅購入者の購買意欲は、景気動向や雇用環境、不動産市況の影響を受けやすい傾向にあります。経済情勢の悪化により、不動産投資意欲の低下や取引減少、空室率上昇、賃料下落等が生じた場合、グループの経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、定期的なモニタリングや投資判断力・リーシング力の強化等で対応しています。

(2) 災害等について


首都圏における大地震や暴風雨、洪水等の自然災害、人災等が発生した場合、保有・運用・管理する不動産の価値毀損や、ホテル稼働率の低下等が生じ、経営成績や財務状況に影響を与える可能性があります。これに対し、グループ主要各社においてBCP(事業継続計画)を策定し、事業継続や早期復旧に向けた準備を進めています。

(3) 有利子負債の依存度および金利の動向


事業資金を主に金融機関からの借入金で調達しているため、総資産に占める有利子負債の比率が一定程度あります。急激な金利上昇や金融機関の融資姿勢の変化が生じた場合、調達環境の悪化により経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。金利動向のモニタリングや融資枠設定、金利固定化等により、安定的かつ経済的な資金調達に努めています。

(4) 法的規制


宅地建物取引業法や建築基準法など、不動産関連の多数の法的規制を受けて事業を行っています。これらの規制が強化されたり新たな規制が導入されたりした場合、対応コストの増加や事業活動の制約により、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、法令違反等により許認可の取消しや行政処分を受けた場合、事業活動に重大な支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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