※本記事は、株式会社アステナホールディングス の有価証券報告書(第86期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アステナホールディングスってどんな会社?
医薬品、化粧品、化学品の製造・販売等を行うグループの持株会社です。4つの事業を柱に展開しています。
■(1) 会社概要
1914年に薬種問屋として創業し、1963年にイワキへ商号変更、東証二部に上場しました。2005年に東証一部へ指定替えとなり、2021年には持株会社体制へ移行し現社名へ変更しました。2025年には池田物産等を連結子会社化し、HBC・食品事業を強化しています。
連結従業員数は1,543名、単体では96名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位はケーアイ社、第3位はCNV社です。これら上位株主や第5位の個人株主等は、創業家やその資産管理会社、関連団体と考えられます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.10% |
| ケーアイ社 | 5.00% |
| CNV社 | 4.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は瀬戸口 智氏です。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀬戸口 智 | 代表取締役社長 | 1995年同社入社。経営企画部長、HBC・食品事業部長等を歴任。イワキ社長、アインズラボ代表取締役等を経て、2024年より同社代表取締役社長。経営全般、経営企画、財務企画担当。 |
| 岩城 慶太郎 | 取締役 | 2005年同社入社。メルテックス社長、同社代表取締役社長CEO等を歴任。スペラファーマ社長、スペラネクサス社長等を兼務。2025年より同社取締役FC・医薬事業構造改革、新規事業担当。 |
| 川野 毅 | 取締役 | 1976年日本興業銀行入行。ニュー・オータニ代表取締役経営管理室長、大谷工業副会長等を歴任。2025年より同社取締役法務統括、品質統括担当。 |
社外取締役は、二之宮 義泰(元ノバルティスファーマ社長)、永井 恒男(アイディール・リーダーズCEO)、永井 三岐子(元国連大学サステイナビリティ高等研究所事務局長)、佐藤 桂(元ソフトバンクBB管理部門統括)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファインケミカル」「HBC・食品」「医薬」「化学品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ファインケミカル事業
医薬品のCMC研究開発、医薬品原料の製造販売、ペプチド合成法の開発、原薬の受託製造等を行っています。製薬企業やバイオベンチャー等を顧客とし、医薬品開発のエコシステムを支える事業です。
収益は、医薬品原料の販売代金や、研究開発・製造受託による受託料等から得ています。運営は主に、スペラファーマ、スペラネクサス、JITSUBO、岩城製薬佐倉工場が行っています。
■(2) HBC・食品事業
一般用医薬品、化粧品原料、機能性食品原料の販売や、化粧品・健康食品の製造販売を行っています。また、サプリメントや禁煙関連商品の企画・販売も手掛けています。
収益は、ドラッグストアや消費者等からの商品販売代金や、原料の販売代金から得ています。運営は主に、イワキ、アプロス、マルマンH&B、アインズラボ、池田産業、池田物産等が担っています。
■(3) 医薬事業
医療用医薬品、一般用医薬品、医薬品原料及び化成品等の製造・販売を行っています。特に皮膚科領域などの外皮用剤を中心とした製品を提供しています。
収益は、医療機関や卸売業者等からの医薬品販売代金から得ています。運営は主に、岩城製薬が行っています。
■(4) 化学品事業
電子工業用薬品、表面処理薬品、化学品の製造販売や、プリント配線板等の製造プラントの製造販売を行っています。エレクトロニクス産業等を主要な顧客としています。
収益は、薬品や表面処理設備の販売代金から得ています。運営は主に、メルテックス、東海メルテックス、東京化工機および海外現地法人が行っています。
■(5) その他
主に地方創生に関する事業、自社ブランドの企画・販売、グループ業務受託等を行っています。石川県奥能登地域での社会課題解決型ビジネスなども含みます。
収益は、商品販売代金やサービス提供の対価等から得ています。運営は主に、アステナミネルヴァ、NAIA、アステナハートフル等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益については、一時期の落ち込みから回復基調にあり、直近では増益となっています。利益率も改善傾向が見られます。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 723億円 | 496億円 | 520億円 | 580億円 | 627億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 9億円 | 14億円 | 28億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 1.8% | 2.6% | 4.8% | 4.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 8億円 | 7億円 | 1億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は若干低下しましたが、高い水準を維持しています。営業利益も増加しており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 580億円 | 627億円 |
| 売上総利益 | 194億円 | 219億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.4% | 34.8% |
| 営業利益 | 28億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が56億円(構成比29%)、荷造運搬費が19億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての報告セグメントにおいて、前期比で売上高が増加しました。特にHBC・食品事業は大幅な増収となっています。ファインケミカル事業や医薬事業も堅調に推移し、グループ全体の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) |
|---|---|---|
| ファインケミカル | 211億円 | 223億円 |
| HBC・食品 | 152億円 | 182億円 |
| 医薬 | 115億円 | 124億円 |
| 化学品 | 102億円 | 97億円 |
| その他 | 0.4億円 | 0.6億円 |
| 連結(合計) | 580億円 | 627億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**積極型**
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、財務活動によるキャッシュ・フローもプラスとなっており、営業利益を上げつつ、借入等によって積極的な投資を行っている状態です。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 48億円 | 34億円 |
| 投資CF | -29億円 | -56億円 |
| 財務CF | -27億円 | 62億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%でプライム市場平均(9.4%)をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.9%でプライム市場(非製造業平均24.2%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「誠実」「信用」「貢献」を基本的理念として掲げています。「お取引先様を最優先に思う心を常に忘れない会社」を目指し、提供する商品・サービスを通じて取引先と共存共栄することで株主利益の拡大に寄与するとともに、社会その他すべてのステークホルダーへの責任を果たし続けることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「産業」「技術」「社会」のサステナビリティを高めることを重視しています。多様な事業ニーズに応える「策揃え」や、商取引を通じて蓄積される「共有知」による付加価値の創出を大切にしています。また、環境・社会課題の解決と経済的成長を両立させる「トレードオン」を目指す姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2030年11月期を最終年度とした中長期ビジョン「Astena 2030“Diversify for Tomorrow.”」を推進しています。最終年度の目標値として以下の指標を掲げています。
* 売上高:1,300億円以上(収益認識基準適用後ベースでは約900億円以上)
* 自己資本当期純利益率(ROE):13.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「プラットフォーム戦略」「ニッチトップ戦略」「ソーシャルインパクト戦略」の3つを基本戦略としています。プラットフォーム戦略では、ファインケミカルとHBC・食品事業において業界プラットフォームを目指し、ニッチトップ戦略では、医薬と化学品事業で独自技術による差別化と高シェア獲得を図ります。ソーシャルインパクト戦略では、社会課題解決型の新規事業を創出します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人づくり」への投資を重要課題とし、「付加価値適正分配経営」のもと、次世代リーダーやプロフェッショナル人材の育成に注力しています。階層別研修や次世代経営者育成プログラムを実施するとともに、ダイバーシティの推進や柔軟な働き方の環境整備を行い、従業員のエンゲージメント向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 46.2歳 | 14.9年 | 6,000,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(9.1%)、障がい者雇用率(1.43%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制リスク
医薬品等の取り扱いは薬事関連規則や毒物及び劇物取締法等の規制を受けます。これらに適切に対応する体制を構築していますが、対応を誤る事態が生じた場合、事業活動に制限を受ける可能性があります。法規制への対応体制や従業員教育を行っています。
■(2) 取引先の債務不履行リスク
企業間競争の激化や経済情勢により、取引先の経営が悪化する可能性があります。債権管理の強化を行っていますが、取引先の破産等による債務不履行が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。外部機関による信用情報の取得等で評価を行っています。
■(3) 敵対的買収のリスク
企業価値や株主の共同利益を損なう恐れのある第三者による大量買付行為の可能性があります。これに対し、客観性・合理性を担保した上で対抗措置を発動する方針ですが、事業遂行に悪影響が生じる可能性があります。
■(4) 海外事業活動におけるリスク
海外市場での事業拡大を進めていますが、為替変動、政情不安、経済動向の不確実性、法規制、商慣習等の障害により、業績に影響を及ぼす可能性があります。為替予約等の実施や事前の調査によりリスク低減に努めています。



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