エスプール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスプール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。障がい者雇用支援や物流支援を行うビジネスソリューション事業と、コールセンター等への派遣を行う人材ソリューション事業を展開。直近の業績は、主力事業の伸長により売上収益は増収となったものの、先行投資や一部事業の苦戦等により営業利益は減益となりました。(139文字)


※本記事は、株式会社エスプールの有価証券報告書(第26期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. エスプールってどんな会社?


ビジネスソリューションと人材ソリューションを軸に、アウトソーシングで社会課題の解決を目指す企業です。

(1) 会社概要


1999年に設立し、2006年にヘラクレスへ上場しました。2010年に障がい者雇用支援サービスを開始し、主力事業の一つへと成長させました。2019年には東証一部へ市場変更(後にプライム市場へ移行)を果たしました。2021年には広域行政BPOサービスを分社化するなど、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は1,147名、単体では168名です。筆頭株主は創業者の浦上壮平氏で、第2位は投資事業有限責任組合、第3位は資産管理会社と思われる法人です。創業者が主要株主として影響力を持ちつつ、機関投資家なども名を連ねる株主構成となっています。

氏名 持株比率
浦上 壮平 10.29%
UH Partners 2投資事業有限責任組合 7.60%
UH5 7.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表者は代表取締役会長の浦上壮平氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
浦上 壮平 代表取締役会長 1999年同社設立代表取締役社長。2006年会長兼社長を経て、2025年12月より現職。
佐藤 英朗 取締役管理本部担当 1997年公認会計士登録。2000年同社入社。2007年2月より現職。
荒井 直 取締役経営企画本部担当 2002年同社入社。2017年取締役社長室・子会社担当等を経て、2025年12月より現職。


社外取締役は、赤浦徹(インキュベイトキャピタルパートナーズ代表)、宮沢奈央(TFR法律事務所代表)、仲井一彦(仲井一彦公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビジネスソリューション事業」および「人材ソリューション事業」を展開しています。

(1) ビジネスソリューション事業


障がい者雇用支援、物流アウトソーシング、広域行政BPO、環境経営支援などを提供しています。主な顧客は企業や自治体で、障がい者の雇用促進や業務効率化、脱炭素化などの課題解決を支援しています。

収益は、農園の設備販売や管理運営費、物流業務や行政業務の委託料、コンサルティング料などから得ています。運営は、エスプールプラス(障がい者雇用支援)、エスプールロジスティクス(物流)、エスプールグローカル(行政BPO)、エスプールブルードットグリーン(環境経営支援)などが担当しています。

(2) 人材ソリューション事業


コールセンターや携帯電話販売店、建設業界などへの人材派遣サービスを提供しています。従業員と派遣スタッフをチームで派遣する「グループ型派遣」を特徴とし、未経験者の育成や定着率向上を図っています。

収益は、顧客企業からの人材派遣料により構成されています。運営は主にエスプールヒューマンソリューションズが行っており、全国の拠点を通じてサービスを展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は過去4期間でおおむね横ばいから微増の傾向にあり、直近では260億円規模となっています。一方、利益面では、税引前利益や当期利益が減少傾向にあります。特に直近では利益率が低下しており、事業拡大に伴う投資やコスト増などが影響していると考えられます。

項目 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上収益 267億円 258億円 256億円 260億円
税引前利益 30億円 26億円 26億円 21億円
利益率(%) 11.4% 10.3% 10.1% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 17億円 21億円 14億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益は微増しましたが、売上総利益は減少しました。売上総利益率は37%台で推移しています。営業利益は減少しており、営業利益率は10%台から9%台へと低下しました。収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上収益 256億円 260億円
売上総利益 95億円 97億円
売上総利益率(%) 37.0% 37.4%
営業利益 28億円 24億円
営業利益率(%) 10.9% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が41億円(構成比56%)、その他費用が15億円(同21%)を占めています。事業拡大に向けた人員採用により人件費が増加傾向にあります。

(3) セグメント収益


ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援などが堅調で増収となりましたが、先行投資等により減益となりました。人材ソリューション事業は、コールセンター派遣の需要縮小などにより減収減益となりました。全社費用等の調整額が増加していることも全体の利益を圧迫しています。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期) 利益(2024年11月期) 利益(2025年11月期) 利益率
ビジネスソリューション事業 150億円 166億円 37億円 36億円 21.7%
人材ソリューション事業 106億円 96億円 9億円 8億円 8.6%
調整額 -1億円 -1億円 -18億円 -20億円 -
連結(合計) 256億円 260億円 28億円 24億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は17.6%で市場平均を下回っています。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 51億円 56億円
投資CF -34億円 -21億円
財務CF -12億円 -38億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「アウトソーシングの力で企業変革を支援し、社会課題を解決する」という企業理念を掲げています。事業活動を通じて社会課題を解決するソーシャルビジネスを推進し、新たな社会的価値を創造することで、社会にとって必要不可欠な存在となることを目指しています。

(2) 企業文化


「社員の成長が会社の成長につながる」という方針の下、多様な個性を尊重し、能力を最大限に発揮できる環境整備を重視しています。変化を恐れず積極的に挑戦できるリーダー人材の育成に注力し、共通の価値観のもとで共に成長できる組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2025年1月発表の中期経営計画にて、以下の数値目標を掲げています。
* 2029年11月期 売上収益:360億円
* 2029年11月期 営業利益:45億円
* 連結配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業のオーガニック成長と新規事業創出によるポートフォリオ経営を推進します。「障がい者雇用支援」「サステナビリティ支援」「地方創生支援」を注力領域とし、AI/DX活用による生産性向上やグループシナジーの創出に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「DE&Iの推進」「従業員のウェルビーイングの推進」「企業価値を高める人材の育成」を方針としています。多様な人材が活躍できる制度や健康経営の実践に加え、次世代リーダー育成のための研修や環境整備に注力し、組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 34.4歳 4.3年 5,748,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 23.4%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 69.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 70.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 86.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制・制度変更の影響


労働者派遣法や職業安定法、障害者雇用促進法などの法的規制を受けて事業を行っています。法令違反による許可取り消しや、労働関連法令の改正、障がい者法定雇用率の見直しなどが行われた場合、事業運営や業績に重大な影響を与える可能性があります。

(2) 障がい者雇用支援サービスの評判


障がい者雇用支援サービスは独自性の高いビジネスモデルですが、法改正や規制強化、競合他社の模倣、予期せぬ風評被害などにより評判が損なわれた場合、顧客の維持・獲得が困難になり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人情報の管理・漏洩


多くの個人情報を保有・管理しているため、不正アクセスや人為的ミスによる情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、事業活動に支障が生じる可能性があります。徹底したセキュリティ対策と教育を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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