マネーフォワード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マネーフォワード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場する、法人・個人向けのお金のプラットフォーム事業を展開する企業です。2025年11月期の売上高は503億円と前期比で大幅な増収を達成しましたが、当期純利益は赤字となりました。SaaS事業を中心とした先行投資を継続しつつ、事業規模の拡大を進めています。


※本記事は、株式会社マネーフォワード の有価証券報告書(第14期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マネーフォワードってどんな会社?


家計簿アプリやクラウド会計ソフトなどを提供し、個人・法人のお金の課題解決を支援するフィンテック企業です。

(1) 会社概要


2012年5月にマネーブック株式会社として設立され、同年12月にお金の見える化サービス『マネーフォワード』(現『マネーフォワード ME』)をリリースしました。2013年にはビジネス向けクラウドサービスを開始し、事業基盤を拡大。2017年9月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしました。その後、2021年6月に市場第一部へ変更し、2022年4月の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

2025年11月30日現在の連結従業員数は2,839名、単体では1,707名です。筆頭株主は創業者の辻庸介氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関の常任代理人となっています。経営陣による持株比率が高く、創業者主導の経営体制が維持されている一方で、機関投資家からの出資も受け入れています。

氏名 持株比率
辻 庸介 16.05%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.71%
MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社) 7.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長グループCEOは辻庸介氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
辻 庸介 代表取締役社長グループCEO 2001年ソニー入社。2004年マネックス証券出向後、同社へ転籍しマーケティング部長等を歴任。2012年同社代表取締役社長CEO就任。2024年12月より現職。
金坂 直哉 取締役執行役員 2007年ゴールドマン・サックス証券入社。2014年同社入社。経営企画本部長、CFO等を歴任し、マネーフォワードシンカ代表取締役等を兼任。2025年12月より現職。
中出 匠哉 取締役執行役員グループCTO 2001年ジュピターショップチャンネル入社。2007年シンプレクス・テクノロジー入社。2015年同社入社。CTOを経て2024年12月より現職。
竹田 正信 取締役執行役員マネーフォワードビジネスセグメントCOO 2001年メディックス入社。マクロミル執行役員、クラビス取締役等を経て2018年同社入社。2025年12月より現職。
石原 千亜希 取締役執行役員グループCHO 2012年有限責任監査法人トーマツ入所。2016年同社入社。経営企画部長、People Forward本部本部長等を経て2025年2月より現職。


社外取締役は、田中正明(元三菱UFJFG副社長)、倉林陽(DNX Ventures Managing Partner)、安武弘晃(元楽天常務執行役員)、宮澤弦(元ヤフー常務執行役員)、Ryu Kawano Suliawan(Midtrans創業者)、菊間千乃(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Business」「Home」「X」「Finance」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

Business

バックオフィス向けの業務効率化ソリューション『マネーフォワード クラウド』等を提供しています。会計・確定申告から人事労務、法務まで幅広い機能を備え、個人事業主や中小企業だけでなく中堅企業にも導入されています。AI機能の活用やBPOサービスの展開にも注力し、企業の生産性向上を支援しています。
収益は、サービス利用者である法人や個人事業主からの月額または年額の利用料(サブスクリプション)が中心です。また、導入支援手数料やビジネスカードの決済手数料なども計上しています。運営は主にマネーフォワードが行うほか、グループ会社も関与しています。

Home

個人のお金の課題解決を目的とし、家計簿・資産管理アプリ『マネーフォワード ME』を提供しています。複数の金融機関の口座情報を集約・可視化することで、家計改善や資産管理をサポートします。また、くらしの経済メディア『MONEY PLUS』や、FPへの無料相談サービスなども展開しています。
収益は、アプリのプレミアム機能を利用する個人ユーザーからの課金収入や、メディア・イベントにおける広告収入、提携サービスへの送客対価などから成ります。運営はマネーフォワードおよびマネーフォワードホームなどが行っています。

X

金融機関等のパートナー企業向けに、顧客向けサービスの企画・開発を行っています。主なサービスには、金融機関個人顧客向けの自動家計簿・資産管理サービス、通帳アプリ、地域金融機関向けアプリ『BANK APP』、業務DXサービス『Mikatanoシリーズ』などがあります。
収益は、提供するサービスの保守・運用にかかる月額課金(ストック収益)や、開発・プロモーション支援等による一時的なフロー収益を金融機関等から受領しています。運営は主にマネーフォワードエックスが行っています。

Finance

スタートアップ企業への支援を目的としたベンチャーキャピタル事業を展開しています。「HIRAC FUND」を通じて、資金提供だけでなく、同社グループの知見やネットワークを活かした成長支援を行っています。
収益は、保有する営業投資有価証券の売却益です。運営はマネーフォワードベンチャーパートナーズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では先行投資の影響等により損失計上が続いており、当期も親会社株主に帰属する当期純損失を計上していますが、赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上収益(または売上高) 156億円 215億円 304億円 404億円 503億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 -14億円 -96億円 -67億円 -54億円 -39億円
利益率(%) -9.2% -44.6% -22.2% -13.3% -7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -19億円 -81億円 -57億円 52億円 -29億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく伸長し、売上総利益も増加していますが、販管費の負担が重く、営業損失の状態が続いています。ただし、営業損失率は改善傾向にあり、収益性の向上が見られます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 404億円 503億円
売上総利益 271億円 342億円
売上総利益率(%) 67.0% 68.0%
営業利益 -47億円 -27億円
営業利益率(%) -11.7% -5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が97億円(構成比26%)、広告宣伝費が69億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


Businessセグメントが売上の大半を占め、順調に成長しています。Homeセグメントは安定しており、XセグメントやFinanceセグメントも売上を伸ばしています。SaaS Marketingセグメントは微減となりました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
Business 270億円 361億円
SaaS Marketing 50億円 47億円
Home 47億円 47億円
X 29億円 31億円
Finance 8億円 15億円
調整額 0.0億円 1億円
連結(合計) 404億円 503億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、SaaSビジネスモデルの特性を活かし、中長期的な売上期待に基づいた先行投資を継続的に実行しています。

当連結会計年度は、預り金や契約負債の増加が主な要因となり、営業活動により資金を得ました。投資活動では、子会社株式の売却収入があったものの、無形固定資産や子会社株式、投資有価証券の取得により資金を使用しました。財務活動では、長期借入れにより資金を得ましたが、短期借入金の増減などにより、前年同期と比較して得られた資金は減少しました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF -48億円 15億円
投資CF -95億円 -103億円
財務CF 203億円 46億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というMissionの下、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」というVisionを掲げています。お金に関する課題や悩みを解決し、個人の人生や企業の経営を前進させるサービスづくりに取り組んでいます。

(2) 企業文化


共通の価値観として「MVVC(Mission, Vision, Values, Culture)」を掲げています。Valuesとして「User Focus」「Technology Driven」「Fairness」、Cultureとして「Speed」「Pride」「Teamwork」「Respect」「Fun」を定めています。多様なバックグラウンドを持つメンバーが互いを尊重し、プロフェッショナルとして自律的に成長する環境を目指しています。

(3) 経営計画・目標


中長期的なキャッシュ・フローの現在価値最大化を最重視し、経営指標としては特に売上高、EBITDA、事業キャッシュ・フローを重視しています。また、SaaSビジネスモデルにおける重要な指標として、SaaS ARR(Annual Recurring Revenue)の見通しも開示しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「User Forward」「Society Forward」「Talent Forward」を重点テーマに設定し、持続的な企業価値向上を目指しています。特にBusinessセグメントへの先行投資を継続し、中堅企業向けの機能開発やサービス連携強化を推進します。また、AI技術の活用によるバックオフィス業務の自律化や、パートナーとの共創による社会のDX化への貢献にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「Talent Forward(社員の可能性をもっと前へ。)」を掲げ、多様な視点と経験を持つ人材を世界中から採用し、育成することに注力しています。MVVCへの共感を重視し、性別や国籍等を問わない採用を行っています。また、個人のポテンシャルを最大化する人事制度や、自律的な成長を促す研修・フィードバック文化の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 34.3歳 2.9年 7,233,561円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.8%
男性育児休業取得率 85.4%
男女賃金差異(全労働者) 77.5%
男女賃金差異(正規雇用) 79.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 106.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、『マネーフォワード クラウド』公認メンバー総利用者数(51,468人)、リーダーシップフォワードプログラム研修累計参加人数(419名)、マネージャー基礎研修累計参加人数(1,608名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連市場について

プラットフォームサービス事業の発展にはインターネット利用者数の増加や関連市場の拡大が必要不可欠です。事業環境の変化への対応遅れや、新たな法的規制の導入等により市場成長が鈍化した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) SaaS市場の動向について

国内SaaS市場は成長が見込まれていますが、経済情勢や景気動向等の理由により成長が鈍化する可能性があります。同社グループはSaaS領域で多角的に展開していますが、市場成長の鈍化は事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 技術革新等について

インターネット関連市場は技術革新や顧客ニーズの変化が速く、柔軟な対応が求められます。同社グループがこれらに適時に対応できない場合や、対応のために多額のシステム投資や人件費が必要となった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 他社との競合について

主力のプラットフォームサービス事業では多くの競合企業が存在します。同社グループはサービスのユーザビリティ向上等で差別化を図っていますが、競争激化や差別化が不十分な場合、事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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