※本記事は、大王製紙株式会社 の有価証券報告書(第114期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大王製紙ってどんな会社?
「エリエール」ブランドの家庭用品や新聞・印刷用紙などを製造販売する総合製紙メーカーです。
■(1) 会社概要
1943年に和紙の製造販売を目的に設立されました。1979年にティシューペーパー「エリエール」の製造販売を開始し家庭紙市場へ参入しました。1982年に大阪証券取引所市場第二部に再上場し、その後東証一部へ上場しました。近年は海外展開を加速し、タイ、インドネシア、ブラジル等の現地法人を子会社化しています。
連結従業員数は12,191人、単体では2,332人です。筆頭株主は同業で戦略的業務提携を結ぶ北越コーポレーションで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は創業家関連企業の大王海運です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 北越コーポレーション | 24.80% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.10% |
| 大王海運 | 6.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長執行役員は若林 賴房氏です。社外取締役比率は46.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若林 賴房 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年入社。新聞用紙営業本部長、ホーム&パーソナルケア部門国内事業部長などを経て、2021年4月より現職。 |
| 山﨑 浩史 | 代表取締役副社長執行役員コーポレート部門人事本部管掌 兼資源購買本部管掌 兼リスク・コンプライアンス管掌 兼コーポレート部門総務本部長 兼サステナビリティ推進本部長 | 1984年入社。生産部門担当、資源・資材購買本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 石田 厚 | 取締役常務執行役員紙・板紙事業部長 兼コーポレート部門IT企画本部担当 兼グローバルロジスティクス本部担当 | 1991年入社。板紙・段ボール事業部長、紙・板紙部門産業用紙・段ボール事業部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 藤田 浩幸 | 取締役常務執行役員H&PC国内事業部長 兼H&PC海外事業部長 | 1987年入社。洋紙事業部長、サンテル取締役会長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 棚橋 敏勝 | 取締役常務執行役員生産部門担当 | 1989年名古屋パルプ(現可児工場)入社。三島工場長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 品川 舟平 | 取締役常務執行役員コーポレート部門経営企画本部長 兼経営管理本部長 | 1994年入社。経営企画本部長などを経て、2022年7月より現職。 |
| 田中 幸広 | 取締役常勤監査等委員 | 1980年入社。総務本部長、経営企画本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 木村 洋介 | 取締役常勤監査等委員 | 1984年入社。四国本社財務部長、洋紙事業部新聞用紙営業本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、織田 直祐(元JFE商事社長)、堀江 誠(元三井住友ファイナンス&リース会長)、政井 貴子(SBI金融経済研究所理事長)、岩田 義浩(元ポッカサッポロフード&ビバレッジ社長)、武井 洋一(弁護士)、岡田 恭子(元資生堂常勤監査役)、野口 昌邦(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「紙・板紙事業」「ホーム&パーソナルケア事業」および「その他」事業を展開しています。
■紙・板紙事業
新聞用紙、印刷用紙、包装用紙、段ボールなどの産業用紙やパルプ等の製造販売を行っています。新聞・出版業界や印刷会社、段ボールメーカーなどが主な顧客です。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に大王製紙が行うほか、子会社のいわき大王製紙、大王パッケージなどが製造や加工、販売を担っています。
■ホーム&パーソナルケア事業
「エリエール」ブランドのティシュー、トイレットペーパーなどの衛生用紙や、紙おむつ(ベビー用・大人用)、生理用品、ペット用品等の製造販売を行っています。一般消費者や病院・施設などが主な顧客です。
収益は、製品の販売対価として卸売業者や小売店等から受け取ります。運営は主に大王製紙が行うほか、エリエールプロダクトなどの国内子会社や、中国、タイ、インドネシア、ブラジル等の海外子会社が製造販売を行っています。
■その他
木材・パルプ等の植林・販売事業、プラント等のエンジニアリング事業、運送・倉庫などの物流事業を行っています。
収益は、木材販売や設備工事、物流サービスの対価として受け取ります。運営は、フォレスタル・アンチレLTDA.(チリ)、ダイオーエンジニアリング、ダイオーロジスティクスなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は6,000億円台後半で推移していますが、利益面では原材料価格高騰等の影響を受け変動が見られます。特に2023年3月期と2025年3月期は、大幅な減益または赤字計上となっており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,629億円 | 6,123億円 | 6,462億円 | 6,717億円 | 6,689億円 |
| 経常利益 | 345億円 | 377億円 | -241億円 | 96億円 | 45億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 6.2% | -3.7% | 1.4% | 0.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 221億円 | 237億円 | -347億円 | 45億円 | -112億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は横ばいですが、売上原価率が高止まりしており、利益率の低迷が続いています。販管費も増加傾向にあり、営業利益を圧迫しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,717億円 | 6,689億円 |
| 売上総利益 | 1,432億円 | 1,440億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.3% | 21.5% |
| 営業利益 | 144億円 | 98億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が636億円(構成比47.4%)、給与手当及び賞与が176億円(同13.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
紙・板紙事業は需要減退や原燃料高の影響で減益となりました。ホーム&パーソナルケア事業は国内が好調な一方、海外事業の構造改革等により全体では営業損失が継続していますが、損失幅は縮小しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 紙・板紙事業 | 3,553億円 | 3,512億円 | 160億円 | 89億円 | 2.5% |
| ホーム&パーソナルケア事業 | 2,931億円 | 2,952億円 | -41億円 | -14億円 | -0.5% |
| その他 | 233億円 | 226億円 | 24億円 | 22億円 | 9.8% |
| 調整額 | -952億円 | -965億円 | 1億円 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 6,717億円 | 6,689億円 | 144億円 | 98億円 | 1.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な資金の流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動では、主に生産・販売活動に伴う費用により、資金獲得額が減少しました。投資活動では、設備投資の支出があったものの、固定資産売却収入等により支出額は減少しました。財務活動では、借入金の返済や社債償還等により、資金支出が増加しました。
運転資金は短期借入金で、投資資金は長期社債や長期借入金で調達しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 593億円 | 446億円 |
| 投資CF | -265億円 | -209億円 |
| 財務CF | -136億円 | -355億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」を経営理念として掲げています。「誠意と熱意を持つ者が事を成す」という創業の精神のもと、衛生(人々の健康を守る)、人生(人生の質を向上させる)、再生(地球を再生する)という「3つの生きる」の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「ものづくりへのこだわり」「地域社会とのきずな」「安全で働きがいのある企業風土」「地球環境への貢献」の4つを経営理念の柱としています。現場・現物・現実に基づいた商品開発や、高い倫理観を持った企業市民としての活動、社員相互の信頼関係に基づいた一体運営を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度より第5次中期事業計画「Reframe ~基盤の強化~」をスタートさせ、2035年度に向けた長期ビジョン「Daio Group Transformation 2035」を策定しています。経営基盤の再構築を進め、以下の目標を掲げています。
* 2026年度計画:売上高7,400億円、営業利益300億円(利益率4.1%)
* 2035年度目標:売上高1兆2,000億円、営業利益1,200億円(利益率10.0%)
■(4) 成長戦略と重点施策
ホーム&パーソナルケア海外事業の構造改革を最優先課題とし、不採算事業の整理や収益性改善を進めています。国内では高付加価値商品へのシフトやペットケア事業の拡大、紙・板紙事業ではパッケージ分野の強化やCNF(セルロースナノファイバー)などの新素材事業の育成に注力しています。また、2050年のカーボンニュートラル実現に向けたエネルギー転換も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個の成長支援」「多様性を活かす」「変革・挑戦の促進」を人財戦略の柱としています。自律的なキャリア形成を促す社内公募制度や、グローバル人財・次世代リーダーの育成強化、女性活躍推進などの環境整備に取り組んでいます。また、人的資本経営を推進するため「人財戦略委員会」を設置しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.0歳 | 19.6年 | 6,238,116円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.8% |
| 男性育児休業取得率 | 83.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(77.8%)、障がい者雇用率(2.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要・市況変動による影響
主力製品である紙・板紙製品や家庭紙商品の大幅な需要減少や市況の下落が発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、柔軟な生産品種のシフトや、高付加価値商品の提供による収益基盤の強化に取り組んでいます。
■(2) 原燃料価格変動および為替相場の変動
木材チップや石炭などの原燃料価格の変動や、輸入品調達・製品輸出に伴う為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。為替予約によるヘッジや、取引先との連携による安定供給体制の確保を図っています。
■(3) 海外事業による影響
中国や東南アジア、南米等での事業展開において、現地の政治・経済情勢の変化や為替変動などのリスクが存在します。情報の収集と共有を行い、適切に対応することでリスクの最小化に努めています。



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