※本記事は、大王製紙株式会社の有価証券報告書(第115期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 大王製紙ってどんな会社?
紙・板紙製品や家庭紙の製造販売を主力事業とし、地球環境への貢献を目指す企業です。
■(1) 会社概要
1943年に設立されました。1956年に大阪証券取引所へ上場後、1979年に「エリエール」を発売し家庭紙市場へ参入しました。2007年には米国P&G社から大人用紙おむつ「アテント」事業を譲受し、2022年にはペット用品製造の大貴の全株式を取得し事業領域を拡大しています。
現在の同社グループは、連結従業員数11,639名、単体従業員数2,356名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業提携先である北越コーポレーションで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は大王海運となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 北越コーポレーション | 19.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.80% |
| 大王海運 | 7.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長執行役員は若林賴房氏が務めています。取締役15名のうち7名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若林賴房 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年同社入社。新聞用紙営業本部長、洋紙営業本部長等を経て、2021年4月より現職。 |
| 山﨑浩史 | 代表取締役副社長執行役員コーポレート部門総務・人財本部管掌 兼資源購買本部管掌 兼リスク・コンプライアンス管掌 兼コーポレート部門サステナビリティ推進本部長 | 1984年同社入社。三島工場長、資源・資材購買本部長等を経て、2024年6月より副社長執行役員に就任し現職。 |
| 石田厚 | 取締役常務執行役員大王パッケージ代表取締役会長 | 1991年同社入社。板紙・段ボール事業部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 藤田浩幸 | 取締役常務執行役員ホーム&パーソナルケア国内事業部長 兼ホーム&パーソナルケア海外事業部長 | 1987年同社入社。エリエール・インターナショナル・タイランド社長や洋紙事業部長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 棚橋敏勝 | 取締役常務執行役員生産部門管掌 | 1989年名古屋パルプ(現同社可児工場)入社。生産本部三島工場長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 品川舟平 | 取締役常務執行役員コーポレート部門経営管理本部管掌 兼IT企画本部管掌 兼経営企画本部長 | 1994年同社入社。経営企画部長、経営管理本部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 田中幸広 | 取締役常勤監査等委員 | 1980年同社入社。人事部長、経営企画本部長、常勤監査役等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 木村洋介 | 取締役常勤監査等委員 | 1984年同社入社。四国本社財務部長、新聞用紙営業本部長、名古屋支店長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、織田直祐(元JFE商事社長)、堀江誠(元住商スチール社長)、政井貴子(元日本銀行政策委員会審議委員)、岩田義浩(元サッポロインターナショナル社長)、武井洋一(弁護士)、岡田恭子(元資生堂常勤監査役)、野口昌邦(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「紙・板紙事業」「ホーム&パーソナルケア事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 紙・板紙事業
新聞用紙、印刷用紙、包装用紙、板紙、段ボール、パルプなどの製造販売を行っています。メディア用途の紙から梱包・包装用途の紙へのシフトを進め、脱プラスチックや環境配慮の要求に対応した製品や、高破裂強度の板紙、低透気度クラフト紙などの開発・提供を行っています。
収益源は顧客に対する製品の販売代金です。主に同社が製品を製造し、同社およびEBSなどが販売を行っています。また、いわき大王製紙や大津板紙、ダイオーペーパーテクノなどの子会社が製品を製造し、大王パッケージやダイオーミウラなどが段ボールや印刷加工物の販売を担っています。
■(2) ホーム&パーソナルケア事業
エリエールブランドを中心に、衛生用紙、紙おむつ、フェミニンケア用品、ウエットワイプ、ペット用品などの製造販売を行っています。少子高齢化やライフスタイルの変化に合わせ、付加価値商品の拡充や環境配慮型商品の開発を進め、国内外の一般消費者に向けて製品を提供しています。
収益源は顧客に対する製品の販売代金です。国内では主に同社やエリエールペーパー、エリエールプロダクトなどが製造を担い、同社およびEBSが販売を行っています。海外では、大王(南通)生活用品有限公司が中国市場向けに、サンテルS.A.がブラジル市場向けに製造販売を展開しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、植林・木材販売事業、エンジニアリング事業、物流事業、ゴルフ場事業などを展開しています。また、次世代素材であるセルロースナノファイバー(CNF)複合樹脂の商用生産やバイオリファイナリー領域の事業化に向けた事業育成も行っています。
収益源は各種サービスや製品の提供による対価です。フォレスタル・アンチレLTDA.やオレゴンチップターミナルINCが植林・木材販売を行い、ダイオーエンジニアリングがエンジニアリング事業を、ダイオーロジスティクスが製品輸送などの物流事業をそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は堅調に推移し、直近3期は安定した水準を維持しています。利益面では一時的に経常損失を計上した期や、構造改革費用等の特別損失により最終赤字となった期があったものの、価格改定の浸透や事業構造の改善により、直近の期では大幅な利益水準の回復を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,123億円 | 6,462億円 | 6,717億円 | 6,689億円 | 6,668億円 |
| 経常利益 | 377億円 | -241億円 | 96億円 | 45億円 | 213億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | -3.7% | 1.4% | 0.7% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 617億円 | -167億円 | 51億円 | -112億円 | 89億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は横ばい圏内で推移していますが、価格改定の浸透や付加価値商品の販売伸長により売上総利益率は改善しました。それに伴い、営業利益および営業利益率も前期と比較して大きく上昇しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,689億円 | 6,668億円 |
| 売上総利益 | 1,440億円 | 1,589億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.5% | 23.8% |
| 営業利益 | 98億円 | 240億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | 3.6% |
販売費及び一般管理費(合計1,349億円)のうち、運送費及び保管費が655億円(構成比49%)、給与手当及び賞与が178億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
紙・板紙事業は、需要減退の影響を受けたものの、価格改定やエネルギーコストの改善により増益となりました。ホーム&パーソナルケア事業は、国内での付加価値商品の好調や海外事業の構造改革の進展が寄与し、黒字転換と増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 紙・板紙事業 | 3,542億円 | 3,503億円 | 90億円 | 141億円 | 4.0% |
| ホーム&パーソナルケア事業 | 2,952億円 | 2,989億円 | -14億円 | 81億円 | 2.7% |
| その他 | 195億円 | 176億円 | 21億円 | 18億円 | 10.3% |
| 連結(合計) | 6,689億円 | 6,668億円 | 98億円 | 240億円 | 3.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 446億円 | 573億円 |
| 投資CF | -209億円 | -449億円 |
| 財務CF | -355億円 | -321億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.6%となっており、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」を経営理念に掲げています。この理念のもと、「衛生:人々の健康を守る」「人生:人生の質を向上させる」「再生:地球を再生する」という「3つの生きる」を成し遂げ、社会課題の解決と持続可能な価値創造を目指しています。
■(2) 企業文化
「誠意と熱意を持つ者が事を成す」という創業の精神を基盤としています。また、経営理念を実現するための4つの柱として、「ものづくりへのこだわり(Dedicated)」「地域社会とのきずな(Attentive)」「安全で働きがいのある企業風土(Integrated)」「地球環境への貢献(Organic)」を掲げ、社員相互の信頼関係に基づいた一体運営を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「Daio Group Transformation 2035」および3カ年計画の第5次中期事業計画に基づき、事業ポートフォリオの変革や収益力の再構築に取り組んでいます。
* 2026年度目標:売上高7,400億円、営業利益300億円
* 2035年度目標:売上高1兆2,000億円、営業利益1,200億円
■(4) 成長戦略と重点施策
活動領域をグローバル視点へとシフトする「エリアの変革」、環境変化に対応する「強みの変革」、バイオマス燃料等を活用する「エネルギーの変革」、および「価値創造の源泉強化」の4つの変革を推進しています。不採算事業の整理や付加価値商品の拡販、新素材領域の育成により安定的な収益基盤の構築を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
価値創造の源泉は「人財」であるとの認識のもと、「個の成長支援」「多様性を活かす」「変革・挑戦の促進」の3本柱を人材戦略として掲げています。グローバル人材の早期育成や次世代リーダー候補の育成、自律的なキャリア形成支援を進めるとともに、社員がいきいきと働ける安全・安心な職場づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.2歳 | 19.6年 | 6,372,617円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.8% |
| 男性育児休業取得率 | 91.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 89.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性リーダー比率(19.2%)、年次休取得率(79.6%)、3年後新卒定着率(76.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要・市況変動による影響
主力製品である紙・板紙製品および家庭紙商品の需要減少や市況下落により、販売数量や金額が減少するリスクがあります。これに対し、生産品種の柔軟なシフトや、幅広い商品ラインナップを複合的に組み合わせた営業戦略を推進し、市況変動の影響を極小化する体制を構築しています。
■(2) 原燃料価格や為替相場の変動による影響
木材チップや古紙、石炭などの原燃料価格の高騰や、外貨建て調達に伴う為替相場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。調達先の多角化や為替予約によるリスクヘッジを実施するとともに、SDGs調達を推進して取引先と一体となった安定供給体制の確保を図っています。
■(3) 海外事業による影響
中国や東南アジア、ブラジル等での事業展開において、現地の法規制の変更、地政学リスク、政治不安や為替変動などが業績に影響を与える可能性があります。これに対し、海外事業の構造改革や徹底的な固定費削減を進めるとともに、関係者間で最新情報を共有し迅速に対応しています。
■(4) 人財確保のリスク
持続的な成長や事業構造の転換を支える専門的な知識や高度な技術を持つ人財の確保が計画通りに進まないリスクがあります。多様な採用チャネルの活用や教育・研修制度の充実を図るとともに、働き方改革の推進や処遇制度の見直しを通じた働きがいのある職場環境の整備に努めています。



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