ゼンリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼンリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼンリンは東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場する、位置情報関連事業のリーディングカンパニーです。住宅地図データの提供やカーナビゲーション用データなどを手掛けています。直近の業績は、売上高が前期比で微減となり、営業利益は減益となりましたが、純利益は増益を確保しました。


※本記事は、株式会社ゼンリンの有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゼンリンってどんな会社?


同社は創業以来、地図情報サービスを提供し、自動運転やデジタルツインなど先端技術にも対応する企業です。

(1) 会社概要


1974年に地図等の企画出版を目的に設立され、1983年に現在の社名に変更しました。1994年に福岡証券取引所へ上場し、2000年には地図データのインターネット配信事業を開始しました。直近では2025年にAIを活用したインフラ管理ソリューションを強化するため子会社化を実施しています。

同社の従業員数は連結で3,574名、単体で2,441名です。筆頭株主は有限会社サンワで、第2位は事業の提携関係にあるトヨタ自動車、第3位は同じく資本業務提携関係にあるNTTとなっています。大株主には取引先企業が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社サンワ 9.81%
トヨタ自動車 7.95%
NTT 7.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役会長は髙山善司氏、代表取締役社長は竹川道郎氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
髙山善司 代表取締役会長 1986年同社入社。営業本部副本部長、経営戦略室長、営業本部長などを経て、2008年代表取締役社長に就任。ビジネス企画室長などを歴任し、2025年4月より現職。
竹川道郎 代表取締役社長 1996年同社入社。ADAS事業推進室長などを経て、2019年執行役員事業統括本部IoT事業本部長に就任。経営戦略室長などを歴任し、2025年4月より現職。
松尾正実 専務取締役 1983年安田生命保険相互会社入社、みずほ銀行を経て2005年同社入社。管理本部長、コーポレート本部長などを経て2022年取締役常務執行役員。2025年4月より現職。
戸島由美子 取締役上席執行役員コーポレート本部長 1991年同社入社。経営管理本部経営管理・IR部長、コーポレート本部経営管理・IR部長などを経て、2018年執行役員コーポレート本部長に就任。2024年6月より現職。
諸岡正義 取締役上席執行役員インフラソリューション事業本部長 1989年同社入社。第二事業本部ICT事業部長などを経て、2022年執行役員総合販売本部長に就任。カスタマーサポート部長などを歴任し、2025年4月より現職。
大迫益男 取締役 1977年善隣(現同社)入社。取締役、常務取締役兼本社工場長、専務取締役を経て、1992年6月より現職。2005年よりゼンリンプリンテックス取締役会長を兼任。
清水辰彦 取締役 1986年同社入社。ZENRIN USA, INC.副社長を経て、2002年ゼンリンデータコム取締役、2003年同社取締役副社長に就任。2006年6月より現職。
藤本泰生 取締役常勤監査等委員 1989年同社入社。経営管理部長、管理本部経理部長、コーポレート本部経理部長などを経て、2018年監査室長に就任。2024年4月監査室参事を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、龍美樹(福岡タワー常務取締役)、岡部麻子(岡部麻子公認会計士事務所代表)、磯田直也(ユアサハラ法律特許事務所パートナー)、新海一郎(元沖ウィンテック理事)、柴田祐二(柴田祐二公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「位置情報サービス関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) プロダクトソリューション事業・マーケティングソリューション事業


住宅地図帳や応用地図、住宅地図データベースなどを企業や個店に提供し、業務DXや企業の個別課題の解決を支援しています。マーケティングソリューションでは、顧客の目的に合わせた効果的なサービスを提供します。

製品の販売や受託契約等により収益を得ており、住宅地図データ等のライセンス収入も含まれます。事業の運営は同社やゼンリンプリンテックス、ゼンリンマーケティングソリューションズなどが担っています。

(2) 公共ソリューション事業・インフラソリューション事業


自治体やインフラ企業向けに、汎用的な業務機能と位置情報コンテンツをパッケージ化して提供しています。AI技術を活用した道路点検ソフトウェアなど、インフラ管理をはじめとした社会課題解決のためのソリューションを提供します。

製品の販売や受託開発、各種データのライセンス収入によって収益を得ています。事業の運営は同社やゼンリンデータコム、アーバンエックステクノロジーズなどが行っています。

(3) モビリティソリューション事業


スマートフォン向けサービスやインターネットサービス向け地図データ、カーナビゲーション用データなどのモビリティ領域向けサービスを提供しています。自動運転やMaaS等の次世代インフラ分野にも対応します。

カーナビゲーション用データやスマートフォン向けサービスのライセンス契約に基づくロイヤルティ等から安定した収益を得ています。運営は同社やAbalta Technologies, Inc.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は600億円前後で推移し、直近2期は640億円台と安定した水準を維持しています。利益面では一時的な減少から回復傾向にあり、経常利益率は直近で6.0%に改善しています。純利益も安定した黒字を継続的に確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 591億円 589億円 613億円 644億円 643億円
経常利益 30億円 21億円 21億円 39億円 39億円
利益率(%) 5.2% 3.6% 3.4% 6.1% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 34億円 21億円 26億円 26億円 27億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益は前期と同水準を維持していますが、利益率はわずかに低下しました。営業費用などの増加に伴い、営業利益は前期比で減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 644億円 643億円
売上総利益 271億円 267億円
売上総利益率(%) 42.1% 41.5%
営業利益 39億円 35億円
営業利益率(%) 6.1% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が132億円(構成比57%)を占めています。売上原価については、単体のデータとして外注費が105億円(構成比35%)、減価償却費が38億円(同13%)となっています。

(3) セグメント収益


公共ソリューション事業は住宅地図データの提供増加などで増収となりましたが、モビリティソリューション事業はカーナビゲーション用データの販売減により減収となりました。プロダクトやインフラ領域は底堅く推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
プロダクトソリューション事業 140億円 146億円
マーケティングソリューション事業 66億円 65億円
公共ソリューション事業 83億円 99億円
インフラソリューション事業 178億円 175億円
モビリティソリューション事業 176億円 158億円
連結(合計) 644億円 643億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を借入金の返済や積極的な設備投資に充てる「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 96億円 71億円
投資CF -52億円 -66億円
財務CF -38億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」を企業理念として掲げ、「Maps to the Future」のスローガンのもと、「地図で情報を価値化する企業」となることを目指しています。地図関連情報の提供を通じ、社会に貢献し続けることを活動の基本としています。

(2) 企業文化


「私たちは信頼される企業市民として、質の高い情報を企画・収集・管理・編集・提供することで、人びとにとってより適した価値を実現します」という行動指針を定めています。株主にとって魅力ある企業集団を目指すとともに、顧客および従業員を大切にする価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2030」(2026年3月期~2030年3月期)を推進しています。最終年度である2030年3月期に向けて、具体的な数値目標を設定し、利益成長と資本効率の向上を図っています。

* 売上高:780億円
* 営業利益:80億円(営業利益率10.3%)
* 親会社株主に帰属する当期純利益:60億円
* ROE(自己資本利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「共創社会における社会的価値創造」を基本方針に掲げ、企業や地域との共創活動を高速化しています。顧客起点でサービスを最適化し、パッケージ、セレクション、ソリューションの3区分で収益の最大化を図ります。また、AI技術を活用して「高度時空間データベース」へと進化させ、デジタルツインを実現する情報プラットフォームを構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が能力や経験を組み合わせて成長し、心理的エネルギーを高める自律型組織への進化を目指しています。DX教育などの育成プログラムを拡充し、「オープンマインドで変化を受け入れながら自ら成長する人材」の輩出に取り組みます。また、柔軟な働き方の導入や健康増進施策など、職場環境の整備も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.1歳 18.4年 6,013,242円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 77.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(70.6%)、エンゲージメントスコア(3.75)、障がい者雇用率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 進化する技術・デジタルツインへの対応遅れ


予想を超える技術の進化や市場ニーズの急激な変化に対応できず、市場に合致した製品を投入できなかった場合、競争力が低下するリスクがあります。また、AI技術の悪用によるノウハウ流出なども懸念されます。

(2) 位置情報サービス関連事業への依存


売上の大部分を独自の地図データベースに基づく製品やサービスに依存しています。データベースを最新に保つための多額の整備コストや設備投資が固定的に発生するため、売上が確保できなければ収益に悪影響を及ぼします。

(3) 自動運転・MaaS市場での競争激化


テック企業による破壊的イノベーションや新技術の活用により、同社の製品を凌駕する高品質な製品や低価格なサービスが市場に投入された場合、競争が激化し、事業展開や財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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