※本記事は、株式会社フジシールインターナショナル の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フジシールインターナショナルってどんな会社?
同社は、熱収縮性ラベル(シュリンクラベル)やタックラベル、ソフトパウチ等のパッケージングシステムの企画・提案・開発・製造・販売をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1958年に藤尾製作所として設立され、キャップシールの製造を開始しました。1993年にはオランダのIntersleeve B.V.(現Fuji Seal Europe B.V.)を子会社化し、機械事業へ本格進出しました。2003年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2004年には持株会社体制へ移行して現商号に変更しました。2012年にはスイスのPago Holding AG(現Fuji Seal Switzerland AG)を子会社化し、タックラベル事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結5,639名、単体48名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社とみられる創包で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には公益財団法人が名を連ねており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 創包 | 14.40% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.30% |
| 公益財団法人フジシール財団 | 8.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表執行役社長 CEOは岡﨑成子氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡﨑 成子 | 取締役 代表執行役社長 CEO | 1990年入社。欧州・米国の現地法人取締役を経て、2008年より代表執行役社長。2023年3月より現職。 |
| 岡﨑 陽一 | 取締役 執行役機械事業兼欧州担当 | 2012年入社。欧州現地法人の社長を経て、2022年執行役。2023年6月より現職。Fuji Seal B.V.社長を兼務。 |
| 矢田 彰一 | 取締役 執行役財務担当 CFO兼アセアン担当 | 2018年American Fuji Seal, Inc.入社。米州現地法人社長を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、塩路広海(弁護士)、牧辰人(公認会計士)、関勇一(元神戸製鋼所専務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アセアン」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
シュリンクラベル、タックラベル、ソフトパウチ及び包装機械を中心としたパッケージングシステムを提供しています。飲料、食品、日用品などのメーカーが主な顧客です。
製品の販売や機械のメンテナンスサービス等により収益を得ています。運営は主にフジシール、フジアステック、フジタックイースト、フジシールウエスト等が担っています。
■(2) 米州
シュリンクラベル、タックラベル、ソフトパウチ及び各種包装資材、包装機械の製造・販売を行っています。北米を中心とした市場で事業を展開しています。
製品販売および機械のメンテナンスサービスが主な収益源です。運営はAmerican Fuji Seal, Inc.、American Fuji Technical Services, Inc.、Fuji Seal Packaging de Mexico, S.A. de C.V.が行っています。
■(3) 欧州
シュリンクラベル、ソフトパウチ、タックラベル、各種包装資材および包装機械の製造・販売を行っています。欧州全域をカバーする体制を構築しています。
製品および機械の販売、メンテナンスサービス等から収益を得ています。運営はFuji Seal B.V.の統括下、Fuji Seal Europe Ltd.、Fuji Seal France S.A.S.、Fuji Seal Germany GmbH等の各拠点が担当しています。
■(4) アセアン
シュリンクラベル、ソフトパウチ、各種包装資材の製造・販売および包装機械の販売を行っています。東南アジアおよびインド等の新興市場での需要に対応しています。
製品販売および機械の販売・メンテナンスサービス等が収益源です。運営はFuji Seal Packaging (Thailand) Co., Ltd.、Fuji Seal Vietnam Co., Ltd.、PT. Fuji Seal Indonesia等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高は着実な右肩上がりで成長を続けています。経常利益は2023年3月期に一時的な落ち込みを見せましたが、その後回復し、2025年3月期には過去最高水準に達しています。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,636億円 | 1,703億円 | 1,840億円 | 1,966億円 | 2,123億円 |
| 経常利益 | 121億円 | 106億円 | 84億円 | 147億円 | 183億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 6.2% | 4.6% | 7.5% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 54億円 | 57億円 | -40億円 | 73億円 | 84億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸長しています。特に営業利益率は6.8%から8.9%へと大幅に改善しており、収益性が向上していることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,966億円 | 2,123億円 |
| 売上総利益 | 359億円 | 450億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.2% | 21.2% |
| 営業利益 | 133億円 | 188億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が98億円(構成比37%)、荷造運賃が34億円(同13%)を占めています。売上原価については、原材料費や製造経費などが含まれています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収増益を達成しました。日本は堅調に推移し、米州と欧州は大幅な増益となりました。アセアンも増収増益となり、グローバル全域で好調な業績となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 968億円 | 999億円 | 88億円 | 99億円 | 9.9% |
| 米州 | 579億円 | 662億円 | 34億円 | 65億円 | 9.8% |
| 欧州 | 268億円 | 294億円 | 8億円 | 21億円 | 7.2% |
| アセアン | 152億円 | 168億円 | 5億円 | 9億円 | 5.6% |
| 連結(合計) | 1,966億円 | 2,123億円 | 133億円 | 188億円 | 8.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って借入金の返済や株主還元を行い(財務CFマイナス)、設備投資なども実施している(投資CFマイナス)ことから「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 199億円 | 213億円 |
| 投資CF | -106億円 | -125億円 |
| 財務CF | -43億円 | -34億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「包んで価値を、日々新たなこころで創造します。」を経営理念に掲げています。パッケージングを通じて、すべての人が笑顔で安心して暮らせる循環型社会・持続的社会の実現に貢献し、企業価値の向上を図ることを目指しています。
■(2) 企業文化
「ワクワクを創る会社 ~ワクワクなしに成長なし~」を掲げ、社員が創造と挑戦をワクワクしながら成長できることを応援しています。公平・公正を基本とした相互の信頼関係のもと、顧客やパートナーと共に新たな価値を創造し、株主ともオープンな会話を通じてワクワクを共有することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年までの7年間を一つの節目と捉え、「FSG.30(Fuji Seal Sustainable Growth 2030 Strategy)」を策定しています。2031年3月期の連結経営目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:3,500億円以上
* 営業利益率:2桁%
* ROE:2桁%
* PBR:1.5倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長を目指す3つの基本戦略として、「既存4事業の着実な強化」「製品マーケット・ターゲットエリアの拡大」「次世代に繋がる新たなビジネスモデルの創造」を掲げています。既存事業では環境対応型製品へのシフトや生産効率向上を進め、エリア拡大では既存技術の展開を図り、新ビジネスモデルでは将来の柱となる事業の育成に取り組みます。
* 2026年までに売上の100%を環境配慮型製品に切り替え
* 2027年3月期までの3年間で450億円の投資枠を設定
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本の充実」「価値観の共有」「DE&Iの尊重」を原則とし、従業員が情熱を持って仕事に取り組める基盤を構築しています。次世代経営者の育成や、自己申告制度、社内公募制度などを通じたキャリア形成支援、バリューセミナーによる理念浸透などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.3歳 | 11.8年 | 8,250,000円 |
※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 環境問題への対応
気候変動や海洋プラスチック問題への意識の高まりにより、新たな規制への対応コスト増加や評判低下のリスクがあります。同社は環境配慮型製品の開発・供給や製造時の環境負荷低減に取り組んでいますが、各国の法規制の変更等が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料の市況変動
製品に使用される原材料の価格は世界景気や需給バランスの影響を受けます。急激な価格高騰はコスト上昇につながり、供給ひっ迫は製品供給に支障をきたす恐れがあります。同社は原価低減や安定調達に努めていますが、これらが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 事故や自然災害
火災等の事故、地震や水害等の自然災害、感染症の拡大等は、生産拠点やサプライチェーンに損害を与えるリスクがあります。操業の中断や出荷遅延、修復費用の発生などが、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報の流出
顧客の新製品情報などを多数保有しており、サイバー攻撃等による外部流出や不正使用が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、業績に影響を与える可能性があります。秘密保持やセキュリティ対策を講じていますが、リスクは内在しています。



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