積水化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

積水化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する積水化学工業は、住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックス、メディカルなどの事業を展開しています。直近の業績では、売上高が13,093億円と増収を達成したものの、営業利益は1,065億円、親会社株主に帰属する当期純利益は752億円と減益になっています。


※本記事は、積水化学工業株式会社 の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 積水化学工業ってどんな会社?


住宅や環境・ライフライン、高機能プラスチックスなどを軸に事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1947年に積水産業として発足し、翌年に現在の積水化学工業へ商号変更しました。1953年に大阪証券取引所、1954年に東京証券取引所へ上場しています。1971年にはユニット住宅の販売を開始し住宅事業に進出しました。直近では2026年にフィルム型ペロブスカイト太陽電池事業を開始しています。

現在の従業員数は連結で26,752名、単体で3,156名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主および第2位株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第3位には従業員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.78%
日本カストディ銀行(信託口) 5.30%
積水化学グループ従業員持株会 3.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長 社長執行役員は清水郁輔氏が務めています。社外取締役比率は29.4%です。

氏名 役職 主な経歴
清水郁輔 代表取締役社長社長執行役員 1987年入社。高機能プラスチックスカンパニーのプレジデントなどを経て、2026年3月より現職。
加藤敬太 取締役会長 1980年入社。高機能プラスチックスカンパニープレジデントや代表取締役社長を経て、2026年3月より現職。
平居義幸 取締役専務執行役員、環境・ライフラインカンパニープレジデント 1985年入社。経営戦略部長などを経て、2020年4月より現職。
吉田匡秀 取締役専務執行役員、住宅カンパニープレジデント 1989年入社。セキスイハイム中部代表取締役社長等を経て、2025年4月より現職。
浅野陽 取締役専務執行役員、高機能プラスチックスカンパニープレジデント 1987年入社。中間膜事業部長などを経て、2026年4月より現職。
村上和也 取締役常務執行役員、人事部長 1989年入社。人材開発部長などを経て、2026年4月より現職。
髙下貞二 取締役 1976年入社。住宅事業部長や代表取締役社長、代表取締役会長を経て、2026年3月より現職。


社外取締役は、大枝宏之(日清製粉グループ本社元取締役社長)、野崎治子(堀場製作所元人事教育部長)、肥塚見春(髙島屋元代表取締役専務)、宮井真千子(パナソニック元役員環境本部長)、畑中好彦(アステラス製薬元代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「住宅事業」「環境・ライフライン事業」「高機能プラスチックス事業」「メディカル事業」および「その他」事業を展開しています。

住宅事業


鉄骨系・木質系ユニット住宅の製造、施工、販売、リフォーム、レジデンシャル事業などを展開しています。顧客は主に一般消費者や土地オーナーなどです。

住宅の販売代金やリフォーム代金などが主な収益源です。運営は同社や東京セキスイハイムなどのグループ各社が行っています。

環境・ライフライン事業


塩化ビニル管・継手、管きょ更生材料、建材などの製造、販売、施工を行っています。顧客は主にインフラや建築関連の事業者、地方自治体などです。

インフラ資材や建材の販売代金、工事請負代金などが主な収益源です。運営は同社や東日本積水工業などのグループ各社が行っています。

高機能プラスチックス事業


合わせガラス用中間膜、発泡ポリオレフィン、工業用テープ、半導体材料などの製造と販売を行っています。顧客は自動車、電子部品、建築などのメーカーです。

各種高機能素材の販売代金が主な収益源です。運営は同社や積水ポリマテックなどのグループ各社が行っています。

メディカル事業


臨床検査薬、自動分析装置、医薬品原薬・中間体などの製造・販売を行っています。顧客は主に医療機関や製薬企業などです。

検査薬や医療機器の販売代金が主な収益源です。運営は積水メディカルなどのグループ各社が行っています。

その他事業


フィルム型リチウムイオン電池やペロブスカイト太陽電池などの新事業、および各報告セグメントに含まれない製品の製造やサービスを行っています。

製品の販売代金や関連サービス代金などが主な収益源です。運営は同社や積水ソーラーフィルムなどのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。経常利益も右肩上がりで推移しており、利益率も8%台後半から9%台へと向上し、収益性の高さがうかがえます。当期利益についても安定した水準を維持しています。

項目 100期 101期 102期 103期 104期
売上高 11,579億円 1,2425億円 1,2565億円 1,2978億円 1,3093億円
経常利益 970億円 1,042億円 1,059億円 1,110億円 1,172億円
利益率(%) 8.4% 8.4% 8.4% 8.6% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 559億円 474億円 680億円 601億円 602億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率は32.4%で横ばいとなっています。一方、営業利益は前期から微減となり、営業利益率も8.1%へとわずかに低下しました。

項目 103期 104期
売上高 1,2978億円 1,3093億円
売上総利益 4,206億円 4,242億円
売上総利益率(%) 32.4% 32.4%
営業利益 1,080億円 1,065億円
営業利益率(%) 8.3% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当及び賞与が1,059億円(構成比33%)、研究開発費が456億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


住宅事業と高機能プラスチックス事業が増収を牽引しました。利益面では高機能プラスチックス事業が最も大きく貢献しており、利益率も高い水準を維持しています。一方、メディカル事業やその他事業は減収減益となっています。

区分 売上(103期) 売上(104期) 利益(103期) 利益(104期) 利益率
住宅 5,239億円 5,359億円 315億円 372億円 6.9%
環境・ライフライン 2,274億円 2,251億円 230億円 232億円 10.3%
高機能プラスチックス 4,424億円 4,517億円 612億円 593億円 13.1%
メディカル 992億円 937億円 128億円 111億円 11.9%
その他 49億円 28億円 -116億円 -127億円 -448.9%
連結(合計) 1,2978億円 1,3093億円 1,080億円 1,065億円 8.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 103期 104期
営業CF 1,192億円 783億円
投資CF -615億円 -691億円
財務CF -612億円 -465億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「企業活動を通じて社会的価値を創造する」「積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する」「際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する」の社是「3S精神」を掲げています。「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


個人の能力を最大限に発揮し、活力ある組織をつくることや、よき企業市民としてサステナブルな視点で地球環境問題と社会貢献に取り組むことを企業行動指針としています。また、従業員を社会から預かった貴重な財産と位置づけ、「全員が挑戦したくなる会社」の実現に向けて、挑戦を通じて成長していくことを支援する風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年の業容倍増を目指す長期ビジョン「Vision 2030」の実現に向けて、2028年度を最終年度とする中期経営計画「Accelerate 2028」を策定しています。

* 売上高:16,000億円
* 営業利益:1,500億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:1,020億円
* ROIC:8%以上
* ROE:11.0%
* EBITDA:2,260億円

(4) 成長戦略と重点施策


ESG経営を中心においた革新と創造を戦略の軸にし、現有事業の拡大と新領域への挑戦に取り組みます。中期経営計画では「事業戦略」と「基盤強化」の両輪で成長を一気に加速させ、サステナビリティ貢献製品の創出やM&Aなどを通じた市場開拓を進めます。

* 設備投資枠:4,000億円
* M&A投資枠:3,000億円
* 研究開発費:1,550億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材理念に「従業員は社会からお預かりした貴重な財産である」と定め、人的資本を企業価値向上の源泉と位置づけています。「挑戦する風土の醸成」「適所適材の実現」「ダイバーシティの実現」を人事戦略に掲げ、従業員のキャリア拡大支援や労働条件の改善など、人的資本への投資に積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
104期 44.2歳 15.9年 9,462,708円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 93.3%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 107.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(98.4%)、後継者候補準備率(104%)、挑戦行動の発現度(62%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の市況変動および調達


経済環境や需給バランスの変動、中東情勢の悪化などに起因して原材料の調達が困難になったり、価格が高騰したりするリスクがあります。同社は調達先の分散や代替品への切り替えを進めるとともに、販売価格への適宜転嫁を行うことで、これらの影響の最小化を図っています。

(2) 為替・金利・保有資産価格の変動


外貨に対する円の価値変動や金利変動によって、海外子会社の業績や住宅事業の需要に影響が及ぶ可能性があります。外国通貨建て取引における社内為替レートの定期的な見直しなどにより、為替変動が営業利益に与える影響の管理や回避に向けた施策を実施しています。

(3) 経済動向および製品市況の動向


グローバルな自動車・航空機市場の動向や、半導体・ディスプレイ市況の変動に依存している事業では、短期間での需要縮小リスクがあります。新たな成長領域への進出や、国内住宅市場のエリア別戦略の推進などにより影響の軽減と事業基盤の強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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