日本ゼオン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ゼオン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ゼオンは東京証券取引所プライム市場に上場する化学メーカーです。合成ゴムやラテックスなどのエラストマー素材事業や、光学フィルム等の高機能材料事業を展開しています。直近の業績は、販売価格の改定等の影響で減収となった一方、大型テレビ向け光学フィルム等の好調により増益を達成しました。


※本記事は、日本ゼオン株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ゼオンってどんな会社?


エラストマー素材と高機能材料を主力とする化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1950年に合成樹脂の製造販売を目的として設立され、1961年に東京証券取引所に上場しました。1965年には独自のGPB法によるブタジエンおよび合成ゴムの生産を開始し、事業を拡大してきました。近年では2021年に米国でZeon Ventures Inc.を設立するなど、新たな事業創出にも積極的に取り組んでいます。

同社グループの従業員数は連結で4,425名、単体で2,503名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様の信託銀行、第3位はメガバンクとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.19%
日本カストディ銀行(信託口) 6.14%
みずほ銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) 4.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.6%です。代表取締役社長兼CEOは豊嶋哲也氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
豊嶋哲也 取締役社長[代表取締役]CEO(Chief Executive Officer) 1989年同社入社。高機能樹脂・部材事業部長、総合開発センター長等を経て、2023年より現職。
田中公章 取締役会長[代表取締役] 1979年同社入社。高機能ケミカル事業部長、取締役社長等を経て、2023年より現職。
松浦一慶 取締役常務執行役員CFO(Chief Financial Officer) 1993年同社入社。ゴム事業部長、人事統括部門長等を経て、2022年より現職。
曽根芳之 取締役常務執行役員代表取締役社長付特命担当 1988年同社入社。高機能部材事業部長、執行役員等を経て、2022年より現職。
小西裕一郎 取締役常務執行役員CTO(Chief Technology Officer) 1991年同社入社。ソルベイアドバンストポリマーズを経て同社再入社。2023年より現職。


社外取締役は、北畑隆生(元経済産業事務次官)、南雲忠信(元横浜ゴム代表取締役会長)、秋山美紀(慶應義塾大学環境情報学部教授)、升味佐江子(最高裁判所災害補償審査委員会委員長)、吉川京子(DMG森精機理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、エラストマー素材事業および高機能材料事業、その他の事業を展開しています。

エラストマー素材事業


合成ゴム、合成ラテックス、および石油樹脂や熱可塑性エラストマーなどの化成品の製造・販売を行っています。これらの製品は、自動車用タイヤや医療・衛生用手袋、粘着テープなど幅広い産業の基盤素材として世界中で利用されています。

同事業の収益源は、国内外のメーカーに対する製品の販売代金です。事業の運営は同社のほか、トウペやゼオン化成などの国内子会社、および米国、タイ、シンガポール、中国などの海外子会社がグローバルに担っています。

高機能材料事業


合成香料などの化学品をはじめ、電子材料、電池材料、トナー、高機能樹脂、高機能部材、医療器材などを提供しています。主な顧客は半導体やディスプレイ、EV向けリチウムイオン二次電池などの先端産業分野の企業です。

製品や部材を顧客企業に提供することで販売収益を得ています。事業の運営は同社に加え、ゼオンメディカルや東京材料といった国内子会社のほか、米国のZeon Specialty Materials Inc.などの海外子会社が展開しています。

その他の事業


RIM(反応射出成形)配合液や各種塗料などの製品を取り扱っているほか、各種産業における設備等の設計施工といったサービスを提供しています。グループ内の多様なリソースを活かした事業活動を行っています。

各種製品の販売代金や付帯サービスの提供対価として収益を得ています。同社やトウペ、RIMTEC、ゼオンノースといった国内子会社に加え、米国のZeon Ventures Inc.などの海外拠点が運営に携わっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね3,600億円から4,200億円の間で底堅く推移しています。経常利益についても安定的に利益を計上しており、直近の期間では減収となったものの、利益率の改善を伴う大幅な増益を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,617億円 3,886億円 3,823億円 4,206億円 4,120億円
経常利益 495億円 314億円 269億円 331億円 400億円
利益率(%) 13.7% 8.1% 7.0% 7.9% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 281億円 85億円 303億円 199億円 273億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益は増加しており、売上総利益率も向上しました。これに伴い、営業利益および営業利益率も上昇し、収益性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,206億円 4,120億円
売上総利益 1,182億円 1,212億円
売上総利益率(%) 28.1% 29.4%
営業利益 293億円 364億円
営業利益率(%) 7.0% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が175億円(構成比21%)、研究開発費が170億円(同20%)、運賃諸掛が136億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


エラストマー素材事業は海外市場の需要低迷や販売価格の下落などにより減収となりました。一方、高機能材料事業は大型テレビ向け光学フィルムや電池材料の需要が堅調に推移したことで増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エラストマー素材事業 2,325億円 2,218億円
高機能材料事業 1,216億円 1,242億円
その他 666億円 660億円
連結(合計) 4,206億円 4,120億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た十分なキャッシュを元手に、事業成長に向けた積極的な投資を行うと同時に、借入金の返済や株主還元といった財務活動の資金も自前で賄えている優良な「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 208億円 764億円
投資CF -220億円 -424億円
財務CF -171億円 -349億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」を企業理念に掲げています。大地(ゼオ)と永遠(エオン)からなる社名にふさわしく、独創的な技術・製品・サービスの提供を通じて、「持続可能な地球」と「安心で快適な人々のくらし」に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


理念の実現に向け、2030年のビジョンとして「社会の期待と社員の意欲に応える会社」を掲げています。また、「まずやってみよう」「つながろう」「磨き上げよう」を大切な価値観とし、社員一人ひとりが自ら考え抜いて行動し、ステークホルダーとの対話・協働を実践する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「STAGE30」において、2030年度の達成目標として以下を掲げています。

* CO2排出量42%削減(2020年度比、Scope1+2)
* SDGs貢献製品の売上高比率50%
* ROIC(全社)8%
* 従業員エンゲージメント75%
* 外国人/女性役員比率30%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の第3フェーズでは、マテリアリティを軸にした「選択と集中」により、成長事業比率の拡大を進めます。社会の変化に対応した事業構造の転換を図り、イノベーションによる新たな価値提供と更なるスペシャリティケミカル企業への転換により企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「高い目標に向かって、自ら考え抜いて行動し、変え続けられる人材」を求める人材像としています。「社員一人ひとりの能力を引き出し、育成し、活用する」組織づくりを推進し、社員の成長と意欲を引き出す人事制度への変革や、働きやすくキャリアを断絶させない職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.6歳 14.3年 7,763,347円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.4%
男女賃金差異(正規雇用) 80.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(14.1%)、従業員エンゲージメントサーベイの総合スコア(53%)、年次有給休暇取得率(80.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動および外部事業環境リスク


同社の主力であるエラストマー素材事業などは、原油やナフサ等の主要原材料価格の動向が製造コストに大きな影響を与えます。地政学的要因などによる急激な価格高騰を製品価格に転嫁できない場合や、主要市場の景気後退により需要が縮小した場合、同社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新製品開発と投資に係るリスク


エレクトロニクス業界等における技術革新のスピードに対応するため、同社は高機能材料事業において積極的な研究開発や成長投資を行っています。しかし、予測を超える市場の変化や技術の進歩により、魅力ある新製品をタイムリーに上市できなかった場合、将来の成長や収益性が低下するリスクがあります。

(3) 知的財産保護と製品品質に係るリスク


同社は差別化された独自技術やノウハウを有していますが、第三者による特許や企業秘密の模倣、流出を完全に防げない可能性があります。また、世界的な品質管理基準のもとで製品を製造していますが、予期せぬ製品の欠陥による大規模なリコールや賠償責任が発生した場合、多額のコストや社会的信用の低下を招くおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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