石原産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石原産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の化学メーカー。酸化チタンを主力とする無機化学事業と、農薬を中心とする有機化学事業を展開しています。第100期は、海外での農薬販売が好調に推移し売上高は増加しましたが、原燃料価格の高騰や酸化チタンの需要減少などが響き、営業利益は減少しました。結果として増収減益となりました。


※本記事は、石原産業株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 石原産業ってどんな会社?


酸化チタン等の無機化学製品と農薬等の有機化学製品の製造・販売を主軸に、グローバルに事業を展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1920年に創業し、1949年に上場しました。1954年に四日市工場で硫酸法酸化チタンの製造を開始し、1974年には塩素法酸化チタン工場を完成させました。1990年には米国の農薬事業会社を買収し、グローバル展開を加速させています。2005年には富士チタン工業を完全子会社化し、グループ体制を強化しました。

同グループは連結従業員数1,768名、単体従業員数1,146名の体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位は総合商社の三井物産となっており、機関投資家や取引先が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.50%
日本カストディ銀行(信託口) 9.64%
三井物産 5.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長社長執行役員は髙橋英雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋英雄 代表取締役取締役社長社長執行役員コンプライアンス統括役員(CCO)事業創出・事業改革推進統括 1980年入社。開発企画研究本部長、常務執行役員、四日市工場長などを経て、2021年6月より現職。
田中健一 取締役会長 1976年入社。総務本部長、常務執行役員などを経て、2015年代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
大久保浩 代表取締役専務執行役員経営企画管理本部長 1986年入社。石原エンジニアリングパートナーズ執行役員、富士チタン工業取締役常務執行役員などを経て、2023年6月より現職。
吉田潔充 取締役専務執行役員有機化学事業管掌 1981年入社。中央研究所長、バイオサイエンス事業本部長などを経て、2021年6月より現職。
川添泰伸 取締役常務執行役員財務本部長 1982年日本長期信用銀行入行。新生銀行常務執行役員などを経て、2017年同社入社。2019年6月より現職。
下條正樹 取締役常務執行役員無機化学営業本部長 1983年入社。無機化学営業本部長、開発企画研究本部長などを経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、花澤達夫(元農林水産省・一般財団法人食品産業センター専務理事)、安藤知史(大西昭一郎法律事務所代表社員)、内田明美(元東プレ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「無機化学事業」、「有機化学事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 無機化学事業


酸化チタン、機能性材料、その他化成品を製造・販売しています。酸化チタンは塗料、インキ、プラスチック等の白色顔料として使用され、機能性材料は電子部品材料などに利用されています。

収益は主に製品の販売代金から得ています。酸化チタンや機能性材料は主に石原産業および富士チタン工業が製造し、国内および世界市場に向けて販売しています。台湾石原産業は製品の輸入・販売業務を行っています。

(2) 有機化学事業


農薬(除草剤、殺虫剤、殺菌剤等)、有機中間体、医薬、動物用医薬品を取り扱っています。主力である農薬は、独自の技術で開発された製品をグローバルに展開しています。

収益は農薬等の製品販売代金や受託製造による対価から得ています。石原産業が製造を行い、国内販売は石原バイオサイエンスを通じて、海外販売は石原産業が直接またはISK BIOSCIENCES EUROPE N.V.やISK BIOSCIENCES CORP.などの海外子会社を通じて行っています。

(3) その他の事業


商社業や建設業などを行っています。商社業では化学工業製品の販売や原材料の調達を行い、建設業では生産設備の建設・修繕などを手掛けています。

収益は製品の販売代金や工事代金から得ています。商社業は石原テクノが、建設業は石原エンジニアリングパートナーズが主に運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2020年3月期から2023年3月期にかけて、売上高は増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近の2023年3月期は、売上高が前期比で増加したものの、経常利益および当期純利益は減少しました。2022年3月期に高い利益率を記録しましたが、翌期には原材料価格の高騰などが影響し、利益率が低下しています。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 1,064億円 1,011億円 1,018億円 1,110億円 1,312億円
経常利益 111億円 53億円 59億円 133億円 103億円
利益率(%) 10.5% 5.3% 5.8% 12.0% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 77億円 26億円 38億円 69億円 76億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約18%増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回ったため、売上総利益の伸びは限定的でした。さらに販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は前期よりも減少しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 1,110億円 1,312億円
売上総利益 327億円 333億円
売上総利益率(%) 29.4% 25.3%
営業利益 116億円 86億円
営業利益率(%) 10.4% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、試験研究費が69億円(構成比28%)、給与賞与等が52億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


無機化学事業は価格改定や円安効果により増収となりましたが、原燃料価格高騰の影響で減益となりました。有機化学事業は海外での農薬販売が好調で大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
無機化学事業 599億円 645億円 60億円 10億円 1.6%
有機化学事業 483億円 638億円 78億円 106億円 16.7%
その他の事業 28億円 30億円 4億円 2億円 7.4%
調整額 -42億円 -40億円 -27億円 -32億円 -
連結(合計) 1,110億円 1,312億円 116億円 86億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる一方、借入等の財務活動で資金を調達している「勝負型」の状態です。なお、営業CFのマイナスは主に棚卸資産の増加によるものです。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 165億円 -60億円
投資CF -43億円 -50億円
財務CF -116億円 10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.3%で市場平均(46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「化学技術でより良い生活環境の実現に貢献し続ける」ことを社会に存在する意義(パーパス)として掲げています。この決意のもと、基本理念として「『社会』、『生命』、『環境』に貢献する」こと、「株主、顧客・取引先、地域社会、従業員を大切にする」こと、「遵法精神を重んじ、透明な経営を行う」ことを定めています。

(2) 企業文化


同社は、社会から信頼される事業活動を行うため、社会規範や法令を遵守し、高い倫理観と良識を持って行動することを行動基準としています。また、ものづくりにおいては地球環境との調和を図り、安全確保に万全を期す姿勢を重視しています。さらに、相互協力と相互理解により人権を尊重し、風通しのよい働きやすい職場をつくることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


創立100周年を機に策定した長期ビジョン「Vision 2030」において、「独創・加速・グローバル。化学の力で暮らしを変える。」を掲げています。2030年に向けた経営目標として以下を設定しています。

* 連結売上高 2,000億円超
* 連結営業利益率 15%以上
* ROE 10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「Vision 2030 Stage I」では、ESG・SDGs視点での経営の取り組み強化を推進し、サステナブルな企業価値創造を目指しています。無機化学事業では、高機能・高付加価値品の販売比率向上や、電子部品材料等の拡販、環境負荷低減と生産効率化の両立に取り組みます。有機化学事業では、主力農薬原体の低コスト製造と安定供給、新規剤やバイオラショナル分野の開発・商品化、グローバル展開の加速を重点施策としています。

* 売上高 1,470億円(2023年度予想)
* 営業利益 110億円(2023年度予想)
* ROE 7%以上(2023年度予想)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「Vision 2030」の達成に向けて、目指すべき人材像を「ものごとの基本を理解し、実践した上で“変える”ために、“変わる”ことのできる人」と定義しています。この人材像に基づき、プロフェッショナルとしての責任感や変化への対応力、課題解決力を持つ人材を育成するための研修教育体系を整備しています。また、従業員一人ひとりの能力や成果が業績に反映され、働きがいを感じられる人事制度・評価制度への見直しを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 43.8歳 19.6年 6,980,000円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 36.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用) 74.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 67.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(64.5%)、研究職人員比率(22.2%)、エンゲージメント指数(4.51)、離職率(自己都合退職)(2.5%)、有給休暇取得率(81.9%)、労働災害度数率(0.70)、採用者の女性比率(11.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の承認・登録等の遅延・却下


農薬や動物用医薬品事業において、各国の法規制強化により、新製品の承認や登録が遅延または却下される可能性があります。特に農薬の世界的な規制強化や、動物用医薬品の米国・欧州での承認プロセスにおいて想定外の事態が生じた場合、製品の販売計画に狂いが生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 地震・津波


主力工場である四日市工場は南海トラフ地震の被災想定地域に位置しています。大規模な地震やそれに伴う津波、液状化が発生した場合、生産設備の損傷や操業停止、人的被害が生じるリスクがあります。これにより、製品の供給が滞り、業績や財務状況に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 原料の調達困難、外注先の問題


主要原料の多くを海外から調達しており、産出国の政情不安や事故、環境規制等により調達が困難になるリスクがあります。また、海外の外注先においても同様の理由で生産や供給に支障が出る可能性があります。これらが顕在化した場合、生産遅延や調達コストの上昇を招き、業績に影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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