※本記事は、前澤化成工業株式会社 の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 前澤化成工業ってどんな会社?
上下水道関連製品の製造・販売を主軸に、水処理施設の設計・施工やプラスチック製品の製造を行う企業です。
■(1) 会社概要
1954年に硬質エンビ工業として設立され、1961年に現社名へ変更しました。2001年に東証一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しました。2008年には共和成型(現・新潟成型)を子会社化し、2022年には常陽水道工業を連結子会社化するなど、事業基盤の拡大を進めています。
連結従業員数は558名、単体では495名体制です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(9.60%)ですが、第2位の前澤工業(5.90%)および第3位の前澤給装工業(5.60%)は創業者が同一の関連企業であり、これら事業会社との安定的な関係性がうかがえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.60% |
| 前澤工業 | 5.90% |
| 前澤給装工業 | 5.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役兼社長執行役員は田中理氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 理 | 代表取締役兼社長執行役員 | 1996年同社入社。水環境事業部長、営業本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 久保 淳一 | 取締役会長 | 1991年同社入社。営業本部長、常務執行役員などを経て、2021年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。 |
| 茂木 達宏 | 取締役 | 1992年同社入社。開発設計部長、中央研究所長、製造本部長などを歴任。2025年4月より現職。 |
| 齋藤 巌 | 取締役兼上席執行役員管理本部長 | 1988年協和銀行(現りそな銀行)入行。2019年同社入社。経理部長、経営企画室長を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、加藤真美(弁護士)、近藤純一(元国際協力銀行理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「管工機材」「水・環境エンジニアリング」「各種プラスチック成形」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 管工機材事業
主に上水道・下水道関連製品の製造および販売を行っています。具体的には、水道用・下水道用の硬質塩化ビニル管・継手、量水器ボックス、排水ヘッダー、塩ビ製小型マンホールなどを提供しており、住宅の水回りインフラを支えています。
収益は、これら製品の販売による対価として得ています。運営は主に前澤化成工業が行っており、同社グループの売上の大半を占める主力事業です。
■(2) 水・環境エンジニアリング事業
大型合併処理浄化槽や産業排水処理施設の設計・施工・維持管理、および給排水衛生設備や冷暖房設備などの公共事業関連工事を行っています。環境保護や業務効率化を目的とした水処理システムの提案も手掛けています。
収益は、施設の設計・施工および維持管理業務に対する対価として得ています。運営は、前澤化成工業および連結子会社である常陽水道工業が行っています。
■(3) 各種プラスチック成形事業
住宅設備製品部材や各種プラスチック製品部材、建築関連部材の製造・販売を行っています。顧客からの受注に基づいた生産体制をとっており、多種多様なプラスチック製品を提供しています。
収益は、受注生産したプラスチック製品の販売による対価として得ています。運営は主に連結子会社である新潟成型が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は210億円から242億円へと緩やかに拡大しています。経常利益に関しても12億円から25億円へと増加傾向にあり、利益率は5%台から10%台へと改善しています。当期純利益も着実に積み上がっており、安定した収益基盤を維持しながら成長を続けていることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 210億円 | 219億円 | 235億円 | 239億円 | 242億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 16億円 | 22億円 | 21億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 7.4% | 9.5% | 8.7% | 10.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 6億円 | 15億円 | 13億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増ながら、売上総利益が増加し、売上総利益率が改善しています。営業利益率も7.4%から9.0%へと上昇しており、収益性が高まっています。価格改定などの効果により、利益体質が強化されている様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 239億円 | 242億円 |
| 売上総利益 | 83億円 | 88億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.6% | 36.3% |
| 営業利益 | 18億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が21億円(構成比32%)、給料及び手当が16億円(同23%)を占めています。売上原価については、154億円で売上高に対する構成比は64%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の管工機材事業は、重点販売製品の拡販や価格改定効果により増益となりました。水・環境エンジニアリング事業は、安定した案件形成と効率的な受注により大幅な増益を達成しています。各種プラスチック成形事業は、不採算案件からの撤退等により減収となりましたが、利益面では改善が見られます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 管工機材 | 216億円 | 217億円 | 17億円 | 20億円 | 9.1% |
| 水・環境エンジニアリング | 12億円 | 15億円 | 0億円 | 2億円 | 11.1% |
| 各種プラスチック成形 | 10億円 | 10億円 | 0億円 | 0億円 | 3.3% |
| 連結(合計) | 239億円 | 242億円 | 18億円 | 22億円 | 9.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスという「安定・成熟型」の堅実な推移を示しています。投資CFは、有形固定資産の取得による支出などを、本業で稼いだ営業CFの範囲内で十分に賄うことができています。財務CFは、大部分が「配当金の支払額」に充てられています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26.2億円 | 18.7億円 |
| 投資CF | △7.6億円 | △4.6億円 |
| 財務CF | △8.1億円 | △8.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、いかなる経営環境においても揺るぎない経営基盤を構築することを目指しています。お客様満足度の高い製品・サービスの提供を通じて、地域ならびにお客様とともに成長していくことを経営の基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「サステナビリティ経営の推進」を基本方針の一つとして掲げ、人材の多様性の確保や社内環境整備を重視しています。従業員の多様性を確保することが持続的な成長と企業価値向上に資すると考え、多様な働き方の推進や従業員エンゲージメントの向上に取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は2024年度から2026年度までの中期経営計画「SHIFT 2026」を策定し、確かな成長軌道を描くための「成長基盤の確立期」と位置付けています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:260億円
* 営業利益:25億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、「グループ収益力の強化/新たな企業価値の創出」「収益基盤の強化」「戦略的成長投資の実行と資本効率の向上」「サステナビリティ経営の推進」の4つを基本方針としています。既存事業・製品の拡充として災害分野製品(豪雨対策製品など)の開発や、新規事業・市場開拓として生分解性樹脂やバイオマスの開発にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性の確保を重視し、従業員エンゲージメントの向上を目指しています。多様な働き方の推進として、フレックスタイム制度の拡大や育児のための勤務軽減対象者の拡大に取り組むほか、従業員個人の志向に合わせた自己啓発支援制度など多様な教育体制を整え、従業員一人一人の価値向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 18.9年 | 6,505,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 68.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 59.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(19.5%)、障がい者雇用率(2.6%)、有給休暇取得率(63.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新設住宅着工戸数の動向
同社グループの製品は主に住宅の水回りに関連した上下水道整備に用いられるため、業績は新設住宅着工戸数の動向に強く影響を受けます。人口減少や住宅価格の高騰、金利上昇リスクなどにより市場が縮小した場合、売上高および営業利益に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料市況の動向
同社グループの製品製造には多くの原材料が使用されています。原材料価格の高騰などにより製造原価が上昇した際、これを販売価格へ十分に転嫁できない場合には、利益率が低下し、営業利益に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競合との価格競争
取り扱い製品の一部は規格の定められた汎用品であり、品質面での差別化が難しい側面があります。そのため、競合他社との販売価格競争が激化する傾向にあり、販売価格への値下げ圧力が生じた場合には、売上高および営業利益に悪影響を及ぼす可能性があります。



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