#記事タイトル:「大日本塗料転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、大日本塗料株式会社 の有価証券報告書(第142期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大日本塗料ってどんな会社?
塗料事業を中核に、照明機器や蛍光色材事業も展開する総合塗料メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1929年7月、日本電池より分離独立し、鉛粉塗料として発足しました。1936年5月に大日本塗料へ改称し、1949年5月に株式を上場しました。2001年10月には田辺化学工業と合併し、自動車・プラスチック用塗料分野を強化しました。2025年3月には神東塗料を連結子会社化し、事業基盤の拡大を図っています。
同社の連結従業員数は2,496名(単体702名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は金融機関の明治安田生命保険、第3位は持株会のDNT取引関係持株会です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.23% |
| 明治安田生命保険 | 4.91% |
| DNT取引関係持株会 | 4.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は里 隆幸氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 里 隆幸 | 代表取締役社長 | 1984年同社入社。技術開発部門長、塗料事業部門長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2018年6月より現職。 |
| 永野 達彦 | 取締役常務執行役員 | 1987年三菱銀行入行。同行丸の内支社長を経て、2017年同社入社。管理本部長などを務め、2024年4月より現職。 |
| 山本 基弘 | 取締役執行役員 | 1986年同社入社。技術開発部門長、塗料事業部門長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 中谷 昌幸 | 取締役執行役員 | 1990年三菱銀行入行。同行徳山支店長などを経て、2019年同社入社。管理本部経営企画室長を務め、2022年4月より現職。 |
| 三宅 章弘 | 取締役執行役員 | 1996年同社入社。塗料事業部門塗料事業企画室長、生産部門生産技術企画部長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 藤原 明 | 取締役執行役員 | 1983年同社入社。塗料事業部門金属焼付塗料事業部長、DNT山陽ケミカル社長などを経て、2023年12月より現職。 |
社外取締役は、林 紀美代(元あずさ監査法人シニアマネージャー)、佐藤 弘志(元三菱マテリアル社外取締役常勤監査委員)、馬場 浩司(元日本輸送機常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内塗料事業」「海外塗料事業」「照明機器事業」「蛍光色材事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内塗料事業
国内において、建築・構造物用、工業用、家庭用などの各種塗料の製造および販売を行っています。また、インク・分散技術関連の製品も手掛けています。
販売は同社および神東塗料に加え、グループ販売会社を通じて行われています。製造は自社工場のほか、国内子会社に委託する体制をとっています。主な収益は顧客への製品販売による対価です。運営は主に同社および神東塗料が行っています。
■海外塗料事業
タイ、マレーシア、インドネシア、中国、メキシコなどの海外拠点において、現地需要に応じた塗料の製造および販売を行っています。特に自動車部品用や一般工業用塗料などを提供しています。
収益は海外顧客への製品販売によって得ています。運営はTHAI DNT PAINT MFG.CO.,LTD.などの現地子会社および関連会社が行っています。
■照明機器事業
商業施設や店舗向けの各種照明機器の製造・販売、および店舗工事等を行っています。業務用LED照明やUVランプなどを提供しています。
収益は照明機器の販売や工事代金から得ています。運営は主にDNライティングが行っています。
■蛍光色材事業
蛍光顔料および特殊コーティング材の製造・販売を行っています。防災・安全用途やアパレル向けなどの製品を提供しています。
収益は国内外の顧客への製品販売から得ています。運営は主にシンロイヒが行っています。
■その他事業
塗装工事やグループ製品の物流業務、建材の製造・販売などを行っています。
収益は塗装工事代金や物流サービス料などから得ています。運営は日塗エンジニアリングやニットサービスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は700億円台で安定的に推移しています。直近では微増収を確保し、利益面では経常利益が50億円前後で推移していますが、当期純利益は変動が見られます。利益率は一定水準を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 632億円 | 669億円 | 728億円 | 719億円 | 725億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 35億円 | 43億円 | 53億円 | 52億円 |
| 利益率(%) | 5.2% | 5.2% | 5.9% | 7.4% | 7.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 15億円 | 25億円 | 29億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高はわずかに増加し、売上総利益も増加傾向にあります。一方で、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は若干減少し、営業利益率は低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 719億円 | 725億円 |
| 売上総利益 | 218億円 | 225億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.3% | 31.0% |
| 営業利益 | 49億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び諸手当が86億円(構成比48%)、運送保管費が21億円(同12%)、研究開発費が21億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内塗料事業は微増収となりましたが、海外塗料事業は自動車生産調整等の影響で減収となりました。照明機器事業はインバウンド需要等を背景に増収となり、蛍光色材事業は微減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 国内塗料事業 | 506億円 | 509億円 |
| 海外塗料事業 | 85億円 | 81億円 |
| 照明機器事業 | 97億円 | 104億円 |
| 蛍光色材事業 | 12億円 | 12億円 |
| その他 | 20億円 | 19億円 |
| 連結(合計) | 719億円 | 725億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35億円 | 36億円 |
| 投資CF | -8億円 | -4億円 |
| 財務CF | -17億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「新しい価値の創造を通じて地球環境や資源を護り、広く社会の繁栄と豊かな暮らしの実現に貢献できる企業を目指します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、持続的成長力をもつ企業として事業展開を図っています。
■(2) 企業文化
同社グループは、安全・快適な社会への貢献や、未来を見据えた製品開発、気候変動対策、資源循環への貢献などを重視する文化を持っています。また、創業精神として「国家社会の繁栄に奉仕し得る将来性ある企業足るべし」を掲げ、独自技術による社会貢献を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2029年度に向けた「ビジョン2029」および「2026中期経営計画」を策定しています。2029年度のありたい姿として以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高:1,000億円
* 連結営業利益:100億円
* NOPAT-ROE:8.0%程度
* DOE:5.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、成長市場と先駆的領域への注力、外部リソース獲得・活用による事業基盤拡大、人材および事業活動の全社最適化を基本方針としています。サステナビリティ分野へのリソース配分や、海外での事業基盤拡大、DXによる職場環境改善を推進し、企業価値向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「一人ひとりが『自ら考え、行動に移す』こと、周囲へ発信し、刺激を与え、頼られ信頼される人材の育成」を方針としています。主体的な課題への取り組みや、多様な個性と能力を尊重する組織風土の実現を目指し、公募制度や階層別研修、トレーニー制度などを導入しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.4歳 | 16.4年 | 5,958,334円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の採用比率(18.9%)、障がい者の雇用率(3.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境変化に関するリスク
同社グループの事業は、国内・海外の塗料、照明機器、蛍光色材等で構成されています。関連業界の需要減少、景気後退、地政学的問題、自然災害等により販売数量の減少や価格下落が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に防食塗料は公共投資、外装建材用塗料は住宅投資の動向に大きく影響を受けます。
■(2) 原材料調達に関するリスク
塗料事業の主原料はナフサ等の石油化学製品であり、価格変動の影響を受けます。世界的な需要構造の変化や為替変動により原材料価格が高騰した場合、または需給バランスの逼迫等により調達困難となった場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 品質不適切行為に関するリスク
同社グループは過去に一部製品における不適切行為(検査値改ざん、規格外出荷等)によりJISマーク表示一時停止等の処分を受けました。再発防止策に取り組んでいますが、これらに起因する補償費用の発生や販売数量の減少等が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



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