大日本塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大日本塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大日本塗料は、東京証券取引所プライム市場に上場し、塗料、照明機器、蛍光色材の製造・販売を主力とする総合塗料メーカーです。直近の業績は、新規連結子会社の追加により売上高が大幅な増収となった一方、販売の伸び悩みによる収益性低下や人件費などの経費増加により営業利益、経常利益ともに減益となっています。


※本記事は、大日本塗料株式会社の有価証券報告書(第143期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大日本塗料ってどんな会社?


大日本塗料は、国内塗料から海外塗料、照明機器、蛍光色材までを幅広く手掛ける総合メーカーです。

(1) 会社概要


1929年に鉛粉塗料として発足し、1936年に大日本塗料へ改称しました。1949年に東京・大阪・京都の各証券取引所に株式を上場しています。1966年の家庭塗料部門の分離や1970年代の海外展開などを経て、2022年に東証プライム市場へ移行しました。直近では2025年に神東塗料やボンフロンを連結子会社化し、事業基盤の拡大を図っています。

従業員数は連結で2,522名、単体で710名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口)で、第2位はダイニッカ、第3位は日本マスタートラスト信託銀行(投資信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口) 5.00%
ダイニッカ 4.25%
日本マスタートラスト信託銀行(投資信託口) 4.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は里隆幸氏が務めています。取締役10名のうち、3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
里 隆幸 代表取締役社長<担当>内部監査室品質保証部 1984年同社入社。技術開発部門長や塗料事業部門長などを経て、2018年より現職。
永野 達彦 取締役常務執行役員管理本部長塗料事業本部長<担当>管理本部塗料事業本部 三菱UFJ銀行を経て、2017年同社入社。管理本部長等を経て、2026年より現職。
山本 基弘 取締役執行役員スペシャリティ事業本部長兼塗料事業本部副本部長(技術統括)<担当>スペシャリティ事業本部技術開発本部 1986年同社入社。技術開発部門長等を経て、2022年より現職。
三宅 章弘 取締役執行役員生産本部長<担当>生産本部資材本部 1996年同社入社。生産部門長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、林紀美代(林紀美代公認会計士事務所代表)、佐藤弘志(元三菱マテリアル常勤監査役)、馬場浩司(元日本輸送機常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内塗料」「海外塗料」「照明機器」「蛍光色材」および「その他」の事業を展開しています。

国内塗料

国内において、工業用および一般用の塗料を製造・販売しています。自動車部品や各種建材などの工業用から、建築・土木分野まで幅広く製品を提供しており、顧客の多様なニーズに応える環境対応型塗料の開発にも注力しています。

収益源は塗料製品の販売代金です。主に大日本塗料が製造・販売を担うほか、子会社の神東塗料や日塗化学、ボンフロンなどが自社製品の製造・販売を展開し、サンデーペイントなどが家庭用塗料の販売を行っています。

海外塗料

タイ、マレーシア、インドネシア、中国、台湾、メキシコなどの東南アジアおよび北中米地域において、現地市場のニーズに応じた塗料の製造および販売を行っています。

収益源は現地顧客への製品販売代金であり、タイのThai DNT Paint Mfg.Co.,Ltd.やインドネシアのPT.DNT INDONESIA、メキシコのDAI NIPPON TORYO MEXICANA,S.A. de C.V. など、各地域の子会社および関連会社が事業を運営しています。

照明機器

各種照明機器の製造および販売を行うほか、商業施設などの内装に係る店舗工事等も請け負っており、再開発案件を中心とした商業施設や宿泊施設向けにサービスを提供しています。

収益源は照明機器の販売代金および工事の請負代金であり、事業の運営は主に子会社のDNライティングが行っています。同社は秋田DNライティングへ一部製品の製造を委託しています。

蛍光色材

蛍光顔料や蛍光塗料、特殊コーティング材の製造および販売を行っており、国内外の幅広い産業向けに人や環境に配慮した高付加価値な製品を提供しています。

収益源は蛍光色材製品の販売代金であり、事業の運営は子会社のシンロイヒが行っています。

その他

報告セグメントに含まれない事業として、塗装工事事業や、大日本塗料グループの製品等を取り扱う物流事業などを展開しています。

収益源は工事の請負代金や物流サービスの対価であり、塗装工事は日塗エンジニアリングが、物流業務はニットサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は700億円台で安定して推移していましたが、直近ではM&Aによる連結範囲の拡大もあり938億円へと大幅な増収を達成しています。一方、経常利益については販売の伸び悩みや経費増の影響を受け、直近では減益傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 669億円 728億円 719億円 725億円 938億円
経常利益 35億円 43億円 53億円 52億円 45億円
利益率(%) 5.2% 5.9% 7.4% 7.2% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 25億円 29億円 23億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い売上総利益は拡大したものの、人件費などの経費増加が利益を圧迫し、営業利益は減益となっています。売上総利益率も27.6%に低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 725億円 938億円
売上総利益 225億円 259億円
売上総利益率(%) 31.0% 27.6%
営業利益 47億円 39億円
営業利益率(%) 6.5% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び諸手当が105億円(構成比48%)、運送保管費が28億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内塗料および海外塗料事業は、新規連結子会社の追加により売上高が拡大しましたが、販売の伸び悩みにより利益面では明暗が分かれました。照明機器事業は堅調に推移したものの経費増で減益となり、蛍光色材事業は経費圧縮により増益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内塗料 509億円 719億円 20億円 12億円 1.7%
海外塗料 81億円 86億円 2億円 4億円 4.3%
照明機器 104億円 104億円 21億円 19億円 18.5%
蛍光色材 12億円 11億円 1億円 1億円 5.9%
連結(合計) 725億円 938億円 47億円 39億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 36億円 30億円
投資CF -4億円 -34億円
財務CF -1億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「新しい価値の創造を通じて地球環境や資源を護り、広く社会の繁栄と豊かな暮らしの実現に貢献できる企業を目指します。」という経営理念のもと、持続的成長力をもつ企業たるべく事業展開を図っています。ビジョン2029に向けてありたい姿を明確化し、社会への貢献と持続可能な事業活動の両立を目指しています。

(2) 企業文化

創業以来培ってきた防食技術をはじめとする独自技術により、ステークホルダーに信頼され、ともに発展し続ける企業文化を重視しています。現在は、品質管理を中心としたガバナンス体制の徹底・強化を最優先課題とし、全社員が自律的に正しく判断できる組織風土の再構築を進めています。

(3) 経営計画・目標

2026中期経営計画を推進し、資本コストや株価を意識した経営の高度化を図っています。
・売上高:960億円(2026年度)、1,000億円(2029年度)
・営業利益:55億円(2026年度)、100億円(2029年度)
・NOPAT-ROE:8.0%程度
・DOE:3.0%以上(2026年度)、5.0%以上(2029年度)

(4) 成長戦略と重点施策

持続的な成長に向けて、成長市場と先駆的領域へのリソース配分最適化や、M&A・業務提携を通じた事業基盤の拡大を進めています。また、サステナビリティ貢献製品の開発力を強化するとともに、人材の採用・育成やDXの活用による事業活動の全社最適化を図り、収益性の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、持続的な企業価値向上に向け、人材を重要な経営資本と位置づけ、多様な人材の確保と能力を発揮できる環境づくりを推進しています。M&Aで拡大したグループ体制を活かした人材の最適配置や、主体的に課題に取り組む人材の育成、柔軟な働き方を可能とする職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.2歳 16.0年 6,233,100円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 52.2%
男女賃金差異(全労働者) 75.0%
男女賃金差異(正規雇用) 79.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の採用比率(30.4%)、障がい者の雇用率(2.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境変化に関するリスク

国内・海外の需要減少や景気後退、地政学的な問題、自然災害等により販売数量の減少や価格下落が生じた場合、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に防食塗料は公共投資、外装建材用塗料は住宅投資の動向に多大な影響を受けます。

(2) 法的規制等に関するリスク

環境・安全・健康を確保するための各種法規制の適用を受けており、今後の法改正や法規制強化のあり方次第では、生産・研究施設の改善や製品設計・開発に多大な投資を必要とする可能性があります。また、新製品開発の遅延による機会損失が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 災害等に係るリスク

予想を上回る規模の地震や台風等の自然災害、火災等の事故が発生した場合、人的・物的損害のほか、事業活動の停止等により業績に影響を及ぼす可能性があります。特に照明機器や蛍光色材の生産拠点は代替拠点がないため、罹災時には稼働困難となるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。