スガイ化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スガイ化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、医薬・農薬・機能性用中間物および界面活性剤の製造販売を主力事業としています。直近の業績は、売上高が前期比で減収、当期純利益も減益となりました。農薬用中間物の需要減などが影響しましたが、機能性用中間物は伸長しています。


※本記事は、スガイ化学工業株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スガイ化学工業ってどんな会社?


医薬・農薬・機能性用中間物などの有機化学製品を製造販売する、和歌山県に拠点を置く化学メーカーです。

(1) 会社概要


1928年に和歌山県で菅井化学工場として創業し、染料の製造を開始しました。1952年に菅井化学工業へ改組、1962年に現在のスガイ化学工業と合併し商号を変更しました。1963年には大阪証券取引所市場第二部に上場し、1992年に福井工場を建設しました。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は177名です。大株主の構成は、筆頭株主が証券会社のGMOクリック証券、第2位が金融機関の三菱UFJ銀行、第3位が同じく金融機関の紀陽銀行となっており、金融・証券関連の法人が上位を占めています。

氏名 持株比率
GMOクリック証券 6.99%
三菱UFJ銀行 4.90%
紀陽銀行 4.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は野間修氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
野間 修 代表取締役社長営業管掌 1977年同社入社。企画管理部長、営業本部長、スガイケミー代表取締役社長などを歴任。2020年代表取締役社長に就任し、2024年より現職。
武田 晴夫 取締役会長監査室担当 1971年同社入社。経理部長、管理本部長などを経て、2015年代表取締役社長に就任。2020年より取締役会長。2022年より現職。
種治 崇 取締役生産本部長和歌山事業所長環境安全推進部担当 1990年同社入社。東京営業所長、購買物流部長などを経て、2022年生産本部長兼和歌山事業所長に就任。2024年より現職。
井田 泰敬 取締役経理部担当企画管理部長 1998年同社入社。企画管理部長を経て、2023年執行役員。2024年より現職。
石戸 良典 取締役(監査等委員)(常勤) 1975年同社入社。品質保証部部長、大阪営業所長、監査室長などを歴任。2019年より現職。


社外取締役は、内川真由美(弁護士)、日根野谷正人(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬・農薬・機能性用中間物事業」および「界面活性剤・その他事業」を展開しています。

医薬・農薬・機能性用中間物事業


医薬品、農薬、高機能性樹脂などの原料となる中間物を製造・販売しています。主な顧客は国内外の医薬メーカーや農薬メーカー等です。独自の有機合成技術を活用し、顧客のニーズに合わせた製品を提供しています。

収益は、各メーカーへの製品販売代金として受け取ります。農薬用中間物などは季節変動の影響を受けることがあります。運営は主に同社が行い、子会社のスガイケミーが化学製品等の販売および生産補助業務を担っています。

界面活性剤・その他事業


界面活性剤の製造販売のほか、各種化学製品の製造に関連する事業を展開しています。界面活性剤は洗剤や工業用添加剤など幅広い用途に使用されます。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。また、その他事業として、各事業に関連する研究およびサービス等の活動も行っています。運営は同社およびスガイケミーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は76億円をピークに直近で66億円へと減少しました。経常利益も増減がありつつ、直近では6億円台で推移しています。利益率は概ね9〜10%台を維持しており、安定した収益性を確保していますが、直近では減収減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 60.1億円 62.3億円 70.6億円 76.2億円 66.2億円
経常利益 5.3億円 5.9億円 7.5億円 7.4億円 6.4億円
利益率(%) 8.9% 9.5% 10.6% 9.7% 9.7%
当期純利益(親会社所有者帰属) 3.2億円 4.0億円 5.8億円 4.9億円 3.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が減少しています。売上総利益率は20.4%から21.7%へと改善傾向にありますが、減収の影響をカバーするには至らず、営業利益率は微減となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 76.2億円 66.2億円
売上総利益 15.5億円 14.4億円
売上総利益率(%) 20.4% 21.7%
営業利益 6.4億円 5.4億円
営業利益率(%) 8.4% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.3億円(構成比36%)、その他経費が1.7億円(同18%)を占めています。売上原価に関しては、原材料費や製造経費などが売上原価合計の大部分を構成しています。

(3) セグメント収益


製品別の売上動向を見ると、主力の農薬用中間物が需要減により大きく減少しました。医薬用中間物も減少しましたが、機能性用中間物と界面活性剤は増収となりました。全体としては農薬用中間物の落ち込みが響き、減収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
医薬用中間物 18.0億円 16.7億円
農薬用中間物 47.6億円 36.2億円
機能性用中間物 5.7億円 8.0億円
その他用中間物 1.0億円 1.0億円
界面活性剤 3.5億円 4.1億円
その他 0.4億円 0.2億円
連結(合計) 76.2億円 66.2億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.9%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11.9億円 0.7億円
投資CF -5.0億円 -5.4億円
財務CF -4.0億円 1.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、有機合成技術を事業基盤とし、「新しい技術開発のパワーこそ、企業発展の道である」というテーマを掲げています。創造的で新しい技術の開発を通じて存在価値を高め、利益を上げることで、社会や株主に貢献するとともに、社員の幸せを追求することを経営の基本としています。

(2) 企業文化


未来を見据え、人として品性豊かな仕事をすることを重視しています。また、環境・健康・安全(EHS)への取り組みや、コンプライアンスの遵守、リスク管理の徹底を図りながら、社員一人ひとりが能力を発揮できる職場環境づくりに努める風土があります。

(3) 経営計画・目標


本来であれば2025年度を初年度とする新中期経営計画を策定予定でしたが、農薬用中間物の在庫調整や米国の関税政策などによる不透明な経済状況を鑑み、策定を見送っています。需要動向を見極めた上で、早期に新計画を公表する方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


有機合成技術を活用した徹底的なコストダウンと生産性向上により、競争力を強化します。特に医薬・農薬・高機能性樹脂用中間物の新製品開発と生産設備増強を進め、売上拡大を目指します。また、原材料の供給ソース多元化による安定確保や、環境・健康・安全(EHS)への取り組み強化も重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成を重要課題とし、研修やOJTを通じて次世代育成に注力しています。また、多様性を尊重し、女性活躍推進や仕事と子育ての両立支援を行い、働きやすい環境整備を進めています。「ユースエール」認定や「健康経営優良法人」認定を取得するなど、若者の採用・育成や社員の健康管理にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 18.3年 6,115,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.2%
男女賃金差異(正規雇用) 81.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研究所勤務の女性割合(33.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 売上変動リスク


同社の売上高は医薬・農薬メーカー等の最終製品の販売状況や新製品開発状況に影響を受けます。特に農薬用中間物の売上構成比が高く、天候による病害虫発生状況や、顧客の在庫調整の影響を受ける可能性があります。また、納期等の関係で第4四半期に売上が集中する傾向があります。

(2) 原材料調達および価格変動リスク


製品製造に必要な原材料は、原油・ナフサ価格や貴金属価格の変動の影響を受けます。また、自然災害や事故等によるサプライチェーンの寸断が発生した場合、原材料調達に支障をきたす可能性があります。これらに備え、複数購買等の対策を講じていますが、長期化すれば業績に影響を与える可能性があります。

(3) 安全環境問題リスク


有機化学品を製造しているため、工場での火災、爆発、化学物質漏えい等の事故リスクがあります。安全第一を最優先課題とし、設備の保守点検や保安訓練を実施していますが、万一事故や公害問題が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。