スガイ化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スガイ化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スガイ化学工業は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、有機合成技術を基盤として医薬、農薬、機能性などの各種用中間物や界面活性剤の製造販売を展開する化学メーカーです。直近の業績では、機能性中間物が伸長したものの農薬中間物や医薬中間物の減少により、前事業年度と比べて減収増益となっています。


**スガイ化学工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、スガイ化学工業株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スガイ化学工業ってどんな会社?


有機合成技術を基盤とし、医薬や農薬、機能性等の各種用中間物および界面活性剤の製造販売を行う化学メーカーです。

■(1) 会社概要


同社は1928年に菅井化学工場として創業し、染料の製造を開始しました。1952年にスガイ化学工業へ改組し、1963年には大阪証券取引所市場第二部に上場を果たしています。1985年には特殊潤滑剤の販売部門を分離してスガイケミーを設立し、1992年には福井県に福井工場を建設して生産拠点を拡大しました。

同社単体の従業員数は176名です。筆頭株主はGMOクリック証券で、第2位および第3位には三菱UFJ銀行や紀陽銀行といった金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
GMOクリック証券 5.31%
三菱UFJ銀行 4.90%
紀陽銀行 4.24%

■(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は野間修が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
野間修 代表取締役社長営業管掌 1977年4月同社入社。営業本部長などを経て、2020年6月代表取締役社長。2024年6月より現職。
武田晴夫 取締役会長監査室担当 1971年4月同社入社。管理本部長などを経て、2015年6月代表取締役社長就任。2022年4月より現職。
種治崇 常務取締役管理本部長環境安全部担当 1990年4月同社入社。購買物流部長、生産本部長などを経て2025年6月より現職。
井田泰敬 取締役生産本部長企画管理部長 1998年4月同社入社。企画管理部長などを経て2024年6月取締役就任。2025年6月より現職。
石戸良典 取締役(監査等委員)(常勤) 1975年4月同社入社。環境安全・品質保証部部長、監査室長などを経て2019年6月より現職。


社外取締役は、内川真由美(弁護士)、日根野谷正人(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは単一セグメントで事業を展開しています。

同社は有機合成技術を基盤として、医薬、農薬、機能性などの各種用中間物および界面活性剤の製造・販売を行っています。顧客は主に医薬メーカーや農薬メーカーであり、長年培ってきた有機化学合成およびユニットプロセスの技術とノウハウを活用し、独自製品や高機能性製品の開発にも積極的に取り組んでいます。

収益は主に、これらの中間物や界面活性剤の販売対価として顧客から受け取っています。事業の運営は同社が主体となって行っており、子会社のスガイケミーが化学製品等の販売および生産補助業務を担うことで、グループ全体の生産・販売体制を支えています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

■(1) 業績推移


売上高は2024年3月期にかけて拡大傾向にありましたが、直近2期は減少に転じています。一方で利益面は、生産性の改善やコストダウンの取り組みなどにより安定した水準を維持しており、利益率も概ね9〜10%台で堅調に推移しています。当期純利益についても直近で増加しており、収益力の確保に努めていることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 62億円 71億円 76億円 66億円 64億円
経常利益 6億円 7億円 7億円 6億円 6億円
利益率(%) 9.5% 10.6% 9.7% 9.7% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 6億円 5億円 4億円 5億円

■(2) 損益計算書


売上高は前事業年度から減少したものの、売上総利益はほぼ同水準を維持し、売上総利益率はわずかに改善しています。しかし、販売費および一般管理費の増加などにより営業利益は減少し、営業利益率も低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 66億円 64億円
売上総利益 14億円 14億円
売上総利益率(%) 21.7% 21.9%
営業利益 5億円 5億円
営業利益率(%) 8.2% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が3億円(構成比37%)を占めており、次いで役員報酬が1億円(同10%)となっています。また、売上原価は50億円で、売上原価合計に対する構成比は78%となっています。

■(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品別の売上構成を見ると、主力である農薬用中間物や新製品を中心に機能性中間物の売上が伸長しています。一方で、遺伝性疾患治療薬用などの需要減により医薬用中間物が大きく減少したことが、全体の減収要因となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医薬用中間物 17億円 4億円
農薬用中間物 36億円 43億円
機能性用中間物 8億円 12億円
その他用中間物 1億円 1億円
界面活性剤 4億円 4億円
その他 0.2億円 0.3億円
連結(合計) 66億円 64億円

■(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.7億円 17億円
投資CF -5億円 -6億円
財務CF 1億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

■(1) 経営理念


同社は、「新しい技術開発のパワーこそ、企業発展の道である」というテーマを掲げ、有機合成技術を基盤とした事業展開を行っています。常に未来を見据え、人として品性豊かな仕事をすることで企業の存在価値を高めることを目指しています。その結果として利益を創出し、取引先や株主を含む社会に貢献すると同時に、社員の幸せを追求することを経営の基本方針としています。

■(2) 企業文化


安全第一と環境対策を最優先課題として取り組んでおり、労働災害の未然防止や環境負荷の低減に努めています。また、人材育成を重要課題と位置づけ、日々の業務を通じた次世代の育成に力を注いでいます。性別や年齢、国籍、障がいの有無といった多様性を互いに尊重し合い、チームワークを発揮できる環境づくりを目指すなど、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンの推進にも取り組んでいます。

■(3) 経営計画・目標


同社は、不透明な事業環境の中で安定的に利益を稼げる企業体質への転換を進めています。次期の業績見通しとして、総売上高は当期に比べ微増となる以下の数値を計画しています。

* 次期総売上高:65億円
* 国内売上高:56億円
* 輸出売上高:9億円

■(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、長年培ってきた有機合成の技術とノウハウを最大限に活用し、新製品開発と生産設備の増強を推進します。具体的には、医薬用・農薬用・高機能性樹脂用中間物などの開発を進め、売上の拡大を目指します。同時に、徹底的なコストダウンによる原価改善や生産性の向上を図り、安定的に利益を生み出せる企業体質を構築します。また、原材料の安定確保に向けた調達先の多元化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

■(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材が活躍できる組織づくりを重要な経営課題と認識し、多様な価値観の融合によるイノベーション創出を目指しています。性別や年齢、国籍に関わらず公平な機会を提供するとともに、仕事と育児・介護の両立を支援する制度の整備を進めています。また、人材の中長期的な成長が企業価値の向上に直結するという考えのもと、給与決定においては職務や能力、成果のバランスを重視した評価を行っています。

■(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 18.8年 6,182,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

■(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.4%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 109.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

■(1) 顧客業界の販売動向への依存リスク


同社の売上高は医薬メーカーや農薬メーカーなどの最終製品の販売状況に影響を受けます。特に農薬用中間物は天候による影響や特定時期への売上集中傾向があります。このため、独自製品や機能性用中間物の開発を進めるなど、特定分野への依存度を下げる取り組みを行っています。

■(2) 情報セキュリティに係るリスク


サイバー攻撃や不正アクセスにより情報システムに障害が生じた場合や、機密情報・個人情報が外部に流出した場合、社会的信用の低下を招く恐れがあります。同社はネットワークのセキュリティ対策や社員教育を徹底し、情報管理体制の強化に取り組んでリスクの軽減を図っています。

■(3) 株価変動による影響


同社は取引先との関係維持などを目的として、市場性のある株式を保有しています。そのため、株式市場の動向によって株価が下落した場合、保有資産の評価損が発生する可能性があります。保有株式の継続的な見直しを行うことで、業績への影響を最小限に抑えるよう努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。