太陽ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

太陽ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場し、プリント基板用部材「ソルダーレジスト」で世界トップクラスのシェアを持つエレクトロニクス事業と、医療用医薬品の製造販売・受託を行う医療・医薬品事業を展開しています。2025年3月期の業績は、売上高1,190億円、経常利益216億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、太陽ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 太陽ホールディングスってどんな会社?


エレクトロニクス部材の世界的リーディングカンパニーであり、近年は医薬品事業やエネルギー事業など多角化を推進する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1953年に印刷用インキの製造販売を行う太陽インキ製造として設立され、1970年代よりプリント基板用部材へ進出しました。2001年に東証一部へ上場し、2010年には持株会社体制へ移行して現商号となりました。2017年には太陽ファルマを設立し、医療・医薬品事業へ本格参入するなど、化学技術を核とした事業拡大を続けています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は2,485名、単体では171名です。筆頭株主は同社と資本業務提携を結ぶ化学メーカーのDICで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。DICとは原材料の仕入や役員の受入などの関係があります。

氏名 持株比率
DIC 20.04%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.25%
光和 6.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長グループ最高経営責任者(CEO)は佐藤英志氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 英志 代表取締役社長グループ最高経営責任者(CEO) 監査法人トーマツ、エスネットワークス社長等を経て2011年4月より同社社長。医療・医薬品カンパニーCEO等を兼務。
齋藤 斉 代表取締役副社長 1996年入社。海外子会社社長、海外営業部長等を歴任し、2022年6月より現職。エレクトロニクスカンパニーCEO。
髙野 聖史 取締役 DIC入社後、同社常務執行役員新事業統括本部長等を経て、2024年6月より現職。
照沼 かおり 取締役(常勤監査等委員) 三井物産、ココナラ等を経て2019年入社。経理部長、監査役を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、土屋恵子(元アデコ取締役)、杉浦秀徳(元みずほ証券部長)、佐藤郁美(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エレクトロニクス事業」、「医療・医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) エレクトロニクス事業


プリント基板(PCB)の回路パターンを保護する絶縁材「ソルダーレジスト(SR)」を中心に、電子部品用化学品部材の開発・製造販売を行っています。これらの製品は、スマートフォン、パソコン、サーバー等のIT機器やデジタル家電、車載用電子機器など、幅広いエレクトロニクス製品に使用されています。

収益は、電機メーカーやPCB専業メーカーへの製品販売によって得ています。運営は、国内では太陽インキ製造、海外では太陽油墨(蘇州)、台湾太陽油墨、韓国タイヨウインキ、TAIYO AMERICAなどが担当し、グローバルな供給体制を構築しています。

(2) 医療・医薬品事業


医療用医薬品の製造販売および製造受託を行っています。長期収載品(特許が切れた先発医薬品)の販売に加え、医薬品の製造受託や、歯科技工製品の製造販売も手掛けています。近年では再生医療分野における製造受託も開始しました。

収益は、医療機関や薬局等への医薬品販売および製薬会社からの製造受託料等から得ています。運営は、製造販売を行う太陽ファルマ、製造受託を行う太陽ファルマテック、歯科技工製品を扱うマイ・スターズ(旧リック)などが担っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない事業として、染料・顔料等の化学品製造、水上太陽光発電によるエネルギー事業、ITシステム開発、食堂運営などを行っています。これらを総称してICT&S事業と呼んでいます。

収益は、製品販売、売電収入、システム開発・保守料、飲食代金等から得ています。運営は、太陽ファインケミカル、太陽グリーンエナジー、ファンリード、嵐山食堂、アペックス、エクシーズなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は810億円から1,190億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も138億円から216億円へと拡大しており、利益率も15%〜18%台と高い水準を維持しています。当期純利益についても増加傾向にあり、全体として増収増益の堅調な成長トレンドにあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 810億円 980億円 973億円 1,048億円 1,190億円
経常利益 138億円 181億円 155億円 173億円 216億円
利益率(%) 17.1% 18.4% 15.9% 16.5% 18.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 95億円 118億円 114億円 87億円 108億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も17.4%から18.5%へ上昇しており、収益性が向上しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果が上回り、営業利益は前期比で大きく伸長しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,048億円 1,190億円
売上総利益 488億円 562億円
売上総利益率(%) 46.6% 47.2%
営業利益 182億円 221億円
営業利益率(%) 17.4% 18.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が70億円(構成比20%)、給料が54億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


エレクトロニクス事業は、為替の円安効果や車載・スマホ向け部材の販売増により増収増益となりました。医療・医薬品事業は、子会社化による増収があったものの、利益面では減少しました。その他事業も増収増益で推移しています。全体として主力のエレクトロニクス事業が業績を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エレクトロニクス事業 714億円 817億円 165億円 215億円 26.3%
医療・医薬品事業 293億円 316億円 32億円 20億円 6.5%
その他 41億円 57億円 0.8億円 3億円 4.6%
調整額 - - -16億円 -17億円 -
連結(合計) 1,048億円 1,190億円 182億円 221億円 18.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た現金を、設備投資や借入金の返済、株主還元に充てている健全な状態です。当期は特に借入金の返済や配当支払いにより財務CFのマイナス幅が大きくなっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 212億円 237億円
投資CF -211億円 -83億円
財務CF 90億円 -292億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「あらゆる技術」を高め、革新的な製品をもって、夢あるさまざまなモノをグローバルに生み出し、「楽しい社会を実現する」ことを経営理念として掲げています。この理念を不変のものとして受け継ぎながら、環境変化に合わせて発展を続けるとしています。

(2) 企業文化


「スピード&コミュニケーション」をキーワードに、グループ各社の連携と全員のチームワークを活性化させることで企業総合力を高める文化があります。また、従業員が挑戦し成長できる機会を創出し、自ら目標を立てて高い志を持つ「自律型人材」が集まる組織を目指しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営構想「Beyond Imagination 2030」において、以下の財務目標を掲げています。
* ROE(自己資本利益率):18%
* DOE(株主資本配当率):5%以上維持

(4) 成長戦略と重点施策


「Beyond Imagination 2030」に基づき、エレクトロニクス事業の継続成長と新規領域の創造、医療・医薬品事業の更なる成長、DX推進などを基本方針としています。

* エレクトロニクス事業:研究開発体制の強化(新技術開発センター「InnoValley」開設など)、新製品の迅速な事業化、地産地販の推進による為替リスク対策。
* 医療・医薬品事業:製造受託における再生医療など新分野への展開、長期収載品の安定供給体制の維持。
* その他:M&Aによる事業強化、SDGsへの取り組み強化(水上太陽光発電所の展開等)。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様化する組織や社会に対応する自律型人材の育成・活用」を掲げています。「仕事のやりがい」「職場環境」「公正な評価・給与」の3要素をバランス良く整えることで、従業員が自ら目標を設定し、プロセスと成果を楽しめる組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.8歳 8.9年 9,248,170円


※平均年間給与は、基準外給与、賞与、株式付与ESOP信託による株式付与分、確定給付企業年金の年間積立額及び確定拠出年金の掛金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規雇用) 73.4%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※非正規雇用の男女賃金差異については、男女いずれかが5名に満たないため、数値に偏りが生じ開示の趣旨に沿わないと判断され非開示となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康維持促進手当支給率(94.0%)、中途採用比率(48.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料等の調達に係るリスク


原材料メーカーの被災や供給不足、石油化学製品等の市況変動による価格高騰が、同社グループの生産活動や業績に影響を与える可能性があります。これに対し、複数のサプライヤーからの調達を進めるなどの対策を講じています。

(2) 為替変動リスク


海外売上比率が高く、製品販売価格の多くが外貨建てであるため、為替レートの変動が業績に影響を与えます。為替予約の実施や、為替変動リスクの低い国での資金調達、「地産地販」の推進、原材料の現地調達比率向上などにより対策を図っています。

(3) 技術革新リスク


電子機器におけるプリント基板を使用しない代替技術の普及や、プリント基板製造においてソルダーレジストを使用しない工法が採用された場合、主力製品の需要が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新しい工法に対応した技術開発を進めています。

(4) 医薬品の副作用等


医薬品の製造販売においては、予期せぬ副作用や品質問題による製品回収、販売中止、健康被害に対する賠償責任等のリスクがあります。薬機法等の規制遵守の徹底や賠償責任保険への加入により、リスクの低減と財政的負担の最小化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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