※本記事は、太陽ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 太陽ホールディングスってどんな会社?
プリント基板用レジストの世界トップクラスメーカーであり、近年は医薬品事業にも注力する化学企業です。
■(1) 会社概要
1953年に印刷用インキの製造販売を目的に設立され、1973年にはプリント基板用ソルダーレジスト(SR)インキの開発に成功し販売を開始しました。2001年に東証一部へ上場し、2010年に持株会社体制へ移行して現在の太陽ホールディングスへ商号変更しました。2018年からは医療・医薬品事業を開始しています。
同社グループは連結従業員数2,561名、単体176名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業会社であるDICで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位に光和が名を連ねています。DICとは資本業務提携を結び、製品の共同開発や製造委託などの事業シナジーを推進しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| DIC | 20.02% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.13% |
| 光和 | 6.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性3名の計6名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は齋藤斉氏が務めており、社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 齋藤 斉 | 代表取締役社長 グループ最高経営責任者(CEO) | 1996年9月同社入社。2010年7月海外営業部長、2012年6月太陽インキ製造取締役を経て、2022年6月同社代表取締役副社長に就任。2025年6月より現職。 |
| 俵 輝道 | 取締役 | 1996年4月住友電気工業入社。アマゾンジャパン合同会社などを経て2019年7月同社入社。2020年4月最高デジタル責任者(CDO)に就任。2026年6月より現職。 |
| 嶋村 紀明 | 取締役(常勤監査等委員) | 1988年4月同社入社。台湾子会社董事や太陽インキ製造の事業所長を歴任。2022年1月同社知財法務部長、2024年6月コンプライアンス・オフィサーを経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、土屋恵子(元アデコ取締役人事本部長)、丸山みさえ(丸山みさえ公認会計士事務所設立)、杉浦秀徳(元京都大学経営管理大学院特別教授)、佐藤郁美(のぞみ総合法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エレクトロニクス事業」「医療・医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) エレクトロニクス事業
プリント基板用部材をはじめとする電子部品用化学品部材の開発、製造販売を行っています。主要製品のソルダーレジスト等は、PC、スマートフォン、サーバー等のIT機器や車載関連機器などの重要な部材として顧客である電機メーカー等に提供されています。
製品の販売から収益を得るモデルです。運営は主に太陽インキ製造のほか、中国、台湾、韓国、アメリカ、ベトナムなどの海外製造販売子会社および各地域の販売子会社が行っています。
■(2) 医療・医薬品事業
医療用医薬品の製造販売および製造受託、ならびに歯科技工物の製造・販売を行っています。品質管理体制や安定供給といった信頼性が求められるなか、医療機関や患者のニーズに合致した医薬品を提供しています。
医薬品の販売・受託製造および歯科技工物の販売から収益を得るモデルです。運営は主に太陽ファルマ、太陽ファルマテック、マイ・スターズが行っています。
■(3) その他(ICT&S事業など)
報告セグメントに含まれない事業として、染料・顔料等のファインケミカル製品の製造販売、水上太陽光などの自然エネルギーによる発電、飲食施設の運営、システムエンジニアリングサービスやシステム開発等を行っています。
各サービスの提供や売電、製品の販売から収益を得るモデルです。運営は主に太陽ファインケミカル、太陽グリーンエナジー、嵐山食堂、ファンリード、アペックス、エクシーズ等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は一貫して増加傾向にあります。特に当期はエレクトロニクス事業および医療・医薬品事業の双方が好調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。経常利益率も15%台から23%台へと向上し、高い収益性を維持しながら成長を続けています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 980億円 | 973億円 | 1048億円 | 1190億円 | 1379億円 |
| 経常利益 | 181億円 | 155億円 | 173億円 | 216億円 | 322億円 |
| 利益率(%) | 18.4% | 15.9% | 16.5% | 18.1% | 23.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 55億円 | 64億円 | 61億円 | 102億円 | 183億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸びています。売上総利益率は47.2%から49.0%へ、営業利益率も18.5%から23.6%へと改善しており、付加価値の高い製品・サービスの提供が利益構造の強化に寄与していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1190億円 | 1379億円 |
| 売上総利益 | 562億円 | 675億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.2% | 49.0% |
| 営業利益 | 221億円 | 325億円 |
| 営業利益率(%) | 18.5% | 23.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が74億円(構成比21%)、給料が57億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エレクトロニクス事業は、AI関連需要の高まりによる半導体パッケージ基板用部材や、車載・スマートフォン関連部材の販売数量増加により増収となりました。医療・医薬品事業も、新規および既存顧客からの受託製造数量の増加等により増収を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エレクトロニクス事業 | 817億円 | 953億円 |
| 医療・医薬品事業 | 316億円 | 365億円 |
| その他 | 57億円 | 61億円 |
| 連結(合計) | 1190億円 | 1379億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 237億円 | 307億円 |
| 投資CF | -83億円 | -77億円 |
| 財務CF | -292億円 | -260億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「我がグループの「あらゆる技術」を高め、革新的な製品をもって、夢あるさまざまなモノをグローバルに生み出し、楽しい社会を実現します。」を経営理念として掲げています。利益追求のみにとどまらず、法令遵守や環境保護、社会貢献を含めた企業の社会的責任を全うすることを存在意義としています。
■(2) 企業文化
「スピード&コミュニケーション」をキーワードに、グループ内各社の連携と全員のチームワークを活性化し、企業総合力を高めることを重視しています。絶えず技術革新に努め、従業員が自ら目標を立て、その実現に向けて高い志を持って挑戦し成長できる環境を育む文化です。
■(3) 経営計画・目標
長期経営構想「Beyond Imagination 2030」およびその実現に向けた中期経営計画において、2031年3月期に向けた以下の財務目標を掲げています。
・連結売上高 1,800億円
・連結営業利益 470億円
・ROE(自己資本利益率) 30%
・DOE(株主資本配当率) 5%以上維持
■(4) 成長戦略と重点施策
エレクトロニクス事業と医療・医薬品事業を中心とした成長に加え、エネルギー事業や食糧事業、デジタルトランスフォーメーション(DX)にも積極的に取り組む戦略です。多様化する組織や社会に対応する自律型人材の育成・活用、新規事業領域の創造、戦略的なM&A、および持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み強化を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期経営構想の基本方針の第一に「多様化する組織や社会に対応する自律型人材の育成・活用」を掲げています。「仕事のやりがい」「職場環境」「公正な評価・給与」の3つをバランス良く整えることで、自ら目標を設定し、その達成のためのプロセスと成果の創出を楽しむことができる自律型人材があふれる組織を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.5歳 | 8.6年 | 9,844,903円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | -% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康維持促進手当支給率(91.5%)、有給取得率(87.8%)、中途採用者比率(50.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバル展開に伴うカントリーリスクおよび為替変動
海外での売上比率が非常に高く、各進出国の法規制や税制の変更、地政学的要因によるカントリーリスクが存在します。また、製品販売価格が外貨建となることが多く、為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があるため、現地生産・現地調達の推し進めや為替予約等による対策を行っています。
■(2) 中東情勢等による原材料の調達リスク
中東情勢の緊迫化や原材料メーカーの罹災・供給不足等により、生産活動に支障が生じるリスクがあります。また、原材料価格の高騰が製品の収益性を悪化させる可能性があるため、様々なサプライヤーからの原材料調達を進めるとともに、必要に応じて適切な価格転嫁を実施してリスク低減を図っています。
■(3) 医療・医薬品事業における法規制や副作用等のリスク
医薬品の製造販売においては、予期せぬ重大な副作用の発現による製品回収や販売中止、賠償責任等のリスクが伴います。また、薬価制度の見直しや選定療養制度など、医療費抑制のための制度改革による影響を受ける可能性があるため、関連規制の遵守徹底や損害保険の加入など、適切な管理体制を構築しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。