日本新薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本新薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本新薬は東京証券取引所プライム市場に上場し、医薬品や機能食品の製造販売を主力とする企業です。直近の業績では、主力の肺動脈性肺高血圧症治療剤の販売やロイヤリティ収入が牽引し、増収を達成しています。利益面でも営業利益が前期を上回り、堅調な推移を見せています。グローバル展開も積極的に推進中です。


※本記事は、日本新薬の有価証券報告書(第163期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日本新薬ってどんな会社?


医薬品および機能食品の製造販売を中心に、グローバル展開を進めるヘルスケア企業です。

(1) 会社概要


1911年に京都新薬堂として創設され、1919年に日本新薬へと改組しました。1949年の株式上場後、1961年には食品事業へ進出しています。1999年には米国に現地法人を設立して海外展開を本格化させ、2021年には中国にも現地法人を設立するなど、グローバルヘルスケアカンパニーとして事業を拡大しています。

現在、従業員数は連結で2,309名、単体で1,902名体制となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は事業会社である明治安田生命保険相互会社、第3位に日本カストディ銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.02%
明治安田生命保険相互会社 9.62%
日本カストディ銀行(信託口) 7.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性5名の計16名で構成され、女性役員比率は31.3%です。代表取締役社長は中井亨氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は約33%となっています。

氏名 役職 主な経歴
前川重信 代表取締役会長 1976年同社入社。経営戦略室経営企画部長、常務取締役等を経て2007年に代表取締役社長に就任。2021年より現職。
中井亨 代表取締役社長 1995年同社入社。事業企画部長、国際事業統括部長兼国際事業本部長等を経て、2021年より現職。
高谷尚志 取締役人事・総務・リスク・コンプライアンス・DX担当 1984年同社入社。営業本部営業企画統括部長、CSR・経営管理担当等を経て、2022年より現職。
枝光平憲 取締役経営企画・サステナビリティ担当 1989年同社入社。経営企画部長を経て、2018年に取締役就任。2022年より現職。
石沢整 取締役機能食品担当 1985年同社入社。営業本部大阪支店長、関西支店長を経て、2021年より現職。
木村ひとみ 取締役サプライチェーン・信頼性保証担当 1984年同社入社。信頼性保証統括部薬事部長、信頼性保証統括部長を経て、2021年より現職。
岩田和行 取締役営業担当 1990年同社入社。営業本部名古屋支店長等を経て、2025年より現職。
桑野敬市 取締役研究開発担当 1993年同社入社。研究開発本部創薬研究所長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、和田芳直(医師)、小林柚香里(元日本マイクロソフト執行役員)、西真弓(医師・名誉教授)、本郷陽太郎(元JPモルガン証券ヴァイスチェアマン)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」「機能食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医薬品事業


泌尿器科系、血液がん、難病・希少疾患、婦人科系などの治療剤を開発し、医療機関や患者に提供しています。国内外でオープンイノベーションを活用し、自社創薬と新製品の導入を推進してパイプラインの拡充に注力しています。

医薬品の販売や導出入による契約一時金・ロイヤリティが主な収益源です。運営は同社のほか、シオエ製薬において製造・販売を行い、タジマ食品工業から原料の供給を受けています。米国や中国の現地法人を通じたグローバル展開も行っています。

(2) 機能食品事業


健康志向の高まりに応え、サプリメント、プロテイン製剤、品質安定保存剤などの機能食品素材や最終製品を製造・販売しています。製薬企業ならではの高度な技術と厳しい品質管理ノウハウを活かし、独自性の高い高付加価値製品を提供しています。

食品メーカーや一般消費者への製品・素材の販売から収益を得ています。運営は同社が製造・販売を担うほか、タジマ食品工業が受託製造を行っています。また、シオエ製薬からも商品の供給を受けて事業を展開しています。

(3) その他の事業


医薬品および機能食品事業を支えるための各種ビジネスサポートや関連サービスを提供しています。グループ全体の業務効率化や従業員向けのサポートを主な目的として展開されています。

損害保険代理店業務や生命保険の募集、不動産の賃貸、教育支援サービスなどから収益を得ています。運営は主に日本新薬アドバンスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、主力製品の販売伸長やロイヤリティ収入の増加により、売上収益は右肩上がりで成長を続けています。利益面でも高い水準を維持しており、20%を超える税引前利益率を安定して記録するなど、強固な収益基盤を確立していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1,375億円 1,442億円 1,483億円 1,602億円 1,708億円
税引前利益 333億円 305億円 336億円 361億円 365億円
利益率(%) 24.2% 21.1% 22.7% 22.6% 21.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 250億円 228億円 259億円 326億円 297億円

(2) 損益計算書


増収に伴い売上総利益も増加していますが、研究開発費や販売促進費などの先行投資を積極的に行っているため、営業利益は前期と同水準での着地となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1,602億円 1,708億円
売上総利益 1,030億円 1,081億円
売上総利益率(%) 64.3% 63.3%
営業利益 355億円 355億円
営業利益率(%) 22.1% 20.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が94億円(構成比22%)、雑費が81億円(同19%)を占めています。また、研究開発費として別途367億円が計上されており、新薬開発への積極的な投資姿勢が伺えます。売上原価は575億円で、売上収益に対する構成比は約34%となっています。

(3) セグメント収益


医薬品事業は、薬価改定の影響を受けたものの、主力製品やロイヤリティ収入の伸長により増収増益を達成しています。機能食品事業もサプリメントやプロテイン製剤の売上が好調に推移し、堅調な伸びを見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
医薬品 1,387億円 1,485億円 335億円 333億円 22.4%
機能食品 216億円 223億円 13億円 9億円 4.0%
調整額 - - 6億円 13億円 -
連結(合計) 1,602億円 1,708億円 355億円 355億円 20.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがそれぞれプラス、マイナスとなっており、営業利益や資産売却等によって得た資金で借入の返済等を進める改善型の局面にあると言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 361億円 272億円
投資CF -289億円 20億円
財務CF -99億円 -100億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も86.2%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人々の健康と豊かな生活創りに貢献する」を経営理念に掲げています。また、2035年のありたい姿として「京都のグローバルヘルスケアカンパニーとして、一人ひとりの新しい生きるを世界に届ける会社」を目指しています。高品質な製品の提供を通じて社会からの信頼を得て、企業価値の最大化を図ることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は京都に根付くベンチャー精神を大切にし、既存の枠組みにとらわれずに新たな価値を創造する文化を持っています。「特長のある製品は個性あふれる人財から」という考えのもと、社員一人ひとりが本気で挑戦し成長できる組織風土の醸成や、心理的安全性の高い職場作り、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


第七次5ヵ年中期経営計画では、最終年度となる2028年度に向けて具体的な数値目標を設定し、事業基盤の強化を進めています。さらに、その先の2030年度には一段と高い成長を目指す態勢を整える計画です。

* 2028年度 売上収益:2,300億円
* 2028年度 営業利益:300億円
* 2028年度 ROE(自己資本利益率):8%以上
* 2028年度 EPS(一株当たり当期利益):341円
* 2030年度 営業利益:500億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、新薬のパテントクリフを乗り越えるため、グローバル展開の拡大やパイプラインの継続的拡充を重点テーマとしています。また、オープンイノベーションを活用した自社創薬のスピードアップや、デジタル化推進による業務変革を進めています。機能食品事業でも高付加価値素材を提供し、安定的で高収益な体質構築を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「選ばれる会社」「選ばれる社員」を目指し、役割や成果に応じた処遇、主体的なキャリア形成の支援、柔軟な働き方の実現を推進しています。ジョブ・ディスクリプションの導入や評価制度の見直しを図るとともに、社内公募や副業制度を通じて多様な人材が活躍できる環境を整備し、グローバルリーダーやDX人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 17.4年 9,349,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.5%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 84.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員構成比(32.4%)、幹部職全体に占める女性割合(19.4%)、女性育児休業取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新薬の研究開発における不確実性


新薬候補品の研究開発には多額の費用と長い年月を要しますが、期待された有用性が確認できずに開発が中止となる可能性があります。特に自社創製核酸医薬品などの開発品において、遅延や競合品の登場が生じた場合、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 知的財産権に関する係争リスク


同社グループは特許権等の知的財産権を管理・保護して事業を行っていますが、第三者から侵害を受けた場合の訴訟や、保有特許の有効性が無効と判断された場合、競争優位性が低下するリスクがあります。また、第三者の権利に抵触し損害賠償や事業中止につながる可能性も存在します。

(3) 製品の副作用と安全管理リスク


世界各国の厳しい審査を経て承認された医薬品であっても、販売後に予期せぬ副作用が発生するリスクがあります。この場合、販売中止や製品回収、社会的信用の毀損が生じる恐れがあり、同社グループでは安全管理情報の収集や社内体制の整備を徹底してリスク最小化に努めています。

(4) 医療費抑制策などの行政動向


国内外の医療費抑制を目的とした薬価引き下げや後発医薬品の使用促進など、医薬品業界を取り巻く規制は厳格化しています。こうした医療制度改革の動向や政府の価格引き下げ圧力が継続した場合、同社グループの収益性や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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