富士フイルムホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士フイルムホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士フイルムホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、ヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングの4分野で事業を展開しています。直近の業績は売上、営業利益ともに過去最高を更新する増収増益を達成し、成長分野への積極的な設備投資でさらなる収益力向上を進めています。


※本記事は、富士フイルムホールディングス株式会社の有価証券報告書(第130期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は US GAAP です。

1. 富士フイルムホールディングスってどんな会社?


ヘルスケアからビジネスイノベーションまで幅広い事業を展開し、持続的成長を続けるグローバル企業です。

(1) 会社概要


1934年に写真フィルム製造の国産工業化を目的に設立されました。1962年には英国企業との合弁で富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)を設立し、2006年に持株会社体制へ移行しました。その後も富山化学工業や日立製作所の画像診断関連事業等の買収を通じてヘルスケア分野を強化しています。

同社グループの従業員数は連結で73,526名、単体で1,198名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も日本カストディ銀行(信託口)、第3位は米国の大手金融機関関連となっており、国内外の機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.30%
日本カストディ銀行(信託口) 6.29%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 3.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長は後藤禎一氏が務めており、取締役の社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
後藤禎一 代表取締役社長 1983年同社入社。富士フイルム取締役を経て、2021年より同社代表取締役社長兼グループ最高経営責任者(CEO)および富士フイルム代表取締役社長に就任。
助野健児 取締役会長取締役会議長 1977年同社入社。同社代表取締役社長兼グループ最高執行責任者(COO)などを経て、2023年より同社取締役会長兼取締役会議長に就任。
樋口昌之 取締役 1987年同社入社。同社執行役員を経て、2021年より富士フイルム取締役、同社取締役チーフ・ファイナンシャル・オフィサー(CFO)兼執行役員経営企画部長に就任。
濱直樹 取締役 1986年同社入社。富士フイルム取締役などを経て、2022年より富士フイルムビジネスイノベーション代表取締役社長、同社取締役に就任。
吉澤ちさと 取締役 1986年同社入社。同社執行役員経営企画部コーポレートコミュニケーション室長兼人事部長などを経て、2022年より同社取締役執行役員に就任。
伊藤洋士 取締役 1990年同社入社。2021年より富士フイルム取締役に就任し、2023年より同社取締役に就任。


社外取締役は、北村邦太郎(元三井住友トラスト・ホールディングス代表取締役)、江田麻季子(元インテル代表取締役社長)、永野毅(元東京海上ホールディングス取締役会長)、菅原郁郎(元経済産業省事務次官)、鈴木貴子(元エステー代表執行役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ヘルスケア」「エレクトロニクス」「ビジネスイノベーション」「イメージング」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) ヘルスケア


同セグメントでは、メディカルシステム機材、バイオ医薬品製造開発受託、細胞・培地・試薬等の創薬支援材料、医薬品、化粧品・サプリメント等を提供しています。医療機関や大手製薬会社、バイオテック企業を主な顧客とし、最先端の技術を駆使した幅広い製品とサービスを展開しています。

収益は製品の販売代金やバイオ医薬品の開発・製造受託料、サービスの利用料から得ています。事業の運営は、親会社である富士フイルムホールディングスのもと、富士フイルム、富士フイルム富山化学、富士フイルムヘルスケアマニュファクチャリング等の各子会社が担っています。

(2) エレクトロニクス


同セグメントでは、半導体材料、ディスプレイ材料、産業機材、ファインケミカル等を開発・提供しています。半導体市場やディスプレイ市場のメーカーを主な顧客とし、複雑な課題を解決するワンストップソリューションや差別化された高機能製品を展開しています。

収益は各種材料や産業機材の販売代金から得ています。事業の運営は、富士フイルム、富士フイルム和光純薬、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ等の子会社が中心となって行っています。

(3) ビジネスイノベーション


同セグメントでは、デジタル複合機やインクジェット機材、グラフィックコミュニケーションシステム機材の提供に加え、ITインフラ構築や業務プロセス変革を支援するソリューション・サービスを提供しています。オフィス環境を整えたい企業や印刷業界が主な顧客です。

収益は機器の販売代金、消耗品の提供、システムの保守・運用サービスに伴う継続的な利用料から得ています。事業の運営は、富士フイルムビジネスイノベーション、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン等の子会社が行っています。

(4) イメージング


同セグメントでは、インスタントフォトシステムやカラーフィルム、デジタルカメラ、光学デバイス等の開発・提供を行っています。一般消費者向けのカメラやプリントサービスから、プロフェッショナル向けの映像制作用カメラ、インフラ点検用の監視カメラまで幅広く展開しています。

収益はカメラ本体や消耗品の販売代金、写真プリント等のサービス提供に対する利用料から得ています。事業の運営は、富士フイルムおよび富士フイルムイメージングシステムズ等の子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高および税引前利益ともに力強い成長を続けています。特にヘルスケア分野や半導体材料等のエレクトロニクス分野が牽引し、毎期安定して増収を達成しています。利益水準も着実に拡大しており、利益率は継続して10%前後を維持するなど、高収益体質を保ちながら成長を遂げています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 25,258億円 28,590億円 29,609億円 31,958億円 33,570億円
税引前利益 2,604億円 2,822億円 3,173億円 3,406億円 3,666億円
利益率(%) 10.3% 9.9% 10.7% 10.7% 10.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 2,112億円 2,194億円 2,435億円 2,610億円 2,767億円

(2) 損益計算書


売上高は着実に成長しており、売上総利益も増加傾向にあります。売上総利益率は40%台で安定して推移しており、付加価値の高い製品やサービスの提供が寄与していることが伺えます。研究開発費など将来に向けた投資を継続しながらも、強固な利益基盤を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 31,958億円 33,570億円
売上総利益 13,001億円 13,695億円
売上総利益率(%) 40.7% 40.8%
営業利益 12億円 12億円
営業利益率(%) 0.0% 0.0%

(3) セグメント収益


エレクトロニクスは生成AI向け半導体材料の増収が寄与して大幅な増益を達成しました。イメージングもインスタントカメラやデジタルカメラの販売が好調で増収増益を牽引しています。一方、ヘルスケアは原材料価格の高騰等の影響で減益となり、ビジネスイノベーションも市況低迷などにより減収減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ヘルスケア 10,478億円 10,989億円 799億円 636億円 5.8%
エレクトロニクス 4,076億円 4,562億円 751億円 1,009億円 22.1%
ビジネスイノベーション 11,985億円 11,748億円 746億円 637億円 5.4%
イメージング 5,420億円 6,271億円 1,392億円 1,600億円 25.5%
調整額 - - -386億円 -380億円 -
連結(合計) 31,958億円 33,570億円 3,302億円 3,502億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を元手に、事業拡大に向けた投資を積極化しつつ、新たな資金調達も行いながら成長を目指す「積極型」のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4,282億円 4,106億円
投資CF -5,420億円 -5,546億円
財務CF 1,089億円 1,202億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創立90周年を機に「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」というグループパーパスを制定しました。先進的かつ独自の技術に基づいた商品やサービスの提供を通じて人々の「笑顔」に寄り添い、全事業を通じて社会課題の解決に貢献し、世界中の人々に幸せな笑顔が何度も訪れるよう挑み続けることを掲げています。

(2) 企業文化


同社は、すべての活動に「オープン、フェア、クリア」の精神で臨むことを基本としています。多様な従業員一人ひとりが個性や能力を発揮し、変化を恐れず「アスピレーション(志)」を持って挑み続けることを重視しており、これがイノベーションを生み出し企業の成長を支える原動力になるという価値観を根付かせています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画「VISION2030」において、収益性と資本効率を重視した経営により企業価値を向上させ、世界TOP Tierの事業の集合体となることを目指しています。

* 売上高:34,500億円(2026年度目標)
* 営業利益:3,600億円(同)
* 当社株主帰属当期純利益:2,700億円(同)
* ROE:8.1%(同)
* ROIC:5.8%(同)

(4) 成長戦略と重点施策


各事業の収益力を高め、多様な事業ポートフォリオを武器に「稼げる会社」へと進化させる戦略を進めています。ヘルスケアやエレクトロニクスといった成長分野での設備投資に利益を集中させ、メディカルシステムでのAI・画像技術の実装や、バイオCDMO事業における大型製造工場の稼働を牽引役として事業を加速させます。

* 売上高1兆円(ヘルスケア部門目標)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業のトランスフォーメーションを支えるため、「人材ポートフォリオの最適化」「多様な人材の採用」「多様な従業員が意欲高く働ける環境の醸成」を人材戦略の3本柱としています。「実践」と「学び」をスパイラル状に積み重ねることで変化に適応できるコアコンピテンシーを養い、持続的な成長を実現する人材の育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.3歳 17.2年 10,855,077円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.6%
男性育児休業取得率 84.4%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 75.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 54.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(82%)、基幹ポストにおける外国籍従業員比率(28.2%)、従業員エンゲージメントサーベイ回答率(92%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢・為替変動による業績への影響


同社グループは世界各地で製品・サービスを展開しており、海外売上高比率が高いことから、各国の経済情勢や為替レートの変動が業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。対策として先物予約などを行っていますが、完全に影響を排除することは困難です。

(2) ヘルスケア領域における環境変化・競合


バイオ医薬品の需要が拡大する一方で、医療制度改革や法規制の強化、製薬企業の新薬開発の中止、競合との競争激化などが想定されます。これらに適切に対応できない場合、設備の稼働率低下や収益減少につながる恐れがあります。

(3) エレクトロニクス領域における環境変化・競合


半導体やディスプレイ材料の需要が拡大する反面、原材料費の高騰や代替素材の出現による競争激化、地政学的な要因によるサプライチェーンの混乱等がリスクとなります。新技術の開発が想定通りに進まない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

富士フイルムホールディングスの転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

富士フイルムホールディングスの2026年3月期2Q決算は、全主要利益項目で過去最高を更新し、通期売上予想を3.3兆円に上方修正。絶好調のイメージング事業に加え、バイオCDMOの北米拠点開設や生成AI向け半導体材料の躍進が光ります。「なぜ今、変革を続ける富士フイルムなのか?」転職希望者が担える次なる役割を整理します。