積水樹脂 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

積水樹脂 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

積水樹脂は東証プライム上場の総合加工メーカーです。防音壁や交通安全製品などの公共分野と、メッシュフェンスや梱包資材などの民間分野を展開しています。直近決算では、国内外でのM&A効果等により増収となった一方、コスト増の影響で減益となり、増収減益で着地しました。


※本記事は、積水樹脂株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 積水樹脂ってどんな会社?


同社は防音壁や道路標識等の公共資材と、フェンスや梱包結束バンド等の民間資材を扱う総合加工メーカーです。

(1) 会社概要


1954年にアドヘヤ紙工として設立され、特殊接着剤を応用したアドヘヤ封筒の製造販売を開始しました。1970年に現在の積水樹脂へ商号変更し、1986年には東証・大証市場第一部に指定替えを行いました。2011年には欧州持株会社へ商号変更するなどグローバル展開を進め、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は1,609名、単体では714名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には積水ブランドを共有する大手化学メーカーが名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.51%
日本カストディ銀行(信託口) 5.50%
積水化学工業 4.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長兼CEOは馬場浩志氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
馬場 浩志 代表取締役社長兼CEO社長執行役員事業本部管掌 1987年入社。代表取締役社長兼COOを経て、2022年4月より現職。
菊池 友幸 取締役常務執行役員財務・IR担当(兼)コーポレート戦略本部長(兼)法務・広報部長 1990年入社。第二事業本部長等を経て、2024年4月より現職。
三好 永晃 取締役執行役員グローイング事業本部長(兼)グローバル事業部長(兼)事業部開発室管掌(兼)PSC事業推進担当 1991年入社。開発本部長等を経て、2023年6月より現職。
高林 周一郎 取締役執行役員第二事業本部長 1988年入社。人事部長、第二事業本部長兼住建材事業部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、宮田年耕(元国土交通省道路局長)、高野博(元豊田通商専務取締役)、伊藤聡子(事業創造大学院大学客員教授)、赤穂啓子(経済ジャーナリスト)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共分野」および「民間分野」事業を展開しています。

(1) 公共分野


防音壁材、交通安全製品、道路標識、防護柵、人工芝、道路工事用品などの製造・販売および施工工事を行っています。官公庁や地方自治体などが主な顧客となり、インフラ整備や交通安全対策に貢献しています。

収益は、製品の販売代金や施工工事代金から得ています。運営は主に同社が行うほか、製造・販売を東北積水樹脂や日本興業などが、施工・販売を日本ライナーなどが担当しています。

(2) 民間分野


メッシュフェンス、防音めかくし塀、梱包結束用バンド、梱包機械、農業資材、装飾建材などの製造・販売を行っています。住宅や工場、物流倉庫、農業関連など幅広い民間需要に対応しています。

収益は、製品の販売代金から得ています。運営は主に同社が行うほか、積水樹脂プラメタルや積水樹脂キャップアイシステムなどが製造・販売を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は600億円台半ばから700億円台へと推移しており、当期は過去最高水準となっています。一方、利益面では原材料価格やコスト上昇の影響を受け、経常利益率は低下傾向にあります。当期は増収ながらも減益となり、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 647億円 659億円 659億円 628億円 742億円
経常利益 113億円 114億円 95億円 70億円 54億円
利益率(%) 17.4% 17.3% 14.4% 11.1% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 59億円 66億円 55億円 43億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。特に販管費の増加率が高く、利益を圧迫しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 628億円 742億円
売上総利益 191億円 223億円
売上総利益率(%) 30.5% 30.1%
営業利益 63億円 50億円
営業利益率(%) 10.0% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が37億円(構成比21%)、従業員給料手当が34億円(同20%)を占めています。売上原価は売上高に対して70.0%を占めています。

(3) セグメント収益


公共分野は、電子製品の好調やM&A効果により大幅な増収となりましたが、利益面ではコスト増が響き減益となりました。民間分野は、めかくし塀などが伸長し微増収となりましたが、原材料価格高騰などの影響で減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
公共分野 287億円 388億円 26億円 19億円 4.8%
民間分野 341億円 354億円 46億円 41億円 11.5%
連結(合計) 628億円 742億円 63億円 50億円 6.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

積水樹脂は、連結子会社化による外構製品の貢献やデジタルピッキングシステムの伸長により、営業活動によるキャッシュ・フローは増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社株式の取得等により支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入による資金増加があったものの、自己株式の取得や配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 62億円
投資CF -69億円 -34億円
財務CF -244億円 -24億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、「複合技術による価値ある製品の創造とサービスを通じて社会の安全・安心・環境へ貢献する」という経営理念を掲げています。世界で通用する企業グループを目指してグローバル展開を進めるとともに、社会的課題に対する解決策を提供する事業展開によって健全な成長を持続することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、従業員一人ひとりが働きがいを感じ、能力を最大限に発揮できる組織風土づくりを目指しています。「挑戦(好奇心を持ち変革に挑戦)」「協働(目標に向けて協働し成果を最大化)」「感謝(感謝の気持ちを大切にし公正・誠実に行動)」を求める人財像として掲げ、多様な価値観を認め合うダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「積水樹脂グループビジョン2030」の実現に向け、中間期間となる3か年の「中期経営計画2027」を策定しています。2030年3月期の目標としてROE8%の早期実現を目指し、収益性の向上と資本構成の最適化に取り組んでいます。

* 連結配当性向:40%以上維持
* 総還元性向:100%以上維持(2027年3月期まで)

(4) 成長戦略と重点施策


成長分野である新領域や海外事業へ経営資源を重点的に配分するとともに、既存技術の深化と次世代交通技術への対応を強化しています。具体的には、電力インフラ領域や関東・北海道地域でのビジネス拡大、サステナビリティ貢献製品の拡販、自動運転を見据えた交通安全製品の開発などを推進しています。また、M&Aによる事業基盤の強化やDXによる業務プロセスの高度化にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本の価値最大化」を掲げ、自ら考え行動し挑戦し続ける人財の育成に取り組んでいます。自律型人財の育成やマネジメント強化に向けた階層別研修のほか、キャリア自律支援として年代別研修や能力開発プログラムを拡充しています。また、ウェルビーイング経営を推進し、安全で働きやすい職場環境の実現に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.4歳 17.8年 6,141,796円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全) 63.0%
男女賃金差異(正規) 67.8%
男女賃金差異(非正規) 73.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める女性従業員の割合(20.6%)、中核人財に占める多様性(女性・外国人・キャリア採用者等)の割合(27.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共投資の動向


同グループは公共事業向けの製品を多く取り扱っており、政府や地方自治体の予算動向の影響を受けやすい特性があります。公共投資が大幅に縮減された場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の市況・調達変動


石油化学製品や鉄鋼などの原材料価格の変動リスクがあります。市況価格の上昇を製品価格へタイムリーに転嫁できない場合や、調達難による生産遅延が発生した場合、収益性が低下する恐れがあります。

(3) 海外事業活動


欧州やアジアなどでの事業展開において、為替変動、法規制の変更、地政学的リスクなどが存在します。特にM&Aで取得した海外子会社の運営において、想定したシナジーが得られない場合や、現地の経済情勢が悪化した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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