※本記事は、オカモト株式会社 の有価証券報告書(第129期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オカモトってどんな会社?
ゴム・プラスチックの総合メーカーとして、産業用フイルムや自動車内装材、コンドーム、手袋など幅広い製品を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1934年に日本ゴム工業として設立され、1949年に東京証券取引所に上場しました。その後、合併や事業譲受を経て事業を拡大し、1985年に現在のオカモトに社名を変更しています。近年では、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行し、2024年には子会社であった理研コランダムを完全子会社化するなど、グループ体制の強化を進めています。
連結従業員数は2,704名、単体では1,165名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は明治安田生命保険、第3位は総合商社の丸紅です。丸紅とは原材料の調達や製品販売において取引関係があり、特定投資株式として政策保有も行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.62% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 8.57% |
| 丸紅 | 8.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は岡本 邦彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡本 邦彦 | 代表取締役社長社長執行役員 | 2002年入社。海外部長、シューズ製品部長、専務取締役、代表取締役副社長を経て2022年より現職。 |
| 岡本 優 | 代表取締役専務専務執行役員 | 弁護士登録を経て2013年入社。経営管理室長、食品衛生用品部長、常務取締役等を歴任。現在は汎用プラスチック製品部や海外部等を管掌。 |
| 岡本 良幸 | 取締役会長 | 1975年入社。常務、専務、副社長を経て2011年に社長就任。2022年より現職。 |
| 田中 祐司 | 取締役常務執行役員 | 富士銀行(現みずほ銀行)出身。2017年入社。総務部長、海外部長を経て2023年より現職。総務部等を担当。 |
| 池田 佳司 | 取締役常務執行役員 | 1980年入社。茨城工場長、専務取締役(医療品部等管掌)を経て、現在は静岡工場長を務める。 |
| 髙島 寛 | 取締役(監査等委員) | 1980年入社。経理部長、専務取締役(経理部管掌)を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、相澤 光江(TMI総合法律事務所パートナー)、深澤 佳己(深澤法律事務所弁護士)、荒井 瑞夫(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「産業用製品」「生活用品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 産業用製品
プラスチックフイルム、壁紙、自動車内装材、産業資材などの製造・仕入および販売を行っています。食品・飲料、消費財、自動車、電気・電子など幅広い業界に向けて製品を供給しています。
主な収益源は、各製品の販売による対価です。運営は主に同社が行うほか、オカモト化成品、船堀ゴム、理研コランダム、Okamoto U.S.A., Inc.などの関係会社が製造・販売を担っています。
■(2) 生活用品
医療・日用品(コンドーム、オブラート、温熱シート等)、シューズ、衣料・スポーツ用品などの製造・仕入および販売を行っています。一般消費者向け製品が中心ですが、医療機関や産業向けの手袋なども取り扱っています。
主な収益源は、製品販売による対価です。運営は主に同社が行うほか、イチジク製薬、ヒルソン・デック、Siam Okamoto Co., Ltd.などの関係会社が事業を展開しています。
■(3) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、グループ内の物流事業や太陽光発電事業などを行っています。
収益源は、製品輸送・保管料や売電収入などです。運営は主にオカモト通商が製品輸送・保管事業を、同社が太陽光発電事業を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、第129期には1091億円に達しています。利益面では第128期に高い利益率を記録しましたが、第129期は減益となり、利益率は低下しました。当期純利益も同様の傾向を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 864億円 | 896億円 | 991億円 | 1061億円 | 1091億円 |
| 経常利益 | 98億円 | 93億円 | 79億円 | 121億円 | 98億円 |
| 利益率(%) | 11.3% | 10.4% | 8.0% | 11.4% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 57億円 | 56億円 | 49億円 | 74億円 | 67億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益および営業利益率は低下しました。売上総利益は微減となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1061億円 | 1091億円 |
| 売上総利益 | 245億円 | 239億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.1% | 21.9% |
| 営業利益 | 100億円 | 87億円 |
| 営業利益率(%) | 9.5% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、その他の一般管理費が41億円(構成比27.0%)、給料及び賞与が38億円(同24.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
産業用製品事業は、自動車内装材の北米市場好調や工業テープの好調等により増収となりましたが、利益は減少しました。生活用品事業は、コンドームのインバウンド需要増加などはありましたが、手袋やシューズの売上減などにより減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 産業用製品 | 710億円 | 746億円 |
| 生活用品 | 349億円 | 342億円 |
| その他 | 3億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 1061億円 | 1091億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)で借入金の返済や株主還元(財務CFマイナス)を行いつつ、投資(投資CFマイナス)も自己資金の範囲内で行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 130億円 | 72億円 |
| 投資CF | -59億円 | -20億円 |
| 財務CF | -25億円 | -57億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.6%で市場平均(46.8%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「創意あふれる技術を結集して、健康的で快適な人間生活に寄与する商品をつくり出し、当社に関係するすべての人々により大きな満足を与えることをめざす」ことを企業使命としています。この使命のもと、法令遵守、独自技術による商品開発、高品質の追求、合理化努力、そして協調による職場環境の創造を経営理念に掲げ、経済・社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「身近な暮らしを科学する」をコーポレートスローガンとし、「モノづくりの可能性から、身近な『うれしい』を暮らしと社会に造り続ける。」というパーパスを掲げています。また、製造業として「安全は、全てに優先する」を理念とし、従業員の安全衛生確保を最重要基盤と考えています。理想と情熱を持ち、困難に挑戦する姿勢や、遵法精神、チームプレーを重視する行動基準も定めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、ROE(株主資本利益率)を世間一般の要求水準とされる8%以上とすることを目標としています。中長期的には株主資本コストを上回るリターンを継続し、企業価値の増大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
産業用製品事業と生活用品事業において、研究開発の推進に加え、事業の多角化やグループシナジーの創出により売上・利益の向上を目指しています。また、製造コスト削減やサプライチェーンの最適化による体質強化、高付加価値新製品の投入によるブランド力強化に取り組みます。さらに、コンドーム製造・販売会社としてSTI予防啓発活動や環境問題への対応を強化し、サステナビリティの実現を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「モノづくりの可能性から、身近な『うれしい』を暮らしと社会に造り続ける」というパーパス実現のため、社会に貢献し続ける人材の育成を目指しています。人間重視の経営を掲げ、多様な人材が活躍できる環境整備を進めるとともに、対話を重視する組織風土の醸成に注力しています。採用では、定期採用に加え経験者採用や外国籍社員の採用も実施し、女性採用率向上と国際化を図っています。教育面では階層別研修やE-learning等を通じて実質的な人材育成に力を入れています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.2歳 | 15.7年 | 6,438,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.8% |
| 男性育児休業取得率 | 63.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 53.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の調達に関するリスク
同社グループの製品の多くは石油などの一次産品を原材料としています。原材料価格の高騰や地政学的リスク、調達先の事情により安定調達が困難になった場合や、調達コストが著しく上昇した場合には、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 季節要因のリスク
カイロや除湿剤などの製品は、冷夏や暖冬、降水量などの天候の影響を受けやすい性質があります。生産や在庫の最適化に努めていますが、予測困難な天候変動により、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外展開に伴うリスク
グローバルに事業を展開しているため、為替レートの変動や、進出地域の政治・経済情勢の変化、テロや戦争などの地政学的リスクの影響を受ける可能性があります。また、各国政府の経済通商政策の変更、特に関税の引き上げや保護主義的な措置が導入された場合、事業活動や収益性に影響を及ぼす可能性があります。



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