※本記事は、NGK株式会社の有価証券報告書(第160期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NGKってどんな会社?
同社は独自のセラミック技術を活かし、環境・デジタル・エネルギー分野で多様な製品を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1919年に日本陶器(現ノリタケ)からがいし部門を分離独立し、日本碍子(現NGK)として設立されました。1922年に化学工業用機器類、1971年に電子工業用セラミックス製品、1976年に自動車用セラミックス製品を開始しました。2002年には電力貯蔵用NAS電池を事業化し、2026年に商号をNGKに変更しました。
現在の従業員数は連結19,869名、単体5,024名です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は生命保険会社、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.70% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 7.54% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は小林茂氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大島 卓 | 代表取締役会長 | 1980年同社入社。電力事業本部NAS事業部長などを経て、2014年より代表取締役社長。2021年より現職。 |
| 小林 茂 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社。電力事業本部ガイシ事業部長、取締役専務執行役員などを経て、2021年より現職。 |
| 神藤 英明 | 取締役専務執行役員 | 1988年同社入社。財務部長、取締役常務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 森 潤 | 取締役専務執行役員 | 1988年同社入社。セラミックス事業本部製造統括部長、専務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 稲垣 真弓 | 取締役常務執行役員 | 1988年同社入社。法務部長、執行役員などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、浜田恵美子氏(元太陽誘電株式会社技術グループ総合研究所基礎開発部主席研究員)、佐久間浩氏(元三菱商事常務執行役員)、川上紀子氏(元東芝三菱電機産業システムパワーエレクトロニクスシステム事業部技監)、宮本健悟氏(宮本国際法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、エンバイロメント事業、デジタルソサエティ事業、エネルギー&インダストリー事業およびその他の事業を展開しています。
■エンバイロメント事業
自動車排ガス浄化用部品、センサー、一般産業用セラミックス製品・機器装置の製造・販売を行っています。主な顧客は国内外の自動車メーカーや産業機器メーカーです。
収益は、これらの製品の販売を通じて顧客から得ています。自動車排ガス浄化用部品の製造は同社のほか、米国、欧州、インドネシア、中国、メキシコ、タイの現地子会社が担い、販売は同社および各地域の子会社が主に行っています。
■デジタルソサエティ事業
半導体製造装置用製品、電子工業用製品、ベリリウム銅製品、金型製品の製造・販売を行っています。半導体製造装置メーカーや電子部品メーカーなどが主な顧客です。
収益は、部品や部材の販売により得ています。半導体製造装置用製品の製造は同社およびエヌジーケイ・セラミックデバイス、米国のエフエムインダストリーズが行い、販売は同社および米国法人が担っています。
■エネルギー&インダストリー事業
がいしや送電・変電・配電用機器の製造・販売のほか、電力貯蔵用NAS電池の製造・販売および同電池を活用した電力販売を行っています。国内外の電力会社などが主な顧客です。
収益は製品の販売や電力の販売により得ています。がいしの製造は同社、明知ガイシ、米国のエヌジーケイロックが行い、販売は同社や海外法人が担っています。電力販売は恵那電力やあばしり電力が行っています。
■その他の事業
保険代理業およびゴルフ場の経営などを展開しています。
収益は各サービスの提供により得ており、運営は主にエヌジーケイ・ライフなどの関係会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は右肩上がりで成長を続けており、当期は6,701億円に達しました。経常利益は一時的に落ち込む時期もありましたが、直近2期間は連続して増益となっており、利益率も14.2%と改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,104億円 | 5,592億円 | 5,789億円 | 6,195億円 | 6,701億円 |
| 経常利益 | 862億円 | 659億円 | 630億円 | 782億円 | 952億円 |
| 利益率(%) | 16.9% | 11.8% | 10.9% | 12.6% | 14.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 709億円 | 550億円 | 406億円 | 549億円 | 599億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は前期から改善し、営業利益率も向上するなど、本業での収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,195億円 | 6,701億円 |
| 売上総利益 | 1,760億円 | 1,952億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.4% | 29.1% |
| 営業利益 | 812億円 | 950億円 |
| 営業利益率(%) | 13.1% | 14.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与賃金・賞与金が290億円(構成比29%)、研究開発費が180億円(同18%)、販売運賃が77億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期はすべての事業セグメントで増収となりました。特にデジタルソサエティ事業は、AI用途の半導体需要の増加などにより売上・利益ともに大きく伸長しています。一方、エネルギー&インダストリー事業はがいしの需要が堅調だったものの、NAS電池の赤字により営業損失となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンバイロメント事業 | 3,904億円 | 3,995億円 | 683億円 | 686億円 | 17.2% |
| デジタルソサエティ事業 | 1,716億円 | 2,054億円 | 172億円 | 281億円 | 13.7% |
| エネルギー&インダストリー事業 | 576億円 | 653億円 | -42億円 | -13億円 | -2.0% |
| 連結(合計) | 6,195億円 | 6,701億円 | 812億円 | 950億円 | 14.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 967億円 | 1,380億円 |
| 投資CF | -551億円 | -771億円 |
| 財務CF | -342億円 | -483億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社会に新しい価値を そして、幸せを」という使命を掲げています。独自のセラミック技術を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指し、社会からの期待に応え、信頼を得ることをサステナビリティの基本的な考え方としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「挑戦し高めあう人材」「期待を超えていく製品」「信頼こそが全ての礎となる経営」を私たちが目指すものとして定めています。多様性を尊重し、誰もが認められ、やりがいをもって楽しく働ける豊かで活気あふれる職場や、果敢な挑戦を後押しする風通しよく心理的安全性が守られたオープンな職場環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2050年の未来社会を見据えたビジョン「Road to 2050」を掲げ、カーボンニュートラルの実現とデジタル社会への貢献を目指しています。また、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、成長領域であるデジタルソサエティ事業の収益拡大を通じて水準を12%へと引き上げることを目指しています。
* 売上高を1,000億円
* ROE 12%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」というありたい姿の実現に向けて、事業構成の転換を図っています。エンバイロメント事業などの成熟事業で収益を最大化し、成長を見込むデジタルソサエティ事業へ重点的に経営資源を投下することで、これを成長のドライバーとしていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、事業構成の転換を担う人材の確保・育成・活躍を重要な経営課題と位置づけています。既存事業の深化と新たな価値創造の両立に向け、多様な経験・価値観を備えた経営人材や専門人材の育成を進めるほか、自律的なキャリア形成を支える仕組みの整備や、挑戦と活気を併せ持つ組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 15.4年 | 9,200,112円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.8% |
| 男性育児休業取得率 | 97.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 98.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、データ活用人材の育成数(1,000名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業運営におけるリスク
同社は海外17カ国にグループ会社を展開しており、各国の政治情勢、法令、規制、関税、インフラ整備等の動向が事業の前提となっています。また、地政学的な緊張の高まりや経済安全保障政策に伴うサプライチェーンの安定性も重要であり、急激な環境変化や社会的混乱が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 研究開発に関するリスク
同社グループはセラミックスの材料・プロセス技術を核に新製品の開発を進めていますが、技術開発には不確実要素が多く、競争も複雑化しています。市場や顧客のニーズに応じた商品創出が予定通りに進まない場合、将来の事業目標の達成が困難となり、投下したリソースが十分な成果に結びつかず業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材におけるリスク
人材の流動化や雇用環境の変化により優秀な人材の獲得競争が激化しており、事業戦略に即したDX人材やグローバル人材、新規事業創出に挑戦する人材が確保できないリスクがあります。また、多様な人材の活躍を促進するダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが期待通りに進まない場合、イノベーションの創出が滞る可能性があります。
■(4) デジタル技術活用及び情報セキュリティに関するリスク
DXやAIなどのデジタル技術の活用が十分に推し進められない場合、競争力の低下やビジネス機会の喪失につながるリスクがあります。同時に、外部からのサイバー攻撃やシステム不具合によりデータ処理の停止や情報の漏えいが発生した場合、社会的信用の低下や事業運営への重大な影響が生じる可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。