※本記事は、株式会社旭コンクリート工業 の有価証券報告書(第145期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 旭コンクリート工業ってどんな会社?
社会インフラを支えるコンクリート二次製品の製造販売を行い、「信用第一」を掲げる老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1923年に名古屋市で創立され、1958年に和歌山および春日井工場を設置するなど事業を拡大しました。1961年には東京証券取引所市場第二部に上場を果たし、関東・中部・近畿・東北地方等に生産・販売拠点を展開しています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場へ移行しています。
同社(単体)の従業員数は189名です。筆頭株主はその他の関係会社である日本ヒュームで、第2位は取引先であり技術交流も行う太平洋セメント、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本ヒューム | 29.67% |
| 太平洋セメント | 9.18% |
| 柳内光子 | 5.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は狩野堅太郎氏です。社外取締役比率は21.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 狩野 堅太郎 | 取締役社長代表取締役 | 1985年4月同社入社。技術・設計開発部次長、取締役技術・設計開発部長を経て2019年6月より現職。 |
| 澤山 勝 | 専務取締役生産本部長兼西部支社長 | 1988年4月同社入社。滋賀工場長、西部支社生産部長、常務取締役生産本部長兼西部支社長を経て2023年6月より現職。 |
| 小 玉 和 成 | 専務取締役営業本部長 | 1987年4月日本ヒューム管入社。同社取締役営業本部長、旭コンクリート工業取締役を経て2023年6月より現職。 |
| 馬 島 英 希 | 取締役経理部長 | 1996年4月同社入社。経理部東部管財部会計課長、経理部長代行を経て2019年6月より現職。 |
| 野 中 秀 午 | 取締役西部支社販売部長 | 1989年4月同社入社。和歌山営業所長、西部支社販売部次長を経て2021年6月より現職。 |
| 大 舘 一 夫 | 取締役総務部長兼人事部長 | 1988年4月小野田セメント入社。太平洋セメント海外事業本部管理部業務グループリーダー、同社総務部長を経て2023年6月より現職。 |
| 岸 秀 樹 | 取締役技術・設計開発部長 | 1995年4月同社入社。技術・設計開発部次長、技術・設計開発部長代行を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、福田敏裕(福田公認会計士事務所代表)、黒川裕之(日本ヒューム内部監査室長)、島田知子(弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンクリート関連事業」および「不動産事業」を展開しています。
■(1) コンクリート関連事業
ヒューム管、ボックスカルバート、共同溝、耐震性防火水槽などのコンクリート二次製品の製造販売を行っています。また、製品の敷設工事や、工事用資材・製品装着資材の仕入販売も手がけています。主な顧客は官公庁や建設会社であり、公共事業やインフラ整備現場へ製品を供給しています。
収益は、製品や資材の販売代金および工事請負代金から得ています。同社が主体となって、コンクリート二次製品部門、工事部門、その他部門(資材販売等)を通じて事業を運営しています。
■(2) 不動産事業
同社が保有するマンション等の不動産を活用した賃貸事業を行っています。安定的な収益源の一つとして機能しています。
収益は、保有不動産の賃貸による賃貸料収入です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は70億円前後で推移しており、直近では増加傾向にあります。利益面でも、経常利益率が安定して6〜8%台を維持しており、堅実な収益構造が見て取れます。当期純利益も安定的に黒字を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 65億円 | 66億円 | 71億円 | 72億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 5億円 | 4億円 | 5億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 6.8% | 7.4% | 6.5% | 6.6% | 8.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 3億円 | 3億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、それに伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。特に営業利益率は前期の5.8%から7.7%へと改善しており、収益性が向上していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 71億円 | 72億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.3% | 21.1% |
| 営業利益 | 4億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 5.8% | 7.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が3.4億円(構成比35%)、役員報酬が1.4億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のコンクリート関連事業は、製品販売が堅調で増収となりました。不動産事業は売上規模は小さいものの、安定的に推移しています。全体として、コンクリート関連事業が業績の大半を牽引する構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| コンクリート関連事業 | 70億円 | 72億円 |
| 不動産事業 | 0.4億円 | 0.4億円 |
| 連結(合計) | 71億円 | 72億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 9億円 |
| 投資CF | -0.4億円 | -4億円 |
| 財務CF | -2億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「信用第一」を社是としています。コンクリート二次製品の製造・販売を通じて、下水道等の環境保全につながる公共事業を主体に、国土の保全、強靭化に留意し、健全な社会資本整備の構築に協力貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
社内においては、CSR(企業の社会的責任)を重視し、社会に貢献する企業風土の確立を目指しています。また、企業の安定成長を旨とし、株主への適正な利益還元とともに、従業員の健全な生活環境の改善に努めることを方針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社が属する建設土木業界は、主たる需要先である公共事業の動向が各年、地域ごとに差や量の変化が大きいことから、特定の数値目標としての経営指標は導入していません。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は販売・設計・生産の各部門が一体となり、顧客対応の迅速化と的確化を進める体制を構築します。技術へのこだわりを持ち、新製品・新工法の開発や既存製品の品質向上、効率化・多用途化に取り組みます。営業面では3D技術を活用した提案や選別受注に注力し、現場打ちコンクリート構造物のプレキャスト化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
次代を担う中核人材の登用等における多様性の確保と育成、若手・中途人材の通年採用、および職場環境の改善・整備を事業活動の基盤と位置づけ、引き続き着実に実行していく方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.6歳 | 18.2年 | 5,350,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は女性活躍推進法の公表項目として選択しなかったため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共事業への売上依存度
同社の売上の重要な部分を占めるコンクリート関連事業は、民間への販路拡大を進めているものの、依然として官公庁の公共事業に大きく依存しています。そのため、官公庁の財政状況の悪化や公共事業予算の縮小などが発生した場合、同社の業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 主要原材料の購入価格騰貴
コンクリート関連事業において、主要原材料の価格上昇は製造原価の上昇に直結します。同社は仕入先を分散することで対応を図っていますが、想定を超える原材料価格の高騰が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 債権管理
同社では売上債権に関して与信管理を徹底していますが、取引先の業績悪化等により売上債権の回収遅延や貸倒れが発生するリスクがあります。これらが顕在化した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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