旭コンクリート工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭コンクリート工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する旭コンクリート工業は、コンクリート二次製品の製造販売および関連工事を主力とするコンクリート関連事業と、不動産事業を展開しています。直近の業績は、コンクリート関連事業における選別受注や生産効率化への取り組みが奏功し、売上高・利益ともに前年を上回る増収増益を達成しました。


※本記事は、旭コンクリート工業株式会社の有価証券報告書(第146期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 旭コンクリート工業ってどんな会社?


コンクリート二次製品の製造販売を中心に、公共事業を通じて社会資本整備に貢献する企業です。

(1) 会社概要


旭コンクリート工業は1923年に創立され、コンクリート二次製品事業を一筋に展開してきました。1960年に株式を店頭公開し、1961年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。全国初のPCボックスカルバート開発などで飛躍的な発展を遂げ、長年の経験と技術力を活かして国土強靱化に寄与しています。

従業員数は単体で188名です。筆頭株主は同業でその他の関係会社に該当する日本ヒュームで、第2位はセメント等を供給する太平洋セメント、第3位は個人の柳内光子氏となっています。コンクリート関連事業における仕入・販売等の取引関係を通じて、主要株主である事業会社との連携を深めています。

氏名 持株比率
日本ヒューム 29.64%
太平洋セメント 9.17%
柳内光子 5.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は狩野堅太郎氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
狩野堅太郎 取締役社長代表取締役 1985年入社。技術・設計開発部次長等を経て、2015年取締役技術・設計開発部長に就任。2019年より現職。
澤山勝 専務取締役生産本部長兼西部支社長 1988年入社。湖東工場長などを歴任し、2017年取締役に就任。常務取締役を経て2023年より現職。
小玉和成 専務取締役営業本部長 1987年日本ヒューム管入社。同社執行役員営業本部長等を経て、2019年旭コンクリート工業取締役に就任。2023年より現職。
馬島英希 取締役経理部長 1996年入社。経理部などで課長を歴任し、2019年に経理部長兼東部管財担当部長に就任。同年より現職。
野中秀午 取締役西部支社販売部長 1989年入社。和歌山営業所長等を経て、2017年に西部支社販売部長に就任。2021年より現職。
大舘一夫 取締役総務部長兼人事部長 1988年小野田セメント入社。海外関連企業での管理部長等を経て2021年に旭コンクリート工業へ入社。2023年より現職。
岸秀樹 取締役技術・設計開発部長 1995年入社。技術・設計開発部での課長や次長を経て、2020年に同部長に就任。2023年より現職。


社外取締役は、福田敏裕氏(福田公認会計士事務所代表)、黒川裕之氏(日本ヒューム内部監査室長)、島田知子氏(弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンクリート関連事業」および「不動産事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) コンクリート関連事業


ヒューム管やボックスカルバート、雨水貯溜槽などのコンクリート二次製品の製造販売を主力としています。あわせて、製品に装着する資材等の仕入・販売や、コンクリート製品の敷設工事なども請け負っており、下水道などの公共事業を通じて社会インフラの整備に貢献しています。

顧客への製品引渡時や工事完了時に、製品代金や工事請負代金を受領して収益を獲得しています。事業の運営は旭コンクリート工業が主体となって行っており、製品の製造から販売、関連資材の提供、敷設工事までを自社で一貫して担う体制を構築しています。

(2) 不動産事業


旭コンクリート工業が保有するマンションなどの不動産を活用した賃貸事業を行っています。コンクリート関連事業とは異なる収益基盤として、所有資産の有効活用を図りながら安定的な事業運営を継続しています。

入居者やテナントから毎月支払われる不動産の賃貸料(オペレーティング・リース取引による賃貸収入)が主な収益源となっています。この事業の運営も同社が行っており、管理業務などは外部に委託しながら効率的な賃貸事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、堅調な公共工事や災害対策工事の需要に支えられ、売上高は安定して成長を続けています。利益面では、原材料やエネルギー価格の高騰による影響を受けつつも、選別受注の徹底や生産効率の向上による原価低減が奏功し、増益傾向で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 65億円 66億円 71億円 72億円 76億円
経常利益 5億円 4億円 5億円 6億円 7億円
利益率(%) 7.4% 6.5% 6.6% 8.5% 8.9%
当期純利益 3億円 3億円 3億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高・利益ともに前年を上回って推移しています。特に現場打ちコンクリートのプレキャスト化提案や、採算性を重視した受注活動が売上総利益の改善に貢献しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 72億円 76億円
売上総利益 15億円 16億円
売上総利益率(%) 21.1% 21.3%
営業利益 6億円 6億円
営業利益率(%) 7.7% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料が3.4億円(構成比34%)、役員報酬が1.5億円(同15%)を占めています。売上原価は当期製品製造原価が25億円(構成比41%)、当期商品仕入高が25億円(同42%)となっています。

(3) セグメント収益


主力のコンクリート関連事業は、民間需要や災害対策工事の堅調な推移を背景に、採算性を考慮した選別受注が進み増収となりました。一方、不動産事業は既存物件からの賃貸収入が安定して継続しており、前年と同水準の売上を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
コンクリート関連事業 72億円 76億円
不動産事業 0.4億円 0.4億円
連結(合計) 72億円 76億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 4億円
投資CF -4億円 -3億円
財務CF -3億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「信用第一」を社是とし、コンクリート二次製品の製造と販売を通じて、環境保全や国土の強靱化に寄与する社会資本整備に貢献することを基本方針としています。「誠意をもって社会の安全・安心な環境整備に貢献し、株主や従業員、家族の幸せを追求する」という理念を掲げ、健全な企業成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「質の伴った量の拡大」を社針とし、CSR(企業の社会的責任)を重視して社会に貢献する企業風土の確立に取り組んでいます。また、仕事に対する「情熱・執念・熱意・気力」を持ち、新しい仕事へ果敢にチャレンジする姿勢や、三位一体の改革による継続的な活性化を重んじる文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


創立100周年を機に策定された「中期経営5ヶ年計画」に基づき、組織力・販売力・技術力の迅速な強化を図っています。特定の経営指標(数値目標)は設けていませんが、「企業は数字なり」を合言葉に成果を重視し、安定した利益の確保と持続的な企業価値の向上に向けた施策を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


販売・設計・生産の各部門が一体となり、現場ニーズに直結する営業活動を推進しています。具体的には、3D技術を駆使した設計織り込み活動や、現場打ちコンクリートのプレキャスト化提案を強化しています。また、研究開発による新製品・新工法の実用化や、重点工場の設備更新による生産効率の向上に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営管理層を支える中核人材の育成や、女性、外国人材、中途採用者を含む多様な人材の確保と活躍推進に取り組んでいます。現場のOJTに加え、新技術発表会を通じて若手社員のスキル向上や部門間交流を図り、さらに資格奨励制度を設けることで従業員の主体的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.2歳 18.2年 5,491,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※男女賃金差異については、女性活躍推進法の公表項目として選択していないため、有報には記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への売上依存


同社のコンクリート関連事業は民間への販路拡大を進めているものの、依然として官公庁の公共事業に大きく依存しています。そのため、国や地方自治体の財政状況や公共事業費の動向に変化が生じた場合、同社の業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 主要原材料価格の高騰


コンクリート関連事業で使用するセメントや鋼材などの主要原材料において、価格上昇に伴う製造原価の悪化リスクがあります。同社は仕入先を分散して価格変動に対応していますが、急激な価格高騰が続いた場合は収益性が低下する可能性があります。

(3) 取引先の信用と債権管理


建設・土木業界の取引先に対して売上債権を有しており、与信管理を徹底してリスク低減に努めています。しかし、予期せぬ経済情勢の悪化等により取引先の業績が急速に悪化し、債権回収の遅延や貸倒れが発生した場合は、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。