※本記事は、ニチアス株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
ニチアスは、プラント向け工事・販売、工業製品、高機能製品、自動車部品、建材の5つの事業セグメントを展開する企業グループです。同社グループは、幅広い産業分野で事業を展開しています。
単体従業員数は1,930名、連結従業員数は6,424名です。セグメントはプラント向け工事・販売、工業製品、高機能製品、自動車部品、建材の5つです。
主な国内グループ会社は、当社、ニチアスエンジニアリングサービス、新日本熱学、ニチアス関東販売、イノクリート、当社、福島ニチアス、国分工業、ニチアスセラテックなどです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
ニチアスは、長年にわたり培ってきた技術を基盤に事業を展開しており、従業員の成長と働きやすい環境づくりを重視しています。同社グループは、人材を重要な経営資本と位置づけ、持続的な成長を支えるための多様な取り組みを進めていることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が比較的長く、安定してキャリアを築ける環境であることが示されています。平均年齢も日本の一般的な企業と比較して中堅層が中心となっており、経験豊富な人材が活躍している傾向が見られます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,599,855円 |
| 平均勤続年数 | 13.9年 |
| 平均年齢 | 40.9歳 |
| 単体従業員数 | 1,930人 |
| 連結従業員数 | 6,424人 |
| 単体のグループ内比率 | 30.0% |
同社グループは、退職給付制度として確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両方を採用しています。これらの制度は、同社および一部の国内連結子会社、さらに一部の海外連結子会社にも適用されています。
退職一時金制度も設けられていますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
確定給付型の退職給付債務は194.9億円、年金資産は303億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、人材を最も重要な経営資本の一つと位置づけ、「働きやすい明るい会社」の実現を目指す人材戦略を推進しています。経営戦略の実現に必要な人材の確保とエンゲージメント向上を目的とし、公正かつ競争力のある報酬水準の確保を基本方針としています。
給与は、外部労働市場の水準、職務・役割の重要度、個人の成果行動および能力評価を総合的に勘案して決定されます。給与体系は基本給、賞与、各種手当で構成され、基本給は職務・役割等級に基づき、賞与は会社業績と個人評価に連動する仕組みです。
人材育成においては、従業員の自律的なキャリア形成を支援するため、OFF-JT、OJT、自己啓発支援を三本柱とした「ニチアスグループ人材育成方針」を制定しています。具体的には、階層別・目的別研修や資格取得・通信教育支援、さらには全社的な改善活動を通じて、従業員一人ひとりの成長を促しています。
社内環境整備では、多様な人材が安心して働ける環境と風土を醸成するため、「ニチアスグループ人権方針」を制定し、ダイバーシティ推進に力を入れています。女性管理職候補者の採用・育成や正社員における女性比率向上を目標とし、また「ニチアスグループ健康経営宣言」に基づき、ワークライフバランスを重視した健康増進にも取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.8% |
| 男性育児休業取得率 | 83.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 75.4% |
人材育成に関する指標
提出会社単体のデータを示します。提出会社で常時就業する正社員数を対象としています。
| 指標 | 2026年3月期 実績 |
|---|---|
| 人事部主催研修における従業員1人あたりの研修時間(年) | 7.0時間 |
| 通信教育受講率(年) | 21.6% |
社内環境整備に関する指標
提出会社単体のデータを示します。
| 指標 | 2026年3月期 実績 | 2027年3月期 中期目標 |
|---|---|---|
| 従業員における女性比率 | 18.4% | 25.0%以上 |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 83.0% | 85.0%以上 |
| 従業員の有給休暇取得率 | 83.8% | 70.0%以上 |
| 従業員1ヶ月の平均時間外労働時間 | 12.5時間 | 15.0時間以内 |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
ニチアスは、多様な産業分野で事業を展開する企業グループです。主に5つの報告セグメントを通じて、幅広い製品とサービスを提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
ニチアスグループは、「プラント向け工事・販売」「工業製品」「高機能製品」「自動車部品」「建材」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。各セグメントは、それぞれの市場において製品・サービスの提供と工事の設計・施工を行っており、多様な顧客ニーズに対応しています。収益は、これらの製品販売や工事の請負から得られています。
地域別の売上高を見ると、日本が最も大きな割合を占めており、アジアやその他の地域でも収益を上げています。特定の顧客への売上高が連結売上高の10%以上を占める相手先はないとされています。
プラント向け工事・販売
電力、石油精製・石油化学産業などの各種プラントにおける保温工事、保冷工事、耐火工事、防音工事、防災工事の設計と施工、およびメンテナンスを手がけています。石油精製・石油化学産業のプラント設備用のシール材、無機繊維製断熱材、ふっ素樹脂製品の販売も行っています。収益は、これらの工事の請負と製品販売から得ています。
工業製品
電力、ガス、鉄鋼、環境、医療、食品など幅広い産業分野向けに、シール材、無機繊維製断熱材、ふっ素樹脂製の各種成形素材・加工品・耐食ライニング材、およびハニカムフィルターの製造・販売を行っています。収益は、これらの製品の製造・販売から得ています。
高機能製品
半導体・液晶製造装置用のふっ素樹脂製部品、無機繊維製断熱製品、ハニカムフィルター、およびシール材の製造・販売をしています。収益は、これらの製品の製造・販売から得ています。
自動車部品
エンジンおよびエンジン周辺機器用のシール材や、防音、防熱、制振用機能材などの自動車部品の製造・販売を行っています。収益は、これらの自動車部品の製造・販売から得ています。
建材
けい酸カルシウムを主材とした不燃内装材、化粧板、各種不燃建材の製造・販売に加え、オフィスビルなどの不燃建材による耐火被覆工事や各種フロア材によるフリーアクセスフロア工事の設計と施工も手がけています。収益は、これらの建材の製造・販売と工事の請負から得ています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| プラント向け工事・販売 | 785億円 | 795億円 |
| 工業製品 | 532億円 | 533億円 |
| 自動車部品 | 512億円 | 515億円 |
| 高機能製品 | 446億円 | 391億円 |
| 建材 | 291億円 | 285億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
ニチアスグループの直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね横ばいから微減の傾向にあります。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、直近の当連結会計年度において前期から減少しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,162億円 | 2,381億円 | 2,494億円 | 2,565億円 | 2,519億円 |
| 経常利益 | 306億円 | 331億円 | 388億円 | 417億円 | 394億円 |
| 経常利益率 | 14.1% | 13.9% | 15.6% | 16.3% | 15.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 220億円 | 214億円 | 270億円 | 321億円 | 316億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 110.73 | 107.53 | 135.53 | 163.79 | 165.59 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から減少しています。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から減少しており、生産性指標は前期に比べて低下している傾向が見られます。これは、事業活動における効率性や収益創出能力の動向を示すものとなっています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 40.2百万円 | 39.2百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 6.2百万円 | 5.8百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、事業活動で安定的に資金を生み出し、投資活動も行いながら、手元資金を維持している状態です。これは、事業の継続性や将来の成長に向けた基盤を示すものとなっています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率がプライム市場の製造業平均を大きく上回っており、強固な財務体質を示しています。ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均を上回る水準で推移しており、効率的な経営が行われていることがうかがえます。手元資金も潤沢に確保されており、事業環境の変化や不測の事態にも対応できる安定性があると考えられます。これらの財務指標は、入社後の雇用や給与の安定性にもつながる要素となります。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 2,164億円 | 2,396億円 |
| 自己資本比率 | 74.5% | 77.7% |
| ROE(自己資本利益率) | 15.5% | 13.9% |
| 現金及び預金 | 597億円 | 577億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュフローは239.4億円の獲得となりました。これは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の増加要因があった一方で、法人税等の支払額や仕入債務の減少により資金が減少したことによるものです。
投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産や投資有価証券の取得による支出が増加し、101.5億円の支出となりました。その結果、本業で得た資金から投資を行った後に残るフリーキャッシュフローは137.8億円のプラスを維持しています。
財務活動によるキャッシュフローは、配当金の支払いや自己株式の純増減額により169.9億円の支出となりました。同社グループは本業で安定的に資金を生み出し、成長に向けた投資も行いつつ、手元資金を確保している状況であり、これは事業の継続性や将来の成長性を示すものとなります。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 312.5億円 | 239.4億円 |
| 投資CF | △9.1億円 | △101.5億円 |
| 財務CF | △274.0億円 | △169.9億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 303.3億円 | 137.8億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、石油精製・石油化学、化学、鉄鋼、電力・ガス、自動車、半導体、建設など幅広い産業分野の設備投資動向に業績が依存しており、内外の景気動向や経済情勢によって業績が変動する可能性があります。また、アジアをはじめとする海外での事業展開において、法律や規制の変更、金融情勢の変化、政治的混乱などのリスクが存在します。
③ 人材・組織に関するリスク
人材・組織に関するリスクの記載はありません。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
ニチアスは、「断つ・保つ」の技術を基盤に、地球の明るい未来への貢献を目指す企業です。従業員の幸せと持続的成長を重視する企業風土を醸成しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
ニチアスは、「私たちは、『断つ・保つ』の技術で地球の明るい未来に貢献します。」というニチアス理念を経営の基本方針としています。長期ビジョンには「『断つ・保つ』で明るい未来へ」を掲げ、環境と社会課題の解決に貢献することを目指しています。
同社グループは、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「しくみ・130」を策定し、「働きやすい明るい会社」の実現に取り組んでいます。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
ニチアスは、2025年4月に「サステナビリティ方針」を制定し、ニチアスグループ従業員の「心構え」と「行動」の原則を示す「私たちの約束」を改訂しました。中期経営計画「しくみ・130」では、「し」を従業員と家族の幸せ、「く」を課題解決のための工夫、「み」を持続的成長を目指す明るい未来と定義しています。
同社グループは、人材を最も重要な経営資本と位置づけ、人の成長と会社の成長は表裏一体であるという考えのもと、「働きやすい明るい会社」の実現を目指しています。また、「ニチアスグループ人権方針」や「ニチアスグループ健康経営宣言」を制定し、多様な人材が安心して働ける環境整備と健康経営を推進しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、サステナビリティ活動の根幹となる「サステナビリティ方針」を制定し、気候変動への対応、資源循環の取り組み、自然との共生、化学物質管理の強化を重要な環境課題としています。
また、人的資本においては、従業員の自律的なキャリア形成支援を人材育成の基本方針とし、多様な人材が安心して働ける環境整備と風土醸成を重視しています。具体的には、女性管理職候補者の採用・育成や、従業員の健康と安全を基盤とした健康経営の推進に取り組んでいます。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
ニチアスは、経営の透明性、公正性、効率性を高め、同社グループを含めた企業価値を長期にわたり安定的に向上させることを経営の最重要課題としています。公正な企業活動を通じて社会的な使命を果たし、ステークホルダーの信頼と支持を得ることで企業価値の向上を目指しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社グループの株主構成は、信託銀行が上位を占める構成となっています。従業員持株会も上位株主として名を連ねており、幅広い層に支えられていることがうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.17% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 12.29% |
| ニチアス持株会 | 8.73% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は13名(男性10名・女性3名)で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は亀津克己氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 亀津 克己 | 代表取締役社長 | 1985年同社入社。工業製品事業本部海外営業部長、基幹産業事業本部長などを経て、2022年より同社代表取締役社長に現職。 |
| 山本 司 | 代表取締役専務執行役員内部統制・コンプライアンス・サステナビリティ・経理担当 | 1986年同社入社。日本ロックウール株式会社代表取締役社長、同社経営企画部長などを経て、2022年より同社代表取締役専務執行役員に現職。 |
| 田邉 智 | 取締役専務執行役員生産部門・安全衛生・環境・品質保証担当 | 1989年同社入社。鶴見工場長、技術本部長などを経て、2024年より同社取締役専務執行役員に現職。 |
| 佐藤 清 | 取締役常務執行役員研究開発・デジタル化推進担当 | 2003年同社入社。浜松研究所長、研究開発本部長などを経て、2024年より同社取締役常務執行役員に現職。 |
| 龍光 幸徳 | 取締役常務執行役員営業部門担当 | 1988年同社入社。高機能製品事業本部東日本営業部長、高機能製品事業本部長などを経て、2025年より同社取締役常務執行役員に現職。 |
社外取締役は、和智洋子氏(弁護士・指名委員会委員長・報酬委員会委員)、真鍋靖氏(元日立製作所執行役常務・報酬委員会委員長・指名委員会委員)、岩﨑玲子氏(For SDGs代表取締役・指名委員会委員・報酬委員会委員)です。
同社は監査役会設置会社です。社外取締役は、取締役会において幅広い経験と見識に基づいた助言を行い、経営の監督にあたっています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社では、取締役の報酬は金銭による基本報酬と株式報酬で構成されています。社外取締役については、その職責を考慮し、基本報酬のみが支給される体系です。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 3.4億円 | 68.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 38百万円 | 19.0百万円 |
| 社外取締役 | 4名 | 43百万円 | 10.8百万円 |
| 社外監査役 | 3名 | 27百万円 | 9.0百万円 |
個人別報酬が開示されている役員は、亀津克己氏(1.17億円)です。
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