バルカー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バルカー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バルカーは東京証券取引所プライム市場に上場し、シール製品事業および機能樹脂製品事業の製造・販売を主力としています。直近の業績では、先端産業市場向け高機能シール製品が堅調に推移した一方、機能樹脂事業全般の回復遅延や連結除外の影響があり、売上高は減少したものの、固定費低減などにより増益となっています。


※本記事は、株式会社バルカーの有価証券報告書(第126期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バルカーってどんな会社?


同社はシール製品および機能樹脂製品の製造・販売を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1927年、日本ブレーキライニング製作所として創立されました。1932年に日本バルカー工業として設立し、工業用パッキンの生産を開始しました。1952年には日本初のふっ素樹脂製品「バルフロン」の生産・販売を開始しています。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1975年に同第一部へ指定替えされました。

同社グループの従業員数は連結で1,582名、単体で424名です。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務などを行う信託銀行で、第3位の株主も外国の信託銀行等とみられるカストディアンです。また、創業家出身とみられる代表取締役会長CEOも大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.52%
日本カストディ銀行(信託口) 8.07%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 7.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長CEOには瀧澤利一氏、代表取締役社長COOには瀧澤利治氏が就いています。なお、取締役9名中、3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
瀧澤利一 代表取締役会長CEO 兼 CWO 1984年大成建設入社。1987年同社入社。海外事業部長、代表取締役社長等を経て、2019年より代表取締役会長CEO。2026年より現職。
瀧澤利治 代表取締役社長COO兼 H&S事業担当 2014年同社入社。三井物産出向、海外統括本部副本部長、常務執行役員等を経て、2024年より代表取締役社長COO兼CWO。2026年より現職。
中澤剛太 取締役副社長CFO 兼 CDO兼 CRO 2004年財務省入省。経済産業大臣秘書官、TORANOTEC最高戦略責任者等を経て、2021年同社取締役専務執行役員。2026年より現職。


社外取締役は、成田学(元三井住友銀行副会長)、齊藤三希子(エスエムオー代表取締役CEO)、沓澤浩也(元タカラトミー専務取締役CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「シール製品事業」および「機能樹脂製品事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) シール製品事業


プラント・機器関連製品、エラストマー製品、自動車部品およびその他シール製品の開発・生産・販売を行っています。半導体などの先端産業市場やプラント機器市場を主な顧客とし、シールエンジニアリングをコア技術として顧客の安全性向上や環境対応に貢献する製品およびサービスを提供しています。

収益源はこれらの製品の販売代金およびシール周辺機器のデジタル化等に伴うサービス収入です。運営は同社のほか、バルカーシールソリューションズ、九州バルカー、バルカーミカワフロンテックなどの国内子会社群、および韓国、台湾、ベトナム、タイなどの海外子会社が幅広く担っています。

(2) 機能樹脂製品事業


ふっ素樹脂製品を中心とする機能樹脂製品の開発、生産および販売を行っています。半導体市場などを最重点領域とし、製造プロセスにおける薬液の高純度化要求に対応した製品や、プラント市場向けのフッ素樹脂バルブ・ライニングタンクなどを提供し、安全・安定稼働に寄与しています。

主な収益源は、特殊タンク製品を含む各種機能樹脂製品の販売代金です。一部の製品では工事契約期間にわたって収益を認識するモデルも採用しています。運営は同社に加え、バルカーミカワフロンテックなどの国内子会社、および台湾バルカー国際股份有限公司、ベトナムの海外子会社などが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は622億円をピークに微減傾向ですが、経常利益は70億円前後で底堅く推移しています。利益率も10%以上を安定して確保しており、当期利益は直近で51億円と増加傾向にあります。収益力の改善が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 532億円 622億円 617億円 601億円 586億円
経常利益 72億円 90億円 74億円 60億円 70億円
利益率(%) 13.5% 14.5% 12.0% 10.0% 12.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 48億円 67億円 49億円 47億円 51億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い営業利益も増加し、営業利益率は大きく上昇しました。収益性の高い事業へのシフトやコストコントロールの成果が表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 601億円 586億円
売上総利益 238億円 250億円
売上総利益率(%) 39.7% 42.7%
営業利益 57億円 71億円
営業利益率(%) 9.4% 12.1%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が76億円(構成比42%)、研究開発費が14億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


シール製品事業は先端産業市場向け高機能シール製品が堅調に推移し、増収増益となりました。一方、機能樹脂製品事業はフッ素樹脂加工品などの需要減少や拠点見直しの費用計上が響き、減収減益となっています。両セグメントで明暗が分かれる結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
シール製品事業 410億円 439億円 49億円 66億円 15.1%
機能樹脂製品事業 163億円 147億円 6億円 5億円 3.4%
シリコンウエハーリサイクル事業他 28億円 - 2億円 - -
連結(合計) 601億円 586億円 57億円 71億円 12.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 49億円 50億円
投資CF -49億円 -44億円
財務CF 16億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社名の由来でもある「Value & Quality」をスローガンに掲げています。創業以来、価値ある製品の研究・開発と、信頼を生む品質の高い製品の提供に努めてきました。この理念に基づき、ステークホルダーの最高満足に向けて新たな価値創造に邁進し、持続可能な社会の実現と企業の健全な成長の両立を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念として「THE VALQUA WAY」を制定しており、これを全グループ社員が共有し、業務の指針としています。また、従うべき理念である「正正堂堂と」や、行動指針としての「コンプライアンス遵守と誠実な行動」を宣言しています。さらに「Well-being経営」を掲げ、多様な人材が活躍できる風通しの良い職場づくりを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画「New Frontier 2026(NF2026)」を推進しており、売上高および営業利益を重要な経営指標と位置づけています。持続的な成長と企業価値の向上を図るため、最終年度である2027年3月期に向けて以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:650億円
* 連結営業利益:90億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の戦略として、激変する世界における人材育成や、地政学リスクに対応したサプライチェーンの強靭化を進めます。シール製品事業では先端産業市場での供給体制最適化と生産力強化を図り、機能樹脂製品事業でも先端産業市場を最重点領域として供給網を整備します。また、デジタル技術やAIを活用したソリューション展開を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を最も重要な経営資源であり競争力の源泉と位置づけています。「THE VALQUA WAY」の浸透と「Well-being経営」の推進を通じて、社員一人ひとりが最大限の力を発揮できる職場環境づくりに注力しています。年齢や経歴にとらわれない適所適材の人材登用や、選抜型研修とOJTを組み合わせた育成施策を展開し、時代の要請に応える人材育成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.1歳 17.7年 8,585,760円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.3%
男性育児休業取得率 91.7%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規雇用) 80.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 45.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用管理職比率(50.5%)、女性取締役比率(16.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学的・サプライチェーンリスク


同社はグローバルに事業を展開しており、各国の政治経済情勢の悪化や紛争等の地政学リスクが存在します。また、原材料価格の高騰や調達網の混乱が起きる可能性もあり、これらがサプライチェーンに影響を及ぼし、業績や財政状態を悪化させるリスクがあります。

(2) 品質と製造物責任に関するリスク


製品の欠陥や想定外の事故が発生した場合、ブランドイメージの低下や多額の損害賠償負担が生じる可能性があります。厳格な品質管理基準や品質保証体制を構築していますが、重大な品質問題が売上高の減少を招き、業績に悪影響を与えるリスクが考えられます。

(3) コンプライアンス・内部統制リスク


各国の法規制の強化や解釈の変更により、対応コストの増加や事業活動が制限されるリスクがあります。また、内部管理体制が不十分で重大な法令違反や不正行為が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、業績やブランドイメージに深刻な影響を及ぼすおそれがあります。

(4) 専門人材・リーダー確保のリスク


成長戦略を牽引する専門人材やリーダーの確保が難航した場合、または優秀な人材の流出を防げない場合、競争力の低下を招くリスクがあります。中途採用や育成プログラムの強化を進めていますが、必要な人材を十分に確保できないことは事業の成長計画に影響を与えます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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