バルカー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バルカー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、プラント・機器関連製品やエラストマー製品などのシール製品事業、ふっ素樹脂製品などの機能樹脂製品事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で減収、当期純利益も減益となりました。


※本記事は、バルカー の有価証券報告書(第125期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バルカーってどんな会社?


シール製品と機能樹脂製品を主力とする素材・部品メーカーです。創業から約1世紀の歴史を持ちます。

(1) 会社概要


1927年に日本ブレーキライニング製作所として創立し、1932年に日本バルカー工業を設立しました。1952年には日本で初めてふっ素樹脂製品化に成功し、「バルフロン」として販売を開始しています。2018年に現在のバルカーへ商号を変更しました。2025年には愛知県田原市に新工場を竣工し、生産体制を強化しています。

現在の従業員数は連結1,536名、単体426名です。大株主の筆頭は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位には従業員等の持株会と思われるバルカー東京共栄会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.91%
日本カストディ銀行(信託口) 7.95%
バルカー東京共栄会 3.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長COO 兼 CWOは瀧澤 利治氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
瀧澤 利一 代表取締役会長CEO 大成建設を経て1987年同社入社。海外事業部長などを歴任し、2003年社長兼CEOに就任。2019年より現職。
瀧澤 利治 代表取締役社長COO 兼 CWO 2014年同社入社。三井物産出向を経て、高機能樹脂本部長、H&S事業本部長などを歴任。2024年より現職。
本坊 吉博 取締役副会長 三井物産代表取締役副社長執行役員などを経て、2019年同社副社長執行役員に就任。社長COOを経て2024年より現職。
中澤 剛太 取締役副社長CFO 兼 CDO 財務省、ドリームインキュベータを経て、TORANOTEC取締役最高戦略責任者に就任。2021年同社入社。2025年より現職。


社外取締役は、関根 近子(元資生堂執行役員常務)、齊藤 三希子(エスエムオー代表取締役CEO)、沓澤 浩也(元タカラトミー専務取締役CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「シール製品事業」、「機能樹脂製品事業」および「シリコンウエハーリサイクル事業他」を展開しています。

(1) シール製品事業

プラント・機器関連製品、エラストマー製品、自動車部品などを提供しています。産業用プラントや各種機器の密閉性を保つためのシール材が主力であり、幅広い産業分野の顧客へ製品を供給しています。

製品の販売による対価を主な収益源としています。運営は主にバルカー、バルカーシールソリューションズ、九州バルカー、バルカーミカワフロンテックなどの国内子会社および海外子会社が行っています。

(2) 機能樹脂製品事業

ふっ素樹脂製品を中心とした高機能樹脂製品を提供しています。耐熱性や耐薬品性に優れた特性を活かし、半導体製造装置や化学プラントなどの高度な要求に応える製品を展開しています。

製品の販売および加工サービスの対価を収益源としています。運営は主にバルカーミカワフロンテックなどの国内子会社および海外子会社が行っています。

(3) シリコンウエハーリサイクル事業他

シリコンウエハーのリサイクル事業および太陽光発電事業などを展開しています。半導体製造プロセスで使用されるモニターウエハー等の再生加工サービスを提供しています。

リサイクル加工サービスの対価や売電収入を収益源としています。運営は主に九州バルカーが行っています。なお、同事業を構成していたバルカー・エフエフティは2025年3月に全株式が譲渡されましたが、当期実績には含まれています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は600億円前後で推移していましたが、直近では減少傾向にあります。経常利益も前期の74億円から当期は60億円へと減少しました。利益率は低下傾向にありますが、当期純利益は一定水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 447億円 532億円 622億円 617億円 601億円
経常利益 37億円 72億円 90億円 74億円 60億円
利益率(%) 8.2% 13.5% 14.5% 12.0% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 33億円 51億円 30億円 52億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も減少しています。販管費はほぼ横ばいですが、売上高の減少により営業利益率は低下しました。減収減益の決算となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 617億円 601億円
売上総利益 253億円 238億円
売上総利益率(%) 41.0% 39.7%
営業利益 71億円 57億円
営業利益率(%) 11.5% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が34億円(構成比26%)、業務委託費が16億円(同12%)を占めています。売上原価は363億円で、売上高に対する構成比は60%です。

(3) セグメント収益


シール製品事業は先端産業市場向けの回復により増収増益となりました。一方、機能樹脂製品事業は主要顧客の設備投資調整の影響を受け大幅な減収減益となりました。シリコンウエハーリサイクル事業他は増収となりましたが、開発費用の先行により損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
シール製品事業 372億円 406億円 31億円 53億円 13.0%
機能樹脂製品事業 216億円 163億円 40億円 6億円 3.5%
シリコンウエハーリサイクル事業他 30億円 32億円 -0億円 -2億円 -5.4%
連結(合計) 617億円 601億円 71億円 57億円 9.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

バルカーのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、営業活動により潤沢な資金を創出しており、これは主に事業活動による利益の増加や、売上債権の回収が進んだことによるものです。一方で、将来の成長に向けた設備投資や関係会社への出資など、積極的な投資活動も行っています。財務活動では、長期・短期借入金の調達や配当金の支払いなどが行われました。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 18億円 49億円
投資CF -48億円 -49億円
財務CF 9億円 16億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Value & Quality」をスローガンとし、価値ある製品の研究開発と品質の高い製品の提供を目指しています。企業理念として「THE VALQUA WAY」を制定し、全グループ社員が共有する業務指針としています。

(2) 企業文化


「THE VALQUA WAY」に基づき、本質の追求と「理と利(理念と利益)」の実現を目指すビジョナリー経営を推進しています。「正正堂堂と」を理念とし、「コンプライアンス遵守と誠実な行動」を行動指針として掲げ、公正で透明性の高い企業活動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


創業100周年を迎える2027年3月期に向けた長期経営目標を設定し、「未来と未知に挑むチャレンジングな企業」を目指しています。あくなき成長戦略の追求や経営基盤の強化、環境・社会・企業統治への取り組みを掲げています。

* 連結売上高 800億円
* 連結ROE 15%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「NF2026」の下、急激な世界情勢の変化やデジタル化に対応するため、人材育成、サプライチェーンの強靭化、AI/ITソリューション事業のマネタイズに注力しています。また、技術流出の防止やグローカリゼーションの徹底を進め、持続的な価値創造を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と位置づけ、「THE VALQUA WAY」の浸透と「Well-being経営」を推進しています。性別や年齢、経歴にとらわれない多様な人材の登用や、階層別研修、選抜研修などの積極的な人材開発を通じて、時代責任を担う社員の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.7歳 17.4年 8,666,933円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規) 79.7%
男女賃金差異(非正規) 46.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の割合(50.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学的リスク

グローバルに事業を展開しているため、各国の政治経済情勢の悪化、法規制の変更、紛争などの影響を受ける可能性があります。また、米中対立等の影響による経済安全保障への対応やサプライチェーンの分断が事業活動や業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

(2) 原材料価格変動と調達リスク

部品や原材料を国内外から調達しており、需給逼迫やエネルギー価格の高騰、為替変動などにより調達コストが上昇する可能性があります。また、特定材料の供給途絶や品質問題が発生した場合、生産活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) コンプライアンスに関するリスク

各国の法令や規則の適用を受けており、法規制の変更対応によりコストが増加する可能性があります。また、元役職員による不正行為の発覚を受け再発防止策を講じていますが、内部管理体制の不備等により法令違反が発生した場合、社会的信用の失墜を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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