※本記事は、株式会社 神戸製鋼所 の有価証券報告書(第172期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 神戸製鋼所ってどんな会社?
鉄鋼、機械、電力など多角的な事業を展開し、素材と機械の技術を融合させた製品・サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1905年に鈴木商店が小林製鋼所を買収し創業、1911年に株式会社として設立されました。1949年に株式上場を果たし、1959年には灘浜工場の新設により銑鋼一貫メーカーとなりました。その後も1970年の加古川製鉄所新設、1999年の建設機械事業の分社化(コベルコ建機)、2002年の電力卸供給事業開始など、時代の要請に応じ事業構造を変革してきました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は39,294名、単体では11,895名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行の信託口となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(株)(信託口) | 16.94% |
| (株)日本カストディ銀行(信託口) | 4.26% |
| 野村信託銀行(株)(投信口) | 2.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は勝川 四志彦氏が務めています。社外取締役比率は46.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 勝川 四志彦 | 取締役社長(代表取締役) | 1985年4月同社入社。常務執行役員、専務執行役員、取締役執行役員、取締役副社長執行役員を経て、2024年4月より現職。 |
| 永良 哉 | 取締役副社長執行役員(代表取締役)内部統制・監査部、安全・環境部、法務部、総務・CSR部、人事労政部、ラグビーセンター、支社・支店、高砂製作所(直属部門)の総括、全社コンプライアンスの総括、全社安全衛生の総括、全社環境防災の総括 | 1985年4月同社入社。常務執行役員、専務執行役員、取締役執行役員を経て、2023年4月より現職。 |
| 坂本 浩一 | 取締役執行役員品質統括部、技術戦略企画部、知的財産部の総括、技術開発本部の総括、全社品質の総括、全社TQM活動推進の総括、全社技術開発の総括 | 1990年4月同社入社。技術開発本部材料研究所長、開発企画部長、執行役員を経て、2023年6月より現職。 |
| 宮岡 伸司 | 取締役執行役員事業開発部、IT企画部、建設技術部、機材調達部の総括、全社システムの総括、社長特命事項の担当、営業企画について総務・CSR部総括役員を支援 | 1994年4月同社入社。経営企画部長、執行役員を経て、2023年6月より現職。 |
| 木本 和彦 | 取締役執行役員経営企画部、財務経理部、海外拠点(本社所管)の総括、社長特命事項の担当、IR活動について総務・CSR部総括役員を支援 | 1988年4月同社入社。執行役員、常務執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 松本 群雄 | 取締役(監査等委員) | 1989年4月同社入社。経理部長、財務経理部長、内部統制・監査部担当役員補佐を経て、2023年6月より現職。 |
| 後藤 有一郎 | 取締役(監査等委員) | 1990年4月同社入社。執行役員、常務執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、伊藤 ゆみ子(元日本マイクロソフト執行役)、北川 慎介(元三井物産専務執行役員)、塚本 良江(元NTTコムオンライン社長)、河野 雅明(元みずほFG副社長)、三浦 州夫(河本・三浦法律事務所代表)、関口 暢子(エイチ・ツー・オー リテイリング監査等委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄鋼アルミ」「素形材」「溶接」「機械」「エンジニアリング」「建設機械」「電力」および「その他」事業を展開しています。
■鉄鋼アルミ
線材、棒鋼、薄板、厚板などの鉄鋼製品およびアルミ板製品を提供しています。主な顧客は自動車、造船、電機、建設などの幅広い産業界です。また、スラグ製品や製鉄用銑なども取り扱っています。
製品の販売対価を収益源としています。運営は主に同社が行っていますが、関係会社として日本高周波鋼業や神鋼鋼線工業、神鋼物流などが製造や物流、加工などの一部機能を担っています。
■素形材
鋳鍛鋼品、アルミニウム合金・マグネシウム合金鋳造品、チタン、アルミ押出材、銅圧延品などを提供しています。輸送機、エネルギー、航空宇宙などの分野が主な顧客です。
製品の販売対価を収益源としています。運営は同社のほか、Kobelco Aluminum Automotive Products, LLCなどの子会社が行っています。
■溶接
各種溶接材料、溶接ロボット、溶接機、溶接システムなどを提供しています。自動車、建築、造船などの産業が主な顧客であり、溶接関連の試験・分析・コンサルティングも行っています。
製品の販売およびサービスの提供対価を収益源としています。運営は同社および青島神鋼溶接材料有限公司などの子会社が行っています。
■機械
圧縮機、産業用機械、エネルギー・化学関連機器、タイヤ・ゴム機械などを提供しています。石油化学、エネルギー、自動車関連産業などが主な顧客です。
機器の販売およびアフターサービスの対価を収益源としています。運営は同社およびコベルコ・コンプレッサ、神鋼造機などの子会社が行っています。
■エンジニアリング
還元鉄プラント、水処理・廃棄物処理プラント、新交通システムなどを提供しています。資源・エネルギー関連企業や官公庁などが主な顧客です。
プラントの設計・建設請負およびオペレーション・メンテナンス(O&M)等の対価を収益源としています。運営は同社および神鋼環境ソリューションなどが行っています。
■建設機械
油圧ショベル、クレーン、環境リサイクル機械などを提供しています。建設・土木業界が主な顧客です。
建設機械の販売およびサービスの対価を収益源としています。運営は主にコベルコ建機が行っています。
■電力
神戸市および栃木県真岡市において発電所を運営し、電力を供給しています。
電力の供給対価を収益源としています。運営は同社およびコベルコパワー神戸、コベルコパワー真岡などの子会社が行っています。
■その他
材料分析・解析、不動産関連事業などを行っています。
サービスの提供および不動産の賃貸・分譲等の対価を収益源としています。運営はコベルコ科研、TC神鋼不動産などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益率は一時的な変動はあるものの、概ね4%から6%台で推移しており、一定の収益性を維持しています。当期利益についても黒字基調を維持し、直近では増加傾向を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 17,056億円 | 20,826億円 | 24,725億円 | 25,431億円 | 25,550億円 |
| 経常利益 | 162億円 | 932億円 | 1,068億円 | 1,609億円 | 1,572億円 |
| 利益率(%) | 0.9% | 4.5% | 4.3% | 6.3% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 79億円 | 454億円 | 551億円 | 655億円 | 1,037億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は微増となり、売上総利益率は概ね横ばいで推移しています。一方で、営業利益率は低下しており、販管費の増加などが利益を圧迫している様子がうかがえます。全体としては、売上規模を維持しつつも利益率の改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 25,431億円 | 25,550億円 |
| 売上総利益 | 4,360億円 | 4,232億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.1% | 16.6% |
| 営業利益 | 1,866億円 | 1,587億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が1,196億円(構成比45%)、運搬費が623億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、鉄鋼アルミや素形材事業は増収増益となり業績を牽引しています。機械や建設機械は減収傾向にあるものの、機械事業は増益を確保しています。一方、電力事業は売上が大きく減少し、利益も縮小しています。全体としては、素材系事業の好調さが電力事業等の落ち込みを補っている構図です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼アルミ | 10,457億円 | 10,780億円 | 162億円 | 237億円 | 2.2% |
| 素形材 | 2,833億円 | 3,044億円 | 32億円 | 107億円 | 3.5% |
| 溶接 | 927億円 | 932億円 | 49億円 | 52億円 | 5.6% |
| 機械 | 2,227億円 | 2,516億円 | 296億円 | 326億円 | 13.0% |
| エンジニアリング | 1,687億円 | 1,724億円 | 124億円 | 161億円 | 9.3% |
| 建設機械 | 4,040億円 | 3,879億円 | 92億円 | 188億円 | 4.8% |
| 電力 | 3,160億円 | 2,588億円 | 858億円 | 523億円 | 20.2% |
| その他 | 89億円 | 74億円 | 48億円 | 38億円 | 51.4% |
| 調整額 | 12億円 | 13億円 | -52億円 | -60億円 | -462.9% |
| 連結(合計) | 25,431億円 | 25,550億円 | 1,609億円 | 1,572億円 | 6.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
神戸製鋼所グループは、将来見込まれる成長分野への投資も勘案しつつ、必要な設備投資や研究開発投資を継続する方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に生産活動に必要な運転資金や販売費、研究開発費の支出により生じます。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備更新や事業伸張のための設備投資、投融資等により支出となります。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済等により支出となります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2,053億円 | 1,483億円 |
| 投資CF | -537億円 | -1,139億円 |
| 財務CF | -812億円 | -962億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安全・安心で豊かな暮らしの中で、今と未来の人々が夢や希望を叶えられる世界。」の実現を目指しています。「KOBELCOが実現したい未来」として、技術・製品・サービスの提供に加え、社会に新しい価値を提供し未来をより良くするという精神を掲げ、「KOBELCOの使命・存在意義」として、多様な人材・事業・技術のかけ算により社会課題の解決に挑み続ける姿勢を示しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、共有すべき価値観や行動規範として「KOBELCOの3つの約束」と「KOBELCOの6つの誓い」を定めています。これらはグループ企業理念の構成要素であり、ボトムアップのプロセスで制定されました。従業員一人ひとりが「我々は何者なのか」「何を目指していくのか」を考え、議論を通じて抽出された思いが込められており、社会課題の解決や新たな価値創造に向けた行動の指針となっています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」において、2026年度末までに以下の数値目標の達成を目指しています。
* ROIC:6%以上(将来の姿として8%以上)
* 純資産比率:40%台前半
* D/Eレシオ:0.7倍台半ば
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「稼ぐ力の強化と成長追求」および「カーボンニュートラル(CN)への挑戦」を最重要課題として掲げています。具体的には、将来の外部環境を見据えた事業基盤の再整備、既存事業における新たな需要の捕捉やソリューションビジネスの拡大、生産プロセスにおけるCO2削減を推進します。また、これらを加速させるドライバーとして「KOBELCO-X」と総称する変革に取り組み、サステナビリティ経営を強化し、「未来に挑戦できる事業体」の確立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、多様な背景、価値観、技術を持った人材が最大限活躍できる環境を整備することを重視しています。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進し、組織の多様性を高めるとともに、OJTや多様な教育研修プログラムを通じて一人ひとりの成長と挑戦を促します。また、テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方の推進、オフィス環境の改善、人権尊重の取り組み、安全衛生活動などを通じて、働きがいのある職場環境の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.9歳 | 15.4年 | 8,120,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 94.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職新卒採用女性比率(事務系42%、技術系8%)、女性管理職人数(86人)、年次有給休暇取得日数(16.8日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要市場の経済状況と製品需給・価格の変動
同社グループの事業は、自動車、造船、電気機械、建設・土木などの需要分野や、アジアを中心とした海外市場の動向に影響を受けます。特に鉄鋼事業では、中国の過剰生産能力に起因する国際競争や需給変動が製品価格に影響を与えます。また、機械系事業においても製品需給の急激な変動や、海外市場における通貨価値の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動と調達リスク
鉄鉱石、石炭、合金鉄・非鉄金属などの原材料価格や海上運賃は、国際市況や為替相場、地政学的リスクにより変動します。特に鉄鉱石や石炭は中国の需給や供給国の偏在による影響を受けやすくなっています。調達先の分散などに努めていますが、原材料価格の大幅な変動はコスト増加を招き、業績に影響を与える可能性があります。また、サプライチェーンの混乱による調達難もリスク要因です。
■(3) 鉄鋼生産設備における事故や労働災害
鉄鋼の高炉や転炉など、高温・高圧での操業を行う設備を有しており、労働災害が発生しやすい環境にあります。安全対策には万全を期していますが、重大な労働災害や設備事故が発生した場合、生産活動の停止、売上の減少、復旧費用の発生などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、自然災害による被害も同様のリスクとなります。



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