大和工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、鉄鋼事業および軌道用品事業を主軸に展開しています。H形鋼などの鉄鋼製品を国内外で製造・販売し、特に海外事業が成長の源泉となっています。直近の業績は、売上高が増加した一方で、経常利益は大幅な減益となりました。


※本記事は、株式会社大和工業 の有価証券報告書(第106期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大和工業ってどんな会社?


同社は、H形鋼などの形鋼製品や鉄道用分岐器などを製造・販売する、世界的な鉄鋼・重工業メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1944年に創立され、1962年に大阪・東京証券取引所市場第一部に上場しました。グローバル展開を積極的に進め、1987年に米国で合弁会社を設立、1992年にはタイで合弁会社を設立し、海外拠点を拡大してきました。2003年には鉄鋼事業等を分社化し持株会社体制へ移行しています。2024年にはインドネシアの鉄鋼会社を連結子会社化し、ASEAN地域での事業基盤を強化しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は2,585名、単体では106名です。筆頭株主は会長の井上浩行氏で、次いで資産管理を行う信託銀行や関連会社が名を連ねています。国内外に製造・販売拠点を持ち、地産地消型のビジネスモデルでグローバルに事業を展開しています。

氏名 持株比率
井上浩行 12.11%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.77%
井上不動産有限会社 7.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は小林幹生氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
井上浩行 取締役会長 1969年入社。常務取締役、代表取締役専務取締役を経て、1981年より代表取締役社長。2017年6月より現職。
小林幹生 代表取締役社長 三井物産出身。同社鉄鋼海外事業部長などを経て、2012年に大和工業へ入社し事業開発部長に就任。常務取締役を経て、2017年6月より現職。
塚本一弘 代表取締役常務執行役員 三井物産および三井物産スチールを経て、2017年に同社常務取締役に就任。海外事業部などを担当し、2024年9月より総務部・人事部などを担当。
尾嵜朋史 取締役常務執行役員 三井物産鉄鋼製品事業部長などを歴任後、2024年に同社へ入社。グローバル事業推進部を担当し、2025年6月より現職。
大木伸夫 取締役執行役員 1998年入社。ヤマトスチール執行役員、ポスコ・ヤマト・ビナ・スチール工場長などを経て、2025年4月より技術統括部・技術開発部を担当。
ダムリ タンシェヴァヴォン 取締役 タイのサイアム・ヤマト・スチール マネージングダイレクターやCementhai Holding社長などを歴任。2011年6月より現職。
安福武之助 取締役 株式会社神戸酒心館の代表取締役社長を務める。2015年6月より同社取締役を兼任。


社外取締役は、赤松清茂(元朝日工業代表取締役社長)、武田邦俊(元ブリヂストン執行役員)、髙橋規(元三井物産代表取締役副社長)、ピムジャイ ワンキアット(元サイアム・セメント・グループ役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄鋼事業(日本)」「鉄鋼事業(タイ)」「鉄鋼事業(インドネシア)」「軌道用品事業」および「その他」事業を展開しています。

鉄鋼事業(日本)


国内市場向けに、H形鋼、溝形鋼、I形鋼、鋼矢板などの条鋼製品や、造船用形鋼、鋳鋼品、重機械加工品などを製造・販売しています。建設業界や造船業界などが主な顧客となります。

製品の販売による対価が主な収益源です。運営は主に連結子会社のヤマトスチールが担っています。同社グループのマザー工場として、高度な技術開発や新製品開発を行い、海外拠点への技術支援も行っています。

鉄鋼事業(タイ)


タイ国内および周辺地域向けに、H形鋼、溝形鋼、I形鋼、鋼矢板などの製造・販売を行っています。インフラ投資や民間建設需要に応える製品を提供しています。

製品販売による収益が主となります。運営は連結子会社のサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッドが行っています。ASEAN地域の中心的な拠点として位置づけられています。

鉄鋼事業(インドネシア)


インドネシア市場において、H形鋼、溝形鋼、等辺山形鋼などの製造・販売を行っています。人口増加と経済成長が続く同国での旺盛な建設需要に対応しています。

製品販売による収益を得ています。運営は連結子会社のPTガルーダ・ヤマト・スチールが行っています。2024年に新たに連結子会社化され、ASEAN地域における第3の製造拠点として事業を開始しました。

軌道用品事業


鉄道向けの分岐器類、伸縮継目、クロッシング、接着絶縁レール、脱線防止ガードなどを製造・販売しています。鉄道会社や関連施工会社が主な顧客です。

製品の販売および加工による収益が柱です。運営は連結子会社の大和軌道製造が行っています。高い安全性と品質が求められる鉄道インフラを支える重要な事業です。

その他


上記セグメントに含まれない事業として、運送事業、医療廃棄物処理、不動産事業、カウンターウエイトの製造・販売などを行っています。

各サービスの提供による対価や不動産賃貸料などが収益源です。運営は主に大和商事、株式会社松原テクノ、ヤマト・コリア・ホールディングスカンパニーリミテッドなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期にピークを迎えた後、一度減少しましたが、当期は再び増加傾向にあります。一方、経常利益と当期利益は2024年3月期まで高い水準で推移していましたが、当期は大幅な減益となりました。利益率は低下したものの、依然として高い水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,360億円 1,500億円 1,804億円 1,635億円 1,683億円
経常利益 216億円 576億円 905億円 992億円 544億円
利益率(%) 15.9% 38.4% 50.2% 60.7% 32.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 399億円 653億円 700億円 318億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。これは売上原価や販管費の増加によるものです。特に営業利益率は低下しましたが、依然として利益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,635億円 1,683億円
売上総利益 318億円 295億円
売上総利益率(%) 19.5% 17.5%
営業利益 173億円 115億円
営業利益率(%) 10.6% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が52億円(構成比29%)、給料及び手当が30億円(同17%)を占めています。売上原価は1,387億円で、売上高に対する比率は82.4%です。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の鉄鋼事業(日本)および(タイ)で減収となりましたが、新たに連結化した鉄鋼事業(インドネシア)が寄与し、全体では増収となりました。一方で、既存の鉄鋼事業における市況の影響等により、全体の利益水準は押し下げられる結果となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
鉄鋼事業(日本) 726億円 595億円
鉄鋼事業(タイ) 804億円 691億円
鉄鋼事業(インドネシア) - 280億円
軌道用品事業 76億円 87億円
その他 29億円 29億円
調整額 - -
連結(合計) 1,635億円 1,683億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金を使って借入返済を行いつつ、将来のための投資も自己資金で賄う「健全型」を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 809億円 710億円
投資CF -333億円 -857億円
財務CF -213億円 -430億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「鉄で未来を 未来の鉄を」をミッションに掲げ、グローバルな鉄事業を通じて国際社会の発展や豊かな地域社会の実現に貢献することを目指しています。世界市場をターゲットとし、グループ各社の特性を活かした活力ある経営を推進しています。

(2) 企業文化


同社は「Yamato SPIRIT」として、ものづくりへのこだわりや挑戦心、誠実さを重視する価値観を共有しています。国内のマザー工場で培った技術と経営ノウハウをベースに、国籍や文化を超えた多様な人材がチームワークを発揮し、グローバルに活躍する風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2030年ありたい姿」を掲げ、環境配慮型社会への貢献と持続的な成長を目指しています。具体的な数値目標として、次期の業績予想を以下の通り公表しています。

* 売上高:1,640億円
* 営業利益:60億円
* 経常利益:560億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:400億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、コア事業である形鋼事業の強靭化と、新たな事業領域への進出を重点戦略としています。特に海外事業においては、タイ、ベトナムに加え、インドネシアを第3の拠点とし、ASEAN地域での生産・販売体制を強化する「ASEAN 300万トン体制」の構築を進めています。

* 形鋼生産能力800万トン体制の構築
* ASEAN地域での市場シェア過半の獲得
* 国内マザー工場(ヤマトスチール)の設備更新と競争力強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、グローバル展開を支えるプロフェッショナル人材の育成に注力しています。国内のマザー工場と海外拠点間でのエンジニア交流を活発化させ、技術情報の共有と人材の底上げを図っています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、次世代リーダーの育成にも力を入れています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.1歳 8.9年 9,528,018円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 70.7%
男女賃金差異(正規雇用) 70.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.3%


※上記の数値は提出会社(単体)のものです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外進出に潜在するリスク


同社グループは米国、タイ、インドネシア等でグローバルに事業を展開しています。そのため、進出先国における政治・経済情勢の変化、法規制の変更、テロや戦争などの社会的混乱が発生した場合、グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品販売価格と主原料価格の変動


主力の鉄鋼事業の業績は、製品販売価格と主原料である鉄スクラップ価格の変動に大きく影響されます。これらの価格は、国内外の経済情勢や需給バランスなどの外部環境によって変動するため、市況によっては業績に影響を与える可能性があります。

(3) 気候変動リスク


気候変動への対応として、炭素税の導入などによるエネルギーコストの上昇や、原材料・水資源の供給不安定化などが懸念されます。これらの環境規制の強化や物理的リスクが顕在化した場合、製造コストの増加や操業への影響が生じる可能性があります。

(4) サイバーセキュリティに関するリスク


業務効率化のために情報システムの活用を進めていますが、サイバー攻撃や不正アクセス等により、機密情報の漏洩やシステム障害が発生するリスクがあります。これにより、業務停止や社会的信用の毀損、損害賠償などの影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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