中部鋼鈑 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中部鋼鈑 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場。国内唯一の厚板専業電気炉メーカーとして、鉄スクラップを主原料とした厚板鉄鋼製品の製造・販売を主力とします。第101期は新電気炉更新工事や事故による生産休止の影響等により、売上高は510.5億円、経常利益は26.0億円と大幅な減収減益となりました。


※本記事は、中部鋼鈑株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

中部鋼鈑転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. 中部鋼鈑ってどんな会社?

電気炉による厚板製造を主力とし、資源リサイクルを通じた鉄づくりを行う国内唯一の電炉厚板専業メーカーです。

(1) 会社概要

1950年に設立され、1956年に熱田工場へ電気炉を設置し製鋼・圧延一貫体制を確立しました。1961年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、2022年には東京証券取引所プライム市場へ上場しました。2024年10月には製鋼工場の電気炉更新を実施し、生産性向上と環境負荷低減に取り組んでいます。

連結従業員数は522名(単体376名)です。筆頭株主は中部鋼鈑取引先持株会で、第2位は三井物産スチールです。第3位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
中部鋼鈑取引先持株会 9.48%
三井物産スチール 9.39%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.78%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は重松久美男氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
重松 久美男 代表取締役社長 1981年同社入社。生産業務部長、経営企画部長、取締役製造所長、常務取締役を経て、2017年6月より現職。
金子 大剛 常務取締役 1984年合同製鐵入社。同社執行役員船橋製造所長、三星金属工業代表取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
古村 伸治 取締役設備企画室長 1984年同社入社。生産技術部長、取締役製造所長を経て、2023年6月より現職。シーケー物流代表取締役社長を兼任。
松田 将 取締役総務部長 1989年東海銀行入行。三菱東京UFJ銀行支店長、同社財務部長等を経て、2020年6月より現職。
村松 修司 取締役営業部長 1985年三井物産入社。三井物産スチール常務執行役員等を経て、2022年6月より現職。
新美 貴之 取締役製造所長 1988年同社入社。経営企画部長、購買部長、シーケークリーンアド代表取締役社長等を経て、2023年6月より現職。
中尾 聡 取締役経営企画部長 1992年日本興業銀行入行。みずほ銀行資金証券部次長、みずほ証券人事部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、平野隆裕(岡谷鋼機専務取締役)、牛込伸隆(TYK代表取締役社長)、西垣誠(弁護士)、岩田広子(公認会計士)、畑一晃(日鉄物産執行役員)、渡部美由紀(名古屋大学大学院教授)です。

2. 事業内容

同社グループは、「鉄鋼関連事業」「レンタル事業」「物流事業」「エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 鉄鋼関連事業

主原料の鉄スクラップを仕入れ、電気炉による厚板鉄鋼製品の製造、販売をしております。産業機械や建設機械、建築・土木向けの基礎資材として供給されています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に中部鋼鈑および連結子会社のシーケー商事が行っています。

(2) レンタル事業

業務用厨房向グリスフィルターのレンタル事業及び広告看板事業を行っております。

収益は、レンタル料や広告看板の制作・設置等による対価として顧客から受け取ります。運営は連結子会社のシーケークリーンアドが行っています。

(3) 物流事業

運送・荷役事業と危険物倉庫事業を行っております。

収益は、運送・荷役サービスの提供や、危険物倉庫での保管料等として顧客から受け取ります。運営は連結子会社のシーケー物流が行っています。

(4) エンジニアリング事業

鉄鋼関連設備を中心とするプラントの設計・施工及び設備保全に関するエンジニアリング事業を行っております。

収益は、プラント設計・施工や設備保全サービスの対価として顧客から受け取ります。運営は連結子会社の明徳産業が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。特に2025年3月期は大幅な減収減益となりました。利益率は一時16%を超えていましたが、直近期では5%台まで低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 403億円 644億円 763億円 678億円 510億円
経常利益 25億円 55億円 123億円 102億円 26億円
利益率(%) 6.3% 8.6% 16.2% 15.1% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 34億円 81億円 68億円 14億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比で大きく減少しました。売上総利益率および営業利益率も大幅に低下しています。これは、生産休止による販売数量の減少や製造コストの上昇が影響しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 678億円 510億円
売上総利益 157億円 72億円
売上総利益率(%) 23.2% 14.0%
営業利益 104億円 27億円
営業利益率(%) 15.4% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、運賃諸掛が21億円(構成比48%)、役員報酬及び給料手当が11億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益

鉄鋼関連事業は、市況低迷や設備更新・事故による生産休止の影響で大幅な減収減益となりました。一方、レンタル事業とエンジニアリング事業は増収増益となりました。物流事業は売上が横ばいながらコスト増により減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
鉄鋼関連事業 650億円 479億円 100億円 23億円 4.8%
レンタル事業 7億円 7億円 0.6億円 0.8億円 10.9%
物流事業 6億円 6億円 2億円 2億円 30.1%
エンジニアリング事業 15億円 18億円 0.6億円 1億円 5.7%
連結(合計) 678億円 510億円 104億円 27億円 5.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

中部鋼鈑は、自己資金による運転資金の充当を基本とし、設備投資の一部はリース契約で調達しています。

営業活動では、売上債権や棚卸資産の減少が主な収入要因となり、現金及び現金同等物は大幅に増加しました。投資活動では、定期預金の払戻しや有価証券の売却等による収入があったものの、有価証券や設備への投資支出が先行しました。財務活動では、配当金の支払いが主な支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 39億円 215億円
投資CF 3億円 -91億円
財務CF -45億円 -30億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、「資源リサイクル」による鉄づくりを原点として、新たなる社会的価値の創出に挑戦することを存在理念としています。また、トータル・テクノロジーを基盤とし、市場を見つめた経営を実践することを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化

同社は、「人を基本とする経営の実践」を経営理念に掲げています。株主、取引先、従業員、地域社会など同社に関わる全ての人々に受け入れられ、期待される会社となるよう、経営基盤の強化と持続的な成長を目指して企業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標

「24中期経営計画(2024~2026年度)」において、「時価総額1,000億円を目指す」ことを目標に掲げています。あわせて、以下の数値目標を設定しています。
* 鉄鋼製品販売量:80万トン
* 連結経常利益:150億円
* ROE:10%
* 株主還元:DOE 3.5%

(4) 成長戦略と重点施策

「鉄鋼製品80万トンの販売」「脱炭素対応」「持続可能な基盤整備」の3つを基本方針としています。高炉メーカーの設備集約による供給減の代替や脱炭素需要への対応を見据え、新電気炉への更新をはじめとする約120億円規模の戦略投資を計画しています。また、グリーンスチールの開発や人的資本への投資、DX戦略などを推進します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「安全で働きがいのある企業体質の確立」を重要課題とし、人材の多様性確保と育成を重視しています。「自律」「挑戦」「協働」をキーワードとした人材像を掲げ、人事制度の改定や教育研修の充実、エンゲージメント向上に取り組むことで、持続的な成長につなげる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.2歳 18.6年 7,650,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 36.4%
男女賃金差異(全労働者) 64.0%
男女賃金差異(正規) 67.2%
男女賃金差異(非正規) 25.2%


※女性管理職比率については、有価証券報告書に記載がないため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月間平均残業時間(14.8時間)、年次有給休暇取得率(82.4%)、自己都合離職率(2.6%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品市況及び競業

主力事業である国内厚板市場は、高炉メーカーの生産動向や価格政策に大きく影響を受けます。競合他社との価格競争や需要減退により製品市況が下落した場合、同社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の変動

主力製品の主要原材料である鉄スクラップの価格は、国内需給や国際市況の影響を受けて大きく変動します。原材料価格の高騰を製品価格に適切に転嫁できない場合、収益が圧迫され、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 重大な災害、事故、感染症等

主力工場を含む拠点の多くが愛知県名古屋市近郊に集中しています。大規模な自然災害や感染症の流行、重大な事故等が発生し、操業が長期にわたり停止した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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