※本記事は、中部鋼鈑株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 中部鋼鈑ってどんな会社?
電気炉による厚板鉄鋼製品の製造・販売を中核に、物流やエンジニアリングなどを展開しています。
■(1) 会社概要
中部鋼鈑は1950年に鋼板の製造および販売を目的として設立されました。1961年に名古屋証券取引所市場第二部に株式を上場し、その後設備の増強や子会社の設立を経て事業を拡大しました。2022年に東京証券取引所プライム市場に株式を上場し、2024年には製鋼工場の電気炉を更新しています。
現在の従業員数は連結で521名、単体で379名です。筆頭株主は三井物産スチールで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は中部鋼鈑取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井物産スチール | 9.39% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.83% |
| 中部鋼鈑取引先持株会 | 6.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は金子大剛氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 金子大剛 | 代表取締役社長 | 合同製鐵船橋製造所長兼三星金属工業代表取締役社長、中部鋼鈑常務取締役等を経て、2025年より現職。 |
| 重松久美男 | 代表取締役会長 | 中部鋼鈑製造所長、常務取締役、代表取締役社長などを経て、2026年より現職。 |
| 松田将 | 常務取締役総務部長 | 三菱UFJ銀行の各支店長を務めた後、中部鋼鈑財務部担当部長などを経て、2025年より現職。 |
| 村松修司 | 取締役営業部長 | 三井物産スチール常務執行役員などを経て、中部鋼鈑東京営業所長を務め、2022年より現職。 |
| 新美貴之 | 取締役製造所長 | 中部鋼鈑購買部長、シーケークリーンアド代表取締役社長などを経て、2023年より現職。 |
| 中尾聡 | 取締役経営企画部長 | みずほ証券人事部長などを経て、中部鋼鈑経営企画部担当部長を務め、2025年より現職。 |
社外取締役は、平野隆裕(岡谷鋼機専務取締役)、牛込伸隆(TYK代表取締役社長)、西垣誠(入谷法律事務所)、岩田広子(公認会計士岩田広子事務所所長)、渡部美由紀(早稲田大学法学学術院教授)、松本裕子(ヤマモリ上席執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、鉄鋼関連事業、レンタル事業、物流事業およびエンジニアリング事業を展開しています。
■(1) 鉄鋼関連事業
同社とシーケー商事で構成されており、主原料である鉄スクラップを仕入れ、電気炉による厚板鉄鋼製品の製造および販売を行っています。
収益は、製造した鉄鋼製品の販売代金として顧客から受け取ります。事業の運営は、親会社である同社および子会社のシーケー商事が行っています。
■(2) レンタル事業
シーケークリーンアドで構成されており、業務用厨房向グリスフィルターのレンタル事業や、広告看板事業を行っています。
収益は、厨房向グリスフィルターのレンタル料金や広告看板の代金として顧客から受け取ります。事業の運営は、子会社のシーケークリーンアドが行っています。
■(3) 物流事業
シーケー物流で構成されており、運送・荷役事業と危険物倉庫事業を行っています。
収益は、製品の運送や荷役サービスの提供完了時の料金、および危険物倉庫での保管料として顧客から受け取ります。事業の運営は、子会社のシーケー物流が行っています。
■(4) エンジニアリング事業
明徳産業で構成されており、鉄鋼関連設備を中心とするプラントの設計や施工、および設備保全に関するエンジニアリング事業を行っています。
収益は、機械設備の製作やプラントの設計・施工などの契約に基づき、一定の期間にわたり進捗度に応じて顧客から代金を受け取ります。事業の運営は、子会社の明徳産業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第99期をピークに減少傾向にあり、近年は横ばい圏内で推移しています。経常利益や当期純利益についても、第99期から大きく減益となっており、利益率全体が低下傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 644億円 | 763億円 | 678億円 | 510億円 | 511億円 |
| 経常利益 | 55億円 | 123億円 | 102億円 | 26億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 8.6% | 16.2% | 15.1% | 5.1% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 86億円 | 71億円 | 17億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増となりましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。それに伴い、営業利益も大幅な減益となり、利益率全体が低下する結果となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 510億円 | 511億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 58億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.0% | 11.3% |
| 営業利益 | 27億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 1.8% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃諸掛が28億円(構成比58%)、役員報酬及び給料手当が7億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの収益は、主力の鉄鋼関連事業やレンタル事業が増収となりました。他方で、物流事業やエンジニアリング事業は減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鉄鋼関連事業 | 479億円 | 483億円 |
| レンタル事業 | 7億円 | 8億円 |
| 物流事業 | 6億円 | 5億円 |
| エンジニアリング事業 | 18億円 | 15億円 |
| 連結(合計) | 510億円 | 511億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況となっています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.6%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 215億円 | -58億円 |
| 投資CF | -91億円 | 0.1億円 |
| 財務CF | -30億円 | -28億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「「資源リサイクル」による鉄づくりを原点として、新たなる社会的価値の創出に挑戦する」ことを存在理念として掲げています。また、「トータル・テクノロジーを基盤とし、市場を見つめた経営を実践する」ことを経営理念としており、環境保全や循環型社会の構築にも寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「人を基本とする経営の実践」を経営理念に掲げ、従業員一人一人が能力を発揮できる環境整備を重視しています。「自律」「挑戦」「協働」をキーワードとした求める人材像を制定し、組織として目標にチャレンジする文化の定着を図ることで、柔軟かつ強靭な組織の構築に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、24中期経営計画(2024~2026年度)において、「時価総額1,000億円を目指す」という目標を定めています。また、持続的な成長に向けて、各種の主要KPIを設定し、業績の向上と企業基盤の構築を推進しています。
* 鉄鋼製品販売量:80万トン
* ROE:10%
* 連結経常利益:150億円
* 付加価値労働生産性:40百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、中期経営計画において「鉄鋼製品80万トンの販売」「脱炭素対応」「持続可能な基盤整備」の3つの基本方針を推進しています。新電気炉への更新による生産性向上を最大限発揮するための戦略投資や、CO2排出量の削減、人的資本やDX戦略の充実を進め、付加価値の高い分野への参入や受注拡大を図っています。
* 設備投資額(戦略投資):120億円
* 株主還元:DOE 3.5%
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長には人材の多様性確保と育成が不可欠と考え、「安全で働きがいのある企業体質の確立」を重要課題としています。入社形態や年齢にかかわらず多様な人材の適切な処遇や早期登用を可能とする人事制度を導入し、従業員のチャレンジ意欲を高めて活力ある組織風土の定着を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.1歳 | 18.4年 | 7,057,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 59.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 26.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、自己都合離職率(3.4%)、女性採用比率(33.3%)、年次有給休暇取得率(74.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品市況および競業
同社グループの主力である国内厚板市場は、国内高炉メーカーの生産動向や価格政策に大きな影響を受けます。国内需要の減退や競合他社との厳しい価格競争により製品市況が下落した場合、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動
主力製品である厚板の主要原材料は鉄スクラップです。その購入価格は国内需給や世界鉄鋼生産の動向による国際的な市況の影響で大きく変動します。原材料価格の上昇を製品価格へ適切に転嫁できない場合、収益が圧迫される可能性があります。
■(3) エネルギー単価の高騰
厚板の製造には電力およびLNG等のエネルギーを大量に消費します。為替レートや原油価格の変動、政府のエネルギー政策等によりエネルギー単価が高騰した場合、製造コストが上昇し、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 品質保証
同社グループはISO9001に基づく品質マネジメントシステムを運用し、厳格な社内規程を定めて安定的に高品質な鋼板を製造・販売しています。しかし、製品やサービスに品質問題が生じた場合、顧客等への補償や信頼低下による売上減少等により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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