フジ・メディア・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジ・メディア・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するフジ・メディア・ホールディングスは、テレビ・ラジオ放送等のメディア・コンテンツ事業とビル賃貸等の都市開発・観光事業を主力としています。業績トレンドとしては、都市開発事業が好調に推移し増収を確保したものの、テレビ広告収入の減少等により経常損益は赤字に転じています。


※本記事は、フジ・メディア・ホールディングスの有価証券報告書(第85期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジ・メディア・ホールディングスってどんな会社?


メディア・コンテンツ事業と都市開発・観光事業を両輪として展開する総合メディア企業です。

(1) 会社概要


1957年に富士テレビジョンとして設立され、1959年にテレビ本免許を交付され開局しました。1997年に東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。2008年に認定放送持株会社体制へ移行し、現在の社名に変更するとともに会社分割によりフジテレビジョンを設立しました。2012年にはサンケイビルを子会社化し、都市開発事業を強化しています。

同社グループの従業員数は連結で7,373名、単体で122名です。大株主については、筆頭株主は事業会社である東宝で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。多様な事業会社や金融機関が株主として名を連ねており、安定した資本基盤のもとでメディアや都市開発事業を推進しています。

氏名 持株比率
東宝 12.77%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.33%
日本カストディ銀行(信託口) 6.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性4名の計10名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長社長執行役員は清水賢治氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
清水賢治 代表取締役社長社長執行役員 1983年入社。フジテレビジョン総合開発局長、同社取締役、同社常務取締役などを歴任し、2025年6月より現職。
若生伸子 常務取締役常務執行役員社長補佐 1987年入社。フジテレビジョン広報局長、TVer代表取締役社長などを経て、2025年11月より現職。
柳敦史 取締役執行役員財経担当 東燃やプライスウォーターハウスクーパースを経て2008年入社。フジテレビジョン財経局長を務め2025年6月より現職。


社外取締役は、澤田貴司(元ファミリーマート社長)、堀内勉(元森ビル専務取締役)、稲田雅彦(エミウム代表取締役)、森山進(椙山女学園大学特命教授・指名報酬委員長)、花田さおり(渥美坂井法律事務所パートナー)、石戸奈々子(慶應義塾大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア・コンテンツ事業」「都市開発・観光事業」および「その他」事業を展開しています。

メディア・コンテンツ事業


同セグメントでは、テレビやラジオの基幹放送をはじめ、番組や映画・アニメ・イベント等の制作、映像・音楽ソフトの販売、通信販売、広告などを幅広く手掛けています。視聴者や広告主を主要な顧客とし、良質なコンテンツを通じて多様な情報とエンターテインメントを提供しています。

収益は、テレビ・ラジオ等における広告主からの広告収入のほか、各種コンテンツの販売や配信課金、通信販売事業における一般消費者からの商品代金から得ています。運営はフジテレビジョンやニッポン放送、ポニーキャニオン、dinos、クオラスなど、多数の専門特化した子会社が担っています。

都市開発・観光事業


同セグメントでは、オフィスビルなどのビル賃貸、分譲マンションや投資家向け不動産商品の開発・販売といった都市開発事業のほか、ホテルや水族館等のリゾート施設の運営を展開しています。法人テナントや不動産投資家、観光客や一般利用者を主要な顧客としています。

収益は、法人からのビル賃料や不動産の販売代金、一般消費者からのホテル宿泊料や施設利用料などから得ています。事業の運営は、不動産開発・賃貸を担うサンケイビルを中心に、ホテル・リゾート運営を行うグランビスタホテル&リゾートなどの子会社が手掛けています。

その他事業


同セグメントでは、人材派遣や動産リース、ソフトウェア開発など、グループ内外のビジネスを支援する多様なサービスを提供しています。主に法人顧客を対象に、業務の効率化やITシステムの構築を支援しています。

収益は、顧客からのリース料やソフトウェア開発の受託費用、人材派遣に係る手数料などから得ています。運営は、動産リースや商品販売を行うニッポン放送プロジェクト、ソフトウェア開発を担うフジ・ネクステラ・ラボなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の連結業績を見ると、売上高は5,200億円台から5,600億円台の範囲で安定して推移していますが、経常利益については減少傾向にあり、直近では赤字に転落しています。利益率も低下が続いており、中核事業における収益性の改善が急務となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5251億円 5356億円 5664億円 5508億円 5519億円
経常利益 455億円 391億円 392億円 252億円 -28億円
利益率(%) 8.7% 7.3% 6.9% 4.6% -0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 106億円 314億円 263億円 19億円 397億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と同水準を維持していますが、売上原価の上昇等により売上総利益が約340億円減少し、利益率も大きく低下しました。販売費及び一般管理費は削減されたものの、売上総利益の減少を吸収できず、営業利益は赤字に転じています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5508億円 5519億円
売上総利益 1392億円 1050億円
売上総利益率(%) 25.3% 19.0%
営業利益 183億円 -88億円
営業利益率(%) 3.3% -1.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が316億円(構成比28%)、代理店手数料が244億円(同21%)、宣伝広告費が141億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のメディア・コンテンツ事業は、テレビ広告収入の減少やアニメ関連の構造改革に伴う評価損の計上などにより、減収および大幅な営業赤字となりました。一方、都市開発・観光事業は、不動産売却やインバウンド需要を取り込んだホテル運営が好調で増収増益を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
メディア・コンテンツ事業 4035億円 3499億円 -41億円 -308億円 -8.8%
都市開発・観光事業 1404億円 1929億円 245億円 252億円 13.1%
その他事業 69億円 91億円 9億円 14億円 15.4%
調整額 -147億円 -192億円 -30億円 -45億円 -
連結(合計) 5508億円 5519億円 183億円 -88億円 -1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業赤字を資産売却+借入で補填する救済型となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 584億円 -3億円
投資CF -375億円 1億円
財務CF 25億円 56億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.3%で市場平均(プライム市場・非製造業平均24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「好きでつながる明日をともに」を経営ビジョンに掲げています。お客様のコンテンツへの興味や共感から生まれる「好き」を起点として、人と人とが安心してつながる未来を生み出すことを目指し、放送の公共性を重んじて社会的責任を全うすることを基本理念としています。

(2) 企業文化


同社は「信頼性」「クリエイティビティ」「共創・共生」の3つの価値観を指針としています。人権尊重を経営の最優先課題と位置づけ、グループ全体でのコンプライアンス意識の徹底やハラスメントを許さない職場環境の整備に努め、ステークホルダーから信頼される企業体を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的成長の実現に向けた「改革アクションプラン」に基づき、自己資本の適正規模への見直しや成長投資の拡大を進めています。中長期的な目標として、以下の数値を掲げています。
・2030年度の営業利益:660億円(2025年度比)
・2030年度のROE:6%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、従来の放送を中心としたビジネスモデルから転換し、コンテンツIPを起点とした「一気通貫モデル」による価値最大化を目指しています。AI技術を活用したオリジナルIPの開発、多様な市場での映像制作、グッズやライブエンタテインメント等の多角展開を重点的に強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、コンテンツ戦略と一体となった人的資本経営を推進しています。IP創出から展開までを一気通貫で推進できる人材基盤を競争力の源泉と位置付け、中核人材の獲得・育成に150億円規模の投資を行う方針です。また、多様な働き方に対応した環境整備や健康経営にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 50.5歳 23.3年 15,770,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.7%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 80.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 77.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人権・コンプライアンスに関するリスク


同社グループは人権尊重とコンプライアンス確保を最重要課題としていますが、重大な人権侵害や法令違反等が発生した場合、社会的信用が毀損され、広告主等からの信頼を失うことで業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。人権デューデリジェンスの実施や通報窓口の運用によりリスク低減に努めています。

(2) メディア・コンテンツ事業を取り巻く競争環境


インターネットでの動画・音楽配信の拡大により、生活者のコンテンツへの接触方法が多様化しています。既存メディアへの接触時間が減少し媒体価値が低下した場合、広告収入の減少を通じて業績に負の影響が生じる可能性があります。コンテンツIPの開発や配信ビジネスへの経営資源集中により競争力強化を図ります。

(3) 都市開発・観光事業に関するリスク


都市開発事業は景気動向の影響を受けやすく、不動産市況の悪化による空室の発生や賃料・販売価格の下落がリスクとなります。また、観光事業においてもインバウンドを含む旅行需要の減少が業績に影響を及ぼす可能性があります。資産の開発・売却やREITの活用等により保有資産リスクの分散化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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