フジ・メディア・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジ・メディア・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、フジテレビなどを傘下に持つ認定放送持株会社です。メディア・コンテンツ事業と都市開発・観光事業を両輪として展開しています。当期は都市開発・観光事業が増収増益となったものの、メディア・コンテンツ事業における広告収入の減少や減損損失の計上などが響き、全体では減収減益となりました。


※本記事は、株式会社フジ・メディア・ホールディングス の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジ・メディア・ホールディングスってどんな会社?


放送事業を核に、都市開発や観光などの多角的な事業を展開する認定放送持株会社です。

(1) 会社概要


1957年に富士テレビジョンとして設立され、1959年に開局しました。2008年に認定放送持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。事業多角化の一環として2012年にサンケイビルを完全子会社化し、都市開発事業を強化しました。また、2016年には仙台放送を連結子会社化するなど、グループの再編と拡大を進めています。

同グループは連結従業員数7,302名、単体43名の体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は映画・演劇事業等を営む東宝、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。メディアと不動産・観光を融合させた事業ポートフォリオを構築し、安定的な収益基盤の確保を目指しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.40%
東宝 8.83%
日本カストディ銀行(信託口) 7.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性5名の計11名で構成され、女性役員比率は45.5%です。代表取締役社長社長執行役員は清水賢治氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
清水 賢治 代表取締役社長社長執行役員 1983年入社。フジテレビジョン総合開発局長、同社常務取締役などを歴任し、2025年6月より現職。
若生 伸子 常務取締役 1987年入社。フジテレビジョン広報局長、TVer代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。
安田 美智代 取締役 1992年入社。フジテレビジョン経営企画局局次長、同社グループ経営推進担当局長などを経て、2025年6月より現職。
柳 敦史 取締役執行役員 1993年東燃入社。プライスウォーターハウスクーパース税務事務所を経て2008年入社。財経局長などを務め、2025年6月より現職。
稲田 雅彦 取締役 2009年博報堂入社。カブク代表取締役、DNX Venturesなどを経て、2020年エミウム代表取締役就任。2025年6月より現職。
柳沢 恵子 取締役(常勤監査等委員) 1987年入社。フジテレビジョン経営企画局長、人事局長職などを歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、澤田貴司(元ファミリーマート社長)、堀内勉(元森ビル専務取締役CFO)、森山進(元PwCパートナー)、花田さおり(弁護士)、石戸奈々子(慶應義塾大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア・コンテンツ事業」「都市開発・観光事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) メディア・コンテンツ事業


テレビ・ラジオ放送、番組制作、映像・音楽ソフトの販売、広告、出版、通信販売などを手掛けています。地上波テレビ放送やBS・CS放送に加え、配信事業やイベント、映画・アニメなどのコンテンツビジネスも展開しており、幅広いメディア機能を擁しています。

収益源は、広告主からの広告収入、視聴者からの受信料、コンテンツ販売収入、イベント入場料、通販事業における商品売上など多岐にわたります。運営は、フジテレビジョン、ニッポン放送、ポニーキャニオン、DINOS CORPORATIONなどが担当しています。

(2) 都市開発・観光事業


オフィスビルや商業施設の賃貸、不動産開発・取引、ホテルやリゾート施設の運営を行っています。保有資産の有効活用と新規開発により、安定的な収益基盤の役割を果たしています。

収益源は、テナントからの賃料収入、不動産販売による売却益、ホテルやリゾート施設の宿泊料・利用料などです。運営は主にサンケイビル、グランビスタホテル&リゾートが行っています。

(3) その他事業


上記セグメントに含まれない事業として、動産リース、ソフトウェア開発、人材派遣などを展開しています。

収益源は、リース料収入、システム開発受託費、人材派遣料などです。運営は、ニッポン放送プロジェクト、フジミックなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は一定の規模を維持していますが、利益面では変動が見られます。特に当期においては、売上高が減少するとともに、利益率も低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,199億円 5,251億円 5,356億円 5,664億円 5,508億円
経常利益 223億円 455億円 391億円 392億円 252億円
利益率(%) 4.3% 8.7% 7.3% 6.9% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 291億円 106億円 314億円 263億円 19億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高が減少する中で売上原価は増加しており、売上総利益および売上総利益率が低下しています。また、販売費及び一般管理費は減少していますが、売上総利益の減少を補うには至らず、営業利益は大きく減少しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,664億円 5,508億円
売上総利益 1,597億円 1,392億円
売上総利益率(%) 28.2% 25.3%
営業利益 335億円 183億円
営業利益率(%) 5.9% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が325億円(構成比27%)、代理店手数料が311億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


メディア・コンテンツ事業は減収となり、利益面でも苦戦を強いられました。一方、都市開発・観光事業は増収となり、利益も大きく伸長しました。その他事業は微増収微減益で推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
メディア・コンテンツ事業 4,331億円 4,035億円 157億円 -41億円 -1.0%
都市開発・観光事業 1,271億円 1,404億円 195億円 245億円 17.4%
その他事業 62億円 69億円 9億円 9億円 12.8%
調整額 - - -27億円 -30億円 -
連結(合計) 5,664億円 5,508億円 335億円 183億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスであるため、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」に該当します。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 478億円 584億円
投資CF -1,065億円 -375億円
財務CF 252億円 25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、放送の公共的使命と社会的責任を認識し、メディア・コンテンツ、都市開発・観光などの事業を通じて、人々の豊かな生活に貢献することを経営の基本方針としています。また、グループビジョンとして「挑戦と創造」を掲げ、多様な価値の提供を目指しています。

(2) 企業文化


人権尊重を経営の中心に置く企業文化の構築を目指しています。コンプライアンス事案を受けた抜本的な改革を進め、人権・コンプライアンス意識の向上やガバナンスの強化に取り組んでいます。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、挑戦を推奨する風土の醸成にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


「中期グループビジョン」に代わる新たな経営指針として「改革アクションプラン」を策定しています。人権尊重を最優先としつつ、意識改革やガバナンス改革に取り組み、中長期的な企業価値向上を目指しています。

* ROE:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


メディア・コンテンツ事業では、コンテンツやIPを基軸とした「コンテンツ・カンパニー」への進化を目指し、配信や海外展開、新たなビジネス領域への投資を強化します。都市開発・観光事業では、インバウンド需要の取り込みや多様なアセットへの投資により成長を加速させます。また、政策保有株式の縮減や自己株式取得など、資本効率の改善にも取り組みます。

* 成長投資:5年間で2,500億円規模
* 政策保有株式売却:2027年度末までに1,000億円超
* 自己株式取得:2029年度までに1,000億円超

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の価値を最大限に引き出す人的資本経営を推進しています。人権デューデリジェンスの実施や職場環境の整備に加え、多様な人材の活躍促進、ビジネスマインドを持つ人材の育成・獲得を進めています。また、従業員のエンゲージメント向上や健康経営の推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.6歳 19.1年 16,600,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.8%
男性育児休業取得率 54.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.5%
男女賃金差異(正規) 79.1%
男女賃金差異(非正規) 59.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人権・コンプライアンスに関するリスク


事業活動において人権侵害や法令違反、倫理逸脱行為が発生した場合、社会的信用が毀損され、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。実際に子会社での事案が発生し、広告収入減少などの影響が生じました。これに対し、グループ人権委員会の設置やデューデリジェンスの実施など、体制強化を進めています。

(2) メディア・コンテンツ事業に関するリスク


放送事業は広告収入に依存しており、景気変動や視聴率低下の影響を受けやすい構造です。また、動画配信サービスの台頭などによる競争激化や、著作権などの知的財産権に関するトラブルもリスク要因です。これらに対し、コンテンツ・カンパニーへの進化や配信事業の強化、権利処理の徹底などで対応しています。

(3) 都市開発・観光事業に関するリスク


景気動向や不動産市況の影響を受けやすく、空室発生や賃料下落、不動産価格の下落が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、インバウンド需要の減少や国際情勢の変化も観光事業のリスクとなります。保有資産の見直しやリスク分散、長期的な視点での投資により、リスクコントロールを図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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