※本記事は、株式会社KVK の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. KVKってどんな会社?
KVKは、キッチンやバスルームなどで使用される給水栓(蛇口)や給排水金具を主力とする専門メーカーです。
■(1) 会社概要
1949年に給水栓の製造販売を目的として北村バルブを設立し、1989年には中国・大連に子会社を設立しました。1992年に現在のKVKへ商号変更し、翌1993年に店頭登録(現スタンダード市場)を果たしました。その後、2016年にフィリピン子会社を設立するなど、生産体制のグローバル化を進めています。
同グループの従業員数は連結1,022名、単体625名です。筆頭株主は資産管理業務を行う有限会社北村興産で、第2位は取引先持株会、第3位は事業会社である地方銀行が名を連ねています。安定した株主構成のもと、堅実な経営体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社北村興産 | 14.41% |
| KVK取引先持株会 | 7.40% |
| 十六銀行 | 4.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は末松正幸氏が務めています。社外取締役比率は約18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 末松 正 幸 | 取締役社長(代表取締役) | 1988年入社。経営管理本部長、常務取締役を経て2009年より社長。2011年より大連北村閥門有限公司董事長を兼任し現職。 |
| 北 川 喜 一 | 取締役経営管理本部長兼情報システム部長 | 1985年入社。総務部長、執行役員経営管理副本部長を経て、2024年5月より現職。 |
| 竹 中 智 | 取締役海外事業室担当 | 1984年入社。海外事業室長、大連北村閥門有限公司出向総経理などを経て2023年4月より現職。 |
| 須 藤 崇 宏 | 取締役研究開発本部長品質保証室担当 | 1995年入社。開発部長、本社工場製造二部長などを経て2024年4月より現職。 |
| 坪 内 康 | 取締役営業本部長兼営業推進部長 | 1990年入社。東北支社長、関東支社長、営業副本部長などを経て2024年6月より現職。 |
| 加 藤 浩 二 | 取締役生産本部長兼本社工場長兼KPS推進室長 | 1992年喜多村合金製作所入社、2008年同社入社。生産管理部長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、奥田真之(愛知産業大学経営学部総合経営学科教授)、山田晋也(山田公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」および「中国」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
給水栓(蛇口)、給排水金具、継手および配管部材の製造・加工・仕入れおよび販売を行っています。国内の住宅設備機器メーカーや管材商社などを主な顧客とし、新設住宅やリフォーム需要に対応した製品を提供しています。
収益は、顧客への製品販売による対価として得ています。運営は主にKVKが行っています。同社が開発から製造、販売、アフターサービスまでを一貫して手掛ける体制を構築しており、市場ニーズに合わせた製品供給を行っています。
■(2) 中国
給水栓のうち、主に単独水栓の製造および販売を行っています。製造した製品の大部分は同社へ供給されるほか、一部は中国国内でも販売されています。また、同社から購入した製品の中国国内販売も行っています。
収益は、製品の販売代金となります。運営は子会社である大連北村閥門有限公司が行っています。日本への部品・製品供給拠点としての役割に加え、中国国内市場への販売も担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は250億円台から290億円台へと拡大傾向にあります。経常利益も20億円台半ばから後半で安定的に推移しており、直近では30億円を超えています。利益率は8%〜10%台を維持しており、堅実な収益性を確保しています。当期純利益も安定して黒字を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 254億円 | 280億円 | 297億円 | 298億円 | 296億円 |
| 経常利益 | 31.2億円 | 24.4億円 | 26.2億円 | 28.7億円 | 30.7億円 |
| 利益率(%) | 12.3% | 8.7% | 8.8% | 9.6% | 10.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 22.5億円 | 16.6億円 | 17.1億円 | 20.5億円 | 20.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高はほぼ横ばいで推移していますが、売上総利益および営業利益は増加しています。原材料価格や物価上昇の影響がある中で、採算性を重視した販売品目の見直しにより粗利率が改善し、営業利益率は上昇傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 298億円 | 296億円 |
| 売上総利益 | 75億円 | 76億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.0% | 25.7% |
| 営業利益 | 25億円 | 27億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が15億円(構成比31%)、運送費及び保管費が5億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは微減収となりましたが、主力市場として売上の大半を占めています。中国セグメントもグループ間売上の減少に伴い減収となりました。全体としては新設住宅着工戸数の減少などの影響を受け、わずかに減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 293億円 | 292億円 |
| 中国 | 5億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 298億円 | 296億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動により潤沢な資金を生み出しており、これは主に事業活動から得られる利益によるものです。投資活動では、有価証券の売却益があった一方で、新たな有価証券の取得や固定資産・無形固定資産への投資も行われました。財務活動では、配当金の支払いなどにより資金が支出されました。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.2億円 | 35.7億円 |
| 投資CF | -31.6億円 | -2.4億円 |
| 財務CF | -4.3億円 | -6.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「常に使う人の身になって考えた誰にでも“もっと使いやすく、もっと心地いい”水まわり商品を通して、環境にやさしい、快適な水まわりを提案し、人々の生活を豊かにする。」という基本理念を掲げています。この理念のもと、ステークホルダーからの信頼と期待に応え、企業価値の向上に努めています。
■(2) 企業文化
「協力と発展」を経営理念に掲げ、「事業は人なり」の信念のもと「人間尊重」を基本としています。また、「良品と均質」の実現を目指し、KPS(KVK Production System)活動を通じて知識・能力の向上と多能工化を図るなど、現場の改善活動を重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値の増大と株主利益の向上につながる重要な指標として、ROE(自己資本利益率)を重視しています。また、売上高および営業利益も経営成績における重要な指標と位置づけています。
* ROE:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「KVK Innovation」に基づき、販売、生産、サステナビリティの3つの視点から基盤強化を進めています。販売面では市場ニーズに合った中高級品の販路拡充や海外市場の拡大を図り、生産面ではDX推進による生産性向上や高効率な生産体制の構築を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「事業は人なり」の信念のもと、持続的な企業価値向上と社会貢献ができる人財の育成に取り組んでいます。自律的なキャリア形成や自己研鑽を支援するとともに、DX人材の育成や多様な人材の確保を進めています。また、ワークライフ・バランスの向上や健康推進に向けた環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.8歳 | 14.6年 | 5,209,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 36.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 72.1% |
※女性管理職比率については、女性活躍推進法の規定による公表をしていないため、記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用人員の女性比率(42.6%)、平均勤続年数(男性15.5年、女性12.6年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サプライチェーンリスク
アジア地域のサプライヤーから部品を調達しているため、地政学的リスク等により部品供給が遅延し、生産に影響が出る可能性があります。BCP対策としてバックアップ体制の見直しや調達先の複数確保を進めていますが、長期的な供給困難や経済停滞による売上減少が発生した場合、業績が悪化する可能性があります。
■(2) 経済動向による影響
売上の大部分が国内需要に依存しており、新設住宅着工戸数やリフォーム需要の動向に大きく影響を受けます。少子高齢化による市場縮小や、法規制の変更、金利動向などにより需要が大きく変動した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料価格の高騰
製品の主要材料である銅合金などの原材料価格が高騰した場合、製造コストが上昇します。一貫生産体制によるコストダウンや価格転嫁を進めていますが、急激な価格変動や需給環境の変化によりコスト吸収が困難となった場合、業績が悪化する可能性があります。
■(4) 製品の不良
水栓金具という製品の特性上、水漏れ等の不良が発生した場合、家屋や家財に損害を与えるリスクがあります。大規模なリコールや損害賠償が発生した場合、費用負担や信用低下により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、品質マネジメントシステムの運用や保険加入等の対策を講じています。



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