KVK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KVK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KVKは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、主に給水栓や給排水金具などの製造・販売を手掛ける水栓金具の専門メーカーです。直近の業績は、売上高が前期比で増加して過去最高を更新し、営業利益や経常利益も増加するなど増収増益のトレンドにあります。国内需要に応え安定した収益基盤を維持しています。


※本記事は、株式会社KVKの有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KVKってどんな会社?


給水栓や給排水金具などの水回り製品を製造販売し、国内市場で確固たる地位を築く水栓金具専業メーカーです。

(1) 会社概要


1949年に給水栓の製造販売を目的として設立され、その後、各地方に支社や工場を設置し事業を拡大しました。1989年には中国大連に子会社を設立し、海外展開も開始しました。1993年に株式を店頭登録し、現在はスタンダード市場に上場しています。2016年にはフィリピンにも子会社を設立し、海外拠点を拡充しています。

同社グループの従業員数は連結で1,022名、単体で620名となっています。筆頭株主は北村興産で、第2位はKVK取引先持株会、第3位は十六銀行です。

氏名 持株比率
北村興産 14.41%
KVK取引先持株会 7.84%
十六銀行 3.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は末松正幸氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
末松正幸 取締役社長(代表取締役) 1988年同社入社。経営管理本部長などを経て、2009年より現職。
北川喜一 取締役経営管理本部長兼情報システム部長 1985年同社入社。総務部長や経営管理副本部長を経て、2024年より現職。
須藤崇宏 取締役海外事業室担当 1995年同社入社。研究開発本部長等を経て、2026年より現職。
坪内康 取締役営業本部長 1990年同社入社。各支社長や営業推進部長を経て、2025年より現職。
加藤浩二 取締役生産本部長兼本社工場長 1992年喜多村合金製作所入社後、2008年同社入社。生産管理部長等を経て、2025年より現職。
山田康司 取締役研究開発本部長品質保証室担当 1988年喜多村合金製作所入社後、2008年同社入社。関西支社長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、奥田真之(十六銀行出身・愛知産業大学教授)、山田晋也(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、日本および中国、フィリピンの各報告セグメントにおいて事業を展開しています。

(1) 日本


同社は、国内において主に給水栓、給排水金具、継手および配管部材の製造、加工、仕入れ、ならびに販売を行っています。多様な顧客ニーズに応えるため、リフォーム用や節水型の水栓金具など、付加価値の高い水回り製品を幅広く提供しています。

収益は、取引先への製品販売によって得ています。製造工程における部品の組み立てや加工から、販売代理店を通じたエンドユーザーへの流通までを一貫して担っており、運営はKVKが中心となって行っています。

(2) 中国


中国では、給水栓のうち主に単独水栓の製造を行っています。製造した製品は大部分を日本のKVKへ供給するとともに、一部を中国国内の市場でも販売しています。また、日本から購入した製品の中国国内での販売も手掛けています。

収益は、日本本社への製品供給および中国国内における製品販売から得ています。組み立てに必要な部品の一部は日本からの供給や現地での調達により賄っており、運営は大連北村閥門が行っています。

(3) フィリピン


フィリピンでは、主に日本から調達した部品を用いた給水栓の組み付け加工を行っています。フィリピン拠点は製造に特化しており、完成した部品はすべて日本のKVKへ供給される仕組みとなっています。

収益モデルは、日本への部品供給に伴うグループ間取引によるものです。外部顧客への直接販売は行っておらず、同社の安定したサプライチェーンを支える生産拠点としての役割を担い、運営はKVK PHILIPPINESが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は安定して推移しており、直近では300億円を突破して増収となっています。経常利益も原材料価格の高騰等の影響を受けつつも堅調に推移しており、直近の利益率は10.0%付近を維持するなど、安定した収益力を保っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 280億円 297億円 298億円 296億円 309億円
経常利益 24億円 26億円 29億円 31億円 31億円
利益率(%) 8.7% 8.8% 9.6% 10.4% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 17億円 21億円 20億円 23億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回っています。売上総利益率は25%台を維持しており、営業利益率も安定した水準で推移するなど、適切なコスト管理により着実に利益を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 296億円 309億円
売上総利益 76億円 78億円
売上総利益率(%) 25.7% 25.1%
営業利益 27億円 27億円
営業利益率(%) 9.0% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比32%)、運送費及び保管費が5.2億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の日本セグメントが増収増益となり、全体の業績を牽引しています。一方、中国セグメントはグループ間取引の増加で増収となったものの、原価上昇などの影響により利益は減少しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 292億円 304億円 30億円 31億円 10.2%
中国 5億円 5億円 4億円 2億円 51.1%
フィリピン - - 0.1億円 0.1億円 -
連結(合計) 296億円 309億円 27億円 27億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 36億円 3.1億円
投資CF -2.4億円 -18.4億円
財務CF -6.1億円 -6.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も84.8%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「常に使う人の身になって考えた誰にでも“もっと使いやすく、もっと心地いい”水まわり商品を通して、環境にやさしい、快適な水まわりを提案し、人々の生活を豊かにする。」という基本理念を掲げています。多様化する市場ニーズの中で顧客満足度の向上を目指し、企業価値を高めることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念に「協力と発展」を掲げ、「事業は人なり」という信念のもと「人間尊重」を基本とした企業文化を大切にしています。持続的な企業価値の向上と社会へ貢献できる人材の育成に取り組み、社員一人ひとりが自発的に学び、自己成長を追求できる組織風土の醸成を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営効率を高め安定した収益を確保することが企業価値の増大につながると考え、ROE(自己資本利益率)を重要な指標として位置付けています。外部環境の変化にあっても持続的な成長を実現するため、具体的な目標としてROE10%の達成を目指して経営を推進しています。

* ROE:10%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画において、「営業力・商品力の進化」「生産力の進化」「サステナビリティ視点での経営基盤の強化」を重点戦略に掲げています。国内売上基盤の維持や海外市場の拡大、高効率な生産体制の追求を進めるとともに、環境に配慮した製品開発や人的資本経営の推進により、持続可能な事業展開を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な企業価値向上の源泉である「人財」の育成と活用を最重要課題と位置付けています。「事業は人なり」の信念のもと、社員が自ら学び行動できる組織づくりを進めています。また、多様な人材の確保やDX推進を通じた生産性向上を目指し、公平な評価と多様な働き方が選択できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.9歳 14.6年 5,368,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.8%
男女賃金差異(正規雇用) 71.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の割合(約4割)、新卒採用における女性比率(33.3%)、中途採用における女性比率(52.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サプライチェーンの寸断リスク


同社グループは、アジア地域のサプライヤーから部品を調達しています。地政学的な問題等により部品の供給遅延や調達困難が生じた場合、本社工場の生産調整や停止につながり、安定供給の維持や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として国内外の調達先を複数確保し、リスク分散に努めています。

(2) 国内住宅需要と経済動向の変動


営業収入の大部分を国内市場に依存しているため、少子高齢化や世帯数減少に伴う新設住宅着工戸数の減少がリスクとなります。また、住宅政策の転換や金利上昇、物価高による住宅取得マインドの低下など、住宅市場の動向が同社グループの経営成績や財政状態に直接的な影響を与える可能性があります。

(3) 原材料価格の高騰と調達リスク


水栓の本体部分に用いる銅合金などの原材料は、国際的な需要動向や地政学リスク、為替変動等により価格が高騰する可能性があります。製造コストの上昇を販売価格に十分に転嫁できない場合、利益率が低下し、経営成績に悪影響を及ぼす恐れがあります。徹底した生産効率の向上によりコスト吸収を図っています。

(4) 製品の品質保証とリコールリスク


水漏れなどを引き起こす製品不良が発生した場合、顧客の家屋や家財に損害を与え、多額の損害賠償やリコール費用が発生するリスクがあります。さらに、ブランドの信用低下による販売不振を招く恐れもあります。品質マネジメントシステムを運用し、万全な品質管理体制の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。