トーカロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーカロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するトーカロは、溶射加工を中心とする表面改質加工の専業メーカーです。半導体製造装置部品等に多様な機能を付与する技術に強みを持ちます。直近の業績は、半導体分野の需要拡大や海外子会社の好調に支えられ、売上高、経常利益ともに増収増益と堅調に推移しています。


※本記事は、トーカロ株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーカロってどんな会社?


溶射加工を中心に表面改質加工事業を展開し、半導体や産業機械向け部品の高機能化に貢献する専業メーカーです。

(1) 会社概要


同社の実質的な前身は1951年設立の企業に遡ります。2001年にマネジメント・バイアウト(MBO)の一環で吸収合併を行い、現在のトーカロに商号変更しました。2003年に東証二部、2005年に東証一部へ上場し、2005年の中国子会社設立をはじめ、直近の2025年には米国に子会社を設立するなどグローバル展開を加速しています。

現在、同社グループは連結で1,573名、単体で980名の従業員を擁しています。大株主については、筆頭株主および第2位はともに資産管理業務などを行う国内の信託銀行であり、第3位には海外ファンドの資産管理を行う金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 17.76%
日本カストディ銀行 11.29%
BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND 4.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長執行役員は小林和也氏です。社外取締役は4名です。

氏名 役職 主な経歴
小林和也 代表取締役社長執行役員 1989年同社入社。北九州工場長、明石工場長、製造本部長などを歴任。2023年より現職。
吉積隆幸 代表取締役専務執行役員 1984年同社入社。東京工場長、営業本部長、海外子会社董事長などを歴任。2025年より現職。
後藤浩志 取締役専務執行役員管理本部長 1984年東海銀行入行。不二越を経て2016年同社入社。経理部長や経営企画室長などを歴任し、2025年より現職。
水津竜夫 取締役常務執行役員開発本部長 1987年同社入社。溶射技術開発研究所長、東京工場長などを歴任し、工学博士号取得。2026年より現職。
髙畠剛 取締役常務執行役員製造本部長 1994年同社入社。明石工場技術部長、明石工場長、製造本部長などを歴任。2025年より現職。


社外取締役は、鎌倉利光(弁護士)、瀧原圭子(大阪大学名誉教授)、佐藤陽子(公認会計士)、冨田和之(元パナソニックエコテクノロジーセンター社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「溶射加工(単体)」「国内子会社」「海外子会社」および「その他」事業を展開しています。

(1) 溶射加工(単体)


半導体・FPD製造装置部品、発電用ガスタービン、産業用機械部品などに対し、金属やセラミックスを吹き付けて皮膜を形成し、耐摩耗性や耐熱性等の機能を付与する表面改質加工を提供しています。多種多様な用途を持つ企業が顧客です。

顧客から加工依頼を受けた部品に対して溶射加工を行い、その加工対価として収益を得るモデルです。運営はトーカロが行っています。

(2) 国内子会社


切削工具や刃物、自動車用金型などへのPVD(物理蒸着)処理加工のほか、工作機械や精密機械部品の製造・加工を提供しています。

顧客から被加工品を預かり、密着力の高い硬質セラミック薄膜を形成するなどの加工サービス等を提供して対価を得る収益モデルです。運営は日本コーティングセンターおよび寺田工作所が行っています。

(3) 海外子会社


中国、台湾、米国などの市場において、半導体・FPD製造装置部品のメンテナンス事業のほか、鉄鋼分野等に向けた溶射や洗浄等の表面改質加工を提供しています。

有力なエンドユーザーを有する海外現地でのサービス体制を活かし、加工やメンテナンスの対価として収益を得ています。運営は東華隆(広州)表面改質技術有限公司やTOCALO USAなどの海外子会社が担っています。

(4) その他


溶融塩浴中に浸して炭化物皮膜を形成するTD処理加工、複合セラミックス皮膜を形成するZACコーティング加工、PTA処理加工などの周辺分野の表面改質加工を行っています。

自動車用金型やポンプ部品、繊維機械部品など、高度な信頼性が要求される部品の加工対価を収益源としています。運営は主にトーカロが担うほか、インドネシア等の非連結子会社も含まれます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が着実に成長しています。経常利益も100億円台を安定して維持し、直近では147億円へと伸長しています。利益率も20%以上の高水準を保っており、収益性の高さがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 438億円 481億円 467億円 542億円 585億円
経常利益 106億円 110億円 97億円 126億円 147億円
利益率(%) 24.1% 22.9% 20.7% 23.2% 25.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 63億円 69億円 59億円 64億円 78億円

(2) 損益計算書


売上総利益は202億円から226億円へと増加し、利益率も37.3%から38.6%に上昇しています。営業利益も123億円から141億円へと増加しており、安定した本業の稼ぐ力を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 542億円 585億円
売上総利益 202億円 226億円
売上総利益率(%) 37.3% 38.6%
営業利益 123億円 141億円
営業利益率(%) 22.6% 24.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が23億円(構成比28%)、研究開発費が11億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


溶射加工(単体)が売上の約7割を占める主力事業であり、半導体関連の旺盛な需要で増収となっています。また、海外子会社も前年比で大幅な増収増益を達成し、全体の成長を力強く牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
溶射加工(単体) 392億円 407億円 89億円 88億円 21.6%
国内子会社 27億円 29億円 3億円 3億円 11.5%
海外子会社 93億円 123億円 33億円 49億円 40.2%
その他 29億円 25億円 4億円 3億円 11.4%
調整額 2億円 2億円 -4億円 4億円 244.4%
連結(合計) 542億円 585億円 126億円 147億円 25.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業であると判定できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 91億円 77億円
投資CF -62億円 -100億円
財務CF -51億円 -12億円


企業の収益力を測るROEは15.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「技術とアイデア」「若さと情熱」「和と信頼」「グッド・サービス」を社是に掲げています。あらゆるステークホルダーとの信頼関係を基礎とし、表面処理皮膜が持つ省資源化や環境負荷の低減等の機能を通じて社会に貢献し、「高技術・高収益体質の、内容の充実した企業グループ」を実現することを基本理念としています。

(2) 企業文化


「問題解決型企業」「研究開発主導型企業」を目指す企業文化が根付いています。好不況に関係なく収益を確保できる「全天候型経営」を掲げるほか、「安全は全てに優先する」の徹底や、独自の技術の深化、ステークホルダーとの信頼関係強化を通じた価値あるサービスの提供を重視する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「TOCALO2030」において、持続的な成長に向けた財務関連指標を定めています。現行事業の拡大や事業構造の変革を進め、具体的な数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:900億円
* 経常利益:200億円(経常利益率22.0%)
* ROE(自己資本利益率):15.0%
* 配当性向:50%程度

(4) 成長戦略と重点施策


連結売上高900億円達成に向けて、「コア事業の深化」「戦略的事業領域の拡大」「持続的成長を支える経営基盤の強化」の3本柱を成長戦略として掲げています。半導体やFPD分野の飛躍、一般産業分野での環境・エネルギーなどの量産品の取り込みを推進するとともに、グローバル市場への展開やDXを活用したスマートファクトリー化を進めています。

* 成長投資:400〜600億円
* 株主還元:自己株式取得含め250〜350億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「やる気」「チャレンジ意欲」の醸成と従業員満足度の向上を重視しています。求める人材像として「今よりもっと」を考えて取り組む人材を定義し、各種社内研修やグローバルチャレンジ制度等の成長機会を提供しています。また、多様な人材が個性と能力を発揮し、仕事と生活の調和を図りながら健康的に働ける環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.6歳 13.0年 7,978,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 103.6%
男女賃金差異(全労働者) 64.9%
男女賃金差異(正規雇用) 70.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(13.3%)、従業員1人あたり教育費(69.7千円)、労働安全度数率(1.76)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害や事故等に係るリスク

台風や地震等の自然災害、事故等により生産活動が停止した場合や、サプライチェーンに混乱が発生した場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。これに対し、危機管理マニュアルの作成や事業継続体制の整備を進めています。

(2) 半導体関連業界の需要変動リスク

主力である溶射加工の中で半導体・FPD製造装置分野の売上比率が高いため、同業界の市況悪化や価格競争の激化があった場合、受注減や値下げ要請により業績に影響を及ぼす可能性があります。メンテナンス需要の開拓等で影響の最小化に努めています。

(3) 顧客による内製化と移転リスク

大手機械メーカー等が自社内で溶射加工を全面的に内製化したり、海外等の遠方に生産拠点を移転したりした場合、委託の減少や顧客密着型の事業展開に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の取引先への依存リスク

東京エレクトロングループへの販売依存度が高水準(総売上高の約26.6%)であるため、同社グループの生産動向や受注動向が変化した場合、業績に直接的な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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